知っているともっと楽しくなる「中国時代劇ドラマの基礎知識」2026/07/15 12:00

続々と日本に上陸する中国ドラマ。時代劇から現代劇まで、ロマンスからサスペンス、アクションからヒューマンまでジャンルも豊富なので、興味のある作品がきっと見つかるハズ。そんな見始めればやめられない中国ドラマを楽しむために、覚えておくとさらに理解が深まる、中国ドラマの秘密に迫る。
同じ中国人なのに声は別の人? 吹き替え全盛の中、自分の声で勝負する俳優たち
中国ドラマのセリフは当然中国語なので、てっきり俳優本人がしゃべっているものと思いがち。でも実際には、多くのドラマで「配音(ペイイン)」と呼ばれる吹き替えが行われている。広大な中国では、各地方で別の言葉といえるほど方言が違うため、テレビなどでは「普通話(プートンホア)」と呼ばれる標準中国語を使うことが義務付けられている。普通話は北京語をもとにしているものの、北京語とも微妙にイントネーションが違うため、プロの声優を使ってすべて普通話に吹き替えているのだ。
このおかげで、俳優は出身地に左右されることなく、香港や台湾、日本や韓国の俳優もセリフ覚えに苦労せずに出演できる。宮廷ドラマの傑作「宮廷の諍い女」では、主演のスン・リーと配音のチー・グァンリンによる相乗効果で、ヒロインが生き生きとしたキャラクターとなった。
ただ、吹き替えを使うことに批判的な声もあり、自分の声を届けたいという俳優も少なくない。トップ女優のヤン・ズーは「長相思」など、50以上の作品で自分の声を使用。「星漢燦爛〈せいかんさんらん〉」のウー・レイとチャオ・ルースー、「蒼蘭訣~エターナル・ラブ~」のワン・ホーディーも自分の声でセリフを言っている。もっとも、自分でセリフを言う場合でも、撮影とは別に後で声を入れるアテレコ作業が加わる。後でセリフが差し替えられ、口の動きとセリフが合っていないことも多い。
総再生数○億回というケタ違いの数字は本当? 最近は熱度が人気のバロメーター

中国ドラマの公式サイトや紹介記事では、再生回数の多さで作品のヒットぶりを伝えることが多い。「永遠の桃花~三生三世~」は累計再生回数500億回を突破、また同作でヒロインを演じたヤン・ミーが主演の「扶揺(フーヤオ)~伝説の皇后~」は145.5億回、シャオ・ジャン&ワン・イーボー主演「陳情令」も100億回超えと、圧倒的な再生数を誇る。
とはいえ、中国発表の再生数はケタ違いすぎ。日本では、民放のテレビ配信サービス「TVer」の1か月あたりの再生数記録は、2025年11月の5.8億回(※)。世界配信されるNetflixの場合、「イカゲーム」がシリーズ全体で6億回(※)。それでもすごい数字だが、中国だけで100億回を超えられるものだろうか?
そもそも中国は人口も多いため、1割が見るだけで軽く1億を超える。さらに話数も長いので、累計となると数字が膨らむのは仕方がない。ただ、再生数を増やすための水増しや不正アクセスが横行したため、最近は総視聴回数ではなく有効再生回数で発表するようになっている。同一のアカウントからの頻繁なアクセスや、一定の時間以下の視聴ではカウントされなくなったのだ。そのため、「私の完璧な結婚」が約20億回など、現在では10億回再生くらいで大ヒットとみなされる。さらに最近は、SNSでのコメント数や盛り上がりなどをアルゴリズムでスコア化した「熱度指数」が重要視されるようになっている。
(※)公式HPで発表。
ハリウッド映画並の製作費は配信会社が調達。潤沢な資金で日本スタッフも招聘(しょうへい)?

