「大きな夢が、目の前に突如現れた」大河ドラマ「豊臣兄弟!」仲野太賀が王道の時代劇に奮闘中!2026/01/01 10:00

NHK総合ほかで2026年1月4日スタートする、仲野太賀が主演を務める大河ドラマ第65作「豊臣兄弟!」(日曜午後8:00ほか)で描かれるのは、戦国時代のど真ん中。強い絆で天下統一という偉業を成し遂げた豊臣兄弟の軌跡、夢と希望の下剋上サクセスストーリーだ。
主人公は豊臣秀長(仲野)。天下人・豊臣秀吉(池松壮亮)の弟であり、天下一の補佐役として知られる。「もし秀長が長生きしていれば豊臣家の天下は安泰だった」とまで言われる人物の視点から、戦国という時代をダイナミックに描く波瀾(はらん)万丈のエンターテインメントとなっている。脚本を手がけるのは、連続テレビ小説「おちょやん」(20年/NHK総合ほか)や「半沢直樹」(13年、20年/TBS系)「下町ロケット」(15年/TBS系)、「家政夫のミタゾノ」シリーズ(16年~/テレビ朝日系)などで知られる八津弘幸さんだ。
撮影開始から半年が経過した現在、仲野はどのように秀長(小一郎)という人物と向き合い、どんな感覚でこの現場に立っているのか。主演オファーを受けた瞬間の心境、座長としての在り方、仲野なりにとらえた「秀長という人間像」、そして共演者たちとの絆まで、その現在地を聞いた。
片隅に追いやっていた夢が、突如として目の前に

「豊臣兄弟!」の主演オファーを受けた時、まず頭に浮かんだのは、これまで大河ドラマの現場で見てきた“先輩たちの背中”だったという。
「これまで大河ドラマに出させてもらう中で、その都度、作品の真ん中に立っている先輩方の背中を見てきました。やっぱり皆さん本当にかっこよくて。いつか自分も、大河ドラマの主役をやってみたいという憧れは、俳優を始めた頃からずっとありました」
一方で、その夢を現実として考えるようになってからは、別の感情も芽生えていった。
「いざ、この業界に入り、いろんな作品を経験する中で、その夢がどれだけ遠いものなのかを痛感するようになって。気付いた時には、そういう大きな夢も、頭の片隅に追いやっていた自分がいたと思います」
そんな中で届いた「豊臣兄弟!」主演の依頼は、想像していた夢のかない方とはまったく違う形だった。
「本当に驚きました。片隅にあった大きな夢が、突如目の前に現れたような感覚で。“こんなことってあるんだ”と正直思いましたね」
ただ、その出来事を「運」や「導き」として受け止めるのではなく、仲野はもっと現実的に、その瞬間を捉えていた。
「特別に何かに導かれたというよりも、これまでやってきたこと全部が、ちゃんとつながっていたんだな、という感覚の方が強かったです。そう思えた瞬間に、今までお世話になった人たちの顔が、自然とたくさん浮かびました」
大河ドラマ主演と聞けば、座長としての立ち居振る舞いも自然と注目される。仲野自身もオファーを受けた当初は、その立場について考えたという。
「オファーをいただいた時は、『自分は座長として、どう現場に立つんだろう』ということも考えました。でも、いざクランクインしてみたら、“ありのままの自分”過ぎて(笑)。これはもう、自分らしくいくしかないな、と思って撮影が始まりました」
仲野が選んだ自分らしさは、前に出て引っ張ることではなく、現場の空気を整えることだった。
「現場が明るく、楽しく、和やかな雰囲気であることが一番大事だと思っていて。たくさんのスタッフさんとキャストがいて、若い方もいれば、ベテランの方もいる。大河ドラマの現場って、それだけで緊張感のある場所でもあるので、少しでも皆さんがリラックスして、のびのびと芝居ができる空気が作れたらいいなと思っています」
その結果、無理に主演らしくあろうとすることはなくなった。
「“主演として頑張らなきゃ”というよりも、現場の空気をみんなで作っている感じですね。織田信長を演じている小栗旬さんもそうですし、いろんな方が雰囲気を作ってくださる。殿(信長)がいれば殿の空気になる、というか。全体で現場の空気を作っていく中で、とても自然に、自分自身も小一郎ムーブになっているなと感じています」
「百人に一人」ではなく「九十九人」側にいる人

