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阿部サダヲ百変化? 江口のりこ“女性総理候補”誕生の背景「ふてほど」SPの裏側を磯山Pが語る2025/12/16 10:00

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阿部サダヲ百変化? 江口のりこ“女性総理候補”誕生の背景「ふてほど」SPの裏側を磯山Pが語る

 2024年1月期に放送され、大きな話題を呼んだTBS系のドラマ「不適切にもほどがある!」。昭和の体育教師・小川市郎(阿部サダヲ)が令和へタイムスリップし、いわゆる“不適切発言”を連発しながら、コンプライアンスに縛られた現代社会に一石を投じた“意識低い系タイムスリップコメディー”が、2026年1月4日にスペシャルドラマとして戻ってくる。

 タイトルは「新年早々 不適切にもほどがある! ~真面目な話、しちゃダメですか?~」(午後9:00)。連ドラ最終回で描かれた“好きな時代に行けるタイムトンネル”のその先で、市郎は娘・純子の未来を変えるため、令和のみならず過去や未来へも飛び回る。さらに今作では、日本初の女性総理誕生の話題や、“真面目な話をしづらい”今の空気にも踏み込んでいく。

 脚本は引き続き宮藤官九郎。都議会議員・平じゅん子役として江口のりこが新たに参加し、仲里依紗演じる渚が“政治”と向き合っていく姿も描かれる。笑って、考えて、そして最後には少し胸が熱くなるような一作について、磯山晶プロデューサーに話を聞いた。

――まず、今回のスペシャルドラマとして放送するに至った経緯を教えてください。

「連ドラの最終回が“続きますよ〜”という雰囲気で終わったので、放送後から自然と『続編どうしましょうか』という話題が出ていました。ありがたいことに反響も大きく、賞もいただき、関係者同士で会う機会も多かったんです。ただ、『ふてほど』はやっぱり茶の間でわいわい見てもらう作品だと思っていて、映画化ではないかなと。とはいえ、再び1クールの連ドラを作るのはスケジュール的に難しく、『では単発ドラマで』という流れになりました。TBSで単発ドラマを放送するタイミングは基本的にお正月なので、作品の雰囲気的にも合っているし、ゆるい気持ちで見てもらいたい! ということで、1月4日のスペシャルドラマに決まったんです」

阿部サダヲ百変化? 江口のりこ“女性総理候補”誕生の背景「ふてほど」SPの裏側を磯山Pが語る

――今作で“女性総理誕生の可能性”という設定が登場します。どのように生まれたのでしょうか。

「連ドラ最終回で、83歳の井上(小野武彦)が“好きな時代に行けるタイムトンネルを発見した”という場面がありますよね。そこから、行き先を限定しない物語にしようという話になりました。そうすると、未来にも気軽に行けるわけです。では未来の日本はどうなっているのか、と話していく中で、『女性総理はもう誕生しているよね』というアイデアが自然と出てきました。さらに、女性総理が誕生するような時代に、昨今のキャンセルカルチャー的な風潮が重なると、何か事件が起きた時に総理の座が一気に揺らぐような状況もあり得る。そこに市郎が一枚かむ騒動にしたら面白いのでは、と展開が膨らんでいきました」

――制作中、現実の政治が先に女性総理誕生となる可能性もあったかと思います。そのあたりはどう考えていましたか。

「『現実のほうが先になったらどうする?』という声もありましたが、最終的には『もうやってみよう』と決めました。政局が不安定になった時には『これは本当に女性総理が誕生するかもしれない』とスタッフ皆でざわつきましたが、その頃には撮影も終わっていたので、もう気にしないことにしました(笑)」

――未来を描く際には、どんな点を意識されたのでしょうか。

「未来は自由に発想できますが、どこまで現実に寄せるかの線引きが難しいんです。今の社会の延長線上に“ありそうな未来”にするのか、それとも思い切って空想的な方向へ振るのか。今回は、時事感とフィクションの面白さの両方が成り立つバランスを探りました。女性総理という設定もその一つです」

阿部サダヲ百変化? 江口のりこ“女性総理候補”誕生の背景「ふてほど」SPの裏側を磯山Pが語る

――今回のテーマでもある“真面目な話、しちゃダメですか?”は、どのように固まっていきましたか?

