山田裕貴が語る「ちるらん」土方歳三として生きた熱、そして物語の続き――2026/06/26 17:00

幕末という動乱の時代に、武に咲き、武に散っていった美しき徒華(あだばな)たち――バラガキ集団「新撰組」の生きざまと散りざまを描いた人気コミック「ちるらん 新撰組鎮魂歌」初の実写化。TBS×U-NEXT×THE SEVENによるグローバルプロジェクトで、ただ己の“最強”のみを追い求めたけんかっ早い“バラガキ”、土方歳三(山田裕貴)が、近藤勇(鈴木伸之)と出会い、沖田総司(細田佳央太)、斉藤一(藤原季節)といった強烈な個性を持った仲間たちと共に、歴史に名を刻む“新撰組”を作り上げ、激動の時代を駆け抜けた生きざまを描く。TBS系での放送、その後U-NEXTでのシリーズの配信を経てHBO Maxを通じ世界配信も展開され、主演として土方を演じた山田に、配信後の今だからこそ語れる「ちるらん」への思いを聞いた。
大きな作品の中心に立つことについてのプレッシャーを問いかけると、山田は「自分は背負いすぎてしまうタイプ」だと明かす。ある時、大作の主演を務める山﨑賢人に心境を率直に尋ねたことがあったという。
「僕はどうしても、“俺、主演だ。どうしよう”ってなっちゃうんです。でも、賢人に『大きな作品の主演って、どう考えているの?』って聞いたことがあって。その時に返ってきた言葉が、すごくいい答えだなと思ったんです。彼は本当に曇りも迷いもなく、ポロッと言っていました。ああ、そうだよなって感じて。作品は、自分1人で作っているわけじゃない。もし何かがうまくいかなかったとしても、自分1人だけでやっているわけじゃないんだっていう、その感覚を教わったというか。彼は一生懸命やっている中に、そういう考え方がちゃんとあるんだなと思って、こういう人が真ん中にいなきゃいけないんだなと思いました」
その言葉は、「ちるらん」へ向かう山田の心を少し軽くした。
「それを聞けていたから、気持ちが楽になったんです。その後にチーフプロデューサーの森井(輝)さんから『(『ちるらん』の主演を)やってくれないか』と言われて。僕もやってみようと思えたのは、賢人のおかげもあるなと思っています」
そうして始まった「ちるらん」という作品への挑戦。現場で山田が特に強く感じたのは、キャスト、スタッフ全員の熱量だった。
「もちろん和気あいあいとはしていたんですけど、たわいもない会話をする時もあれば、1時間現場を止めて、みんなで話し合うこともありました。監督さんやカメラマンさんも意見を言ってくださり、森井さんも来てくださって、みんなで“こうじゃない気がするんですけど”と話し合えた。それがありがたかったです」

山田自身は、自分が特別に何かをした感覚はないという。ただ、自然と彼の周りに人が集まり、作品への思いが大きくなっていった。
「僕、本当に何をしたのか分からないんですよ。小学校の頃から、誘っていないのに人が家に来るタイプで。僕は1人でゲームをやりたいタイプなのに、みんなが僕の家でゲームをやっているんです(笑)。今回も、僕が声をかけたのって、本読みをもう1回やろうと新撰組隊士のみんなに集まってもらって、部屋で読み合わせしたくらいなんですけど、みんなが進んで助けてくれるんです。本当にみんなのおかげです」
仲間への思いは、山田が語る主演像にもつながっている。
「自分のキャリアとかは、どうでもいいんです。主演だろうが何だろうが関係ない。ただ、僕が主演をやる以上は、みんなが今以上にもっと羽ばたいてくれたらいい。この『ちるらん』で、ノブ(鈴木伸之)が、佳央太が、先輩方含めた全員がもっとジャンプアップできる作品にすることが、主演としての仕事だと思っています」

