羽生結弦がゆずの「幾重」に乗せ、演技を披露「未来が明るくなるよう祈りを込めて」2026/06/10 19:00

震災の経験を未来へつなぐため、NHKが人気デュオ・ゆずと共に制作した「NHK東日本大震災15年 震災伝承ソング『幾重』」。今年2月にNHKの番組で解禁されて以来、東北地方にとどまらず、「うたコン」(火曜午後7:57)などの全国放送でも幅広く展開され、ゆずの公式YouTubeで公開されたMV(ミュージックビデオ)の再生回数は280万を超えるなど、多くの共感の声が寄せられている。
そして、この特別な楽曲「幾重」に乗せ、フィギュアスケーターの羽生結弦が自身の思いを込めたスペシャル演技を披露。演技の収録映像はテレビ番組やインターネット上で順次放送・掲載される予定だ。


収録を終えた羽生が、演技を終えた感想や、自身の震災への向き合い方の変化などについて語ってくれた。

――収録お疲れさまでした。演技を終えての感想をお願いします。
「本当に緊張しました。やはりいろいろな思いを込めなければならないプログラムですし、素晴らしい楽曲に対して完璧でいなければと思い、自分自身を追い込んできたので。その練習の成果はある程度出せたので、『良かったな』と思っています」
――ラストカットを撮り終えた時のお気持ちを教えてください。
「やり切ったな、という感覚はありました。この収録に向けてたくさん練習してきたので、ちょっとほっとしました」

――「震災のことを伝えていく」という意義について、どう考えていますか?
「15年という月日がたったとしても、一生忘れることはないと思います。いろいろな方々が震災を経験しました。東北だけではなく、関東の方も強い揺れを感じた方々がいらっしゃったと思いますし、揺れを感じなくてもすごくショッキングな映像があったりして、さまざまなかたちでの傷がきっと残っているんだろうなと思います。ただこの15年の間に生まれてきた、育ってきた命もたくさんあって。そういった方々につらい記憶を押し付けたくはないのですが、『こんなことがあったんだよ』ということを届けなければいけない義務があるのかなということは、何となく自分の使命感としてあって。ゆずさんの曲だからこそ、震災の記憶がない世代にも届く思いもあると思いますし、実際に震災を経験して傷を抱えている方々、『まだまだ苦しいよ』という方々もいらっしゃると思うので、そういった方々の傷に寄り添いながらも、少しでも未来が明るくなるようにという祈りを込めて滑らせていただきました」
――収録を重ねる中で演技が変化しているのを感じました。それはどのような意図からでしょうか?
「今回、自分で振り付けをさせていただいているので、楽曲を聴いて、体が動くままに……。やはりフィギュアスケートの演技というのはすごく一期一会なところがあって、その時々で乗せられる感情や呼吸、スピード感、回転の速さ……本当に一度として同じものがありません。そういった意味で変わってしまったのかな、と。すごく音と、歌詞と、思いを大事にして表現させていただきました」

――とてもゆったりとした滑りでした。どんな意図があるのでしょうか?
「すごく丁寧に“氷を感じる”ということをしていました。最初の方の歌詞に『静かに海』という言葉があり、そこでハイドロブレーディングをするんですけど、振り付けをしたリンクが僕自身が被災したリンクだったので、『(今は)こんなに静かな氷だけど、あの時はすごく波を打っていて本当に異常だったな』みたいなことを思い出して……。そういったことも含めて、丁寧に丁寧に、氷を感じながら滑っていきたいなという気持ちがありました。また、『会いたい』『会えない』というパートでは、“言葉にしたいんだけど、言葉にしたら零れちゃいそう”とか、『会えない』となっている時に“後ろに下げられてしまう” “現実に引き戻されてしまう”みたいなことを考えながら滑っていたので、“ダッシュ”や“走り出す”ではなく、“一歩ずつ歩んでいく” “未来に向かって丁寧に進んでいく”ということをスケートで表現しようと振り付けながら思っていました」
――震災から15年、震災について気持ちの変化はありますか?
「受け止め方がうまくなったな、とは思います。15年という節目に感じやすい5の倍数の年で何かコロっと(気持ちが)変わるかと言われたらそんなことはなくて、毎日の積み重ねの中でちょっとずつ変化していくことだと思いますし、行ったり来たりする時もあるとは思います。でも自分の傷への向き合い方として、被災された方々のつらい記憶や痛みに寄り添うということへの向き合い方が少しずつ上手になってきたかな、と。ただただ悲しむだけではなく、ただただ寄り添おうと頑張るだけではなく、ちゃんと手を差し伸べられるようにちょっとずつなってきたと思います。そして、自分自身が取り残してきた、ふたをしてきた過去の自分に対しても『大丈夫だよ』と言ってあげられるように変化してきたかな、と。『幾重』という楽曲にそういうふうにしていただけたというのもありますし、この楽曲の演技を見た時、“ちょっとでも前に向こう”“傷をかみ締めながらも未来に向かって”と思っていただけるためには、やはり自分自身がそうなっていかなきゃいけない。すごくいいきっかけをもらえたなと思っています」

――震災を知らない世代がこれから増えていきます。あらためてどのように震災を伝えていきたいと考えていますか?
「“つらい記憶や思いは(震災を経験した)僕らだけにあればいい”と思っていて、それを無理やり提示することが伝承ではないと僕は思っています。『こんなことがあったよ』ということを伝えていくのはいいのかもしれないけれど、(伝えられた人が)悲しくなるようなことはしたくない。記録としていろいろな災害があったことは残すべきだと思うんですけど、震災を知らない世代にちゃんと残ってほしいことは、僕らが学んだ『こういうことがあったから、こういうふうにすれば命を守れるようになったんだよ』ということだけだと思っていて。それさえちゃんと残っていれば、生きていけるのであって。僕は阪神・淡路大震災が起きる直前くらいに生まれているんですけど、阪神・淡路大震災がきっかけでいろいろな耐震基準が変わって建築基準が変わって、そのおかげできっと3.11の時に崩壊した建物が少なくなったとも思いますし、きっと僕らも守られたんだと思うんですよね。それと同じように、3.11があったから防波堤や水門、『ここには住居を建てちゃいけないよ』というような境界線などいろいろなものができて、景色は変わってしまったかもしれないけれど、『景色が変わったことによっていろいろなものが守られてるんだよ』ということだけはどんどん伝わっていければいいな、と漠然と考えています」

羽生の思いが詰まった「幾重」の演技は、6月11日、6月12日午後6:10~の「てれまさ」(NHK総合、宮城県域放送)や、6月24日午後3:10~の「午後LIVE ニュースーン」(NHK総合)などで放送予定。
震災から15年、羽生が氷上で届ける祈りのメッセージを見届け、それぞれの未来へとつないでいこう。

【番組情報】
「てれまさ」
NHK総合 ※宮城県域放送
6月11日、6月12日 午後6:10~
※「NHK ONE」で見逃し配信あり。
「午後LIVE ニュースーン」
NHK総合
6月24日 午後3:10~
※「NHK ONE」で同時・見逃し配信あり。
このほか、全国放送の番組やミニ番組などでも放送予定
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