Feature 特集

俳優活動10周年の糸川耀士郎が挑む1人音楽劇「夜啼鳥」開幕直前! 上演後に抱く展望とは?2025/05/12 12:00

俳優活動10周年の糸川耀士郎が挑む1人音楽劇「夜啼鳥」開幕直前! 上演後に抱く展望とは?

 ミュージカル『刀剣乱舞』をはじめ、人気2.5次元作品に多数出演しキャリアを積んできた糸川耀士郎。2023年までは劇団番町ボーイズ☆に所属し、劇団公演で脚本・演出・主演を務めるなど役者として研さんを続けてきた彼が、俳優活動10周年を迎える今年、1人音楽劇「夜啼鳥」を上演する。

 本作で糸川は、16歳の若さでローマ帝国・第5代皇帝となったネロを演じる。暴虐非道なネロがこの世で唯一信じ、渇望し続けた「芸術」。美しいものを追い求め、狂気の宴(うたげ)に身を投じたひそやかな一夜を描いていく――。

 上演に先駆け、この作品の中心である糸川耀士郎に、企画に至った経緯や10周年を迎えての心情、そして今後のビジョンなどを語ってもらった。

――1人音劇劇という挑戦的なことを企画された経緯とは?

「まず、10周年に何かしたいという思いはありました。バースデーイベントやファンミーティングなど、ファンの方々に感謝の思いを伝えるイベントは年に1回やってきたんですが、今年は10周年ということもあって、もっと役者として表現できることをしたいと、スタッフの皆さんとも話していて。その中で、もう一度1人芝居に挑戦するのがいいんじゃないかということになりました。以前に1人芝居をやった時、次にやるとしたらミュージカルにしたいと思っていたんです。1人芝居自体は最近もいろんな役者さんがやられていると思うんですけど、1人でミュージカルを演じたり、日本でオリジナルのミュージカル作品を作るというのは、あんまり多くはないことだと思っていて。自分の中で、何か挑戦をするならより難しいことでステップアップをしていきたいという思いもあったので、今回は1人音楽劇に挑戦してみようということになりました」

俳優活動10周年の糸川耀士郎が挑む1人音楽劇「夜啼鳥」開幕直前! 上演後に抱く展望とは?

――どんな方とタッグを組むかというのも大きな要素だったかと思います。脚本・演出の中屋敷法仁さんとご一緒されるのは、イベント関連以外ですと舞台「黒子のバスケ」以来となります。

「この10年間での自分の節目ってどこなんだろうって考えた時に、やっぱり一つは舞台『黒子のバスケ』かなと思ったんです。2.5次元ということもそうですが、演劇に対してより深く、自分を見つめ直さなければと思ったきっかけになった作品で。中屋敷さんには、そこに向き合わせていただいた感謝があります。そういう大切な思い出を一緒に過ごした方と作りたかったというのもありますし、中屋敷さんと僕って、本当に正反対だと思っているんですよ。僕はロジックを大切にしていて、“何でこうなるんだろう”とかすごく考えるタイプなんですけど、中屋敷さんは直感的に演出されていたり、ご本人にしかない雰囲気や世界観をとても持っていらっしゃる。そういう自分とは違うものを持った人とご一緒するのはすごくワクワクするし、役者としていろんなことを感じられるんじゃないかと思うんです。なので、ぜひ中屋敷さんがいいなと声を掛けさせていただきました」

――音楽監督は、ミュージカル『刀剣乱舞』など数々の作品でご一緒されているYOSHIZUMIさんが担当されます。

「ミュージカル『刀剣乱舞』をはじめ、いろんな作品でご一緒させていただいているんですけど、本当にいろんなことをディスカッションできる音楽監督さんなんです。役者のことを考え、気持ちに寄り添って音楽を作ってくださるところは本当に信頼していますし、自分としてもやっぱり音楽劇なので、音楽に対するこだわりは稽古中にもどんどん芽生えていくと思うんです。そういう時にすっごく文句が言いやすくて(笑)、一番信頼している音楽監督さんということで真っ先に浮かんだYOSHIZUMIさんにオファーさせていただきました」

――イントロダクションやビジュアルを拝見する限り、かなりダークな作品になっていくのではないかと推察されます。題材や役など、糸川さんのリクエストはどのように反映されているのでしょうか?

