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稲垣吾郎ら新キャストが紡ぐ「ハリー・ポッターと呪いの子」の世界とは?【会見リポート】2025/07/18 04:00

稲垣吾郎ら新キャストが紡ぐ「ハリー・ポッターと呪いの子」の世界とは?【会見リポート】

 2025年7月でロングラン4年目を迎える舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」。小説「ハリー・ポッター」シリーズの作者・J.K.ローリング氏が、ジョン・ティファニー氏、ジャック・ソーン氏と一緒に舞台のために書き下ろしたシリーズ8作目の物語です。

 長年、自身の小説の舞台化を断ってきたJ.K.ローリング氏ですが、「家族、愛、喪失をテーマに、ハリー・ポッターの19年後の新たなストーリーを舞台にしたい」というプロデューサーの提案に初めて共感し、プロジェクトがスタート。やがて、16年7月に英・ロンドンで初演された後は、米・ニューヨーク、豪・メルボルンなど、全6都市で上演し、大ヒット。さらに、世界中で60以上の演劇賞にも輝き、たくさんの観客を魅了しました。

 また、アジア初上陸となる東京公演は、22年7月8日に世界で7番目に開幕。以降、総観客数120万人を超え、公演回数はなんと1200回にも及び、「第30回読売演劇大賞」の選考委員特別賞や「第48回菊田一夫演劇賞」(ともに23年)の大賞を獲得。まさに、演劇界と観客から高く評価され、東京公演は26年1月まで延長となりました。

 この度、本作の4年目の扉を開くハリー・ポッター役として新たに名を連ねたのは、稲垣吾郎さんと平岡祐太さん。そして、23年にハリー役を担い、24年6月で卒業した大貫勇輔さんが1年ぶりにハリー・ポッター役として帰って来ました。さらに、アルバス・ダンブルドアをはじめ、エイモス・ディゴリー、セブルス・スネイプと、なんと1人3役に挑戦する市村正親さんも新キャストとして魔法の世界に飛び込みます。

 7月17日より3か月間、「ハリー・ポッター」シリーズファンにさらなる魅力を見せる稲垣さん、平岡さん、大貫さん、市村さんに、作品の魅力や役についてなどお話を伺いました。

魔法の習得が一番大変で、毎回見ているのにびっくりしちゃう(稲垣)

稲垣吾郎ら新キャストが紡ぐ「ハリー・ポッターと呪いの子」の世界とは?【会見リポート】

――いよいよ「ハリー・ポッターと呪いの子」が幕開けですね! 今の気持ちと見どころを教えてください

稲垣 「仲間と共に2か月間稽古をしてきた『ハリー・ポッターと呪いの子』の初日を迎えることができて、本当にうれしいです。また、TBS赤坂ACTシアターでお客さまにお会いできるのを大変楽しみにしてました。この作品は、何度見ても魔法(の仕掛け)がすごいですし、人間ドラマとして親子の愛と仲間の愛が深く描かれていて、感動させられます。キャストやスタッフと一緒に力を合わせ、すてきな作品を皆さまにお届けしていきたいと思います」

平岡 「この作品は今年で4年目を迎えますが、演出家の方も1年目の方とは違いますし、1年目にご覧になった方が僕たちの回を見られると、また新しい発見がある作品に仕上がっていると思います。見どころとしては、『ハリー・ポッター』シリーズの世界がしっかりと表現されていて、なおかつ脚本とストーリーが面白い。僕たちは演技の面で頑張り、そこをこだわって2か月間稽古して作ってきましたので、これからがとっても楽しみです」

大貫 「まずは『ハリー・ポッター』に戻ってこられて、うれしい限りです。1年ぶりに客席から見ましたが、本当に感動して、涙を流してしまいました(笑)。魔法はもちろんのこと、家族、そして友情、成長…すべての世代の方に、胸に突き刺さるシーンがたくさんあり、改めて本当によくできた作品で総合芸術だなと思いました」

稲垣吾郎ら新キャストが紡ぐ「ハリー・ポッターと呪いの子」の世界とは?【会見リポート】

市村 「30年前だったら僕もハリーをやっていたかもしれないなと思っております(笑)。しかし、現在はダンブルドアやスネイプ先生、そしてエイモスさんと、非常に重要な役柄を演じています。それぞれが人気のある役で、うちの子どもも喜んでいたので、父親として誇りに思うのと同時に、実はダンブルドアやスネイプ先生、エイモス以外にも3役あるんです。『ウォーリーをさがせ!』じゃないですけど、全部で6役やっておりますので『イチムラをさがせ!』という感じで、ほかにどこで出てくるのか見つけるのも楽しみの一つじゃないかな(笑)」

――稲垣さんはハリーを演じて難しかったことはありますか?

