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矢野奨吾◆「いろんなお仕事が“声優”のお仕事につながっていくと感じています」2019/08/21

矢野奨吾◆「いろんなお仕事が“声優”のお仕事につながっていくと感じています」

現在絶賛放映中のアニメ「ギヴン」は、過去にトラウマを抱えた少年・佐藤真冬と彼の歌に魅せられた同級生・上ノ山立夏の恋を描いた、切ないラブストーリー。フジテレビで人気の深夜アニメ枠“ノイタミナ”初のBL作品ということでも話題を呼んでいるこの作品で主人公の真冬を演じるのは、テレビアニメシリーズ初の主演となる矢野奨吾。2014~17年放送のアニメ「遊☆戯☆王ARC-V」、17年と18年にアニメ化もされているゲーム「アイドルマスター SideM」などで人気キャラクターを演じてきた注目の若手声優の1人だ。今回、主役の座を射止めるまでの経緯やキャラクターへの思い、矢野自身の来歴、これからの目標などたっぷり語ってもらった。

─「ギヴン」への出演が決まった経緯を教えてください。

「テープオーディションとスタジオオーディションがあって、僕は真冬役と立夏役で受けました。真冬は歌唱があったので、テープオーディションでは自分で歌を吹き込んで、スタジオでもディレクションをしていただきながら歌いました」

──その時にはどんな歌を歌われたんですか?

「劇中に出てくる曲が課題曲だったので、それを歌いました」

──難しかったですか?

「そうですね、難しかったです。元のキーがとにかく高くて。僕は声が高い方なので出るには出るんですけど、当日『(設定されたキーの)マイナス2で歌わせてほしい』とお願いしたら、『マイナス2と、プラマイゼロの両方を歌ってみて』とリクエストがありまして。結果的にマイナス2、マイナス1、プラマイゼロの3段階歌わせていただきました。歌詞は覚えていたので、ずっと目を閉じて歌っていました。そのおかげで、気持ちを乗せることができたので、それが良かったのかなと今になって思います」

矢野奨吾◆「いろんなお仕事が“声優”のお仕事につながっていくと感じています」

──その後、収録ではどのキーで歌うことになったんですか?

「プラマイゼロで歌うことになりました」

──すごいですね! 歌唱力も評価されてのキャスティングですね。

「後からスタッフさんにお聞きした話によると、歌が上手な方はたくさんいらっしゃったけど、お芝居も含めて真冬のイメージに近いのが僕だったということらしくて…。お芝居ありきで、さらに歌もあって、という形で選んでいただいたんだと思います」

──演じている真冬というキャラクターについて、どう捉えていますか?

「とても複雑な過去を抱えたキャラクターで…。ただ、内向的で口数も少ないんですけど、友達や環境によっては明るくなれる子なので、元々ネガティブなのではなく、内気でマイペースなのだと思っています。複雑な生い立ちではありますが、性格としてはどこにでもいるような普通の男子高校生なのかなと」

──台本で真冬のセリフを見ると「……」が多くて、表現が難しいのではないかと感じました。

「確かに、『……』がめちゃくちゃ多いです(笑)。監督からは『考えながらしゃべる子というより、考えがまとまってからしゃべる子なんだ』ということを言われました。言いたいことはあるけど、自分の気持ちが追いついていないだけなんだっていう。そう言われて、真冬の芯の強さみたいなものが理解できました。音楽をやりたいと思ったら一生懸命食らいついていくところも、彼の芯の強さを表している部分だと思います」

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──ご自身で真冬に似ていると思う部分はありますか?

「自分が思いを向けられるものに対して真っすぐなところですね。それで周りが見えなくなったりもしてしまうんですが…。大切な人やものをなくした時って、頭では理解しているけど体が追い付かないっていう感覚は、誰しもあると思うんですけど、それは僕にも当てはまるところがあって。そういう意味で、彼が抱えている感情は理解しやすかったです」

──真冬を演じる上で準備されたことなどはありますか?

「圧倒的な歌唱力を持っているキャラクターなので、ボイストレーニングをさらに増やしました。鼻歌ですら、立夏(内田雄馬)が“こいつをバンドに誘いたい”と思うレベルのものにしないといけないので、ハードルは高かったですね」

──鼻歌でも「こう歌って」というディレクションは入るんですか?

