Feature 特集

「生きとし生けるもの」妻夫木聡×渡辺謙が明かす大事な価値観とは――「作品にしても人にしても、“出逢い”をすごく大切にしている」2024/05/02

「生きとし生けるもの」妻夫木聡×渡辺謙が明かす大事な価値観とは――「作品にしても人にしても、“出逢い”をすごく大切にしている」

 妻夫木聡さん演じるメスが握れなくなった医者・佐倉陸と、渡辺謙さん演じる余命宣告を受けた患者・成瀬翔が、病院を抜け出しバイクで旅に出る姿を描くヒューマンドラマ「生きとし生けるもの」(テレ東系)。 “人は何のために生き、何を残すのか”という永遠の問いの答えを求めながら巡る、2人の人生最後の旅の行方とは…?

 今回は、佐倉陸を演じる妻夫木聡さんと成瀬翔を演じる渡辺謙さんを直撃取材。豪華な対談にもかかわらず、とても和気あいあいとした雰囲気の中、この作品のための役作りや貴重な撮影秘話、幸せを感じる瞬間や大切にされている価値観についてお伺いしました!

――本作は北川悦吏子氏の脚本ということで、台本を拝読して“心の底で気持ちが動いているフラットな表情”など、繊細な感情を表現するシーンが多数あるのが印象的でした。そういったシーンを演じる際に、どのように気持ちを作られていたのでしょうか?

渡辺 「好きなように書くんだよね、北川さん(笑)」

妻夫木 「いつもあんな感じですよね(笑)。でも、僕の場合は、自分が気持ちを作るというよりも、謙さんをはじめとする共演者の方々との掛け合いなどもあって、皆さんが作ってくださったような気がします。北川さんが伝えられたいことはなんとなく分かるので、大げさな演技にならないようにというのは意識していました。はっきりと心が動いたとかいうことではなく、繊細な部分での表現を求めていらっしゃると思うんですけど、『こういう表情にしよう』と意識してしまうと、逆に失敗しそうだったので。だから、今まで頑張ってきた僕なりの人との付き合い方が映像にも出てくれたらと信じながら、今回演じさせていただいていましたね」

「生きとし生けるもの」妻夫木聡×渡辺謙が明かす大事な価値観とは――「作品にしても人にしても、“出逢い”をすごく大切にしている」

――渡辺さんと共演されることで、にじみ出てくる感情を大切にされていたんですね。

渡辺 「ほとんど2人のシーンでしたからね。7割くらいは2人だったんじゃないかな? たまに人が来ると『おお、共演者の人だ!』みたいな(笑)。だから本当に、撮影期間の3週間は生活を共にしていた感じですよね。どこが始まりでどこが終わりという感じでもなく、自然にそのシーンを撮影して、終わって、また次の日が来て…という時間の流れだったような気がします。役を作り上げるというよりも、役を生きていた感じですね」

「生きとし生けるもの」妻夫木聡×渡辺謙が明かす大事な価値観とは――「作品にしても人にしても、“出逢い”をすごく大切にしている」

――それは、この作品ならではの撮影の仕方のような。

妻夫木 「そう言われてみると、いつもどうやっているんでしょうね?(笑)。でも、北川さんがあて書きをしてくださっているというのもあるかもしれないですけど、今回ほど、その時の状態が自分なのか役なのか分からないくらい、ずっと一緒に役と生きられたことってほかにはあまりないんじゃないかな。それは本当にありがたい話で。意識せずともその役に、その世界に入っていけるというのはすごくうれしいですね」

渡辺 「実は、本作の撮影に関して僕からすごくむちゃなお願いをさせてもらったんですよ。というのも、一番最初に成瀬が死ぬシーンを撮影していただいたんです。そこが一番命のエネルギーというか、灯がない場面なので、そこをめがけて体を絞らせてもらいたくて。死に向かう数時間前の状態のシーンを初日に撮らせていただいたから、妻夫木にしても、娘の幸田ちひろ役を演じる満島ひかりさんにしても大変だったと思うんですけど、すごくありがたかったですね。そんな形で成瀬のゴールを最初に作っていただいたので、あとはどうでもいいやって(笑)。というのは冗談ですけど、その後は割と気は楽でしたね」