「このテーマは比較的早い段階で決まりました。日本の人って、真面目な議論や芯を食ったディベート、論争のようなものを避けがちなところがありますよね。人間関係に影響しそうだと感じて、自分の意見を抑えてしまう。そういう空気に対して、もっと率直に話してもいいのでは、と宮藤さんと相談していくうちに、いろいろなアイデアが混ざり合って今の形にまとまりました」

――連ドラから、市郎さんが“昔はこうだった”という切り口で、現代の“意見を言いにくい空気”に触れていました。今回もその延長線上にあるのでしょうか?

「そうですね。今回は特に、仲里依紗さん演じる渚が『どうして真面目な話を避けるの?』と最初に問いかける役割になっています。市郎の時代には、田中角栄さんや浜田幸一さんのように、思ったことをはっきり言う政治家がいましたよね。渚が求める政治家はむしろ昔の感覚に近いかも、と思える部分もあって。現代は、政治に限らず、深い話題に触れようとすると“当たり障りのない方向へ流す”という空気がある。そこへの違和感が、今回の大きなテーマになっています」

――政治という題材を扱うことで、どんな反響を期待しますか。

「特定の政策を推したいとか、政権に対して何か言いたい、という作品では全くありません。もっと気軽に『自分の国の将来について話してもいいんじゃないか』という提案に近いです。政党、政策についてどう思うか、ということではなく、ただ、感じたことをフランクに語ればいいのに、というメッセージを込めています。連ドラ第1話の“とりあえず話し合おうよ”という姿勢はそのままです」

阿部サダヲ百変化? 江口のりこ“女性総理候補”誕生の背景「ふてほど」SPの裏側を磯山Pが語る

――昭和や80年代の小ネタも健在だとか。

「はい、たくさん入っています(笑)。劇中の1987年は女子大生ブームの時代で、純子(河合優実)もちょうどその年代。ディスコに行ったり、父である市郎が“女子大生の娘を持つ父”として悩んだり。当時の空気感を盛り込んでいます。音楽ネタも多くて、“ムッチ先輩” (磯村勇斗)は連ドラ最終回で大江千里さんへ流れましたが、そこからどこへ行くのか……といった小ネタもちりばめています。楽しんでいただけると思います」

――今回、宮藤さんから脚本の方向性について途中で確認があったと伺いました。完成稿から大きく変わった部分はありましたか。

「書いていただいた部分はほとんど変更していません。純子と市郎の未来をどうするかという部分は、かなり前から一緒に考えていたこともあって、そのままです。むしろ難しかったのはその先の展開で、2036年の未来を見てきた市郎が2026年でどう行動するのか、という部分でした。ただ、台本としてはすごく楽しく読めましたし、さすがだなと思いました」

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100回以上の“着替え”阿部サダヲの奮闘

――撮影現場での阿部サダヲさんについて、特に印象に残っている点を教えてください。

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「今作では“いろんな時代の阿部さん”が登場します。トータルで100回以上着替えたと聞いています。“1年の差の市郎”は老けメークをせず、顔は変えず、服だけで年の違いを表現するというルールでした。連ドラ最終回から“運命の日”までの8年間なので、『そこまで大きく変わらないよね』という考えなんです。服を変えることで“何年の市郎か”を見せるのですが、一度に何パターンも出てくる場面もあって、本当に大変だったと思います」

――阿部さん本人は楽しんでいたのでしょうか。

「すごく楽しそうでしたよ。何秒で着替えられるかを衣装さん、メークさんとチャレンジしたり(笑)。一人で8人分踊るようなミュージカル調のシーンもあって、最後はちょっとハイになっていましたね。実際に見ていただくと、その面白さがよく分かると思います。努力が報われてほしいと願っています」

