「めちゃ×2メチャってるッ！」でナインティナインが見せた“負けながら戦う”こと2025/11/28 17:00

　東京・お台場の砂浜に、ナインティナインの2人がいる。ちょっとあきれたような顔の矢部浩之と、青ジャージでノリノリの岡村隆史。今まで何度も見てきたオファーシリーズの始まり。しかし、吉本興業が「めちゃ×2イケてるッ！」（フジテレビ系）の総監督・片岡飛鳥氏と共に制作したドキュメンタリー「めちゃ×2メチャってるッ！」第1部（FOD独占配信中）を見た者は、この砂浜と青ジャージにたどり着くまでの壮絶な369日を知っている。そしてその重みを最も感じているのは、他ならぬナイナイの2人だろう。

　けがを乗り越え、カラダのキレを取り戻した岡村が今回挑戦するオファーは、JO1、INI、ME:Iなどのアーティストが所属するLAPONEエンタテイメントが主催する「LAPOSTA 2025」を盛り上げること。しかし過去のオファー同様、ダンスでコラボレーションすると思っていた岡村に任されたのは、LAPOSTAオリジナルキャラクター“シャチョー”の中の人の仕事だった。ステージに上がることを諦めきれない岡村は、人知れずK-POPダンスの練習に励み出す。11月15日から配信開始した「めちゃ×2メチャってるッ！」第2部は「7年ぶりに起こせよムーヴメントスペシャル!!」と題して、2025年2月2日、東京ドーム5万人の観客が目撃した「LAPOSTA 2025」の奇跡を追う。

　「負けながら戦っていく」――練習を重ねる岡村を見ていた矢部は、本編の中で彼をこう表した。ナインティナインの2人がそろった取材の場でそのことを尋ねると、矢部は「そんなカッコいいこと言ってました？」と少し照れながら「そういうお笑いの人いないんですよ。自分らが憧れたとんねるずやダウンタウンは絶対的な力を持ってて、キャラクターとしては、人に勝っていこうというお笑いじゃないですか。でも相方は逆やったんですよね。最初は勝とうとしてたけど、どっかでバレるというか限界あるから。でも負けて勝っていくところを皆さんは見てくれて喜んでくれてるなって感じたんですよね。負けて、負けて、でも勝っていく」。

　LAPONEエンタテイメントのチェ・シンファ社長に「ダンスは금지（禁止）」といさめられながら、岡村はこっそり振付師の先生と練習を始める。その不器用な熱心さはいつのまにか周囲の人を巻き込み、やがて大きな“ムーブメント”を生み出していく。岡村はなぜこんなひたむきに努力を続けられるのだろうか。

「『オレたちひょうきん族』（フジテレビ系）が楽しみでしょうがなかった自分らが『めちゃイケ』で同じ土曜8時を任されて。22年もやらせてもらって、すごく大変やったけどすごく幸せやったなと思います。僕が昔『テレビっていうあの箱の中に入りたいな』と思ったみたいに、皆さんに『楽しそうやなあ』とか『面白いなあ』って思ってもらえた時間やったかなあって。『7年ぶりに起こせよムーヴメント』っていうのは、月曜日学校行ったら“『めちゃイケ』見た!? ”って言ってもらえるような、今『めちゃイケ』を知らなくても『JO1となんかやってるらしいよ』ってそこからどんどん大きくなってくれたら……という気持ちでした」。

　番組終了から7年が経っても、地上波から配信というメディアは変わっても、「めちゃイケ」（のようなもの）とナインティナインの関係は変わらない。「（『めちゃイケ』は）たぶんもうこの先超えることができない作品ですね。ナインティナインのマックス。そして僕たちのマックスを上げてくれる作品も、『めちゃイケ』しかないと思います。他の番組では超えられないと思いますね」（矢部）、「やりますよって言われたらやりますっていう、それが『めちゃイケ』スタイルですから」（岡村）。

　取材終わり間際、静かな笑みをたたえながら言った岡村の言葉が忘れられない。「片岡さん、これで終わるんですか？　これで燃え尽きて終わるって納得したの？　あなたから振っといてっていうことは伝えたいですね。『できんのか？』って言っといて、逆にもうこっちとしても『片岡飛鳥できんのか？』っていう。僕はそれぐらいの気持ちでいます」。