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「十六夜膳房」中村蒼“最後の一皿”で死者に寄り添う孟婆役。35歳の今「生きているだけですごい」2026/10/11 12:00

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「十六夜膳房」中村蒼“最後の一皿”で死者に寄り添う孟婆役。35歳の今「生きているだけですごい」

 日本テレビ系で10月12日にスタートするドラマDEEP「十六夜膳房」(月曜深夜0:24)。中国発の人気小説を世界で初めて映像化する本作は、亡くなった人が訪れる黄泉の食堂を舞台にしたヒューマン・グルメ・ファンタジー。死者はそこで、人生で最も忘れられない料理を注文し、料理人・孟婆(もうば)が振る舞う“最後の一皿”を通して、後悔や未練を手放して来世へと旅立っていく。

 主人公・孟婆を演じるのは中村蒼。撮影を前に、作品との出会いから役作り、苦戦中だという料理の特訓、俳優としてキャリアを重ねた今感じていることまで聞いた。

――まず、出演のオファーを受けた時の率直な感想と、原作を読んだ印象を教えてください。

「出演のオファーをいただいた時は、とてもうれしかったです。原作は、日本語に翻訳されたものを読ませてもらいました。それまでは作品の存在は知らなかったのですが、読んでみて、人それぞれの人生があることをあらためて感じました。それと同時に、自分の人生も振り返って、『これからどういう人生になっていくのかな』と考えたりして。これまでの自分を振り返りたくなるような原作でした」

孟婆の優しさと、この世ならざる世界観をどう描くか

「十六夜膳房」中村蒼“最後の一皿”で死者に寄り添う孟婆役。35歳の今「生きているだけですごい」

――死者に料理を振る舞い、次の人生へ送り出す孟婆。どんな人物として演じたいと考えていますか。

「監督からは、『いろいろな感情を抱えて食堂を訪れる人たちに寄り添い、また新たな人生を歩みたいと思ってもらえるような優しさで包んでほしい』と言われました。ですので、そうした思いを大切にして演じられたらと思っています。人は誰しも一度は、『死んだらどうなるんだろう』と考えたことがあると思うんです。もし自分が亡くなった時にこんな世界があって、そこでこういう人と最後に話ができたら幸せだなと自分自身もそう思えるような人物像を作り上げていきたいです」

――毎話、異なる人生を歩んできた人を迎えることになります。そこにはどんな面白さや難しさを感じていますか。

「さまざまな俳優さんとお芝居できるのは、すごく楽しみです。その亡くなった人に寄り添って、『自分の人生も悪くなかった』と思ってもらい、次への人生へ送り出すというのは、とてもやりがいのある役なので。孟婆自身は、人を導いてあげることには長けているかもしれませんが、『自分自身は何者なんだろう』ということに関しては全く分かっていないんです。そういう両極端にあるところを、しっかり表現したいです」

――孟婆自身の物語について、意識していることは?

「割とある種、ルーティンというか。孟婆はこの場での役割として決まったことを毎話やっていくので、その中でも見ている人に飽きずに見てもらうにはどうしたらいいのか、ということは考えています。孟婆自身も、自分なりの第一歩を踏み出せるようになってくるのではないでしょうか」

――黄泉の世界という、現実とは異なる空間でお芝居をする楽しみもありそうですね。

「ファンタジー作品だからこそ、お芝居に関してトライできる現場になればいいなと考えています。日常生活や現実世界では『こうだよね』と、自分たちが無意識に持っているお芝居の感覚があると思うのですが、それにとらわれ過ぎず、この世界ならではの空気感があってもいいのかなと感じていて。みんなで自由に試しながら、作品の世界を作っていけたらいいなと思います」

――そして、孟婆は料理人でもあります。料理の準備についても教えてください。

「料理を作るというより、包丁さばきやフライパンを返す練習をしています。今、家で絶賛特訓中ですが、一向に進歩が見られなくて(笑)。時間的にもちょっと焦っています」

――第1話では、おにぎりを握る場面も登場します。

「おにぎりはもちろん握ったことがあります。でも、普段はラップの上で握ったりするので。きっと今回は素手なのかなと思ったりして」

――衣装にも、この世界ならではの工夫があるそうですね。

「衣装は本当にいろいろ試しました。シンプルなシャツを着たりもして。エプロンも既製品ではなくて、衣装さんたちがわざわざ手作りで作ってくれています。この世のものではない空間なので、既にあるものを使うよりもゼロから作る、というところはスタッフさんたちがこだわってくれました」

――原作は中国で大きな支持を集め、韓国でも出版されています。その反響の大きさは意識しますか。

「人気のレベルがちょっと想像つかないんですよね(笑)。実感が持てないくらいすごい人気なので、逆によかったです。あまりそこにとらわれすぎず、目の前にある日本語に訳してもらった原作と、脚本に集中している感じです」

「十六夜膳房」中村蒼“最後の一皿”で死者に寄り添う孟婆役。35歳の今「生きているだけですごい」

――今回は、秋谷郁甫さん、渋谷凪咲さんという若い世代の俳優とも共演します。俳優として20年ほどキャリアを重ねてきた今、現場でのご自身の立ち位置について考えることはありますか。

「まだまだできることはたくさんあるし、これからどんどん変わっていくんだろうなと思うので、その姿を見られるのはとてもうれしいです。ただ、僕から積極的に『こうした方がいいよ』と言うことはありません。人それぞれですし、監督が求めているものが一番だと思うので」

――中村さんご自身は、人に相談するより、自分の中で答えを出していくタイプでしょうか。

「そうですね。僕はあまり人に相談しない性格で、結局、自分でやるしかないという考えになって、自問自答して自己解決することが多いんです」

――一方で、誰かに相談された時には?