――俳優として、どんな魅力をあらためて感じましたか。

「小川市郎という人物は、時代を行き来しながら問題を起こしたり、解決したりしていきます。今回はその背負うものが増えていて、以前より強い責任感を持って演じてくださっていると感じました。無責任なおじさんというより、何とかしようとして背中で語る人。身近にいたら心強いだろうな、と思わせてくれる存在に仕上げてくださっていて、本当にありがたいです」

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――渚役・仲里依紗さんは今回、より“視聴者目線”を担う役割だとか。

「渚はテレビ局のバラエティー担当から報道局に異動し、『自分は報道に興味がなかった』と言いながらも、主婦の感覚から“こうしたほうがいいのに”という思いが芽生えていくキャラクターです。そこで平じゅん子(江口)と出会い、強く共鳴していきます。連ドラのときはサカエさん(吉田羊)が視聴者目線に近かったのですが、今回は渚がその役割を担っています」

――その平じゅん子役の江口さんは、まさに“ハマり役”という印象です。起用理由を教えてください。

「最初から“江口さんしかいない”と思っていました。宮藤さんも同意見で、平じゅん子という役を誰が演じるべきか考えた時、日本の俳優の中でも抜群にフィットする方だと感じていたんです。嘘がなさそうで、頼りがいがあって、切れ味もある。でもどこか柔らかさも漂っている。女性政治家に必要な要素すべてが、江口さんのお芝居に自然に宿っていると確信していました」

――実際の撮影で、江口さんの演技を見て、どこに魅了されましたか?

「現場では凛としていて強さが際立つのですが、演技を褒めると『本当ですか? うれしい』とパッと表情が明るくなるんです。その笑顔が本当にかわいらしくて。近寄りがたい雰囲気があると思われがちですが、実はとてもチャーミングな方なんですよね。金曜ドラマ『俺の家の話』(21年/TBS系)でも感じた魅力ですが、今回はより強い役柄なので、そのギャップがより鮮明に見えて、ますますひかれてしまいました。阿部さんとの掛け合いも抜群のテンポで、『こんな政治家がいてくれたらいいのに』と心から思いました」

女性総理が現実に誕生──ドラマとの“時差”は?

阿部サダヲ百変化? 江口のりこ“女性総理候補”誕生の背景「ふてほど」SPの裏側を磯山Pが語る

――“女性総理の誕生”が実際に起こった今、ドラマとのリンクをどのように思われますか。

「高市総理を見ても、もう“女性だから特別”という受け止め方はされていないですよね。総理大臣という立場に、性別が大きな意味を持たなくなっていると感じます。ドラマでも“女性ならでは”を前面に押し出す描き方にはしていません。むしろ、現実のほうがフィクションより一歩早く進んでしまった印象があり、『現実が追い越したな』という気持ちもあります。宮藤さんは時事性を入れると、現実が本当に追いついてしまうことが多く、過去にも偽札作りのエピソードが実際の事件と重なったことがあって、“怖いな“と思う瞬間もありました(笑)。今回は撮影から放送まで間が空いたので無理でしたが、できれば高市総理誕生より前に届けたかったという悔しさもあります」

――最後に、視聴者の皆さんへのメッセージをお願いします。

「連ドラでは本当に多くの反響をいただきました。昭和から来た小川市郎という人物が巻き起こす出来事を通して、職場や学校でいろいろ話し合えたという声が届き、それが何より励みになりました。今回も、2026年のお正月にお届けすることで、“自分たちの常識は他の世代では非常識かもしれない”という感覚や、日本が外交・経済などさまざまな面で岐路に立っている現状も踏まえ、自然と語り合うきっかけになればと思っています。明るい気持ちで、自分の国の未来や自分自身の将来について話したくなる作品として受け取っていただけたら幸いです」

阿部サダヲ百変化? 江口のりこ“女性総理候補”誕生の背景「ふてほど」SPの裏側を磯山Pが語る

【番組情報】
スペシャルドラマ「新年早々 不適切にもほどがある! ~真面目な話、しちゃダメですか?~」
2026年1月4日
TBS系
午後9:00~11:30

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【締め切り】2026年1月13日(火)正午

取材・文/斉藤和美

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