「渡会(簡秀吉)が渡会だから、好き」日置(藤本洸大)の初恋が揺れる「修学旅行」第9話2025/12/20 08:00

藤本洸大と簡秀吉がダブル主演を務める、ABCテレビで放送中の連続ドラマ「修学旅行で仲良くないグループに入りました」(深夜1:00、関西ローカル)。12月13日放送の第9話「文化祭、初恋に戸惑う」では、正式に両思いとなった日置朝陽(藤本)と渡会紬嵩(簡)が、文化祭当日を迎える。思いが通じ合ったことで生まれる余裕と、同時に芽生えてしまう不安。その揺れを、甘さと切なさの両面から丁寧にすくい取った一話だった。
冒頭は、文化祭準備の延長線にある、穏やかな時間から始まる。日置の髪を整える渡会。以前にも同じように手をかけてもらったことを思い出しながら、日置はふと「あれ? ヘアオイル変えた?」と声を掛ける。一瞬だけ手を止めた渡会は、「……好きじゃない?」と、少し間を置いて聞き返す。
それに対し、日置は鏡越しに視線を合わせ、「ううん。好き」と小さく答える。その言葉に、渡会は何の照れもなく「俺も好き」と重ねる。どう考えても、ヘアオイルの話ではない。しかも場所は、クラスメートのいる教室だ。両思いになった実感が、そのまま言葉ににじみ出るような、無防備で甘いやりとりだった。
「人生で初めて、好きな人ができた」日置のモノローグには、はじけるような喜びが素直ににじんでいる。
続く“コスプレ四天王”の準備シーンでは、渡会が日置に(ネコではなく)オオカミの耳と尻尾を着けてあげることに。自分で着けておきながら、そのかわいさに耐えきれず「かわい過ぎて、無理」と視線をそらしてしまう渡会。これには守崎尚哉(桜木雅哉/原因は自分にある。)から「自分でやっといて自滅するなよ」と、あまりに的確なツッコミが飛ぶ。その通りすぎて思わず笑ってしまう場面だ。

文化祭本番。2年5組のハロウィンカフェは、“コスプレ四天王”との撮影会で大盛況を迎える。日置がバドミントン部の仲間たちとじゃれていると、渡会が当然のように会話へ割り込んでくる。「渡会って日置の何なの? 俺たちが日置と仲良いからって、嫉妬してる?」と辻谷(山田健人)から直球を投げられ、思わず図星の反応を見せる渡会。過去の日置の話を聞きたいという理由で辻谷らとSNSを交換するあたりにも、独占欲と余裕が同居しているのが愛らしい。
だがその後、日置の心は静かに揺れ始める。文化祭に遊びに来ていた中学時代の友人・池ヶ谷杏那(岩波詩織)が、渡会と親しげに話し、SNSでもつながっていたことを知ってしまったのだ。自分の知らないところで築かれている関係に、日置は感情をうまく整理できず、渡会に対してどこかぎこちない態度を取ってしまう。両思いになったからこそ生まれる、初恋ならではの不安が、日置を戸惑わせていた。
そんな日置に声を掛けたのが、守崎の兄・遼翔(三浦健人)だ。「不安があるなら、全部ぶつけてみたら?」。その言葉に背中を押され、日置は渡会と向き合う決意を固めるが、そこへ辻谷が「助けてくれ! 一生、二生のお願い!」と乱入。部活対抗の男装・女装コンテストに、急病の1年生の代役として出場してほしいという。
メイド服姿で気乗りしないままステージに立った日置は、誰の目にもかわいらしく、三天王がペンライトとうちわで全力応援する姿も印象に残る。しかし、観客席で無表情のまま見つめる渡会の姿を見つけた瞬間、日置の表情は曇る。「怒ってるのかな」「俺が女の子だったら、こんなに悩まなくてよかったのかな」。華やかな舞台の裏で、日置の思考は再び迷路に入り込んでいく。

