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「『ばけばけ』で良かった」髙石あかり、トキと重なった1年「扉が開いたら、キャストが全員いた」2026/03/23 10:15

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「『ばけばけ』で良かった」髙石あかり、トキと重なった1年「扉が開いたら、キャストが全員いた」

 NHK総合ほかで放送中の連続テレビ小説「ばけばけ」(月~土曜午前8:00ほか)。3月23日からいよいよ最終週を迎える本作で、ヒロイン・松野トキを演じる髙石あかりにインタビュー。

 「連続テレビ小説」第113作となる同作は、脚本・ふじきみつ彦氏が小泉セツとその夫・八雲(ラフカディオ・ハーン)をモデルに描く物語。西洋化で急速に時代が移り変わる明治の日本を舞台に、松江の没落士族の娘・トキと、縁あって松江で英語を教えることになった英語教師のレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)が出会い、文化や言葉の壁を越えて愛を育んでいく。「怪談」を愛し、何げない日常を歩んでいく夫婦の物語だ。

 松野家の一人娘として育ち、幼い頃から怪談に魅せられてきたトキ。異国から来た英語教師・ヘブンとの出会いをきっかけに、その人生は大きく動き出していく。約1年に及ぶ撮影を終えた今、彼女がまず口にしたのは「ばけばけで良かった」という言葉だった。朝ドラという特別な現場で感じたこと、トキという人物が自分と重なっていく感覚、共演者との関係、そして役者としての変化。作品と共に歩んだ1年の思いを聞いた。

朝ドラヒロインとして過ごした特別な1

「『ばけばけ』で良かった」髙石あかり、トキと重なった1年「扉が開いたら、キャストが全員いた」

──1年間の撮影を終えた、率直な感想を聞かせてください。

「まず一番に出てくるのは、『ばけばけ』で良かったな、という思いです。『ばけばけ』だったからこそ、楽しかったと言えるんだろうなと思いますし、スタッフの皆さん、キャストの方々、この題材、物語、脚本、全部が私にとって完璧だったと言えるような作品で。夢だった朝ドラのヒロインをやれたことが、奇跡だなと感じています」

──それだけ現場に恵まれていたということでしょうか。

「人と人との仕事ですし、生活でもあるので交わらないこともたくさんあると思っていたんですが、『ない』ということもあるんだという気付きがあって。それって全員が全員のことを尊敬し合えているからなんだろうなって思いました。そういう現場で1年間携わらせてもらえたのは、本当に貴重な経験でした」

──この1年間で、役者として一番変わったと感じることは何でしょう。

「セリフ覚えが相当早くなりました。これだけは確実に変わったなと思います。朝ドラはほぼ毎日撮影ですし、一言一句、前日に覚えるしかないんだなと感じました。これが朝ドラの洗礼かなって」

──具体的にどれくらい早くなりましたか。

「200倍くらい早いと思います(笑)。火曜日から金曜日のシーンをまとめて確認するリハーサルがあるんですが、本読みだけだと思って台本を持って臨んだら、しっかり動きもつけたリハーサルだったことがあって。その場で必死に覚えたこともありました。それくらい鍛えられました」

──クランクアップの瞬間を教えてください。

「最後のシーンを撮り終わった後に『少し待っていてください』と言われて。スタッフの皆さんが待ってくださっているのかなと思っていたら、扉が開いて、これまで『ばけばけ』に関わってくださったキャストの方々がたくさん来られていて。クランクアップのためにわざわざ……大阪なのに、来てくださったんです」

──それは驚きますね。その時の心境は?

「こんなに幸せなことがあっていいのかなというぐらい、皆さんの表情が温かくて。隣にはトミーさんがいて、この2人を見て拍手を送ってくださっていました。やり遂げたというよりは、信じられない光景を目にしているような感覚で、まだ状況がつかめていないというか……。終わったんだという実感よりも、ふわふわした気持ちでした」

──その場で泣きましたか?

「はい、すぐ(笑)」

──ご家族や周囲の反応はいかがでしたか。

「母はその時大阪に来ていたんですが、帰ったタイミングで、私より泣いていて……。朝ドラのヒロイン発表の時も、終わった後に電話したら母が泣いていて、いろんなことを思い返しました。それから、クランクアップの時にスタッフの皆さんやキャストの方々から、手作りのプレゼントをいただいたんです。顔写真のチェキにメッセージを書いてくださっていて、白枠にびっしり文字が書かれていて……私の一生の宝物です」

──大阪での1年間、生活面での変化も大きかったのでは?

