「いつか、ヒーロー」宮世琉弥演じる謎の男・氷室は「“細胞記憶”が今後のヒントに」2025/05/18 12:00

ABCテレビ・朝日系で放送中のドラマ「いつか、ヒーロー」は、20年間消息不明だった児童養護施設の職員・赤山誠司(桐谷健太)と、夢をなくした若者たちが腐った大人に立ち向かう痛快復讐(ふくしゅう)エンターテインメント。第1話からさまざまな伏線や謎がちりばめられ、毎週SNSやWEB記事で考察が盛り上がりを見せている。
そんな本作で赤山と対峙(たいじ)する謎を抱えた影の存在・氷室海斗を演じるのが宮世琉弥さん。氷室はなぜ赤山のかつての教え子たちを執拗(しつよう)に排除しようとするのか…。そのサイコパスな役どころについて、演じる上での心境などを聞いた。
――まず、当初演じる氷室に対してどういう印象を受けましたか?
「氷室を演じると決まった後に、台本に書いていないことも含めて、氷室の設定資料をいただいたんです。そこで彼のバックボーンを知ったのですが、今のようなサイコパスな性格になってしまったのにはやはり理由があるんですよね。氷室は決してやってはいけないことをしていますが、周りの環境が彼をそうさせてしまったという点では仕方がない部分もあるのかなと。彼は、それが正義だと信じているので。人によって正義と悪は違う、ということをあらためて考えさせられました。そういう意味では、赤山にも氷室にも共感できる部分があります」
――氷室を演じるのはやはり難しいのでしょうか。どういう心境で演じられていますか?
「氷室は空っぽなんです。感情がなく機械的で、若王子(公威/北村有起哉)の手下としても言われたことをそのまま実行できてしまうんです。第1話で(渋谷)勇気(駒木根葵汰)がビルから飛び降りたシーンも氷室は彼に寄り添うかのような言葉をかけていましたが、当然そこに思いやる気持ちはなく、ただ自殺させたいという思いだけなので演じていて心がしんどくなる時もあり、このシーンの撮影後も倒れている勇気を見て苦しさを感じました。ただ、基本的には楽しみながら氷室を演じていて。難しく、壁にぶち当たる時もあるのですが、それも前向きに捉えて臨んでいます」

――氷室を演じる上で何か軸にしているものはありますか?
「皆さん“細胞”で覚えていることって結構あるじゃないですか。“細胞記憶”といいますか…。例えば、小さな頃に自転車に乗ることを覚えて、そこから何十年も乗っていなくても、いざ目の前に出てきたら乗れますよね。監督ともお話しして、氷室を演じるにあたってはそこの部分を大切にしています。氷室はある瞬間に興奮を覚えているのですが、それが彼の“細胞記憶”で…というのが今後への大ヒントです(笑)」
――第5話の終盤ではついに赤山と接触し、緊迫感あふれるやりとりが展開しました。赤山を演じる桐谷さんの印象はいかがですか?
「桐谷さんとはまだゆっくりお話しさせていただく機会がないのですが(※取材時点)、先日氷室が遠くから赤山を見ている、ちょっと長めのシーンの撮影があって。その時、監督がなぜか桐谷さんではなく僕から撮ってくださったんです。『宮世さんを早く帰さないと!』とギャグを言いながら…(笑)。しかも雨が降っていたのですが、桐谷さんはずっと僕に付き合って、目線の先にいてくださったんです。なのに、その後本当に僕が先に帰ることになってしまって。『僕は何時間でも待っているつもりでした!』と桐谷さんにお伝えしたところ、監督と同じノリで『宮世さん、お疲れさまです!』とイジっていただき、思わず笑ってしまったのを覚えています(笑)」

――シリアスなシーンも多い本作ですが、今のお話のように現場は楽しい雰囲気だとお聞きしました。
「そうですね。基本的には1人で撮影していることが多いのですが、監督もスタッフの方々も皆さんすごくにぎやかで。明るい雰囲気の中でやらせていただいています」
――それでは、宮世さんから見て、主人公・赤山の魅力はどのような部分にあると思いますか?
「すごくストレートなところがいいですよね。しかも、きれいごとだけを言っているのではなく、ネガティブなことも受け入れた上でポジティブを生み出せる人といいますか。どん底から教え子たちと立ち上がっていく姿を見ていると“僕も頑張ろう”と思えますし、“確かに”と共感できる部分も多いんです」
――氷室のセリフの中には「死滅回遊魚」という印象的なフレーズが何度も登場します。宮世さんは、氷室はどういう意味でこの言葉を言っていると捉えていますか?
「氷室の言う死滅回遊魚はイコール“ゴミ”です。下界に流れ着いた、結局は死んでしまう人間たちのことを指していて。氷室は自分がヒーローで、そんな死滅回遊魚たちを早く楽にしてあげなくては、と思っているんです。それが彼の“正義”でもあるので。なので…やはり時々しんどいです(笑)」

――赤山同様に、これまで宮世さんご自身が挫折を経験した時はどのように立ち上がってきたのでしょうか。
「僕自身、結構いろいろ気にしてしまうタイプではあるのですが、結局は時間なのかなと思います。お仕事をしている中で失敗して落ち込んだり、誰かに言われて心に残り続けている言葉もあるのですが、時間が少しずつそれをそぎ落としてくれるといいますか。つらさはだんだん薄れていって、“ここを直していこう”という反省点だけが残っていく感覚です。基本的に、嫌なことはすぐに記憶から消えていきます(笑)」
――最後に、「いつか、ヒーロー」という作品名にちなんで、宮世さんがいつかしたいことを教えてください。
「温泉が好きなので、“いつか、温泉経営”したいです! 場所はあえて都内近郊で、芸能人の方々の御用達になるような宿を作れたらいいなと思っています(笑)」

【プロフィール】
宮世琉弥(みやせ りゅうび)
2004年1月22日生まれ。宮城県出身。近作はドラマ「くるり〜誰が私と恋をした?〜」(TBS系/24年)、「スノードロップの初恋」(フジテレビ系/24年)、「問題物件」(フジテレビ系/25年)、映画「アンダーニンジャ」「顔だけじゃ好きになりません」(すべて25年)など。今年1月には、アーティストとしても東京・国立代々木競技場第一体育館でLIVEイベントを2days成功させた。
【番組情報】
日10ドラマ「いつか、ヒーロー」
ABCテレビ・テレビ朝日系
午後10:15~11:09
取材・文/片岡聡恵
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