「ちるらん」が描くのは、単純な善悪ではない。土方歳三と芹沢鴨の関係についても、山田は1人の人間同士として捉えていた。
「なぜ武士が斬り合う際に名を名乗るのかって、斬った相手の名前を覚えておくためなんですよね。自分が斬った人も背負うという意味で、武士というのは礼儀と愛を人間に対して持っている。もちろん暴力は悪いことです。でも、僕が思うのは、『本意ですか?』ということなんです。鴨も1人の人間で、自分が強すぎて悩んできている。本当は刀を持って戦うことが、彼にとって本当の人生ではなかったかもしれない。ただ強く生まれてしまったから、あの時代に“そんなに強いなら剣を持ってみろよ”と言った大人がいたわけじゃないですか。時代が悪かったのかもしれません」
土方と鴨は、敵対するだけの存在ではない。どこか似た者同士でもあった。
「彼はもし、そういうふうに育っていなかったら、土方と仲良く生きられていたかもしれない。似た者同士。だから表裏一体と言っているんですよね。俺たちは似た者同士だっていうのは、そういうことだと思うんです」
その視点があるからこそ、「ちるらん」は激しい斬り合いの物語でありながら、刹那的に生きる者同士の衝突や、友情、絆を浮かび上がらせる。
「そう見ると、『ちるらん』は桜のような物語なんですよね。どう花を咲かせたかで、散るタイミングも違う。同じ花でも、花びらの散っていく順番が違うじゃないですか」

気になる世界配信については、山田自身、積極的に数字や反響を追っているわけではないという。むしろプロデューサーや公式SNSなどから知らされて、その広がりに驚いている感覚に近い。
「これは本当に森井さんと『ちるらん』の公式Xのおかげなのですが、しっかりとした数字で再生数ランキングの状況を知らせてくれるんです。でも、日本じゃ全然ニュースになってくれてないじゃないですか(笑)。僕もニュースの通知を切っているから、世の中で何がはやっているか分からないんです。だからプロデューサーさんに聞いて知ることも多くて」
HBO Maxでのランキングについても、実感より驚きの方が大きかった。
「HBO Max全世界で今5位(世界の配信ランキングを集計する調査サイト・FlixPatrolのデイリーランキング)なんですって聞いて、『そうなの!?』という感じでした。僕も皆さんと同じ感覚なんです。全然実感が湧かない。もっと話題にしてほしいです(笑)」

物語はまだ終わったわけではない。高杉晋作役の北村匠海の登場について触れると、山田は笑いながら期待をにじませる。
「北村匠海ほどの俳優が、あのシーンだけで終わるわけないって思いますよね(笑)。ぜいたくすぎる。もっと見たいと思ってくれている人もいるだろうし、原作としてはまだありますから。見てくださった方の中で、『続きないの?』と思ってくれている人が声を上げてくれれば、何かにつながるんじゃないかなと思います」
とはいえ、続編への思いを強くあおるわけではなく、彼の中にあるのは、土方歳三としてこの物語を最後まで生きたいという願いだ。
「続きがあったら、最後まで土方歳三という人間をやれたら、自分の何かが変わる気がしているんです。それがお芝居のレベルアップなのか、自分の感覚の変化なのか、何かは分からないけれど、すごいことが起きるような気がしているんです。まだ到達できていない場所なので、皆さんがより作品を愛してくれることはありがたいなと思っています」
刹那的に生きた武士たちの熱、刀に込めた礼儀と覚悟、そして俳優たちの思い。山田裕貴が語る「ちるらん」は、さらなる熱を帯びている。

【プロフィール】
山田裕貴(やまだ ゆうき)
1990年9月18日生まれ。愛知県出身。近作は、映画「木の上の軍隊」「ベートーヴェン捏造」「爆弾」(いずれも2025年)、大河ドラマ「どうする家康」(NHK)、日曜劇場「GIFT」(TBS系)などに出演。主演映画「爆弾」では第49回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。また、映画「キングダム 魂の決戦」(7月17日公開)では主人公・信と相まみえる趙国の将軍・万極役を演じる。

【コンテンツ情報】
「ちるらん 新撰組鎮魂歌」
U-NEXT
国内独占配信中
※HBO Maxで世界配信中。
取材・文/杉嶋未来 撮影/蓮尾美智子 ヘアメイク/小林純子 スタイリスト/森田晃嘉 衣装協力/ROLD SKOV(BOW INC) SOSHIOTSUKI(MATT.)
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