稲垣 「魔法使いを演じるのは初めてなので、魔法の習得というか、修行というのが一番かな。2か月間で覚えたんですが、本当に大変だったなと(笑)。物語の中でハリー・ポッターはスーパースターであり、一人の人間であり、父親でもある、人間味あふれるハリーをうまく演じられたらなと思っております」

――皆さん、魔法の修行をされたんですか?

稲垣 「内緒なことが多くてしゃべったら怒られちゃうんです(笑)。皆さんが大好きな『ハリー・ポッター』でおなじみの魔法がこの舞台上で繰り広げられます! この劇場の舞台上じゃないと稽古できないものもあったので、公演が終わった後のステージをお借りして練習しました。平岡くん、どうでした?」

平岡 「魔法ですか? 意外と大変で、簡単にできるものじゃなかったですね(笑)。2か月間の稽古を終えてやっとできるようになりました」

稲垣 「そうだね。そういう経験は、普通の俳優さんにはあまりないことだよね」

平岡 「ご覧になられる方は、本当にびっくりすると思うんです」

稲垣 「僕も何度も見ていて知っているのに、びっくりしちゃう」

平岡 「『なんで人が浮くんだ』とか」

稲垣 「“浮く”は言っても大丈夫?(笑)」

平岡 「“浮く”は大丈夫です(笑)」

再びハリー・ポッターになれる未来が来ると、思いもしなかった(大貫)

稲垣吾郎ら新キャストが紡ぐ「ハリー・ポッターと呪いの子」の世界とは?【会見リポート】

――平岡さんがハリーを演じられる上で一番大切にされていることはなんですか?

平岡 「『ハリー・ポッターと呪いの子』は世界で上演されてきて、演出のディテールが統一されている部分があるのに、演じる人によって物語の世界観が変わってくるところが本当に面白くて。今回、ハリー・ポッターは3人いますが、みんなそれぞれ違って、おのおののハリー・ポッターを作ろうと日々稽古して来ました。キャストの組み合わせによって、見えてくる世界も全く違うと思いますので、そこは楽しみにしていただきたいです」

――大貫さんはおよそ1年前(24年6月)の千秋楽で、「カムバックしたい!」とおっしゃってましたね。改めて、カムバックが決まった時はいかがでしたか?

稲垣吾郎ら新キャストが紡ぐ「ハリー・ポッターと呪いの子」の世界とは?【会見リポート】

大貫 「もう、『よっしゃー! また戻れる!』という気持ちでした。僕は『ハリー・ポッター』シリーズの大ファンなので、もう一度ハリー・ポッターになれる未来が来ると、あの(千秋楽の)時は、思ってもいなくて。そして、夢を無事に果たすことができて、このステージに立てるという、こんなに幸せなことはないなと、今もヒシヒシと体感しています」

――市村さんがご自身が登場する場面で、一番好きなシーンはどこですか?

市村 「エイモス役もすごく重要なんですけど、役としてはスネイプ先生とダンブルドアがすてきですね。特に、ダンブルドアはハリーにとってはお父さんのような存在。そして、ハリーにはアルバスという息子がいて、アルバスはダンブルドアには孫のように見えたりする。ただし、ダンブルドアが良い父親のように生きていたかというとそうでもないんです。そして、ハリーとアルバスには複雑な親子関係があるので、ここも見てもらいたいです。吾郎ちゃんにはダンブルドアの『完璧ということはない』というセリフはいいですよねと言われて。僕のセリフの量は少ない方ですが、かなり中身のつまったセリフなので、やはり僕ぐらいのキャリアがないと言えないのかなと(笑)。そうだよね? そういうことでいいかな?(笑)」

稲垣吾郎ら新キャストが紡ぐ「ハリー・ポッターと呪いの子」の世界とは?【会見リポート】

稲垣 「そうですね。市村さんがおっしゃる通り、『完璧なものなど、この世に存在しない』というセリフは心救われる言葉ですね。ハリーも完璧じゃないし」

市村 「演技に完璧なんてないし、完璧じゃなくていいの(笑)」

「愛があるからこそ、優しさも厳しさも必要」というセリフに、グッときた(市村)