「題材に関しては、リアルで日常的なものというよりも、非日常というか…劇的なものを今回は描いていきたかったんです。古代ローマって、今では考えられない倫理観や世界観だったり、皇帝の人生もドラマチックなものが多いということで、自分でもその時代についてや皇帝の人物像などいろいろ調べて、挙げた候補の中に、ローマ帝国・第5代皇帝のネロもあったんです。スタッフチームの皆さんともディスカッションして、中屋敷さんのイマジネーションが膨らみやすいのがネロなのではということで、ネロに決まりました。それに、今までの自分は、ピュアで純粋なキャラクターだったり、いわゆる“陽”の人物を多く演じさせていただいて、そのベクトルのお芝居はすごく広げてこられたと思っています。ただ、そことは真反対の、闇深くてダークな役のお芝居も広げていきたい。ドラマや映画を見たり、舞台を観劇しに行った時に、そういうキャラクターを見て勉強することももちろんできるんですけど、やっぱりそのキャラクターを背負わないと、深く潜っていけないというのはすごく感じていて。そういうキャラクターを演じるには、その時のタイミングや運もある。だとしたら、もう待つのではなくて自分で作ろうって思ったのも、今回のきっかけの一つでもあります」

――ダークな作品やそういった役に深く潜っていくと、私生活も引っ張られて落ち込んでしまいそうですが…。

「いろんなタイプの役者さんがいると思うんですけど、僕はすっごい切り替えられる役者だなと自分でも思っていて(笑)。そういう意味ではメンタルまで追い詰められて…っていうふうにはならないんじゃないかなと思います。変な話ですけど、台本に向き合っている時間が、息抜きやストレス発散になっちゃうというか」

――とはいえ演者1人となると物量も多く、稽古から本番は大変な日々になりそうです。終えた後の自分へのご褒美は何か考えていますか?

「絶賛考え中ですね。実はこれ、(舞台「鬼滅の刃」で共演した)橋本祥平とも2人で話していて、自分へのご褒美にめっちゃいい買い物しよう! とか言ったりしていたんですけど(笑)。家の家電がもう結構買い替え時なので、ご褒美を口実に全部買い換えてやろうかなとかは思ったりしています!」

俳優活動10周年の糸川耀士郎が挑む1人音楽劇「夜啼鳥」開幕直前! 上演後に抱く展望とは?

――今回は10周年を記念した公演ですが、この10年の活動で出会った方で、特に今作を見てほしいと思う方はいらっしゃいますか?

「まずはもちろん、ファンの皆さまには絶対に見ていただきたいなって思います。10周年を記念した作品ではありますけど、10周年から先のスタートでもあるので、“一発目からこのくらいの熱量でスタートさせます!”という思いを込めた作品にしたいです。いつも一緒に舞台を作り上げている関係者の方だったり、切磋琢磨している仲間たちからしたら、1人音楽劇となると、『大変だろうな』『よくそんなことするな』っていう感覚にきっとなると思うんです。でも、自分としてはワクワクする気持ちの方が大きいし、みんなに対して『クリエーティブにいこうよ』みたいな思いがあるんです。僕自身も、すごい役者さんを見たり、すごいクリエーターの方の演出を目にした時に、“やられた!”と思うことがあるんですけど、自分も仲間たちに見てもらって、そんなふうに思ってもらえるように頑張りたいですね」

――きっと周囲の方にとっても刺激になると思います。この音楽劇を越え、10年目以降さらにどんな役者になっていきたいかなど、ビジョンはありますか?

「僕自身、『どういう役者になりたいんだろう』『これから先どうしていくんだろう』と考えることはすごくあります。ただ、昔から“この人みたいになりたい”というような目標はあまりなくて、その答えが具体的になっていなかったんです。自分が好きなことをやって、好きなクリエーターの方々と一緒に演劇を作っている時間が、今の自分にとっての幸せだとは感じていて…。そんな中で、『憧れられない俳優になりたい』っていう思いはありますね。『何でこんなにバイタリティーがあるんだろう』とか、『何でこんなにいろんなことに挑戦しているんだろう』とか…“ちょっとまねできないな”って思われるくらいの域にいきたいんです。僕はミュージカルに演劇、ドラマや映画、声優…本当にいろんなことにチャレンジしていきたいし、全部勉強したい。それは、芝居を突き詰めた先で全てがつながると思っているから。それを周りの人が見て、『簡単に“この人みたいになりたい”って言えないな』って思われるような…。“糸川耀士郎”を確立して、ある種、憧れるのを諦められてしまうくらいの俳優になっていきたいですね」

俳優活動10周年の糸川耀士郎が挑む1人音楽劇「夜啼鳥」開幕直前! 上演後に抱く展望とは?

【プロフィール】
糸川 耀士郎(いとかわ ようじろう)
1993年5月28日生まれ。島根県出身。7月29日、30日にミュージカル『刀剣乱舞』目出度歌誉花舞 十周年祝賀祭、9月12日からミュージカル『黒執事』〜緑の魔女と人狼の森〜に出演を控えている。

【コンテンツ情報】
糸川耀士郎 俳優10周年記念 1人音楽劇「夜啼鳥」

2025年5月14日〜18日に東京・Theater Mixaにて上演。

取材・文/TVガイドStage Stars編集部 撮影/蓮尾美智子 ヘアメーク/望月光 スタイリスト/ヨシダミホ



この記事をシェアする


Copyright © TV Guide. All rights reserved.