屋上で一人ため息をつく日置の前に現れたのは、彼を探していた渡会だった。「今日、日置が元気ないように見えたから。どうしても話したくて」その一言をきっかけに、日置の中で抑えていた感情が、静かにあふれ出す。
「やばい俺……めちゃくちゃ好きかも、渡会のこと」
無自覚な本音で、渡会の心を揺さぶる日置。だが本人は、まだその気持ちを整理しきれていない。好きになるのも、好きになってもらうのも人生で初めて。「俺なんかでいいのかな」「杏奈の方がお似合いかも」「もし俺が女の子だったら」。言葉を探し、途中で詰まり、視線を落としながら、それでも必死に本音を吐き出していく。
藤本が演じる日置は、感情を爆発させるのではなく、言い切れない言葉の連なりや沈黙そのもので、迷っている最中の心を浮かび上がらせる。初恋の戸惑いを、説明ではなく芝居として成立させている点が印象的だ。
そんな日置を、渡会はそっと抱きしめる。「ごめん。不安にさせて」。杏奈と連絡を取っていた理由が、日置へのプレゼント相談だったことを明かしながら、静かに言葉を重ねる。
「もし日置が女の子だったら、今みたいな関係になってなかったかもしれない」「修学旅行で同じ班にもなれなかったかもしれない。俺は男とか女とか関係なく、日置が好きなんだなって」

簡演じる渡会は、穏やかな表情と声色で、日置の不安を一つずつほどいていく。恋愛初心者な日置を包み込む、その包容力が自然に伝わってくる。それを受けて日置も、「俺も……俺も渡会が渡会だから、好き」と真っすぐに返す。短い言葉に、もう迷いはない。
ここからは、恋人になった2人ならではの甘い時間が続く。靴擦れを気にする日置に「抱っこしようか」と言う渡会。「重いし」と断る日置に、「筋トレしてるし」と返す渡会。「俺も一応、運動部だけど」と張り合う日置。
「ちょっと割れてるでしょ」無邪気に腹筋を触らせたその瞬間、空気は一変する。フェンスに日置の腕を押しつけ、「俺にこういうことしたら、どうなるか分かった?」と低くささやく渡会。両思いになったことで生まれた渡会の余裕と色気は、派手な演出ではなく、ふとしたしぐさや視線にまで宿り、終始、目を奪われるかっこよさだった。一方で、「お手柔らかにお願いします」と戸惑う日置の反応も、この2人らしくほほ笑ましい。
ラストは、恋人つなぎで手を取り合い、駆け出す2人。足は痛いはずなのに、笑って、走って、ジャンプして。好きな人と一緒にいるだけで、世界が少しまぶしくなる。そんな青春の一瞬を切り取った締めくくりだった。
両思いになった後だからこそ生まれる戸惑いと、それでも手を取り合って進んでいく強さ。「初恋」に真正面から向き合う2人の姿を、第9話はみずみずしく描き切った。

そして、本日・12月20日いよいよ最終回・第10話が放送される。物語の舞台は、クリスマスイブ。日置(藤本)は、渡会(簡)や守崎(桜木)、仲里晴輝(福田歩汰/DXTEEN)、堀田颯斗(清水海李)ら“イケメン四天王”、さらにバドミントン部の仲間たちと教室でクリスマスパーティーを楽しんでいた。

そんな中、堀田からふと投げかけられた一言が、日置の胸に引っかかる。「渡会と付き合ってるんだろ?」日置はそこで、ある事実に気付いてしまう。互いに「好き」と気持ちは伝え合ってきたが、「付き合う」という言葉だけは、これまで一度も交わしていなかったのだ。

パーティーの帰り道、渡会に「2人で話したい」と誘われた日置は、公園でクリスマスプレゼントを受け取る。渡会の思いが伝わる贈り物に、日置は胸をいっぱいにする。そして、春休み、そしてその先の未来について語り合う中で、日置はついに、ある言葉を渡会に告げる。

「好き」のその先へ。初恋の行き着く先を描く最終話が、2人の物語にどんな答えを用意しているのか。最後まで見届けたい。

【番組情報】
ドラマ「修学旅行で仲良くないグループに入りました」
ABCテレビ(関西ローカル)
土曜 深夜1:00~1:30
※放送後、TVer・ABEMAで見逃し配信、FODで独占配信
文/斉藤和美
関連リンク
この記事をシェアする

















