「スモークブルーの雨のち晴れ」高橋名月監督が語る、武田航平&渋谷謙人との撮影の裏側2026/06/06 18:00

武田航平さんと渋谷謙人さんがダブル主演を務める、ドラマDiVE「スモークブルーの雨のち晴れ」(月曜深夜1:29)が、読売テレビで放送中。波真田かもめさんによる同名人気BLコミックスを実写ドラマ化したもので、脱サラしたアラフォー同士のライフとラブを描く“大人ビターなラブストーリー”だ。
実力派俳優である2人の繊細な芝居に加え、美しくこだわり抜かれた世界観で、国内外を問わず、多くの視聴者を魅了してきた本作もついに次回が最終回。監督を務めた高橋名月さんに、撮影の裏側や特に心に残っているシーン、最終回の見どころなどを聞いた。2人の印象や俳優として感じた魅力なども。
――まず、高橋さんは以前から原作のファンだったとお聞きしました。
「私は普段からBL漫画や小説を読んでいるのですが、『スモークブルーの雨のち晴れ』は、実写化のお話をいただく前からいい作品だなと思っていたんです。人生のお話だけれど、決して踏み込みすぎない。その優しさがすごく染みるといいますか」
――その後、実写化のお話が来た経緯は偶然だったのでしょうか。
「いえ、(本作の)プロデューサーの本田(七海)さんとは、以前も『つづ井さん』(読売テレビ/2024年)というドラマでご一緒したのですが、当時お互いに『スモークブルーの雨のち晴れ』が好き、いいよねという話で盛り上がって。その後、1年たつかたたないかくらいの頃に、『実写化するので、高橋さん一緒にやりましょう!』と言っていただいて、すごくうれしかったです」
――本田さんとの再タッグ、さらには愛する作品の実写化と、喜びもひとしおだったのではないでしょうか。
「はい。ただ、『やります』とは言ったものの、原作が好き過ぎて……。まさか実写化するなんて思わず、純粋に好きで読んでいただけだったので、すごくドキドキしました」

――私も原作を愛読しているのですが、ドラマを見ていると、構成の妙に驚きます。
「脚本に関しては、本田さんに“絶対に開(真理)さんがいいと思う”というお話をさせていただきました。開さんは、人間の描き方の基準みたいなものがとてもすてき。太いところだけを追っていけば、ある程度話の筋って成立するのですが、決してそうせず、枝葉の部分も大切に流れを作っていく。それを繊細にやってくださるんです。しかも、“実写化、映像にする上で”という部分もすごくシビアに考えてくれますし、私がそれでも『こういうことをしたい』と言うと、その意見も受け止めてくれて……」
――開さんとは、「ふったらどしゃぶり」(MBS/2025年)ぶりのタッグです。放送前から、「この2人なら間違いない」と、話題を呼んでいました。
「『ふったらどしゃぶり』も神がかっていましたが、そもそも開さんご自身が、神がかっていて(笑)。開さんの脚本って、読んでいて立ち止まる瞬間がないんです。脚本を読んでいる中で、感情のつながりに違和感を覚えると、“これはどういうことだろう?”といろいろ考えてしまって。それを解消するための演出をしたりもするのですが、開さんの脚本にはそれがない。なので、撮る側としても全くストレスがなくて、なんであんなことができるのだろうと思います。実は、開さんは魔法使いなんじゃないかな(笑)」