そうして役と向き合う中で、仲野が強くひかれているのが、小一郎(のちの豊臣秀長)という人物の内面だ。
「台本での小一郎は、農民時代に村を襲われたり、大切な人を失ったり、そういう痛みを知っている人なんです。だからこそ、侍になってからも、争いや流血をできるだけ避けて、みんなが笑って生きられる世を作りたい。その願いが、彼の真ん中にしっかりあります。今の時代や世界を見渡しても、争いはなかなかなくならない。『もし小一郎みたいなリーダーがいてくれたら、もっと平和な世になるのかな』と、そんなことを想像したりしますね」
豊臣秀長と聞くと、多くの人が“名補佐役”“名参謀”という言葉を思い浮かべる。しかし仲野が捉えている秀長像は、そこから一歩踏み込んだものだ。
「信長とか秀吉(池松)とか徳川家康(松下洸平)みたいな人物って、百人に一人というか、本当のカリスマだと思うんです。でも秀長は、どちらかというと“残り九十九人”側にいる人なんじゃないか、という感覚があって。上へ上へと駆け上がっていく兄のすぐそばで、秀吉を支えながらも、秀長だからこそ見えていた景色があるんじゃないかなと思うんです。秀吉と、それに付いていく家臣や市井の人たちの“間”に立っていた存在。それが秀長なんじゃないかと」
秀長という人物を考える上で、仲野の印象に強く残っている場所がある。奈良の壷阪寺だ。
「壷阪寺には、秀長の公像が残されているんですけど、それが作られた時期が、大坂夏の陣のあとなのではないかと言われているんです。でも秀長が亡くなったのは、それよりずっと前なんです」
つまり、その像は、豊臣の世が終わり、徳川の時代に入ってから作られた可能性が高い。
「それって、誰かが“残したい”と思ったからこそ作られたと思うんです。豊臣政権が終わったあとにも、そうやって形として残されたという事実は、秀長の人間性を推測する上で、すごく大きなヒントになるなと感じました」
秀長の若き日、小一郎時代については、史料が多く残されているわけではない。その空白をどう埋めるかは、俳優に委ねられている部分でもある。
「どうしても“兄を支え、一歩下がった名補佐役”というイメージが先に立ってしまうんですけど、役作りの段階で“この役はこういうことはしない”と制限をかけていくと、役としてどんどん小さくなってしまう気がして」
仲野が意識したのは、“生命力”だった。
「農民として生きる生活は貧しくて、階級の差もありますが、そういう中でも、小一郎の中には、脈々と生きるためのエネルギーがあると思っていて。小一郎は、自分の息苦しさとか、“なんでこんなにうまくいかないんだろう”っていう思いをずっと抱えている。でも、本来は家族と一緒に農民として田んぼを耕して、自給自足で暮らしていくことが、ある種の幸福だったと思うんです」
しかし、戦国の世はそれを許さない。
「畑を野盗に襲われるなど、理不尽なことが次々と起こる。ただ平和に暮らしたかっただけなのに、そうはいかない。そこから込み上げてくる、“幸せになりたい”“自分らしく生きたい”というエネルギーが、小一郎の原動力なんだと思っています。ただ受け身になるのではなく、しっかり物語を推進していくパワーを持った存在として、小一郎を描けたらいいなと考えながら演じています」
池松壮亮と語り合う「豊臣兄弟」の意味

