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「熱さで勝負が決まる」元NHK・豊原アナが語る「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」2025/08/15 08:00

「熱さで勝負が決まる」元NHK・豊原アナが語る「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」

 世界のラグビーを牽引する南半球の強豪4か国による対抗戦「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」がいよいよ8月16日に開幕を迎える。世界ランキング1位の南アフリカ、2位ニュージーランド、6位オーストラリア、7位アルゼンチンと、まさに楕円球最高峰に立つ4チームの約2か月にわたる激闘を全12試合、WOWOWで今年も独占生中継&ライブ配信される。

 今回は、7月に初めてWOWOWで実況を務め、これまでラグビーワールドカップ(以下、W杯)などで数々の名言、名実況を残してきた元NHKの豊原謙二郎アナウンサーに「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」の見どころをインタビュー。各チームの現状、注目選手、注目カードのみならず、豊原アナが学生時代からのめり込んできたというラグビーへの思い、そして実況を通じて伝えたいことまで、今大会の中継の見逃せないポイントについて語ってもらった。

──まずは、豊原アナウンサーのWOWOW初実況となった7月19日の「ラグビー テストマッチ 2025 インターナショナル シリーズ」ニュージーランドvsフランス(第3戦)について。久しぶりのラグビーの実況はいかがでしたか?

「“やっぱりラグビーは面白い!”と再認識しました。ラグビーW杯以外では、日本代表が絡まない海外代表同士のテストマッチの実況は初めてで、この時期にあのようなレベルの高い試合を実況するのも初めてのことでしたが、あらためてテストマッチはいいなと感じましたね」

──間もなく開幕を迎える「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」でも、10月4日の最終節「アルゼンチンvs南アフリカ」の実況を担当されます。まずはこの大会に対する印象をお聞かせください。

「私がプレーヤーだった頃は南半球がラグビーの最先端でした。特にニュージーランド、そして強かったオーストラリアの2か国によるブレディスローカップと、トライ・ネーションズ(ザ・ラグビーチャンピオンシップの前身大会。南アフリカを含めた南半球3か国による対抗戦)こそが“世界最強”だと感じていました。今もラグビーW杯の優勝候補として挙がるのは南アフリカとニュージーランドです。そういう意味でもザ・ラグビーチャンピオンシップはテストマッチシリーズの最高峰、という認識が私の中にはあります。27年W杯を見据える上でも非常に興味深い戦いになるのではないでしょうか」

「熱さで勝負が決まる」元NHK・豊原アナが語る「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」

──トライ・ネーションズとそれ以前の時代から世界のラグビーを牽引してきたニュージーランドについてですが、現代表の印象はいかがですか?

「偉そうなことを言える立場ではないのですが、やはりニュージーランドは世代交代が止まることのない国だなと感じています。元代表LO(ロック)のサム・ホワイトロック(現埼玉パナソニックワイルドナイツ アドバイザー)やブロディ・レタリック(現コベルコ神戸スティーラーズ)がいなくなっても今はLOにスコット・バレット(現キャプテン)がいますし、戦力はさほど落ちていません。FB(フルバック)ルーベン・ラヴなど楽しみな若い選手も出てきましたので、やはりニュージーランドは層が厚いと思います。

「熱さで勝負が決まる」元NHK・豊原アナが語る「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」

 そして、何といってもニュージーランドのラグビーは面白いですよね。私が“オールブラックスこそが最強だ”と思って見てきた世代ということもありますが、やはりボールがよく動きますし、ディフェンスでのディシプリン(規律)も高いです。また、CTB(センター)ジョーディー・バレットが見せたように一瞬で展開を変えられる“ゲームチェンジャー”のような選手が1人ではなく何人かいるのもすごいところで、均衡した試合でもワンチャンスでゲームを決めるプレーができるところがニュージーランドの素晴らしさだと思っています」

──今も数名の名前が挙がりましたが、特に注目されている選手をお願いします。

「専門家のような視点ではなくあくまでも一般目線ですが、私はFL/No.8(フランカー/ナンバーエイト)アーディ・サベアが大好きなんです。恥ずかしながら私も元バックロー(FW第3列)なので、彼の動きにはアタック、ディフェンスともに注目しています。もう少し背が高かったら最強だったかもしれませんが、あのサイズ(190cm、99kg)だからこそモビリティの面でも秀でているのかなと思います。パーフェクトな選手ですね。

 気がかりなのはSO(スタンドオフ)です。ボーデン・バレットは2027年W杯では36歳になります。ダミアン・マッケンジーも決して若くはありません(8月16日時点で30歳)。リッチー・モウンガ(東芝ブレイブルーパス東京。2026年後半から3年ぶりに代表選考対象に)も合流が遅れるということで、(将来的に代表から)彼らがいなくなるとハーフ団の経験値が下がります。そのあたりがどうなるのか注目したいところです」

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──昨年の王者で、W杯を連覇中の南アフリカについてはどんな印象をお持ちですか?