「自炊が習慣になりました。作品に入る前から料理はしていたんですが、どこか自分の中でハードルがあって。でもこの1年は絶対に健康でいなければいけないというのが一番の任務だったので、食事だけはちゃんとしようと思って。夜は自炊をして、お弁当を作ったり、土日はご飯を作って軽く運動をしたりしていました。今もその習慣は続いています」

共演者と現場から見えた「ばけばけ」の世界

「『ばけばけ』で良かった」髙石あかり、トキと重なった1年「扉が開いたら、キャストが全員いた」

──第23週で吉沢亮さん演じる錦織友一が亡くなりました。役作りのために約1か月で約13kg減量されたと聞きます。久しぶりに顔を合わせた時の印象を聞かせてください。

「減量するとは聞いていましたが、お会いした時、以前とあまりにも見た目が違っていて。1か月で約13kgという数字だけではなく、役の体に自分を合わせるというのは相当なことで、本当に大変だったと思いますし。でも現場では『全然大丈夫です』と言っていて、絶対大丈夫じゃないはずなのに。その強さと役への熱量を直に感じるだけでも、役者として得られるものは計り知れなかったです」

──ヘブン役のトミーさんはどんな存在でしたか。

「トミーさんはとても自由で、でも周りの方をよく見ていて優しくて。その優しさがヘブンというキャラクターに出ているし、チャーミングな部分がヘブンという人物にあふれていると思っていて。トミーさんだったからこそ、ヘブンがあんなに魅力的でかわいらしくて、でも怒ると怖くて、いろんな意味と説得力を持たせていたんだなと思います」

──髙石さん自身、トミーさんから刺激を受けた部分は?

「私は、自分の凝り固まった何かを和らげていきたい、こうでなきゃっていうことを外していきたいって思うタイプで。トミーさんはそれが全部外れているような方なんです。セリフもセリフではなく、生きているからこそ出るもので。大きな学びでした」

──1年間共に歩んで、トミーさんとの関係はどう深まりましたか。

「最初から1年間やっていけるんだろうなという気が合う感覚があって、それはずっと変わらなくて。ただ、どんどんお互いの支えになっている実感はありました。トキがヘブンに対して、守りたいとか支えたいと思う気持ちに近い部分を、私もどんどん積み重ねていった気がします。お芝居を通して相手の心を知っていくからだろうなと思いました」

──長男の出産シーンが、ご自身の誕生日の撮影だったそうですね。

「朝ドラの出産シーンをいくつか見て、私もやりたいなと思っていたので、まさかかなうとは思いませんでした。物語としてですが(笑)、それがまさか自分の誕生日とは。最高のプレゼントをいただいたような気持ちでした。アクションの声が掛かった瞬間に力みや声が勝手に出てきて、自分でも予測不可能で。力が入ったり、それを抑制しようとする体の動きがあったり、いろんなものを経験させていただきました」

──勘太役の子役との撮影はいかがでしたか。

「面白かったです(笑)。本番中にどこかへ行ってしまうので、『勘太ー』っていろんなところから叫び声が聞こえてくるんです(笑)。刺激的な撮影でした。母の役もやってみたかったので、それが『ばけばけ』でかなえられたのも喜びでした。自分の中に母性に近いものがあるんじゃないかなとずっと思っていて、それが子どもに対して出たらいいなと思っていたんですが、実際にどう映っているかは、ぜひ見ていただいた方に判断してもらえたらうれしいです」

──前半では、貧しさの中でも力強く生きる女性たちの姿が印象的でした。あの時代の女性の生き方や、トキ自身の姿をどう見ていましたか。

「私が『ばけばけ』を好きな理由の一つは、今の人たちにとっても決して無縁じゃない日常が描かれているところなんです。貧しさだけじゃなく、心が寂しかったり、満たされなかったりする感情って、きっとどの時代にもあるもので。そういう人たちが不器用でも一生懸命に生きていく姿が、この作品の一番の魅力で。時代が変わって裕福になっても、人が抱える寂しさや楽しさは変わらない。そういう部分が見ている方にも届いているのかなと感じています」

トキという役が教えてくれたこと

──撮影前には、脚本のふじきみつ彦さんから「髙石あかりさんのままでやってください」と言われたそうですね。その言葉をどう受け止めましたか。

「私って何だろうと思いながら現場に立ったんですが、気付いたら自然と、自分でありながらトキという人格が立ち上がってくるような感覚があって。それからはセリフや行動にも全く違和感がなく、ずっと演じ続けられていたように思います」

──これまでの役作りとは、明らかに違う感覚だったんですね。

「私はいつも、まず役を作ってから、その役として生きるというやり方だったので、そこに自分の感情が引っかかったり重なったりすることは今までありませんでした。でもトキが自分と近しいところを持っていたからこそ、初めての経験で。より素直でリアルに近い何かが出ていたと感じます。それを別の作品でもやるかは分かりませんが、だからこそ特別になるし、トキというキャラクターで得られた感情が湧く瞬間や瞬発力は、これからのお芝居にも絶対につなげていきたいです」

──トキと自分が重なると感じた、最初の瞬間を教えてください。

「傳さん(堤真一)が雨清水の機織り工場で、トキに『私の子どもではないぞ』と告げるシーンがあって。その時にトキが『知っちょります』って一言返すんですが、その言葉の選び方にある強さと優しさがすごく印象的で。私だったらこう言うなと思ったら、まさに『知っちょります』って書いてあって、なんだか自分と重なる気がしました」