撮影はすでに半年を超えた。約1年半に及ぶ長丁場の中で、仲野自身の感覚にも変化が生まれている。
「最初は、肩をぶん回して走っているような感覚だったんですけど。途中で肩を痛めて(笑)。いまは休憩しながら、ゆっくり走っている感じというか。これは短距離走じゃなくて、完全にマラソンだなって」
力を入れ続けることよりも、続けていくことの大切さに気付いた。
「長く撮影を続けていくには、リラックスしながらやることが一番なんだなと、今は思っています。大河ドラマの撮影は、土日が休みで、月曜日がリハーサル、火曜日から金曜日が撮影、というリズムがしっかりしているので、自分のペースもつかみやすい。“力むことがすべてじゃない”っていうのは、この現場で得た大きな学びですね」
小一郎と藤吉郎(のちの秀吉)。「豊臣兄弟!」というタイトルが示す通り、この物語の核にあるのは、2人の関係性だ。藤吉郎を演じる池松とは、撮影現場の外でも頻繁に言葉を交わしているという。
「池松さんとは、作品についてもいろんな意見を交わしてます。現代の人に戦国時代の物語を伝えるには何をすべきなのか、豊臣兄弟だからこそ表現できることは何なのか、秀長とはどういう存在なのか。共に頭を巡らせながら話すことで、見えてくることがたくさんありますね」
秀吉を主人公にした物語は、これまでも数多く描かれてきた。だからこそ、視点を変えることに意味があると仲野は感じている。
「秀吉が主人公の作品って、本当にたくさんあると思うんですが、今回は、ナンバー2である秀長が主役。そこが、僕自身もそうですけど、すごく共感性が高いポイントなんじゃないかなと思っています」
トップに立つ者ではなく、その一歩後ろに立つ者の物語。それは現代を生きる多くの人の感覚とも重なる。
「たくさんの人に見てもらえる兄弟の話であり、それでいて、ちゃんとエンタメとして熱を持っている作品にしたい。兄弟の体温が、きちんと伝わるような物語にしたいね、という話をよくしています」

長期間の撮影の中では、思うようにいかない瞬間や、立ち止まる時間も少なくない。そんなとき、仲野と池松が話すのは、芝居の細部だけではない。
「撮影をしていると、いろんな困難や課題が出てきます。でもそれは、物語の中か外かを問わず、『いかにこの物語を人に届くものにするか』という一点に集約されている気がしていて。みんなが笑って撮影できるには、どうしたらいいのか。どういう空気でこの作品を作っていくのが一番良いのか。そういうことを、池松さんと相談しながら、日々過ごしています」
池松の存在は、仲野にとって大きな支えでもある。
「池松さんは、現場の空気をすごく和やかにしてくれる人なんです。秀吉という役柄とも重なるんですけど、明るくて、前向きで。その存在に助けられている部分は、本当に大きいです。物語の中でも、現場でも、本当に兄弟みたいに、課題に対してどうやったら、より良いものができるのかを考えながら撮影しています」
小栗旬、白石聖、そして家族を演じる女性たち

「豊臣兄弟!」には、戦国時代を象徴する武将たちが次々と登場する。その中でも、信長を演じる小栗の存在感は、現場でも際立っているという。
「われわれ世代の俳優で小栗さんに影響を受けなかった人はいないと思います。誰もが知る存在だと思うんですけど、すごく親身に寄り添ってくださる方なんですよね。小栗さんは、挑戦を止めない人。一切手を抜かないし、誰よりも自分に対して厳しい。すごくストイックなんです」
その姿は、若い世代にとって大きな指針になっている。
「この役を引き受けた時点で、覚悟を決めて現場に立ってくれている。その姿を見ていると、僕らにも、期待をかけてくれているんだなと感じます。小栗さんがこれまで積み重ねてきた、トップランナーとしての俳優の在り方、そのすごみが、信長という人物に本当にぴったりで、こんなにも説得力を持って信長を演じられる人は、ほかにいないんじゃないかと思うくらい。豊臣兄弟にとって、精神的な大黒柱のような存在です」
小栗とは私生活では10数年の付き合いがあるが、作品でしっかりと共演するのは今回が初めてだという。
「今このタイミングで、あらためて“小栗さんが小栗さんであるゆえん”を、すごく感じています。劇中では……言葉にするのもはばかれるぐらい、すごく圧がありますね。小一郎は、結構ひどい目にあっているので(笑)。下手なことを言ったら締められるんじゃないかと思うくらい。信長は怖い存在です」