妻夫木 「初日だから、何も始まってないですからね(笑)。何も始まってないのに、終わる瞬間を撮影していましたね」

――初日からクライマックスのシーンを撮影されていたんですね。

渡辺 「でも実は、それがクライマックスではないんです。ほかの作品では、そういうシーンをクライマックスにしているものもたくさんありますけど、本作はそうではなくて。ある種、成瀬の人間としてのゴールというか…そのシーンがこのドラマのエンディングではないというところが、北川さんのみそかなと思いますよね」

「生きとし生けるもの」妻夫木聡×渡辺謙が明かす大事な価値観とは――「作品にしても人にしても、“出逢い”をすごく大切にしている」

――本作だからこそのエンディング、期待が高まります。ドラマでは生きる上での喜びや悲しみが描かれていますが、お二人が最近「幸せだな」と感じられた瞬間がありましたら教えていただけますか?

妻夫木 「そうですね…」

渡辺 「黙っちゃうと、幸せじゃないみたいに見えるから!(笑)」

妻夫木 「(笑)。僕の誕生日に、謙さんから大きいお肉をはじめとしたいろんな食材をいただいたんですよ。で、すごく大きくていいお肉だったので、『ローストビーフ用だな』と思ったんですけど、作ったことがなかったので挑戦してみようと。実際にやってみたら意外と作り方は簡単で、めちゃくちゃおいしかったんです! 自分で作ったものがおいしいとそれだけでうれしいんですけど、『こんなにうまくなるんだ!』って。その時にあらためて、おいしいものを食べるってすごく大切なんだなと思いましたね。忙しかったりすると、食事を簡単に済ませたりする時もあるじゃないですか? もちろん毎日頑張る必要はないけど、おいしいものを作って食べるってすごく幸せなことだし、根本的に大事だなと思いましたね」

「生きとし生けるもの」妻夫木聡×渡辺謙が明かす大事な価値観とは――「作品にしても人にしても、“出逢い”をすごく大切にしている」
「生きとし生けるもの」妻夫木聡×渡辺謙が明かす大事な価値観とは――「作品にしても人にしても、“出逢い”をすごく大切にしている」

――渡辺さんからいただいたお肉というのも、またさらにおいしさが増しますよね。

渡辺 「僕は、そうやって喜んでもらえることにすごく幸せを感じるんだよね。彼の誕生日だったから、何を贈ろうか考えたんだけど、おいしいものってある意味完璧なプレゼントじゃないですか? だから、お肉を贈らせてもらったんです。それで『初めてだけど、挑戦してみます』とか『おいしかった!』と言ってもらえて、僕も幸せだしうれしいですね」

妻夫木 「さっき気付いたんですけど、その時の写真を撮れていなくて…」

渡辺 「そんなもんだって!(笑)」

妻夫木 「あんなにおいしかったのに、写真を撮り忘れるなんてびっくりしました(笑)」

渡辺 「料理していると、余裕なんてないのよ!」

妻夫木 「『わーできた!』って感動して、『めっちゃおいしいじゃん!!』って全部食べちゃってました(笑)」

渡辺 「大丈夫! 目の前にいる人と、おいしいご飯で楽しい時間を過ごしてくれたってことじゃない」

――渡辺さんとしても、妻夫木さんがすごく幸せな堪能の仕方をされたということですもんね。

渡辺 「そうそう! だからよかったですね」

「生きとし生けるもの」妻夫木聡×渡辺謙が明かす大事な価値観とは――「作品にしても人にしても、“出逢い”をすごく大切にしている」

――すてきなエピソードをありがとうございます! それでは最後に、日々過ごされる上でご自身が大切にされている考え方がありましたら教えてください。

渡辺 「俺たちって、結構波があるんですよ。仕事をしている時はそのことでいっぱいだけど、何にもしていない時は本当に空っぽで。気持ちも、スイッチをガーンと入れて高揚している時もあれば、落ち込んでいる時もあったりして。だから、オフにしている時は極力フラットにして、波立たせないというのを大切にしています」

