「しあわせな結婚」大石静が明かす、実は大事なクロワッサン!?　“まさか”がまだまだある！2025/08/07 21:54

　TVerでは、阿部サダヲが主演を務めるテレビ朝日系連続ドラマ「しあわせな結婚」（木曜午後9：00）の第4話を配信開始。夫婦の愛を問う“マリッジ・サスペンス”は、どのように生み出されているのか？　TVerで第1〜4話までを一気見できるこの機会に合わせて、脚本を担当する大石静氏がキャストの印象、注目してもらいたいシーン、そして脚本家としての矜持（きょうじ）などを語った。

――「しあわせな結婚」はホームドラマであり、サスペンスでもあります。そのバランスが絶妙だと感じますが、物語をどのように組み立てているのでしょうか？

「私はサスペンスに強いわけではないので、プロデューサーをはじめ、みんなに意見をもらいながらやっています。実はあまり計画的ではないのですが、今回は『意外にうまくイケたな』みたいな気分です（笑）。ですから、ホームドラマとサスペンスのバランスとか融合とかは、特には意識していません。『次に何が来たら面白いかな』ということだけを考えながら、直感的に書いています」

――脚本制作を進める上で、難しかったことはありますか？

「直感的に書いているとはいえ、やはりサスペンスとホームドラマが視聴者の皆さんにとって見やすくつながるかは、やってみなければ分からないと思いました。難しかったというよりは、一か八かという感じですね。つながってみると、意外と違和感なく見られたので、ああよかったなと。ただ、期待度が高いのはちょっとプレッシャーですよね。第1話は、裏（同時刻の他局の放送番組）がバレーボール（ネーションズリーグ2025）でしたし（笑）」

――大石さんでも、放送前には緊張されるものですか？

「緊張はします。お客さんに喜んでもらえるかどうかは、放送されてみなければ分かりませんから。それでも初回放送日は、ハラハラよりも晴れがましい感じかもしれません。『光る君へ』（NHK）は視聴率こそ高くなかったけれど、反響が大きかったという手応えはあったんです。だから今回も、数字だけでなく、皆さんに語り継がれるドラマになればいいなと思っています。ちなみに私が一番ドキドキするのは、初稿をプロデューサーに提出する時です。試験の答案を出すような気持ちで、いまだに新人の頃と同じ緊張感がありますね」

――「サスペンスに強いわけではない」とのことですが、行き詰まった時にはどう乗り越えたのでしょうか？

「それはもう、本当にチーム力のおかげです。この局（テレビ朝日）は刑事ものが多いので、プロデューサー陣には経験もアイデアもある。『どうしたらいいの？』と言いながら、みんなに助けてもらっています。セリフは私のものですが、展開はチームで作っていますね。頼もしいチームです。全然頼もしくないチームに当たっちゃうこともあるんですよ（笑）。その時は孤独で、発狂しそうにもなりますが、このチームは本当に“一緒に作っている”という感じです」

――セリフを書く上で、普段から意識していることはありますか？

「しゃべり言葉に敏感でなければいけないな、とは思いますね。『こんなしゃべり方があるんだ』と常に観察しているし、面白い話があれば必ずメモしておく。それから、自分の人生の中で起きた出来事を使うこともあります。もちろんそのままじゃないけれど、長く生きてきた経験から生まれたセリフもあると思います」

――今回の主人公である幸太郎（阿部）とネルラ（松たか子）の掛け合いに関してもそうなのですか？

「そうですね。セリフは考えて出すものではなく、設定や展開が決まるとポンポン出てくるものなんです。だから、あまり深く考えて書くことはないですね。そこまでの展開を考えるのは難しいけれど、皆さんの協力を得ながら『これでいいですよ。大石さん書いてください』と言われたら、私の体からスルスルと出てくる感じです」

――キャストが決まってからは、すべて当て書きだと伺いました。“この俳優さんだから書けた”というセリフやシーンはありますか？

「阿部さんと松さんの芝居の相性のよさ、テンポのいいセリフの掛け合いは、書いていても、2人の声が耳元に聞こえて来るような感じがします。阿部さんと松さんを思い描かなければ、2人のシーンは書けなかったと思いますね。ほかのキャストであれば、同じ物語でも、違うリズム感で、違うセリフになっていたと思います」