稲垣吾郎ら新キャストが紡ぐ「ハリー・ポッターと呪いの子」の世界とは?【会見リポート】

――この作品の中で一番印象に残っていることやセリフをご紹介いただければ。

稲垣 「先ほどの続きになるかもしれませんが、ダンブルドア先生のセリフで『完璧なものなどない。幸せでいろいろ満たされている人でも、ちょっとした先には危険や毒がある』というセリフが大好きで。近頃、全てに完璧を求められる世の中であるけど、そういったセリフが見る側の心を救いになるので、とてもすてきだなと。そして、この作品のテーマにも通じているのかなと思いました」

平岡 「今作は時空を超える物語が繰り広げられて、例えば、エイモスは息子のセドリックに対しての思いを直接言わずに、時空を超えて会話をするというシーンがあるんですけど、僕はここが大好きで。いつもエイモスとセドリックのセリフを聞くと、まるで自分事のように、自分の両親を思い出したりしています」

稲垣吾郎ら新キャストが紡ぐ「ハリー・ポッターと呪いの子」の世界とは?【会見リポート】

大貫 「ハリーとしていうならば、アルバスに対してひどいことを言ってしまって、そもそも親子としてうまく行っていない中、2人の間により大きな溝ができて、そこからアルバスがいなくなっちゃうんです。そこで、ハリーが自分や過去と向き合い、成長するシーンが一番好きです。お客さまには3時間40分という、激しくも繊細な時間を積み重ねた先には、あのシーンがあり、この作品の重要なところだなと思いながら演じています」

市村 「僕のセリフには、いいものが多くて。特に『苦しむことは呼吸するのと同じぐらい人間的なこと』というセリフは、苦しみたくないけども、苦しむことが生きることなんだなと思いながらやっております。また、『愛情で目が見えなくなってはいけない』というセリフも、自分の中に突き刺さったもので。愛があるからこそ、優しいだけではなく、時には厳しさも必要だと教えてくれる言葉で、僕自身も言っていてグサっとくると同時に気に入っています」

おなじみの呪文を叫んで始まる稽古はとても新鮮(平岡)

稲垣吾郎ら新キャストが紡ぐ「ハリー・ポッターと呪いの子」の世界とは?【会見リポート】

――これから長丁場となりますが、千秋楽まで最高のコンディションで乗り越えるためのとっておきの健康法などございますか?

稲垣 「お客さまが劇場にいらっしゃるまでの道のりも心配になるぐらい暑い日が続いているのですが、劇場は比較的過ごしやすい空間なので、お越しになった際にはそういうひとときを楽しんでいただきたいです。ただわれわれは暑いんですけれども(笑)。僕は、一つの作品で3か月以上関わるロングランものは初めてなので、実はまだ自分がどういう状態になるのか、想像もつかない。ハリー役の先輩でもある大貫さんと会見の前にいろいろお話しましたし、先輩ハリーもたくさんいるので、いろんな話を伺いながらやれる状況は楽しいですね。ちょっと話がそれちゃうかもしれないんですけど、ゲネプロがあった時に、最前列にハリーが5人ぐらいいたんですよ(笑)。(平岡を見ながら)なんであんなことをするんですか?(笑)」

平岡 「いや、1番前で見てたら面白いかなと(笑)」

稲垣 「歴代ハリー5人ですよね?」

大貫 「ずらっと座っていましたね(笑)」

稲垣 「吉沢(悠)さんもいたし、石丸(幹二)さんもね。だけど、まだ回数を重ねていないから、間違えるじゃないですか? 本当にいたたまれない気持ちになって(笑)。ただ、今回はハリーが3人いますけど、今までハリーを演じた人が何人もいて、みんなで協力し合えたというか。自分の分身みたいな人がいっぱいいるというのも、すごく不思議な体験であり、幸せを感じています。あっ、暑い夏(の健康法)ですよね?(笑)。僕は普段は家で3匹の猫に囲まれて静かに生活している人間なので、この舞台に来た時ぐらいは、笑顔で、皆さんと心を通わせながら楽しくやっていくというのが、この夏を乗り切る方法なのかなと思いました」

稲垣吾郎ら新キャストが紡ぐ「ハリー・ポッターと呪いの子」の世界とは?【会見リポート】

――今、ドラマで共演している磯村(勇斗)さんから「稲垣さんはバンパイアなんじゃないかな。血を吸っているんじゃないか」と(笑)。皆さん、“血”以外に吸っているものがあれば教えてください!

