Feature 特集

これぞ英国ミステリーの真髄。名作の系譜を継ぐ「ヴェラ~信念の女警部~」が描き出す至高の人間ドラマ2026/03/19 12:00

これぞ英国ミステリーの真髄。名作の系譜を継ぐ「ヴェラ~信念の女警部~」が描き出す至高の人間ドラマ

 やっぱりイギリスのドラマといえばミステリーだよね! という海外ドラマファンも少なくないだろう。なにしろアーサー・コナン・ドイルにアガサ・クリスティなど、数々の世界的なミステリー作家を生み出してきたお国柄である。テレビドラマの世界でも、古くは「名探偵ポワロ」、「第一容疑者」に「シャーロック・ホームズの冒険」。近年だと「SHERLOCK/シャーロック」や「刑事ジョン・ルーサー」、「ブロードチャーチ ~殺意の町~」など、ここ日本でも高い人気を誇る名作シリーズが多い。そんなミステリードラマの本場イギリスで2011年に放送が始まり、実に14年間もの長きにわたって愛され続けてきた人気シリーズ「ヴェラ~信念の女警部~」。そのシーズン11が、BS11で3月22日より放送される(毎週日曜午前9:59~10:55)。

 頑固でタフで情に厚いベテラン女性警部ヴェラ・スタンホープとその捜査チームが、イギリスの風光明媚(めいび)な地方都市とその近郊で起きる殺人事件の真相へと迫っていく。原作は日本でも翻訳出版されている、アン・クリーヴスの人気小説シリーズ。派手なアクションやカーチェイスがあるわけでもなく、華やかな美男美女のスターが出てくるわけでもない。あくまでも複雑に入り組んだ謎解きの面白さと、一筋縄ではいかない人間ドラマの奥深さで視聴者を魅了する本格派ミステリー。そんな本作の見どころを、番組初心者でも分かりやすいよう解説してみたい。

厳しさと優しさを兼ね備えた人間臭い鬼警部ヴェラ

これぞ英国ミステリーの真髄。名作の系譜を継ぐ「ヴェラ~信念の女警部~」が描き出す至高の人間ドラマ

 なんといっても最大の見どころは、主人公ヴェラ警部という唯一無二のキャラクターである。見た目はごく普通の中年女性。おしゃれにはまるで無頓着で、いつも同じような色合いの地味なコートを着て、よれよれの帽子を被っている。愛車は無骨でヘビーな古いランドローバー。性格も決して人当たりが良いとは言えない。寝ても覚めても事件のことばかりの仕事人間で、部下に対する態度もかなり辛辣(しんらつ)なたたき上げの鬼警部。近頃はだいぶ丸くなったものの、以前は自分の指示に従わない生意気な新人をこらしめたり、捜査が行き詰まると腹立ちまぎれに部下へ八つ当たりしたりと、それってパワハラじゃありませんか!? と言いたくなる理不尽な言動も多かった。

 それでもなお部下たちが彼女を慕ってついていくのは、事件解決のためにチームを引っ張っていく優れた指導力と決して諦めない執念、そして被害者や遺族の無念を晴らすためにも真実を明らかにせねばという強い信念があるからこそ。部下の抱える悩みや問題も気にかけているし、彼らの手柄や功績だって正当に評価する。被害者家族への気配りや思いやりも忘れない。公明正大で情に厚いリーダーでもあるのだ。そんなヴェラ警部を演じるのは、マイク・リー監督の名作映画「秘密と嘘」(1996年)で「第49回カンヌ国際映画祭」の女優賞を獲得し、「第69回アカデミー賞」(97年)主演女優賞にもノミネートされた名女優ブレンダ・ブレシンだ。職場ではビシバシと陣頭指揮を執ってチームを率いるが、しかし仕事以外での人付き合いはあまり得意でなく、自宅で一人しっぽりと酒を飲むのが好き。誰にも忖度せずズケズケとモノを言い、裏表の全くない正直な人間だが、しかし複雑な生い立ちもあって自分のことはあまり語りたがらない。失敗や判断ミスもしばしば。この実に泥臭くて人間臭いヴェラという中年女性を、どこまでも自然体に演じるブレンダの説得力ある芝居こそが本作の強みと言えよう。

ありのままのイギリスを映し出すロケ地で観光旅行気分!

これぞ英国ミステリーの真髄。名作の系譜を継ぐ「ヴェラ~信念の女警部~」が描き出す至高の人間ドラマ

 また、これは英国のミステリードラマ全般に言えることでもあるが、歴史ある地方都市の美しい街並みや田舎の牧歌的な田園風景といったロケーションの魅力も見どころとして外せない。架空の地方都市を舞台にした本作のロケ地は、イングランド北東部に位置する古都ニューカッスルとその周辺。セント・ニコラス大聖堂やタイン・ブリッジなど多くの歴史的建造物に恵まれたニューカッスル市内の端正な街並みはもちろんのこと、イギリスの原風景とも呼ぶべき手つかずの自然が残ったリンディスファーン島や人口2000人弱ののどかなワークワース村など、まだあまり観光地化されていない風光明媚なロケーションが作品を彩る。まさしく「ありのままのイギリス」を垣間見られるドラマ。