――段田安則さん、金田哲さん、玉置玲央さんら「光る君へ」のキャストの出演も話題になっています。

「やっぱり『お父さん役はどうしようか』と考えた時に、もう段田さんしか浮かばないのですよ（笑）。段田さんは、クランクインの時にまだ舞台が終わってなくて、スケジュール的には厳しかったのですが、どうしてもお願いしたくて。金田くんや玉置くんは、私ではなくプロデューサーのキャスティングです。適材適所です」

――お芝居が達者なキャストばかりです。映像をご覧になって「さすがだな」と感じたシーンはありますか？

「阿部さんのリアクションの表情は、どこもすべて完璧です。たとえば第1話で、ネルラから『うち来ませんか？』と言われた時（第1話・14分38秒～）とか、ネルラが足を阿部さんの上に乗せてグイグイくるところ（第1話・32分28秒～）とか。表情が1個も間違っていないし、台本が目指すところを深く理解して、それを3倍にも10倍にもしてくれている感じがします。天才です。松さんもそれは同じで、“不思議さ”のあるネルラは、ただのサイコパスな人になりかねないのですけど、松さんが演じると、リアリティーがあって生きている人に見えるんです。そこを踏まえながら、ちゃんと“変な人”になっているところが見事だなと思います」

――お気に入りのシーンや、印象的だったシーンはありますか？

「第3話は『別のドラマか？』というくらいコメディー色が強いので、楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。みんなで温泉に行って、釣りをしたり、カラオケをしたり（笑）。変な写真家も登場しますし、相当笑えるはずです。シリアスな展開もありますが、コメディシーンでホッとしていただけたらいいなと思っています」

――サスペンス要素もある作品です。第1～4話で、見返すとヒントになるようなシーンはありますか？

「ヒントとは違うかもしれませんが、クロワッサンは今後もいろいろな場面で出てきます。事件に直接関係があるわけではないけれど、あ、関係あるかもしれませんが（笑）、家族の歴史においてシンボリックなアイテムになっています。実は大事なクロワッサンです」

――なぜクロワッサンをキーアイテムに？

「クロワッサンって、食べにくくて面白いじゃないですか（笑）。ボロボロこぼれる感じがいいなと思ったんです。岡部（たかし）さん演じる叔父さんは料理が上手なので、バターロールやほかのパンの日もありますが、おおむねキーポイントの日はクロワッサンになっています」

――TVerをはじめ、現在は「ドラマはリアルタイムで見るもの」という環境から変化しています。そのあたりについて、どんな感想をお持ちですか？

「配信限定作品は一気見する方も多いので、『あまり“つづく”を意識しなくてもいい』とも言われたことがあります。それでも次を見たいと思ってもらうことにはこだわっていますね。連ドラの申し子だと思って生きてきたので（笑）。視聴習慣が変わろうとも、人間を多面的に描き、普遍的な思いをすくい上げ、面白いものを作るという使命は変わりません」

――あらためて「しあわせな結婚」をご覧になる方へメッセージをお願いします。

「もちろん1話ずつ見ていただいてもいいですし、4話続けて見ていただいても飽きないように作っています。どこで“つづく”にするかが決まらないと（脚本を）書き出さないくらい、私たちチームは『次が見たくなること』に命を懸けてやっていますので、ぜひご覧ください」

――まだ最終話の脚本が仕上がっていないとのことですが（取材時）、大石さんの頭の中では結末が見えているのでしょうか!?

「まだ決まってはいませんが、『この2人は出会ってよかったんだ』と思えるようにはしたいと思っています。殺伐として終わると、『何のために3か月見てきたんだ』ということになってしまうので（笑）。ただ、そこに至るまでには相当な“まさか”がまだまだあります。阿部さんも松さんも、想像できない方向に行くと思います」

――ちなみに、大石さんはTVerを活用されることはありますか？

「ヘビーユーザーです。TVerのおかげで『録画を忘れた！』ということがなくなって本当に助かってます。一応クールの頭には、どんなプロデューサー、どんな脚本家、どんな俳優さんが何をやっているのかを見ておくことにしているので、TVerは非常に役に立っています」

【コンテンツ情報】
「しあわせな結婚」
TVer
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