稲垣 「全く想定していない質問ですね(笑)。いつも言っているんですけど、僕はおじいちゃんみたいな生活をしていて、早寝早起きで、今日も5時ぐらいに起きました(笑)。睡眠時間をたくさんとることと、食事に気を付けて、適度な運動をする感じですかね。この舞台に出ていらっしゃる皆さんは体力があって、その方々に引っ張ってもらっていますので、体力作りはしていきたいなと思っています」

平岡 「このチームは、稽古前に30分間の筋トレが行われるんですよ。それを週6で2か月で続けてきたので、(体力に関しては)結構いけるんじゃないかなと思っているんですけど」

稲垣 「え、僕やっていないよ?」

平岡 「何をしていたんですか?(笑)」

稲垣 「イメージトレーニング(笑)」

平岡 「僕たちの姿を見ながらモニターで1人でやっていたんですよね?」

稲垣 「そうそう。モニターを見ながら、音を全開にして一緒にやっているんです」

稲垣吾郎ら新キャストが紡ぐ「ハリー・ポッターと呪いの子」の世界とは?【会見リポート】

市村 「あれ(トレーニング)、ついていけないよ、僕(笑)」

稲垣 「市村さんもやられているんですか?」

市村 「ここ(TBS赤坂ACTシアター)に来てからはね。稽古場は広くて、みんな狂ったかのようにトレーニングしていたから」

稲垣・平岡・大貫 「爆笑」

市村 「僕は(トレーニングが行われている)隣の部屋でこっそりやっていました。それで、最後に輪になるところだけ参加して」

平岡 「最後のあそこがまたいいんですよね。最後に全員で円陣を組んで一緒におなじみの呪文を叫ぶんですけど、そうすると一体感が出るし、今日も1日頑張るぞ! という気持ちになるんです。楽屋でやられていたんですね?」

市村 「そう。初日始まったらね、平岡くんが出ない日も、ここに来てください」

平岡 「それをやるためにですか?(笑)」

稲垣 「そのリーダーとしてね」

平岡 「吾郎さんはなぜか、僕のことを肉体派だと思っているみたいで(笑)」

稲垣 「(笑)。そういう稽古とかも新鮮だよね? ウォーミングアップの時間を割いてくれたりとか」

平岡 「はい。今まであまりなかったので。吾郎さんがおっしゃるように、劇場に涼みに来てください」

稲垣吾郎ら新キャストが紡ぐ「ハリー・ポッターと呪いの子」の世界とは?【会見リポート】

大貫 「僕は決まった生活をするというか、当たり前のことなんですけど、早く、しっかり寝て、バランスの取れた食事をとる。1年前はそれに気を付けながらやっていましたね」

市村 「猛暑猛暑と言いますけど、外で仕事しているわけじゃないので、『今日も1日涼しく、いい仕事させてもらったな』という感じです。でも、夏場ですので、変なものを食べないように、食中毒には気を付けていきたいです」

――ありがとうございます! それでは作品を楽しみにしている皆さまへメッセージをお願いします。

稲垣吾郎ら新キャストが紡ぐ「ハリー・ポッターと呪いの子」の世界とは?【会見リポート】

稲垣 「舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』がいよいよ初日を迎えます。とても楽しみです! そして、この広い劇場で一人一人のお客さまと心を通わせながら、心を響かせながら、この魔法の世界を一緒に体感できることを楽しみに、劇場でお待ちしております。よろしくお願いいたします!」

平岡 「『ハリー・ポッター』の世界観に熱狂して帰っていただけたらなと思って、一生懸命稽古してきました。なので、ぜひ皆さんこの会場に来て、体感して帰っていただけたら幸せです」

大貫 「僕は『ハリー・ポッターと呪いの子』を1年目、2年目、3年目を見てきて、そして1年ぶりに4年目の『ハリー・ポッターと呪いの子』を見ていたら、『なんて深い戯曲なんだろう』と新たな気付きがあって驚きました。ドイツの『〜呪いの子』で、クリエーティブ・ディレクターを務めていたエリック(・ローマス)さんがさらにブラッシュアップさせて、3年目とは違う演出がところどころ付いていて、発見するのが楽しいし面白いです。今回は、初めて見る方々はもちろん、今まで『ハリー・ポッターと呪いの子』を見てこられた方たちにも楽しんでいただけると思いますので、たくさんの方に見に来てもらえたらうれしいです」

市村 「過去に2度ほど観客として『ハリー・ポッターと呪いの子』を拝見したんですけど、舞台の上に立ってみると、(劇場内が)びっくりするほど広くて、玉手箱みたいな感じで。さらにいろんな演出や驚きが詰まっていて、こんなに楽しいお芝居はないと思います。テーマは親子の愛です。びっくりと、愛をお届けしますのでいらしてください!」

【作品情報】
舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」
TBS赤坂ACTシアター
上演中
詳細は公式サイト

取材・文/YOONHEE PARK



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