「豊臣兄弟!」倉悠貴インタビュー後編 仲野太賀&菅田将暉らに刺激「貪欲でいないとな」2026/09/13 20:45

NHKの大河ドラマ「豊臣兄弟!」(日曜午後8:00ほか)で、黒田官兵衛を演じる倉悠貴に前後編にわたってインタビュー。
本作の主人公は豊臣秀長(仲野太賀)。戦国時代のど真ん中、強い絆で天下統一という偉業を成し遂げた兄・豊臣秀吉(池松壮亮)と、それを支えた名参謀・秀長の物語。秀長の目線を通して、兄弟が夢を追い、天下へ駆け上がっていく姿を描いている。
秀長と秀吉の天下取りを支える軍師として、次第に存在感を増してきた官兵衛。若さと野心を前面に出していた登場当初から、幽閉などを経てより冷静な人物へと変化する中、家臣団の中で担う役割も大きくなっている。
一方、倉自身にとっても、長期間にわたる大河ドラマの撮影は、俳優として多くの刺激を受ける日々だという。官兵衛の役作りや、初大河で感じた芝居の変化に迫った前編に続き、後編では、仲野や池松らと芝居を重ねる中で感じたこと、豊臣家臣団の“影のヒロイン”と語る蜂須賀正勝(高橋努)への思い、そして物語終盤への覚悟を聞いた。

――秀長と官兵衛は、ともに頭脳で兄を支えるという意味で、役割が重なる部分もあります。その違いをどのように考えていますか。
「小一郎(秀長)も、多分官兵衛と同じくらい頭がいい。それは官兵衛はもちろん、みんな分かっていることだと思うんですけど、多分、違いは“熱いか、熱くないか”なんですよね。人情で動けるのが小一郎で、ある種、時に冷酷に動けるのが官兵衛。冷静さを持つ人がチームの中に一人いた方がいい。そういう意味での役割は考えています」
――ただ、官兵衛自身が冷たい人物というわけではないですよね。
「そうですね。官兵衛は決して冷酷な人間ではなくて。史実にも残っているように、人間味があって情に厚い方だったそうです。それこそキリスト教に入信して、愛を論じた方でもある。このドラマの中では、『時に冷静な判断を下せる男』という見え方なのかな」

――秀長自身に対しては、どんな思いを持っているのでしょう。
「官兵衛にとっては、『支えていきたい兄貴分』みたいな存在なんじゃないですかね。敵対するようなものはないですし、手を取り合ってやっている。劇中では詳しく描かれていないですけど、そういうイメージです。正勝だったり、小一郎だったり、家臣だけで話す瞬間ももちろんあるだろうし、いいチーム感のある関係だと思っています」
――一方、秀吉との関係については?
「正直、今までは2人のシーンがあまりなかったんですよね。よくある『秀吉に怒られる』みたいなシーンも、今のところはあまりなくて。でも、息子の命を助けていただいた、恩ある豊臣兄弟。今はそれに尽きると思います。秀吉さんとのシーンも、今後まだあるんですけど」

――一年近く一人の人物を演じ続ける中で、官兵衛への理解も深まっていますか。
「不思議と、あまり長くは感じていなくて。ほかの仕事もやりつつ、ずっと『黒田官兵衛』が自分の中にいるみたいな。ちょっとほかの役に引っ張られちゃう時もありますけど(笑)、なかなかできる経験じゃないですし、すごく面白いです。官兵衛の歴史などを動画やインターネットでどんどん調べちゃうんですよ。この間も姫路城や播磨の辺りを観光しに行ったんですが、知れば知るほど深みがある。やればやるほど新しい発見がある一方で、どこまで突き詰めても分からないことだらけなので、大変さも感じます。歴史に詳しい方の話を聞くと、『そこまで考えるのか』と思うこともあります(笑)」
――実際に姫路城や備中高松城跡を訪れて、どのような思いを抱きましたか。
「行ってみないと分からないことって結構あるじゃないですか。お城の構造だったり、『この窓ってそういうための窓なの?』という発見があったり。展示を見て、『本当にいた人物なんだな』と実感することもあります。勉強だけなら、多分ネットで調べた方が早い。でも、現地の空気を実際に感じられるのはいいなと思いました。ずっとスタジオで撮っているので、戦場のリアルな規模感って分からなかったりするんです。備中高松城跡でも、『この辺が秀吉の陣営だった』と教えてもらって、実際に行くとやっぱり勉強になります」
――作品をきっかけに、歴史との距離も近くなったと。
「そうですね。別の仕事で熊本へ行った時も熊本城へ行って、『あ、清正が建てた城だ』って(笑)。大阪が地元なので大阪城にも行きましたけど、今までとは見える景色が変わりました。自分の生活の中に一つ色が増えたような感じがありますね」
――そうやって調べたり、実際にその土地を訪れたりすることも、長く一人の人物を演じるからこその経験ですね。
「一年やることによって、役に対する理解度をどんどん深めていける。今は長くても3、4か月ぐらいで撮るドラマや映画が多いと思うんですけど、長く演じることでいろんなことを発見できる分、自分のお芝居の幅も広がっているのかなと。勉強に近いような感じがしますし、ちょっと成長できているのかなとは思っています」