妻夫木 「本当に波立ってないですよね(笑)。僕、謙さんのおうちに遊びに行かせてもらった日、午前11時ぐらいにお邪魔したんですよ。で、『お昼ご飯食べよう』と作ってくださって食べていたら、気付くと夕方だったんですよね」

渡辺 「そうやって心をブランクにすることが、僕にはとっては良い状態なんです。もちろん、毎日掃除や洗濯などやらないといけないこともやるんだけど…気が付いたら夕方みたいな、そんな過ごし方が好きですね」

妻夫木 「謙さんのあのおうちだから、雰囲気がいいんですよね! 東京ではあんなにゆっくり過ごせないですもん(笑)」

渡辺 「いや、いろいろしてるよ!?(笑)。でも、『あ、もう西日だ』っていう時もあるよね」

妻夫木 「いいですよね。僕は、座右の銘ではないかもしれないですけど、昔から“一期一会”という言葉が好きなんです。だから、作品にしても人にしても、“出逢い”をすごく大切にしているかな。それに恵まれて今の僕があると思っているので。今回もそれに恵まれたんだなって、つくづく感じますね」

「生きとし生けるもの」妻夫木聡×渡辺謙が明かす大事な価値観とは――「作品にしても人にしても、“出逢い”をすごく大切にしている」
「生きとし生けるもの」妻夫木聡×渡辺謙が明かす大事な価値観とは――「作品にしても人にしても、“出逢い”をすごく大切にしている」
「生きとし生けるもの」妻夫木聡×渡辺謙が明かす大事な価値観とは――「作品にしても人にしても、“出逢い”をすごく大切にしている」
「生きとし生けるもの」妻夫木聡×渡辺謙が明かす大事な価値観とは――「作品にしても人にしても、“出逢い”をすごく大切にしている」

【プロフィール】

「生きとし生けるもの」妻夫木聡×渡辺謙が明かす大事な価値観とは――「作品にしても人にしても、“出逢い”をすごく大切にしている」

妻夫木聡(つまぶき さとし)
1980年12月13日生まれ。福岡県出身。いて座。O型。ドラマ「オレンジデイズ」「木更津キャッツアイ」(ともにTBS系)、NHK大河ドラマ「天地人」、「Get Ready!」(TBS系)、映画「ウォーターボーイズ」「悪人」「怒り」「ある男」、舞台「贋作・桜の森の満開の下」「キネマと恋人」などに出演。


渡辺謙(わたなべ けん)
1959年10月21日生まれ。新潟県出身。てんびん座。A型。NHK大河ドラマ「独眼竜政宗」、「砂の器」(TBS系)、「逃亡者」(テレビ朝日系)、「TOKYO VICE」(WOWOW)、映画「硫黄島からの手紙」「沈まぬ太陽」「はやぶさ 遥かなる帰還」「Fukushima 50」、舞台「王様と私」「ピサロ」などに出演。

【番組情報】

テレビ東京開局60周年特別企画ドラマスペシャル「生きとし生けるもの」
テレ東系 
5月6日 午後8:00~9:54

取材・文/鬼木優華(テレビ東京担当) 撮影/尾崎篤志 ヘア&メーク/勇見 勝彦<THYMON Inc.>(妻夫木)、倉田 正樹<アンフルラージュ>(渡辺) スタイリスト/小松 嘉章<nomadica>(妻夫木)、JB(渡辺) 衣装協力/BURUNELLO CUCINELLI/ブルネロ クチネリ ジャパン株式会社:03ー5276ー8300(渡辺)



この記事をシェアする


Copyright © TV Guide. All rights reserved.