「今、本当に強いですよね。メンバーがあまり変わらないところが強さの秘密だと思うのですが、今のメンバーのまま2027年W杯まで行けるのかどうかが気がかりです。もちろんそのまま行ければすごいことなのですが、一方で(現在の主力にとって代わるような)若い選手が出てくるのか、特にW杯に向けては新しい力が出てこないといけないのではないか、という思いもあります。

 今大会のスコッドもW杯優勝経験者が24人、7月に代表デビューしたばかりの選手が5人ということですが、たとえば(第5節と最終節で対戦する)アルゼンチンはまだ若い選手もいて、次のW杯が脂の乗ったタイミングになる選手たちが多くなりそうです。ですから今大会の対戦がいい勝負だった場合、2年後はもしかしたらアルゼンチンの方が上回るかもしれません。南アフリカはまだまだ強いと思いますが、そういう見方も面白いのではないでしょうか」

──経験豊富な名手がそろう南アフリカで、特に注目されている選手はどなたでしょうか?

「月並みですが、FL/No.8クワッガ・スミス(静岡ブルーレヴズ)ですね。あのメンバーの中でどういう働きをしてくれるのか、日本の皆さんも注目されているはずです。私もサイズのなかったバックローだったので、彼のような選手が活躍するとうれしいです。日本の選手も学ぶところが多いと思います。

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 また、SOにハンドレ・ポラードが入っています。ともに2023年W杯に出ていたSOマニー・リボック(花園近鉄ライナーズ)もいますが、彼のパフォーマンスはそこまでよくなかったと思います。南アフリカもいつまでもポラード選手頼みというわけにはいかないでしょうから、ニュージーランドと同じように今後の軸になるSOが必要なのではないかと考えています」

──続いて、その南アフリカと第5節、最後節で対戦するアルゼンチンの印象をお願いします。昨年は3位でしたが3勝3敗で、優勝した南アフリカに唯一土を付けました。

「かつては日本代表と競っていましたが、あっという間に強豪国になりましたね。先ほども少し触れましたが、今のアルゼンチンは年齢層がほどよく、今の勢いが2027年W杯まで継続するのではないかと見ています。アルゼンチンのラグビーの面白さは“型がないのが型”というところにあると思います。フィジカルが強い、BKに非常にスピードがある、という特長がある一方で、たとえばカウンターアタックで一気にトライを取り切るなど、ある種のひらめきも相まってアタックに爆発力があり、最近はディフェンス面でも規律がしっかりしています。つまり(ラグビースタイルの)定義付けが難しいところが面白いのです。最終節の『アルゼンチンvs南アフリカ』を実況させていただきますが、対する南アフリカも昨年に続いてアルゼンチンに負けるわけにはいかないでしょう。しっかり整えてくると思いますので、かなり熱い試合になるのではないかと予想しています」

──アルゼンチンの注目選手についてはいかがでしょうか?

「前回W杯で印象に残った選手でもあるFLフアン・マルティン・ゴンサレスですね。素晴らしいタックルに加えて機動力もあり、フィジカルが強く、ファイトもすごい。そんな魅力的な選手です。総じてコンタクトの強いところもアルゼンチンの魅力で、FL/No.8パブロ・マテーラ(三重ホンダヒート)を中心に暴れまくると自ずと面白くなります。BKについては特定の選手というよりも全体的に非常にスピードがあり、相手チームにとっては脅威になると思っています」

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──続いてオーストラリアの印象をうかがいます。昨年は残念ながら最下位に終わりました。