中国の時代劇ドラマは、日本とは比較にならないほどの莫大な予算を投じて制作されている。例えば、中国史上唯一の女帝を描いた「武則天-The Empress-」(82話)(写真)は56億円、ラブ史劇「扶揺(フーヤオ)~伝説の皇后~」(66話)は85億円、宮廷ドラマ「如懿伝~紫禁城に散る宿命の王妃~」(87話)は約96億円に達する。「武則天-The Empress-」では3000組を超える衣装など、そのスケールは圧倒的だ。なぜこれほどまでに予算が膨らむのか。その理由は、巨大なセットや豪華な衣装、俳優の出演料、最新のVFX、そして50話~90話にも及ぶ長い話数にある。
日本のドラマ制作費は1話3000万円が目安といわれている。中国ドラマの制作費をこの基準で単純計算しても、50話なら約15億円、90話なら約27億円となり、金額面では日本のドラマ制作費を大きく上回っていることが分かる。
中国のドラマ制作の中心は、「愛奇芸(iQIYI)」や「優酷(YOUKU)」、「騰訊視頻(テンセントビデオ)」などの配信プラットフォーム。中国は社会主義国なので国が補助していると思われがちだが、基本的には各プラットフォームが自社の資金を投じ、大手IT企業やスポンサーからの出資を募り、膨大な製作費を確保している。費やされた製作費は、配信サイトでの有料視聴のほかに、国内でのテレビ放映権、日本の配信サービスをはじめとした海外輸出により回収される。構造的にはNetflixと同じだ。
こうした潤沢な資金を背景に、優秀なスタッフが集められる。「鳳凰の飛翔」では、アカデミー賞衣装デザイン賞にノミネートされたウィリアム・チャンが衣装を担当し、「大唐女法医~Love&Truth~」では、映画「キングダム」シリーズの小澤秀高を日本から美術指導に招いた。映画並みのクオリティーを実現してヒット作を増産し、さらなるヒットを呼び込み資金を回転させているのだ。
スタッフで選べば失敗なし? 主演だけでなくキャストや監督、脚本に安心感
日本において、中国ドラマの人気の元となっているのはやはり人気スター。シャオ・ジャンやワン・イーボーの出演作品は、放送が始まる前から大ヒットが約束されている。とはいえ、「この人が出るドラマなら絶対に面白い!」という名脇役や、物語を作るすごいプロデューサーや監督、脚本家がたくさんいることも、ヒットの大きな理由の一つになっている。
時代劇でいえば、やはり「瓔珞〈エイラク〉~紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃~」のプロデューサー、ユー・ジョンが代表的。「尚食(しょうしょく)~美味なる恋は紫禁城で~」など数多くの時代劇を手がけ、ウー・ジンイエンやシュー・カイなど、数多くのスターを育て上げた。
近年の中国ドラマは小説原作が多く、原作者で選ぶのもおすすめ。「風起洛陽~神都に翔ける蒼き炎~」の馬伯庸(マー・ボーヨン)は、発表作品のほとんどが映像化され「長安のライチ」は、映画とドラマをほぼ同時に製作。日本でも翻訳出版されている。すでに他界した武侠作家の金庸(きんよう)は、「射鵰英雄伝」や「天龍八部」などが何度も映像化され、原作ファン、ドラマファンから愛されている。「慶余年~麒麟児、現る~」や「大宋少年志~secret mission~」のワン・ジュエンなど、オリジナル脚本で勝負する人気脚本家も多いが、「蒼蘭訣~エターナル・ラブ~」の九鷺非香(ジウ・ルー・フェイシアン)が、自身原作の「護心(ごしん)~デスティニー・ラブ~」で脚本を担当するなど、原作者が脚本を務めるケースも増えている。
脇役のほうは枚挙にいとまがないが、「鳳凰の飛翔」で皇帝を演じた二ー・ダーホン、「鶴唳華亭〈かくれいかてい〉~Legend of Love」で皇太子を指導するワン・ジンソンなど、名バイプレイヤーと呼ばれる俳優は複数の作品を掛け持ちする。
視聴するドラマが増えていくと「またこの人出てる!?」と、気が付くようになるが、それこそ自分のドラマの好みと配役がマッチしていることの証明。同じ監督の作品に同じ俳優がキャスティングされる傾向が強く、監督と俳優との信頼関係が作品に安定感をもたらす。このように、スタッフや脇役に注目するのも、中国ドラマの新しい楽しみ方といえる。
このドラマはこの時代! ひと目で分かる、中国&日本のざっくり時代年表
中国時代劇の豪華絢爛(けんらん)な世界に浸っているとき、ふと脳裏をよぎる「これって日本だといつ?」という疑問。

王朝の物語と日本の歴史を重ねるだけで、背景がリアルに浮かび上がり、ドラマへの没入感はぐっと深まるものだ。この表は、まさにそんな瞬間のためのガイド。気になる時代と物語を照らし合わせて、中国ドラマの世界をより一層堪能してほしい。
【番組情報】
中国時代劇「武則天-The Empress-」
BS11
月~金曜 午前10:00~11:00
「扶揺(フーヤオ)~伝説の皇后~」
7月31日 金曜スタート
火曜〜金曜 午前4:00〜5:00
※BS11公式動画サイトBS11+とTVerで見逃し配信
※本文中の太字作品はBS11+で配信中
文/菊池昌彦
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