物語序盤から描かれる、小一郎と幼なじみで初恋の人・直(白石聖)の関係も、「豊臣兄弟!」の大きな見どころの一つだ。
「小一郎は、困難が目の前に立ちはだかった時に、立ち止まってしまったり、後退してしまったりする人だと思うんです。自分の気持ちを押し殺してしまうところもある。直は、そんな小一郎の気持ちを瞬時に理解し、支えて、背中を押してくれる存在。農民から侍になって、戦国の時代に巻き込まれていく中で、直は“小一郎が小一郎らしくいられる場所”なんだと思います」
白石との共演については、強い印象が残っている。
「毎シーン、毎カット、これでもかというくらい高い集中力で現場に臨んでくださっていました。白石さん自身は雄弁なわけではないし、つつましい方なんですけど、一緒に芝居をしていると、どれだけ誠実に役と向き合っているかが、手に取るように分かるんです。伝わってくるものが本当に大きくて、何度も心を動かされました。白石さんじゃなかったら、こうはならなかっただろうな、という僕の表情が、たくさん引き出されていると思います。現場のみんなが、本当に直のことが大好きでしたし、最高に魅力的でした」

小一郎を支える存在は、直だけではない。母・なか(坂井真紀)、姉・とも(宮澤エマ)、妹・あさひ(倉沢杏菜)という、豊臣家の女性たちも重要な役割を担っている。
「物語の中でも描かれているように、家族は小一郎の一番の理解者だと思っています。貧しい農村での暮らしの中で、苦楽を共にしてきた存在ですから。坂井さん、宮澤さん、倉沢さんが、本当に家族のように現場を包んでくれていて。家族のシーンは、いつも和気あいあいとしています。皆さん俳優として本当に素晴らしい方々なので、『この家族をどう表現したら一番いいのか』を、みんなで話し合いながら撮影をしています。チームで面白いシーンを作っていこう、という空気がすごくありがたくて。皆さんと一緒に芝居をしている時間が、本当に大好きです」
王道の大河ドラマ、そして”楽しいプレッシャー”

脚本を手がける八津弘幸さんが描く「豊臣兄弟!」について、仲野は「王道」という言葉を使う。
「今回は本当に“王道の大河ドラマ”“王道の戦国もの”だと思っています。誰もが知っている有名な武将がたくさん登場して、戦国時代らしい物語が目まぐるしく展開していく。現代劇とは違って、生きるか死ぬかという極限の状態がすぐそばにある。その演技の振り幅は、戦国ならではだと思いますし、俳優としてすごく演じがいがあります。とても軽やかで、青春活劇のような要素もあって。見る人を選ばない、本当に誰が見ても楽しめるエンタメ作品になっていると思います」

戦国時代を生きる主人公を演じることへのプレッシャーについて聞くと、仲野は少し考えてから答えた。
「もちろん、プレッシャーはあったと思います。でも、僕は比較的、プレッシャーを力に変えていくタイプというか。それも“いいプレッシャー”として受け止められている感覚があります。所作や殺陣、馬の稽古も含めて、大河ならではの経験も、すごく楽しくやらせてもらっています。気付いたら乗馬が大好きになっていて。今となっては撮影の合間に乗馬練習に行くのが一番の楽しみになってます。 早く練習の成果を披露したいですね」
そうした積み重ねも含めて、今の現場を楽しんでいる。
「プレッシャーも含めて、全部が“楽しいプレッシャー”ですね」
百人に一人の英雄ではなく、九十九人の側から見た戦国の景色。仲野太賀が体現する豊臣秀長の物語は、2026年、王道の大河ドラマとして、新たな形で幕を開ける。
【プロフィール】
仲野太賀(なかの たいが)
1993年2月7日生まれ。東京都出身。2006年に俳優デビュー。07年に映画「バッテリー」に出演。以降、12年に映画「桐島、部活やめるってよ」、16年に映画「淵に立つ」など数多くの話題作に出演。24年には連続テレビ小説「虎に翼」(NHK総合ほか)や映画「笑いのカイブツ」などに出演。
【番組情報】
大河ドラマ「豊臣兄弟!」
NHK総合
1月4日スタート
日曜 午後8:00~8:45ほか
NHK BSプレミアム4K
日曜 午後0:15~1:00ほか
NHK BS・NHK BSプレミアム4K
日曜 午後6:00~6:45
※初回は15分拡大
取材・文/斉藤和美
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