「エディー・ジョーンズ前ヘッドコーチ(現日本代表ヘッドコーチ)が2023年W杯でチームを若返らせ、その若い選手たちが今も残っています。2年後の2027年W杯に向けてホスト国として準備が進んでいますし、そういう意味でもまさにここから注目すべきチームです。(退任予定だった)ジョー・シュミットHCが来年半ばまで契約を延長しましたので、チームをどう仕上げてくるかという点も見逃せません。アイルランドを指揮していた当時もそうでしたが、ラグビー自体がしっかりしていて、面白い。そしておそらくアイルランド以上にスピード感が出るのではないかと思っていますので、強くなってくれるといいなと期待しています。また、長年ニュージーランドや南アフリカに対抗してきたオーストラリアは歴史的にもイノベーションを起こす国というイメージがありますので、何か新しいトレンドを生み出してくれるのでは、と勝手ながら期待しています。それがうまくいくといい結果を残すのではないでしょうか」

──注目選手もお願いします。

「CTBジョセフ=アウクソ・スアアリイは非常にいい選手ですね。旋風を起こしそうで楽しみです。また、私の世代では(元オーストラリア代表キャプテンでレジェンドのSO)マイケル・ライナーの息子、SOトム・ライナーの活躍が気になりますが(大会開幕時点では脳震盪の影響で代表に選出されず)、やはり他国と同様にSH(スクラムハーフ)テイト・マクダーモットらも含めたハーフ団がどうなっていくかが大事になると思います」

「熱さで勝負が決まる」元NHK・豊原アナが語る「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」

──実況を担当される最終節の「アルゼンチンvs南アフリカ」について“熱い試合になる”と予想されている豊原アナウンサーですが、その他にも注目しているカードはありますか?

「どの試合も楽しみですが、やはりニュージーランドとオーストラリアの対戦(第5節・最終節)ですね。このカードは伝統的に面白いですし、オーストラリアがニュージーランドに対してどこまでやれるのか、という見方もできると思いますので今から楽しみです」

──ラグビーの実況を通じて視聴者の皆さんにどのようなことを伝えたいと考えていますか?

「個々の勝負と組織の勝負が常に同時進行で連動して進んでいくところにラグビーの面白さがあります。さまざまな特徴を持った選手がそれぞれのストロングポイントを組織の中で最大限に生かし、それによってチームというものができていますので、解説者の方のお力をいただきながらそういったところをお伝えできれば、よりラグビーの魅力を感じていただけるのではないかと思っています。

 その一方で、ラグビーはコンタクトスポーツなので“熱さ”で勝負が決まる、というところもあります。つまり、ロジカルな部分もありつつ大事なのはメンタル、という人間くさいところ、言い換えれば人間社会の縮図のような面があり、そこにこそ面白さがあると感じていますので、実況を通じてそういった魅力をお伝えできればと考えています」

「熱さで勝負が決まる」元NHK・豊原アナが語る「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」

【WOWOWラグビー配信・放送情報】

「南半球4か国対抗戦 ザ・ラグビーチャンピオンシップ」
<第1節>
「南アフリカvsオーストラリア」
8月16日 午後11:55~[WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
「アルゼンチンvsニュージーランド」
8月17日 午前5:55~[WOWOWプライム][WOWOWオンデマンド]
<第2節>
「南アフリカvsオーストラリア」
8月23日 午後11:55~[WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
「アルゼンチンvsニュージーランド」
8月24日 午前5:55~[WOWOWプライム][WOWOWオンデマンド]
<第3節>
「オーストラリアvsアルゼンチン」
9月6日 午後1:15~[WOWOWプライム][WOWOWオンデマンド]
「ニュージーランドvs南アフリカ」
9月6日 午後3:50~[WOWOWプライム][WOWOWオンデマンド]
<第4節>
「オーストラリアvsアルゼンチン」
9月13日 午後0:45~[WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
「ニュージーランドvs南アフリカ」
9月13日 午後3:50~[WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
<第5節>
「ニュージーランドvsオーストラリア」
9月27日 午後1:50~[WOWOWプライム][WOWOWオンデマンド]
「南アフリカvsアルゼンチン」
9月27日 午後11:55~[WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
<最終節>
「オーストラリアvsニュージーランド」
10月4日 午後6:30~(予定)[WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
「アルゼンチンvs南アフリカ」
10月4日 午後9:45~(予定)[WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
(実況:豊原謙二郎)
※全12試合を独占生中継&ライブ配信
※変更の場合あり

「オータム・ネーションズシリーズ 2025」
11月1日~29日(現地時間)
「アイルランドvs日本」「ウェールズvs日本」ほか、注目試合の数々を放送・配信!
※変更の場合あり



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