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「愛されなくても別に」堀口役・基俊介が“不幸中毒”な主人公たちの関係性に共感したこととは?2025/06/27 18:00

「愛されなくても別に」堀口役・基俊介が“不幸中毒”な主人公たちの関係性に共感したこととは?

 武田綾乃さんの同名小説を実写化した映画「愛されなくても別に」。日本最年少でカンヌ国際映画祭への出品を果たした井樫彩監督の最新作で、7月4日に全国公開を迎える。毒親、虐待、性暴力など家族間で生じる問題から社会のひずみに切り込みつつ、その世界をサバイブする女性たちの清々しさと“不幸中毒”からの脱却を描き出す。

 そんな本作で、浪費家の母親に依存される主人公・宮田陽彩(南沙良)と、過酷な家庭で育った過去を持ち、陽彩と徐々に心を通わせていく江永雅(馬場ふみか)と同じアルバイト先で働く堀口順平を演じるのは、IMP.基俊介さん。“似ていないはずなのに似ている気もする”という堀口の役柄や演じる上で意識していたこと、陽彩と江永の関係に感じる魅力などを聞いた。

――本作への出演を知った時の心境はいかがでしたか?

「いい意味で、とんでもない作品に出合ってしまったなと。とにかく驚いて、最初は“えっ、僕ですか?”と信じられませんでした。声を掛けていただいたのですが、一体どこで何を見いだしてくださったのだろうと。この理由はまだお聞きできていないので、ぜひ今度お聞きしてみたいです。ただ、お芝居するのは大好きですし、同世代で活躍されている南さんや馬場さんと同じ作品を作れるというのが、本当にうれしかったです」

「愛されなくても別に」堀口役・基俊介が“不幸中毒”な主人公たちの関係性に共感したこととは?

――基さんが演じる堀口は陽彩らと同じコンビニで働く青年です。空気が読めない部分もありますが、明るく物語に温かさをもたらすキャラクターだと感じました。

「家庭環境や置かれている状況など、陽彩や江永、本田望結さん演じる木村(水宝石)がそれぞれ三者三様の苦しみを抱えている中、堀口は一見“陽キャ”でどこにでもいる大学生に見えますが、原作を読むと堀口も彼なりに葛藤を抱えているんです。それを表に出さない、その感じが見受けられないところが、彼のある種悲しくも強い部分といいますか。普段は明るくおちゃらけているけれど、1人になった時に襲いかかってくる不安みたいなものは、堀口にもあるんじゃないかなと思っています。映画での堀口は“アホでかわいらしいウザキャラ”のようなイメージですが、原作を読んでいただくと“実はこんな闇を抱えていたんだ”と違う一面が見えたり、いろいろな楽しみ方ができると思います」

――基さんご自身とも通じる部分はあるのでしょうか。

「似ていないはずなのに似ている気もして…。矛盾しているのですが、以前ファンの方から“あまり自分の情報を出さないよね”と言われたことがあり、堀口のようにつかめそうでつかめないところが僕にもあるのかなと思っています。ただ、決してミステリアスというわけではなく、グループで活動している時にMCをやらせていただくことが多いので、メンバーの話を引き出すことはしても、自分のことはなかなかお話しする機会がない、というのがそこにつながるのかなと。堀口も陽彩たちに話しかけてはいても、“俺ってこうなんだよ”というような芯を食ったことは実は話していないので、そういう部分では通じているかもしれません」

「愛されなくても別に」堀口役・基俊介が“不幸中毒”な主人公たちの関係性に共感したこととは?

――撮影中、お芝居について監督やスタッフ陣から要望などはありましたか?

「一切なかったんです。本当に怖いぐらい何も言われずに…(笑)。先日試写を見に行った時に監督がいらしていたので、あらためて『どうでしたか?』とお聞きしたのですが、その時も『良かったです』と言っていただいて。もうここまで来たら、そのお言葉を信じたいと思います(笑)。ただ、先ほどプロデューサーさんとお話しした時に『監督とこの間話したけれど、“求めていたものを出してくれてありがたかった”と言っていたよ』とお聞きして。これで良かったのだなと少し安心しています」

――堀口を演じるにあたって、どのようなことを意識していたのでしょうか。

「それこそ先ほどもお話したような“堀口は本当はこういう人なんだよ”という部分を、演じる上ではあえて出さないようにしていました。台本を読んでいろいろ考える中で、出さない方がいいんじゃないのかなと思って。“こういう人いるよね”と思われるような堀口の第一印象を前面に出し、堀口の深い部分に関してはどこかしらで感じていただけたらいいなと。原作そのままではなく、この映画において求められる堀口らしさみたいなものを意識していたつもりです」

「愛されなくても別に」堀口役・基俊介が“不幸中毒”な主人公たちの関係性に共感したこととは?