「新しいことを挑戦するのはすごく怖いですが、もし相談されたら、背中を押してあげられるような存在でありたいです。アドバイスは、求める側がその人をどう思っているかで受け取り方が変わりますよね。同じ言葉でも、リスペクトしている人からもらうとありがたく感じる。だから、言葉というより、その人がどう存在しているかが大切なのだと思います。自然と自分もそういうふうになりたいなと感じますね」

35歳の今たどり着いた、“生きているだけですごい”という実感

「十六夜膳房」中村蒼“最後の一皿”で死者に寄り添う孟婆役。35歳の今「生きているだけですごい」

――タイトルにある「十六夜」は、満月の次の日のわずかに欠け始めた月を指します。ご自身にも「欠けているな」と感じるところは?

「欠けているところだらけですよ(笑)。できないことばかりだし。『あの人はいいな』『あの人みたいになれたらいいな』と思うことばっかりです」

――そんなご自身との向き合い方は、年齢を重ねる中で変わってきましたか。

「あれこれ考えることもありますが、『生きているだけですごいな』と感じることもあるんです。もっと大変な思いをしている人はたくさんいるし、日本だけでなく世界に目を向けると、『なんて自分は恵まれているんだろう』と実感することもある。だから、こうして35年間、元気に生きていられるのは素晴らしいことだなと思います」

――昔からそういう考え方だったわけではないんですね。

「子どもの頃は一切そういうのはなかったです。その日その日で生きていました。でも、年を重ねるごとに、自分だけじゃなくて、それ以外のさまざまな分野にも目を向けるようになって。『自分の人生という命があるだけで、なんてうれしいんだろう』と思うことが増えてきて、だんだんそういうふうに思えるようになりましたね」

――今は、誰かをうらやましく思うこともあまりないですか。

「今も誰かをうらやんだりすることはあります。でも、そこだけじゃなくて、もっと広く見て。この業界だけでなく、別の分野に目を向けると、『十分幸せだな』と思います」

――日々、思うようにいかなかった時は、どう自分と折り合いをつけていますか。

「僕はすごく悩み、『どうしよう』とどんどんドツボにはまって、負の連鎖に入っていくタイプ。でも基本的には堕落した人間なので(笑)、毎朝起きて仕事場に行っているだけで、『なんて自分は偉いんだ』と思ってあげるようにして。そうやってハードルを下げて、自分を褒めています。あまり多くを望みすぎず、帰る家があって、毎日ご飯が食べられる。その幸せをもっと感じられたら、今の自分の人生を肯定してあげられるんじゃないかなと思います」

「十六夜膳房」中村蒼“最後の一皿”で死者に寄り添う孟婆役。35歳の今「生きているだけですごい」

――本作では“人生で忘れられない一皿”も大切なモチーフです。中村さんにとって、忘れられない食事は?

「最後に食べたい“最後の晩餐”的なものはまだ分からなくて。『何だろうな、迷うな』という感じですが、忘れられない食事は何だったかなと考えて思い出したのは、僕が小学2年生の時くらいに、おばあちゃんの家に泊まっていた時のことです。なぜか明け方の4時ぐらいに空腹で目が覚めて。本当に『何か食べなきゃ死ぬ』っていうくらいおなかがすいて目が覚めたんです(笑)」

――相当おなかがすいていたんですね(笑)。

「その時、おばあちゃんはすごく早起きだったので、もう台所にいて。僕が食べ物を求めた時に出してくれたのが、シンプルなおにぎりとおみそ汁。めっちゃおいしかった記憶があります。それまで、あんなにおなかがすいて起きたこともなかったし、そういう思い出も込みで忘れられないですね」

――最後に、作品を楽しみにしている方へ。一日の終わりに「十六夜膳房」を見る視聴者に、どんな気持ちで眠りについてほしいですか。

「僕は結構、『一寸先は分からない』と定期的に感じることがあるんです。朝、無事に目が覚めてよかったなと思う時もあるし、一日を終えて『今日も普通に家に戻って来られてよかったな』と思うこともあります。今回は、亡くなってしまった人から“生きることの大切さ”を学ぶ部分があります。生きていれば後悔もあるし、間違った選択をする時もある。でも、『それでもいいんだ』と、自分の人生を肯定させてもらえるような物語になっています。そういう穏やかな気持ちで眠りについて、次に目覚めて、また一日頑張ってもらえたらうれしいです」

 本作の原作者は、中国・上海出身の毛無(マオ・ウー)氏。医学部在学中にICUで多くの命の最期に立ち会った経験をもとに「十六夜膳房」を執筆し、連載版は累計閲覧数1億回、読者数600万人を突破。中国、韓国で出版され、来日後は日本テレビに入社し、「月曜から夜ふかし」などの制作にも携わっている。

 そんな毛無氏も、取材の場で中村について「私が想像した孟婆より孟婆らしい」と太鼓判。中村がどんな孟婆を形作り、“最後の一皿”とともに死者たちの人生に寄り添っていくのか、放送が楽しみだ。

【プロフィール】
中村蒼(なかむら あおい)
1991年3月4日生まれ。福岡県出身。2006年、主演舞台『田園に死す』にて俳優デビュー後、多くのドラマ、映画、舞台に出演。映画『開戦前夜』が全国で大ヒット上映中のほか、Netflixシリーズ『SとX』が配信中。

【番組情報】
ドラマDEEP「十六夜膳房(いざよいぜんぼう)」

日本テレビ系
10月12日スタート
月曜 深夜0:24~0:54

取材・文/斉藤和美

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