 今回のシーズン11でも、最初のエピソードではタイン川の河口にある田舎町タインマウスの観光名所コリングウッド・モニュメントで遺体が発見されたり、次のエピソードでは自然豊かなノーサンバーランド国立公園(劇中ではディズリー国立公園として登場)で殺人事件が発生したりと、印象的なロケーションが各エピソードのストーリー上でも重要な役割を果たしていく。記録的な円安の影響などで気軽に海外へ出かけることが難しくなった昨今、謎解きを楽しみながら海外旅行気分まで味わえるというのは誠にうれしい。

映画ばりに見応えのあるストーリー

これぞ英国ミステリーの真髄。名作の系譜を継ぐ「ヴェラ~信念の女警部~」が描き出す至高の人間ドラマ

 細部まで緻密に計算されたストーリーからも目が離せない。どの殺人事件でも捜査が進むに従って思いがけない事実が次々と浮かび上がり、誰も予想しなかった意外すぎる事件の真相および犯人が解き明かされる。これぞまさしく英国ミステリーの真骨頂! そこかしこに伏線やミスリードをちりばめた巧みな脚本構成が、視聴者の先読みをまるで許さないのだ。しかも、謎解きだけでなく人間ドラマも充実している。

 事件の背景にある複雑な人間模様を通して貧富の格差や家族の断絶、治安の悪化など現代イギリス社会が抱える諸問題を浮き彫りにし、必ずしも善悪では割り切れない人間心理の暗い闇を深く掘り下げていく。ありきたりな日常と隣り合わせの物語だからこそ説得力がある。そのうえ、いずれのエピソードも本国では基本的に1話完結(BS11では前後編、2週で完結)なので、どのエピソードからでも存分に楽しめる。それでいて、緻密な謎解きと深い人間ドラマが映画さながらのボリューム感でじっくりと描き出されているのが醍醐味だ。

 今回のシーズン11も見応えたっぷりなエピソードばかり。最後にそのストーリーを簡単にご紹介しよう。

エピソード1「過去のある男」(前編:3月22日・後編:3月29日放送)

これぞ英国ミステリーの真髄。名作の系譜を継ぐ「ヴェラ~信念の女警部~」が描き出す至高の人間ドラマ

とある裁判で被告人に不利な証言をするはずだった目撃者の男性が撲殺され、おのずと被告人およびその関係者に疑惑の目が向けられるものの、やがて殺された男性にも後ろめたい秘密のあったことが判明し、ヴェラ・スタンホープ(ブレンダ)たちの捜査も混迷を極めていく。

エピソード2「埋まらぬ溝」(前編:4月5日・後編:4月12日放送)

これぞ英国ミステリーの真髄。名作の系譜を継ぐ「ヴェラ~信念の女警部~」が描き出す至高の人間ドラマ

地元の国立公園で発見された女性の遺体。被害者の名前と職業は判明するのだが、しかし今の職に就くまでの過去や私生活は不明。そのため捜査もなかなか進展しない。一方で、死体の第一発見者と公園管理人の振る舞いに、ヴェラは言いようのない疑念を抱く。

エピソード3「消えた少年」(前編:4月19日・後編:4月26日放送)

これぞ英国ミステリーの真髄。名作の系譜を継ぐ「ヴェラ~信念の女警部~」が描き出す至高の人間ドラマ

運送会社を装ったコンテナ車が港に着いた荷物を積んで発進し、現場監督をひいて逃げるという事件が発生。やがて事件の直前に現場監督の息子が誘拐されていたことが判明し、警察は犯罪組織の絡んだ強盗事件とにらむのだが?

■エピソード4「家族の秘密」(前編:5月3日・後編:5月10日放送)

これぞ英国ミステリーの真髄。名作の系譜を継ぐ「ヴェラ~信念の女警部~」が描き出す至高の人間ドラマ

評判の良い女性教師の遺体が崖下で見つかり、検視の結果から他殺説が浮上。女性教師に恨みを持つ生徒の保護者が最初に疑われたものの、しかしヴェラは家庭内の不和を抱えた被害者遺族の複雑な事情に目を向けていく。

エピソード5「裏切りの代償」(前編:5月17日・後編:5月24日放送)

これぞ英国ミステリーの真髄。名作の系譜を継ぐ「ヴェラ~信念の女警部~」が描き出す至高の人間ドラマ

放火された車の中から女性医師の焼死体が発見される。遺族の話によると、前日の晩に急患で呼び出されたというが、しかし病院の記録ではそのような事実はなし。果たして、彼女はどこへ行っていたのか?

■エピソード6「すれ違う愛」(前編:5月31日・後編:6月7日放送)

これぞ英国ミステリーの真髄。名作の系譜を継ぐ「ヴェラ~信念の女警部~」が描き出す至高の人間ドラマ

地元企業に勤めるキャリア女性の遺体が海岸へ打ち上げられる。どうやら彼女は深夜に誰もいない職場へ戻り、そこで強盗と鉢合わせしたようだった。警察は以前より窃盗犯の疑いをかけられている従業員をマークするのだが……?

【番組情報】
ヨーロッパミステリー「ヴェラ~信念の女警部~シーズン11」

BS11
3月22日スタート
日曜 午前9:59〜10:55
※TVerで見逃し配信

文/なかざわひでゆき

U-NEXT

この記事をシェアする

U-NEXT

Copyright © TV Guide. All rights reserved.