――劇中では南さんと馬場さんとのシーンが多いですが、共演されて印象はいかがでしたか?

「撮影中、言葉を交わす時間はほとんどなかったのですが、お二人ともプロフェッショナルな方という印象です。当たり前ですが、撮影が始まるとご本人とは全く違う人物になり、動きやセリフ一つとっても、原作を読んで想像していた雰囲気そのまま、“陽彩と江永が目の前にいる!”と驚きました。しかも、それをほぼ一発勝負で発揮する…同世代ということもあり、刺激をよりたくさん受けました」

――陽彩と江永の関係性が徐々に変化していくところも本作の見どころですが、基さんは2人の関係性の魅力をどのように感じましたか?

「言葉で表現するのが難しいのですが…友達ではなく、仲間でもなく、良き理解者といいますか。独特な関係性ですよね。ただ、これは僕が(IMP.の)メンバーに対して感じていることとも似ているのかなと。僕らの場合すごく仲はいいのですが、友達かというとそうではなく、関係性を言い表すなら“メンバー”で。でも、これまで全員で同じ目標に向かって歩いてきて、痛みや悔しさも一緒に味わってきた。なので、何でも分かち合えるといいますか、例えけんかをしても、それが根底にあるからすぐに戻れるんです。それに近い何かを、もしかすると2人も感じているんじゃないかなと。2人が受けてきた傷はそれぞれ違うにしても本当の意味で理解し合える関係性で、その特殊なつながりが魅力でもあると思います」

「愛されなくても別に」堀口役・基俊介が“不幸中毒”な主人公たちの関係性に共感したこととは?

――これまでドラマや舞台など、さまざまな作品に出演されてきた基さんですが、俳優業をやる上で大切にしていること、強みだと思うことを教えてください。

「これに関して言うと、僕は自分のことを普通の人間だと思っているんです。でも、それがある種、長所でもあると思っていて。今回演じさせていただいた堀口のような、皆さんの共感を得やすいキャラクターに当てはまることができるというのもそうですが、 色が付いていない分“何かになりやすい”のかなとも。俳優業はやりがいのあるお仕事ですし、歌やダンスとはまた違う形で、揺れ動く感情を表現できるのがすごく楽しくて。今後も長く続けていきたいと心から思っています」

――本作のキャッチコピーにちなんで、基さん“らしさ”を言葉にしていただくと?

「深く考えないことでしょうか。好きなものは好き、嫌なものは嫌、自分の素直な気持ちにうそをつかずにいることが僕らしさだと思っています。お仕事中は皆さんに迷惑をかけないようにと一線を引いているのですが、実は超気分屋です(笑)」

「愛されなくても別に」堀口役・基俊介が“不幸中毒”な主人公たちの関係性に共感したこととは?

――最後に、基さんが最近“愛”を感じたエピソードを教えてください。

「いまグループ全員が主演を務める舞台の期間中(※取材時)で、メンバーと毎日一緒にいるのですが…僕も含めて、もうみんなアホなんです(笑)。空き時間はふざけてばかりいますし、公に言えないような会話ばかりしていて、男子校っぽい雰囲気といいますか。間もなく全員20代後半に突入するのですが、ふとした時に“俺たち本当に子どもだな”と思う瞬間が多々あるんですよ(笑)。でも、こういうことができている人ってどれくらいいるんだろうと思ったら、実はそんなにいないんじゃないかなと。グループ活動をしている人の特権といいますか、こういう時間をずっと大切にしたいなと思います」

【プロフィール】
基俊介(もとい しゅんすけ)

1996年10月17日生まれ。埼玉県出身。B型。男性7人組グループ・IMP.のメンバーとしても活躍。

「愛されなくても別に」堀口役・基俊介が“不幸中毒”な主人公たちの関係性に共感したこととは?

【作品情報】
映画「愛されなくても別に」

2025年7月4日 新宿ピカデリーほか全国ロードショー

出演:南沙良、馬場ふみか
本田望結、基俊介 (IMP.)、伊島空、池津祥子、河井青葉
監督:井樫彩
原作:武田綾乃「愛されなくても別に」(講談社文庫)
脚本:井樫彩、イ・ナウォン
配給:カルチュア・パブリッシャーズ

Ⓒ武田綾乃/講談社 Ⓒ2025 映画「愛されなくても別に」製作委員会

取材・文/TVガイドWeb編集部



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