「波うららかに、めおと日和」など逆風のフジテレビが2025春ドラマランキングで躍進!2025/07/30 10:00

今回は、関東162万台を超えるレグザの視聴データを元に、2025年4月クールの春ドラマランキングを大発表。この春、視聴者の支持を得たのはいったいどの作品だったのか?
まずは「リアルタイム視聴」とタイムシフト(全録)を利用した見逃しや後日再生視聴を含む「録画視聴」の合算による「放送回ランキング ベスト30」を発表する(朝ドラや夜ドラ等の帯ドラマ、および大河ドラマは除いている)。ポイントは1位を100とした場合の割合である(以下同)。
TBS日曜劇場「キャスター」の初回が、春ドラマの全放送回中第1位となった。そして2話、3話が、2位、3位と続いている。同一ドラマの1~3話が全放送回のベスト3を占めるというのはなかなか珍しい。そして4位には「続・続・最後から二番目の恋」(フジテレビ系)の初回がランクイン。5位には「キャスター」の最終回が入った。以下、21位までを「キャスター」全10話と「続・続・最後から二番目の恋」全11話が占めた。続く22~30位は「対岸の家事~これが、私の生きる道!~」(TBS系)が独占している(ちなみに「対岸の家事」の最高ポイント回は最終回である)。
次に「ドラマ平均録画視聴ランキング ベスト20」を見ていこう。リアルタイム視聴と録画視聴の合算ポイントの全話平均を集計し、高い順に並べたランキングである。
放送回ランキングで上位を占めた「キャスター」「続・続・最後から二番目の恋」「対岸の家事」が順当にベスト3にランクイン。4位以下との差は大きく、この3作品が今年の春を代表するドラマだったということは間違いないだろう。
トップの「キャスター」に関して言えば、ドラマの外で起こったことも含め、さまざまな事情はあったにせよ、物語全体として尻すぼみだったという印象はぬぐえない。それでも平均でトップをゲットしたのはさすが日曜劇場とその時間枠の底力を評価したいところではあるが、それをひっくり返すだけのドラマがほかに現れなかったということでもある。そういう意味では、この春は前評判を覆すような際立った作品が現れなかった比較的地味なクールだったといえる。
2位の「続・続・最後から二番目の恋」は、小泉今日子、中井貴一主演の人気シリーズが11年ぶりに復活。オリジナルキャストがほぼ全員そろって出演したことでも話題を呼んだ。50~60代が主人公の“月9”という点も注目されたが、ずっとテレビドラマを見続けてきた同世代の女性たちにとっては、キョンキョンはじめ、飯島直子や内田有紀、石田ひかりなど、これまで“月9”を彩ってきた往年のヒロインたちの競演は、待ち望んでいたことだったのかもしれない。

ランキングで注目されるのは、フジテレビ系ドラマの大躍進である。「続・続・最後から二番目の恋」のほかに「波うららかに、めおと日和」「Dr.アシュラ」「あなたを奪ったその日から」などベスト20に6本を送り込み、そのうち4本がベスト10入りを果たすというのは快挙以外のなにものでもない。
豪華すぎるキャスティングと鎌倉の描写も魅力的だった、王道“月9”の「続・続・最後から二番目の恋」は言うまでもなく、少女漫画原作で昭和初期の一組の夫婦の奥ゆかしい恋愛を描いたことで話題になった芳根京子と本田響矢の初共演作「波うららかに、めおと日和」、カメレオン女優の松本若菜主演、鬼気迫る演技やスピーディーな救命救急と病院経営を絡めて描いた「Dr.アシュラ」など、まったく異なるベクトルで描かれたドラマのラインアップが良かったのではないだろうか。

そして、フジテレビ系の春ドラマを語る上で欠かせないのは、親子の愛を軸に描きながらも人間の葛藤、表の顔と裏の顔、展開の面白さはもちろん、国民的アイドルグループ・Snow Manの阿部亮平に敢えて“闇落ちキャラ”をキャスティングして女性層を取り込む等、最終話も含めて何度も世界&日本でXのトレンド1位に輝いた「あなたを奪ったその日から」だ。かつてない逆風の中、製作現場にもいろいろ支障があったように伝え聞くが、そのタイミングで、こうして作品が視聴者に支持されたということは、ひと筋の希望の光でもあろう。
続いて「最終回継続率ランキング ベスト20」をみてみよう。最終回のポイントを初回ポイントで割った数値によるランキングで、継続ポイントが高い(=初回に比べて最終回の数値が高い)ということは作品内容に対する満足度が高い傾向があるのでは、という仮説に基づいた検証である。
最終回継続視聴が100%を超えた(=最終回のポイントが初回を上回った)ドラマは全部で5本。すべてがプライムタイムドラマで、深夜ドラマで100%を超えたドラマはひとつもない。今クールは深夜ドラマも押しなべて元気がなかったという印象だ。
そんな中、継続率でトップに立ったのが桜井ユキ主演のドラマ10「しあわせは食べて寝て待て」(NHK総合)。平均録画視聴ランキングでも14位と民放ドラマに引けを取らない支持を集めた。一生付き合わなくてはならない病気で仕事を辞め、夢や仕事などを手放さざるを得なくなってしまった主人公が、新たな隣人たちとの団地暮らしの中で薬膳と出会う物語。人生うまくいかないこともあるけれど、身近なところに小さな優しさや幸せもある。文字通り内容の満足度で支持されたあたたかなドラマだった。
そして継続率2位、平均値でも4位に入った「波うららかに、めおと日和」は、まさに春ドラマの台風の目だったといえる。時代を戦前に設定することでピュアな“ラブコメ”のリアリティーを担保したこの作品は、令和にラブストーリーを作るうえでの一つの回答でもあるだろう。ここでも厳しい時代の中での小さな幸せが大切に描かれ、女性層を中心に多くの共感の声が寄せられた。
そして、密かに話題になっていたのが「恋は闇」だ。継続率100%を超えるトップ5位内で、原作がない作品は「あなたを奪ったその日から」と、この「恋は闇」の2作品。「あなたを奪ったその日から」のキャスティングの豪華さには劣るが、手に汗握る連続殺人を追うミステリーと、その謎に迫る報道ディレクターと記者という2人の恋愛要素が見事に調和したのがこの継続率につながったのではないだろうか。「愛した男は殺人鬼なのか?」という、今までにも数多くあったテーマでありながら、情報があふれた今の時代に「真実を見抜く目を持っているのか?」を問う、最後まで目の離せない展開のドラマだった。
そして「続・続・最後から二番目の恋」のメインコンセプトとも言える“悪い人があまり出てこない”という要素は、まさに今クールのキーワードだったといっていい。「対岸の家事」も、対立していってもおかしくない異なる立場の親たちが、互いに助け合い、理解し合い、共存していく過程を意識的に描いた。しんどい人生にそっと寄り添ってくれる小さな優しさを見つけることは、時代の要請ともいえる。ここ10年程猛威を振るった“勧善懲悪”“恋愛ドロドロ”“考察系”などに代わる時代のトレンドとなっていくのか。今後の動きに注目していきたい。

文/武内朗
提供/TVS REGZA株式会社
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