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ドラマ「テレサ・テン 歌姫を愛した人々」で昭和の歌姫の人生の光と影をたどる2025/10/07 17:00

ドラマ「テレサ・テン 歌姫を愛した人々」で昭和の歌姫の人生の光と影をたどる

 K-POPもまだなく、アジアの音楽がそれほど世界に知られていなかった1970年代。元祖「アジアの歌姫」として日本のみならずアジアを席巻した、テレサ・テンをモデルにしたドラマ「テレサ・テン 歌姫を愛した人々」(火曜午後8:00〜8:53)が、没後30年の節目にBS11で放送中だ。

ドラマ「テレサ・テン 歌姫を愛した人々」で昭和の歌姫の人生の光と影をたどる

 主演は映画「あの頃、君を追いかけた」(2011年)などで知られる台湾の国民的女優で、中国ドラマにも多数出演するミシェル・チェン。彼女を支える恋人役には、映画「T.R.Y.」(03年)や「着信アリ2」(05年)など日本映画にも出演したピーター・ホー。大河ドラマからラブコメディーまで、幅広く手がける中国の名匠ディン・ヘイが製作総指揮。中国と台湾が誇る一流スタッフが集結した記念碑的ドラマだ。

日本でもヒット曲を連発し、NHK紅白歌合戦にも3回出場

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 1953年1月29日、台湾の雲林県の眷村(けんそん/中国本土からの移住者が暮らす村)で生まれたテレサ・テンは、10歳で歌唱コンテストで優勝。14歳で本格的に歌手デビューし、香港をはじめシンガポールやタイなどで人気を博した天才少女シンガー。21歳を迎えた74年に日本デビューし、「空港」で日本レコード大賞新人賞を受賞。そして84年にリリースした「つぐない」で日本有線大賞を受賞。その翌年には「愛人」、さらに86年には「時の流れに身をまかせ」で同賞を受賞し、史上初となる3年連続大賞受賞という快挙を成し遂げた。とりわけ「愛人」は紅白歌合戦初出場のきっかけとなり、彼女の名は日本の音楽シーンに深く刻まれていく。

 ヒット曲の数々は桑田佳祐、JUJU、新浜レオンなど世代もジャンルも超えた多くのアーティストにカバーされている。演歌のイメージが強いが、テレサ・テン自身も桑田佳祐やアン・ルイスの楽曲をカバーしている。J-POP的な楽曲も多く、93年リリースの「あなたと共に生きてゆく」は、坂井泉水(ZARD)作詞、織田哲郎作曲となっている。

 中国語楽曲はさらに多彩で、民謡からR&B、アメリカのポップスなども歌う。本作でも「甜蜜蜜」、「小城故事」、「我只在乎你(時の流れに身をまかせ)」など、数々の名曲が物語を彩る。

【これまでの物語】幼少期からデビューまで

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 ドラマ序盤は、幼くして才能を開花させ歌手としてデビューするまでと、家族の物語が中心。歌手を目指す鄧麗君だが、ステージに立つだけでも、父親の反対や母や兄たちのサポート、先輩歌手の妨害など紆余(うよ)曲折がある。両親や近所の人々とのトラブルも多発する。中でも見どころは、幼なじみの段寧(ドワン・ニン)(演:リュー・イー)と、周台生(ジョウ・タイシェン)(演:ポン・グアンイン)を巡る三角関係。鄧麗君の才能にいち早く気付き、心ひかれていく周台生だが、家庭でも悩みを抱える段寧は、周台生の気持ちを知り鄧麗君への嫉妬心が芽生える。ただ、親たちのトラブルを解決するため、幼いながらも奮闘する鄧麗君と段寧は、ぶつかりながらも頼り合うシスターフッド的な関係として注目だ。

歌姫を愛した人々① テレサ・テンを愛した3人の男性

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 鄧麗君と周台生の淡い初恋は、友情と恋の板挟みとなり、歌手として多忙を極めたことで終焉(しゅうえん)を迎える。そして登場するのが、生涯のソウルメイトともいうべき汪仲文(ワン・ジョンウェン)(演:ピーター・ホー)との出会い。どこまでも鄧麗君を応援する汪仲文の王子様ぶりは、歴代恋人の中でも中心的存在。結婚寸前までこぎつけるものの、鄧麗君の歌手としてのキャリアを理解し、最終的に彼女の夢を優先して身を引く男らしさにキュンキュン。その後、3番目の恋人としてマーク(演:アンドリュー・チョウ)が登場予定。

歌姫を愛した人々② 父・母・兄の家族愛

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 本作は、テレサ・テンの家族が初めて伝記的なドラマ撮影を許可しただけあって、家族間の関係が丁寧に描かれている。母の趙素桂(ジャオ・スーグイ)(演:ジアン・シャン)は、5人の子を育てあげ鄧麗君の歌手活動を応援。妹がステージに立つために兄たちが奮闘する姿も頼もしい。そして、最初は歌手になることを反対していた父の鄧枢(ドン・シュー)(演:ホウ・ヨン)と和解する場面は感動を否めない。

【後半の見どころ】

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 初恋の人・周台生との切ない別れを胸に、歌手として歩み始める鄧麗君。失恋の痛みを乗り越え、ステージで輝きを増していく彼女のもとに、日本のレコード会社の舟木(演:清水友範)が訪れ、日本デビューを打診する。当初、日本でのデビューには父・鄧枢が強く反対していたが、舟木からの熱心なオファーを受け、最後は父も日本デビューを認め、彼女は新たな挑戦へと踏み出す。しかし、台湾や香港ではすでに人気を得ていた彼女だったが、日本ではまったくの新人扱い。地方のキャバレーで営業を重ねるなど、厳しい下積みの日々が続いていた。そんな時に、彼女の前に現れたのが、大企業の御曹司・汪仲文。彼との出会いは、鄧麗君の心に新たな恋の芽を育み、彼女の運命を大きく動かしていくことになる。華やかな成功の裏には、恋愛との葛藤、孤独、そして重圧に苦しむ姿があった。

 “鄧麗君”という一人の女性としての繊細な感情と、“テレサ・テン”という象徴的存在としての宿命。その二つの顔を丁寧に描きながら、42歳でこの世を去るまでの軌跡が、静かに、そして力強く紡がれていく。

 テレサ・テンを知っている人も、初めての人も楽しめるドラマに仕上がっているので、見る価値あり!

【番組情報】
中国ドラマ「テレサ・テン 歌姫を愛した人々」

BS11
火曜 午後8:00~8:53 <日本初放送>
※過去の放送回は、TVerで放送後見逃し配信中、BS11+ではノーカット版独占配信中

文/菊池昌彦

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