「あんぱん」阿部サダヲ、“風来坊のパン職人”に込めた優しさとユーモア2025/05/30

　NHK総合ほかで放送中の連続テレビ小説「あんぱん」（月～土曜午前8：00ほか）で、今田美桜演じる主人公・朝田のぶや、北村匠海演じる柳井嵩のもとに現れる、風来坊のパン職人・屋村草吉（ヤムおんちゃん）を演じている阿部サダヲ。口は悪いがパン作りの腕は確かで、いつの間にか朝田家に寄り添う草吉という人物に、阿部がどのように向き合っているのか、話を聞いた。

　今田が主演を務める「連続テレビ小説」第112作の「あんぱん」は、中園ミホさんが「それいけ！アンパンマン」（日本テレビほか）を生み出した漫画家・やなせたかしさんをモデルとした柳井嵩（北村）と、その妻・のぶ（今田）の激動の人生を描く。何者でもなかった2人が数々の困難を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した「アンパンマン」にたどり着くまでを紡ぐ、生きる勇気と希望を与える物語だ。

　阿部が演じる屋村草吉は、どこからともなく高知にやって来たパン職人。お金にうるさく言葉も荒いが、その裏に情の深さを持ち、朝田家や町の人々の暮らしに少しずつ影響を与えていく。

――“朝ドラ”出演は、2003年前期の「こころ」以来とのことですが、草吉というキャラクターをどのように捉えて演じていますか？

「『お父さん役もできる年齢になってきたかな』と思っていましたが、それとはまた違う、風来坊のパン職人という面白い役をいただけて、やりがいがあるなと感じています。僕の想像ではありますが、草吉は何かを諦めてきて、愛情に飢えている。だからこそ、人にすごく興味がある人物なのかなと。一見冷たそうに見えますが、結局は困っている人がいると助けたくなってしまうのだと思います。とはいえ、特に前半は、何だかよく分からない人でいたほうがいいんだろうなと思って演じていました」

――言葉遣いが荒いキャラクターでもありますが、演じる上で意識されていることはありますか？

「ただの気が強い人に見えないよう、なるべく温かい印象に持っていけるようにしたいと思っています。釜次さん（吉田鋼太郎）との掛け合いで、ユーモアのある感じに見えるといいなと。あとは、脚本の中園さんに『ヤムさん、面白くしてください』と言われたので（笑）。暗くなるような場面も、明るくしていければと思っています。ただ、皆さんが方言に苦労されていて、僕が勝手なことをしてしまうと、急には方言が出てこなくて困らせてしまうので。そこはあまり乱すことはしないように気を付けています」

――のぶと嵩の関係性は、草吉の目にどう映っているのでしょうか？

「あの2人の関係性はすごく面白いなと思いながら見ています。のぶのように、あれだけ明るく真っすぐに向かってきてくれる人ってなかなかいないと思いますし。だから、嵩はこの人がいいなと思ったんでしょうね。草吉からすると、嵩はどこか似ているところがあったんだろうなと。最初に川辺で、一人ぼっちでいる嵩を見た時から、その寂しげな姿に、何かシンパシーを感じたんだと思います。草吉からすると、嵩は気になって仕方ない存在なのかもしれません」