――初めての大河が「豊臣兄弟!」で良かったというお話もありました。仲野太賀さんと共演して、どんなことを感じていますか。
「太賀くんは、ずっと悩んでいらっしゃるような感じがするんです。現場でもずっと何かを考えている様子で、自分の中にぐるぐる渦巻いている葛藤や熱量のようなものが、小一郎、秀長と重なっている。それが魅力的に見えるなと、勝手ながら感じています。それに、時折『パーン!』と出るような熱量があるじゃないですか。ああいうものもなかなかできることじゃないし、それを毎日やっているわけですから。そのパワフルさも素晴らしいなと思って、めちゃくちゃ勉強になりました」
――池松壮亮さんはいかがですか。
「池松さんは普段、とてもニュートラルな方なんですけど、お芝居になると全く違う空気をまとわれるんです。一瞬にしてその場の空気を自分のものにしてしまう。歴史もものすごく勉強されていて、シーンごとに資料を読み込んで、『ここはこういうシーンなので、これぐらい高い熱量を持ってやりましょう』というところまで考えてくださる。時には演出部やプロデューサーのような視点を持っているというか。『こんなに作品に対する解像度が高い俳優さんなんだ』と感じて、本当に尊敬しています」
――仲野さんや菅田将暉さんらの作品への向き合い方にも刺激を受けていますか。
「僕らの世代からすると少し先輩なんですが、菅田くんや太賀くんの(芝居に関する)会話を聞いていると、『これだけ活躍されているのに、どこまで貪欲なんだ』と思うぐらいなんです。シーンごとにも、一つ一つのセリフにもこだわって、相談しながら作っている。その姿が最近では、一番印象に残っています」

