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「新春浅草歌舞伎」中村莟玉インタビュー「学んだことを受け取っていただく気持ちで」2025/01/10

「新春浅草歌舞伎」中村莟玉インタビュー「学んだことを受け取っていただく気持ちで」

 次代の歌舞伎界を担う花形が顔をそろえる「新春浅草歌舞伎」が、今年も1月2日から浅草公会堂で幕を開けている。若手歌舞伎俳優が古典歌舞伎の大役に挑戦できる貴重な機会である上に、今回からメンバーの大半が一新。新鮮で楽しみの大きな公演となっている。その中で、浅草歌舞伎の経験者として新メンバーと共に熱い舞台を繰り広げている中村莟玉。歌舞伎以外にも活躍を広げている注目の若手は、新生浅草歌舞伎にどんな思いで臨んでいるのか。

──莟玉さんが「新春浅草歌舞伎」に出演されるのは今年で10回目。この公演にはどんな思い出がありますか。

「初めて出させていただいたのは高校生だった2013年。まだ部屋子で前名の梅丸の時代でした。それまで丁稚(でっち)を勤めることが多かった年齢でいきなり、『寿曽我対面』の化粧坂少将という大人のお役をさせていただいて。僕は(中村)魁春のおじに習いましたが、舞台稽古には出演者それぞれが習った先輩がいらっしゃって、客席だけで大歌舞伎ができてしまうような方々の中で、試験を受けているような気分になったことを覚えています。先輩方に『あそこが違う』と指摘していただきながら、『じゃあ、こうしてみようか』とみんなで手を取り合って励むことで絆ができていって。個人的にも、浅草歌舞伎で僕のことを知ってくださった方がたくさんいて、そのおかげでチャンスをいただくことも増えたので。携われるうちに恩返しをしたいな、もっと盛り上げていきたいなという思いがすごくあります」

「新春浅草歌舞伎」中村莟玉インタビュー「学んだことを受け取っていただく気持ちで」

──若手の同世代だけで古典歌舞伎に挑戦することの良さも感じられていますか。

「先輩方から教わって勉強できるのはもちろんですが、自分も含め、まだ地盤ができていない中で取り組んでいるお互いの芝居を観ることも、実はすごく勉強になると思っています。教わった通りにやっているつもりなのに、なぜ先輩たちのようにならないのかという相対評価ができますから。先輩方がなにげなくやっていることを改めてかみ砕いて理解して、体になじませていこうとする。そうやって自分たちが学んだことをストレートに舞台でやろうとすると、お客様にもストーリーがわかりやすく届く側面もあるのかなと思うんです」

──その意味では、「新春浅草歌舞伎」は歌舞伎初心者にもうってつけですね。

「もちろんパンフレットに解説が載っていますし、イヤホンガイドもありますし。それから、今年からの新たな試みとして、各部の開演前に僕ら自身で作品の解説をすることにしているので。より分かりやすく楽しんでいただけると思います」

「新春浅草歌舞伎」中村莟玉インタビュー「学んだことを受け取っていただく気持ちで」

──今年は、第1部、第2部ともに「絵本太功記」尼ヶ崎閑居の場を上演し、明智光秀の謀反を題材にした義太夫狂言を異なる配役で見せるという試みもなされています。莟玉さんは、第1部で真柴久吉を、第2部で光秀の妻・操を演じられますね。

「真柴久吉は羽柴秀吉をもじっていて、そういうところにも面白さがあるんですけど。歴史上の人物が登場しながらも家族の情愛といった普遍的なところが描かれていて、派手さは少ないけれども古風で歌舞伎らしい作品です。主役の光秀登場の場面のインパクトもまさしく歌舞伎。そういうフォトジェニックな、心のシャッターを押せる場面がちゃんとあるのも歌舞伎の魅力で、話は覚えていないけど印象に残る場面があった、というのも歌舞伎の大事な楽しみ方だと思います。お役としては、十次郎や初菊という若いお役を飛び越して久吉と操をさせていただけるのはびっくりですが、そろそろチャレンジしなきゃいけない年齢になったんだなという思いもあります。立役も女方も挑戦していきたいと思っている中で、父・(中村)梅玉が手掛けている久吉、魁春のおじが勤めている操という役どころを、2人から教われるのは非常にうれしいです」

──第1部では「道行旅路の花聟 落人」でおかるも演じられます。

「若手はあまりやっていない演目なので、20代で挑戦するというのはいいプレッシャーを与えていただけてありがたいです。これも古風な歌舞伎らしい舞踊劇です。理屈じゃなく楽しんでいただいて、観劇後に華やかな気持ちで浅草の街に出ていただけたら何よりです」

──昨年の明治座の舞台「応天の門」に出演されたり、歌舞伎以外でも活躍しておられます。一人の役者としてどうありたいと思われていますか。

「極論を言うと、歌舞伎って役者を観に行く演劇だと思うんです。この人があの役をやるから観に行こうとか。歌舞伎をご覧になったことがない方が何かでその役者を知って、一度観てみようと足を運んでいただくとか。ですから、そういうきっかけになる役者であれたらと思っています。ただ、僕自身は飛ぼうとするとつまずくタイプなので(笑)。一段一段積み重ねていくということを、今年もやっぱり心がけたいです」

「新春浅草歌舞伎」中村莟玉インタビュー「学んだことを受け取っていただく気持ちで」

【プロフィール】
中村莟玉(なかむら かんぎょく)

1996年9月12日生まれ。東京都出身。B型。2004年3月、一般家庭から中村梅玉に入門。06年に梅玉の部屋子となり中村梅丸を名乗る。19年、梅玉の養子に。中村莟玉と改名する。前名からの愛称「まるる」で親しまれ、パンダ好きでも知られる。ラジオ番組「カブキ・チューン」のパーソナリティ。2月には舞台「めいぼくげんじ 夢浮橋」が控える。

【インフォメーション】
「新春浅草歌舞伎」

チケット好評販売中
2025年1月26日(日)まで上演
第1部:午前11時~ 第2部:午後3時~
劇場:浅草公会堂

取材・文/大内弓子 撮影/尾崎篤志

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