――今回、朔太郎役の武田さん、久慈役の渋谷さんのキャスティングについては、どのように進めていかれたのでしょうか。
「まず、武田さんに関しては当初からお名前が挙がっていたんです。さらには、武田さんご自身も“『スモークブルーの雨のち晴れ』を実写化したい”という思いを持っていると耳にして。“それはもうぜひ!”という感じで、朔太郎は割と早い段階で決まっていました」
――武田さんも、念願の出演だったということをご取材時に語っていました。対して、渋谷さんはどのように?
「渋谷さんとは、昨年別のドラマでもご一緒させていただいたのですが、上半身裸にサスペンダー姿で喜んでいるような、だいぶぶっ飛んだ役だったんです(笑)。でも、それだけ面白いキャラクターなのに、声色や話し方など、要所要所で色気を感じて……。お芝居に対する真摯(しんし)な向き合い方も含めて、渋谷さんが久慈を演じたらかっこいいんじゃないかなと思ったんです。それをお伝えしたら、皆さんの中にも同じ思いがあったようで、今回のオファーに至ったとお聞きしています」
――いざ撮影でご一緒して、武田さんの印象はいかがでしたか?
「武田さんは、朔太郎にぴったりというのはもちろん、おそらく誰よりも深くこの『スモークブルーの雨のち晴れ』の世界観を愛しているんです。なので、この世界観に浸りたい、なじみたいという欲求がすごく高い。お芝居に関しても、ほぼほぼ私が何も言わずとも朔太郎になっていました。当初、衣装合わせの時に“こういう世界観で、お芝居の方針はこういう感じにしたい”とお話ししたところ、すでに“もう分かっているよ”と言わんばかりのリアクションをいただいて(笑)。そのとおり、私なんかよりも早くこの世界観に順応して、お芝居の面でもすごく引っ張ってくださって。監督として、頼りになる兄ちゃん的存在でもありました」

――SNSなどでも、武田さんの深い“スモブル愛”を感じます。それでは、渋谷さんの印象も教えてください。
「演じる姿を見て、私は当初から“久慈、カッコいいじゃん!”と思っていたのですが、渋谷さんはすごく思い悩んでいて。撮影が始まって、最初の3日間ぐらいは、休憩中もずっと『俺、大丈夫かな? ここはこう思うんだよね』という話をしに来てくれていました。この世界観にすごく共鳴はしているけれど、それが正解なのかどうかをきちんと探りたい、みてくれではなく、『こういう久慈の振る舞いはどうかな』というところを突き詰めたい方なんです。私には到底思いつかないアイデアもたくさん出していただいて、もちろん助けていただきながら、“一緒に作った”感覚も大きいかもしれません」

――これまで第1~9話を通して、数々の名シーンが多くの視聴者の心を揺らしてきました。高橋さんの中で、特に心に残っているシーンを教えてください。
「朔太郎に関しては、第6話で多治見(康之)さん(佐野和真)と2人で話しているシーンです。それまでの朔太郎は久慈や家族以外の人とがっつり接することはなく、多治見さんとのベンチのシーンが初めて。(多治見役の)佐野さんも気合をいれて役作りをしてくださって、撮っていて本当に楽しかったです。“お芝居って、こんなに可能性があるんだ”とあらためて感じて。いつもの朔太郎なんだけど、いつもの朔太郎じゃない。見ちゃいけないものを見てしまった感じがあって、すごくズクズクしました」

――朔太郎と多治見のシーンは、どのシーンも温かく印象的で、私も大好きです。
「ありがとうございます。久慈に関しては、久慈家での実さん(田中幸太朗)とのシーンが大好きで。第4話はもちろん、第6話の、縁側で過去のことを語り合っている時の2人の表情がとてもすてきですよね。久慈家という安定した場所に、“とげ”のような存在の実さんがやって来るというので、前日からみんなどこか浮足立っていたのですが、それもあの兄弟関係を表現するのにいい作用を及ぼしていたんじゃないかなと。ドキドキワクワクしながら撮影した、大好きなシーンの一つになりました」

――久慈と実のシーンも、この作品になくてはならない大切なシーンの一つですよね。朔太郎と久慈、2人のシーンではいかがでしょうか?
「たくさんあって本当に迷うのですが、第3話の車の中でのキスシーンでしょうか。このシーンは、ドラマというよりも、映画を撮っているのに近い感覚がありました。途中で“もう、顔とか見えなくていいんだよな”みたいな気持ちになって……いや、見えなきゃダメなんですけど(笑)。自分の中に眠っていた、“かっこいいものを撮りたい”という、純粋な欲求が久しぶりに湧き出てきたシーンの一つです」