――その姿を見て、ご自身にも変化が?
「僕らぐらいの世代って、いい意味で優等生というか、割とこなせちゃう人が多いと思うんです。その中で、こんなに貪欲にシーンや作品を良くするために動けるって、素晴らしいことだなと。僕自身も、俳優という仕事に少し慣れてきた中で、『もっと貪欲でいないとな』って思いました。熱量をいただきましたね」
――そうした真剣に作品と向き合う俳優陣が見せる、ユーモアのある空気も「豊臣兄弟!」ならではですね。
「太賀くんと池松さん、それに正勝役の高橋さんが、現場の空気を引っ張ってくださっています。戦国時代ど真ん中の物語なので、重たい雰囲気になってもおかしくないんですけど、そのバランスをお三方が取ってくださっている。4人での軍議のシーンでも、ちょっとしたやりとり一つで全然違うものになるんです。僕にはない発想ばかりですし、そこまで細かく相談しているわけでもなく、ノリの中で自然に生まれることもある。『こういう感じでやろうぜ』ってパッと形にできちゃうんですよね。何十話も一緒に撮影していたら、それは自然とチーム感も出るよなって」
――キャストだけでなく、スタッフも含めて一つのチームになっている。
「そうですね。本当にいいチームです。スタッフさんも含めて、みんなが『今日はどんなことを見せてくれるんだろう』と待っているような感じがある。メイクしていても『このシーンいいんだよ』と言われたり、『昨日の柴田勝家(山口馬木也)たちの芝居はすごかったね』って話していたり。それぐらい作品に対する愛や熱量があります」
――では、羽柴家臣団の中で、好きな人物を一人挙げるなら。
「それはもう、蜂須賀正勝、一択です。ダントツに(笑)。高橋努さんのお人柄が大好きというのもあるんですが、官兵衛と正勝って、豊臣家において両翼を成す存在。官兵衛が策を考える人だとしたら、正勝はほかの人たちとの関係を取り持つ人。それぞれに役割があって、対になる関係だと思っています」
――劇中では、その関係性が厚く描かれるわけではありませんよね。
「そうなんです。豊臣兄弟の話だからこそ、そこはあまり描かれない。だから、描かれないところをどうにか2人で作れたらいいねという話は、ずっと努さんがしてくださっていました。お芝居の中で正勝を見ることは結構ありますし、『黙っていてください』みたいなツッコミも、努さんだからこそ面白くしてくれるという安心感がある。みんなから“影のヒロイン”って呼ばれているくらい(笑)。正勝がいるから、このチームが成り立っているような感覚がありました」
――史実からすると、やがて正勝は亡くなりますね。その存在の大きさをより感じていますか。
「『これからどうやって生きていけばいいんだ』って、みんなで言っています(笑)。正勝がいたからこそポップに見えていた部分もあったし、兄弟を本当の意味で、一番近くで支えてきたのも、正勝だと思う。“もう一人の兄弟”みたいなところもあったんじゃないかな。ずっと初期からいた人たちが、みんないなくなっていくので。官兵衛が自然な笑顔になれたのは、おそらく正勝がいる瞬間くらいなんです。僕自身も非常に助けられましたし、官兵衛の人間っぽさが一番見える相手だったんじゃないでしょうか」

――物語も終盤へ向かいます。ここからの官兵衛は、どのように変わっていきそうですか。
「もう一段階、多分大人になると思います。ビジュアルも含めてどうするか、今メイクの方とも相談していて、『シミを増やしてみるのか』とか、いろいろ考えています。脚本が上がってこないと、まだ分からないですが、晩年の官兵衛は優しい人間だったという話もあるので、そっちの方向も見せたいです」
――これまであまり見せてこなかった一面も出てきそうですね。
「すごく笑っている顔だったり、楽しそうなところだったり。今までも『どれぐらいはっちゃけるか』という話はあったんですけど、ずっと戦続きの人生なので、なかなか見せられなかったんです。そういう人間味も見せていきたいですね」
――クライマックスへ向けて、どんな気持ちで官兵衛を演じていきますか。
「もう後悔ないように突っ走るしかないなと。最近、僕自身のお芝居、仕事に対する心境もちょっと変わっていて、『マジで頑張る時だな』という気持ちがあるんです。官兵衛を演じたことは、この先一生残り続けるし、自分のフィルモグラフィーの中でも大きな役になると思うので、後悔のないようにやりたいです。あとは、どれだけ倉悠貴という人間がやれるのか。そこは真摯(しんし)に向き合いたいと思っています。若い世代もたくさん出てきますし、僕も本来は若い世代なんですけど(笑)、その中でどれだけ違いを見せられるかというのも、ある意味、戦いだと思っています。本当にもう、突っ走るしかないので。頑張ります!」
【プロフィール】
倉悠貴(くら ゆうき)
1999年12月19日生まれ、大阪府出身。19年にドラマ「トレース~科捜研の男~」(フジテレビ系)で俳優デビュー。2021年には連続テレビ小説「おちょやん」(NHK総合ほか)で主人公の弟役を演じて注目を集める。近年の主な出演作は、ドラマ「SHOGUN 将軍」(24年/ Disney+)、「ガンニバル」シーズン2(25年/ Disney+)、「銀河の一票」(25年/フジテレビ系)など。
【番組情報】
大河ドラマ「豊臣兄弟!」
NHK総合
日曜午後8:00~8:45ほか
NHK BSプレミアム4K
日曜 午後0:15~1:00ほか
NHK BS・NHK BSプレミアム4K
日曜 午後6:00~6:45
取材・文/斉藤和美
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