──その感覚は、撮影が進むにつれてどう変わっていきましたか。

「途中からは、トキと自分が重なるという感覚はなくなりました。なじんだのか、トキというキャラクターが自分の中で出来上がったからなのか分からないですが、後半は何も考えずに現場に臨んでいました。すると自然とトキが湧いてくるような感覚があって、それに従ってお芝居をしていました。大切なクライマックスのシーンはテストもほとんどせず、すぐ本番という形で。その時に出たものは、コントロールしているようで、していない。トキそのものだったかもしれません」

──役と自分のあいだに、どう線を引いていたのでしょうか。

「スタッフの皆さんが、現場に入る前の空間で一人になれる場所を作ってくださっていたので、そのおかげでいい意味で役と自分の線を引けていた気がします」

──それでも、トキに持っていかれそうになった瞬間はありましたか。

「第18週でトキが傷を負って、『ラシャメン』だと言われる週は、1週間ずっと毎朝泣くところからスタートして撮影していて。本番やリハーサルでも何かがあふれてしまって、『トキ待って、落ち着いて』という感覚でした。あの週は特にそういう瞬間が多かったです」

──撮影を終えた今も、日常にトキが出てくることは?

「それはないです。カットがかかったらもう自分に戻っている感覚がありました。出てくるとしたら方言くらいです。『なして』をすごく言っちゃうとか(笑)」

怪談と「思ひ出の記」が導く最終週

「『ばけばけ』で良かった」髙石あかり、トキと重なった1年「扉が開いたら、キャストが全員いた」

──最終週には、セツさんが書いた「思ひ出の記」が重要な役割を果たします。どんな思いで向き合いましたか。

「どうやって小泉セツさんが『思ひ出の記』を書かれたんだろう、どんな思いで言葉を綴っていったんだろうと、本を読みながらずっと考えていて。最初はトキにとって、その本を書くことはきっとつらいものだったはず。でも書いていく中で、恨めしかったものが素晴らしいものへと変わっていく瞬間があって。『思ひ出の記』を通して、家族を通して、トキが何かに気付く。そのきっかけになったのがこの本だったから、トキにとってかけがえのないものになったんじゃないかなと思いました」

──怪談を語るシーンも、最終週に再び登場しますね。2度目ならではの意識はありましたか。

「1回目はとても緊張して、でもとても楽しかったです。今回は前回とはまた違った、より深くなったものをお見せできたらいいなと思いました。トキは怪談を話している時、本当に生き生きとしていて、そういうものに触れている時のキラキラを見せられたら一番だなと思ったので、とにかく楽しもうという気持ちで臨みました」

──怪談といえば、撮影中に忘れられない場面があったとか。

「耳なし芳一のシーンで、ヘブンが本当に芳一のように般若心経を顔に書きつづっていて。それを生で目にできたのは、とても貴重な経験でした。あのシーンは映像では、あまりはっきり映っていないと思うんですが、しっかり光の当たった状態で間近に見られて。結構怖かったのですが、でもすごく面白い時間でした」

──「ばけばけ」を経て、これからどんな女優でありたいですか。

「驚いてもらえたらうれしいです。どう驚くのかは分からないですし、驚かせようと思っているわけでもないんですが(笑)。トキというイメージが変わるような作品にもきっと出ていくと思うので、そうなった時に『トキだって気付かなかった』とか、『あ、トキだったんだ』って感じてもらえたらうれしいです」

──最後に、最終週を楽しみにしている視聴者の皆さんへメッセージをお願いします。

「ここまで長い間見ていただき、本当にありがとうございます。こんなにも愛していただけて感謝しています。これからようやく、モデルである小泉八雲さんがつづられた怪談が登場しましたが、それが2人にとってどんな形になるのか、ぜひ最後まで見届けていただけたらうれしいです。いつか訪れるその時間を、リアルタイムで見守ってください」

【プロフィール】

「『ばけばけ』で良かった」髙石あかり、トキと重なった1年「扉が開いたら、キャストが全員いた」


髙石あかり(たかいし あかり)

2002年12月19日生まれ。宮崎県出身。2019年より本格的に俳優活動をスタート。主な出演作はドラマ、「わたしの一番最悪なともだち」(23年/NHK総合)、「アポロの歌」(MBS・TBS系)、「御上先生」(TBS系)、Netflixシリーズ「グラスハート」(ともに25年)など。映画では「ベイビーわるきゅーれ」シリーズ(21年~)、「遺書、公開。」、「夏の砂の上」(ともに25年)、「禍禍女」(26年)など。

【番組情報】
連続テレビ小説「ばけばけ」
NHK総合
月~土曜 午前8:00~8:15 ※土曜は1週間の振り返り
NHK BS・NHK BSプレミアム4K
月~金曜 午前7:30~7:45

取材・文/斉藤和美

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