――以前ご取材した際、武田さんと渋谷さんも、車中のシーンをお気に入りと挙げてらっしゃいました。ベッドシーンの美しさも本作の見どころの一つですが、撮影する際にこだわったことはありますか?
「なるべく客観性を持たせないように、と思っていました。セックスは2人だけの間で行われることで、それを第三者的な目線から見てしまうと、一気に冷めてしまって没入できないなと。行為を撮るだけであれば引きでも成立しますが、私はそこに2人の関係値も含めて乗せたい、ガッツリ寄ってそれを捉えたいんです。それをカメラマンさんも分かってくださっていて、すごく狭く、限られた画角で、照明も美しさを追求して撮影しています」
――ベッドシーンも、武田さんと渋谷さんご自身が「もっとこうしよう」と、いろいろ挑まれていたとお聞きしました。
「そうですね。2人が“こういうこともできるよ”“こういう方がきれいに見えるよね”ということを率先して提案してくださって、ベッドシーンもすごくやりやすかったです。ほかのシーンもそうですが、お二方に助けられて、私はそこに乗っかっていた感じでした」

――劇中、お二方のアドリブ、自然とあふれ出たお芝居もたくさんあったとのこと。
「はい。そういうシーンにこそ、私はそこにいることの意味、2人の関係性が出ていていいなと思っていました。立ち上がる時に相手の膝に手を添えたり、タバコをトントンと詰めてみたり。そういう細かいことが自然と出てくるのが、俳優としてプロフェッショナルだなと。普段やらないことをいつもやっているかのようにやるというのは、お芝居の究極系だと思っているので。現場で気付かなかったことに編集で気付いたりもして、あらためて“すごい先輩方だな”と実感しています」
――撮影を通して、俳優として「すごいな」と感じたお二方の魅力を教えてください。まず、武田さんからお願いいたします。
「役に対する解像度、分析力の高さです。朔太郎って、武田さんと共通している部分もあるとは思うのですが、実は全然違っていて。特に、感情の表出の仕方なんかは全然違うタイプの人間だと思うんです。私だったら、“この人は私とこういうところが違うな”と一線を引いてから、その人を理解しようと心を持っていくのですが、武田さんはそこがすごくシームレス。“僕はこうだけど、朔太郎はこうだよね”という感じで、すぐに人の感情のラインを追うことができるんです。武田さんは、そういうところがかっこいいなと思いました」

――それでは、渋谷さんはいかがでしょうか。
「渋谷さんはできること、できないことをすごくはっきり持っている方で、俳優である前に、1人の人間として演じている感じがします。そうやって、自分としての人間性をしっかり保持しながらも、きっとどこにでも行ける方。だから、ぶっ飛んだ役もできるし、久慈みたいな役もできる。それが渋谷さんの魅力であり、自分を使ってお芝居をするからこそ、すごく悩んでいたんだろうな、とも思いました。自分を抱えながら新しい場所に飛び立つのって、すごく勇気がいるじゃないですか。怖いけれどぶつかりに行く、その姿勢が素晴らしいなと思いました」

――ついに最終話(第10話)が待ち受けますが、見どころはどのような部分になっていますか?
「第10話は、皆さんに“この2人が、この2人でいて良かった”と、心から感じていただけると思います。この先も2人の物語は続いていく中で、これまでずっと心の中につかえていたもの、不安だったことがすっとほどけていくような……。さらには2人で温泉を満喫して、環ちゃん(山本龍人/ICEx)も頑張っていて、まるで特別大サービス(笑)。ぜひ、多くの方に見守っていただきたいです」

――最後に、高橋さんがこの作品を通じて受け取ってほしいメッセージ、この作品に込めた思いを教えてください。
「私、これまで作品を通して明確なメッセージを伝えたいと思ったことがないのですが、この作品に関しては、一つの提案、ライフプランとして、“こういう人たちがいるよ”とお伝えしたいです。一緒にいるとかいないとか、付き合っているとか付き合っていないとか、好きとか好きじゃないとか、そういう2択以外の選択肢を示してくれる作品だと思っています。幸せは一つじゃない、“こういうふうに生きてもいいんだ”と、新たな視点をたくさん得られる作品なのかなと。朔太郎と久慈の恋模様はもちろん、それ以外の人々の生きざまもすてきに描かれているので、“いろんな人生があるんだな”と感じながら見ていただけたらうれしいです」

【番組情報】
ドラマ「スモークブルーの雨のち晴れ」
読売テレビ
月曜 深夜1:29~1:59
取材・文/片岡聡恵
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