「キーが高いバージョンと低いバージョンとあって、収録当日までどっちでいくか決まっていなかったんです。普通に鼻歌として歌うとめちゃくちゃ高くなってしまったので、『ちょっとニュアンスが違うな』ということで、高いものと低いものの間ぐらいでということに現場で決まりました。また、お昼休みの誰もいない真冬と立夏2人だけの空間で歌うものだったので、どこまで声を出していいのかも考える必要がありました。リアルな日常っぽさが出るよう、監督や音響監督の皆さんとディスカッションしました」

──リアルを追求されているんですね。

「そうなんです。無言のシーンも多くて、会話していないけれどその場の空気が伝わる瞬間を大事にしている作品です。だからこそ、無言の後のセリフが人間味あるやりとりになっていたり、すごくリアルだなと思います」

──バンドを描いている作品なので、やはり演奏シーンも見どころですよね。

「収録では、実際に弾いてくださっているバンドの手の動きがワイプで抜かれて見られるようになっているんです。実際こういう形で弾いていて、こういう音が鳴っているというのを見ながらできるので、とてもイメージしやすいです。素晴らしい演奏シーンになっていると思うので、ぜひそこにも注目していただきたいです」

──ありがとうございます。矢野さんご自身のことも伺っていきたいのですが、そもそも芸能界に入られたきっかけは?

矢野奨吾◆「いろんなお仕事が“声優”のお仕事につながっていくと感じています」

「高校3年生の時にアナウンサーになりたいと思っていて。高校を卒業して一浪している時に『新世紀エヴァンゲリオン』(1995~96年)に出合ったのですが、それまでは、アニメに興味がなく全然知らなかったんですけど、主人公の碇シンジの声を女性の緒方恵美さんがやられていると知って、“声優さんってすごいな”と思うようになりました。それでアナウンサーという声の仕事を目指していたこともあって、声優にも憧れるようになり、大学進学と共に上京して、声優の勉強を始めました」

──「~エヴァンゲリオン」の後もいろんなアニメをご覧になったんですか?

「放送されていたものはたいてい見ました。大学に行ってからもアニメ熱は冷めずに、授業をサボって見たりもしていました(笑)。1日で12話分見ていた作品もありましたから(笑)」

──特に好きなアニメは?

「『true tears』(08年)です。大学を受験している時に最終回の1話前まで見たんですよ。それで、最終回は受験勉強を頑張って、進学が決まってから見ようと決めて。無事合格してから上京して最終話を見て泣きました(笑)。これも『ギヴン』と同じく青春群像劇なんです。元々、こういうジャンルが好きなのかもしれないです」

──その後、劇団スーパーエキセントリックシアターに所属されて、舞台に出られて、アニメ「遊☆戯☆王ARC-V」で声優デビューされましたね。

「アニメの収録というものが右も左も分からないようなド新人でした。そんな僕を、3年間という長いスパンでよく捨てずに使っていただいたなと(笑)。能動的にアクトプランを作ってディスカッションして、進化したものができるという、みんなで一緒にものを作っていく楽しさもあの時学びました。あの経験がなかったら今の僕はいなかったと思います。作品は終わりましたが、一緒にずっと歩んでいくだろうなと思えるキャラクターに出会えて感謝しています」

──そういう意味では、「アイドルマスターSideM」も、何年にもわたって演じているキャラですね。

「そうですね。まだまだ続いていくコンテンツだと思います。あれだけたくさんの人に愛されている作品に、まさか自分が11歳の役で出演するとは(笑)。イベントでは11歳としてステージ上を駆け回っていて、アナウンサーを目指していた時の自分からすると考えられないです(笑)」

──10年後も11歳として?

「40歳になっても…やらせてはいただきたいです! ゼーハー言っていると思いますけど(笑)」

──キャラクター主体のイベントの時、声優の皆さんは自分自身をどれぐらい出すか悩まれるようですね。

「悩みましたね…。“アイマス”(アイドルマスター)という元々あるコンテンツで、キャラクターは既に出ていて、僕のことを知る人は、ほぼいない中でのスタートだったので、キャラクターとしてのパフォーマンスはとても考えました。でも皆さん温かく受け入れてくださって、本当にありがたかったです。最初は300人ぐらいのキャパの劇場でお披露目させていただいて、その後、いきなり約6000人キャパの(千葉・)幕張メッセだったので、正直余裕がなかったんですけど(笑)。それでもペンライトを振って応援してくださる皆さんの声や表情は忘れられないです。どれだけうそで楽しんでも、それはうそでしかない、僕らが本当に楽しんでいないと伝わらないっていうことを学ばせていただきました」

──では、最後に今後の目標を教えてください。

「アニメはもちろん、外画(洋画)の吹き替えやナレーションなど、全部ができて初めて“声優”といえるようになると思っています。そして、いろんなお仕事が“声優”のお仕事につながっていくと感じています。ラジオでは、自分がどこまでしゃべれるのか、聞いてくださる皆さんが何を思ってメールを送ってくれるのかを知ることができて、自分を見つめ直せたりできますし。そうして学んだことがまたイベントでのパフォーマンスにも生きてくると思うので、どのお仕事も欠けてはいけないものだと思います。そして、とにかくお芝居がしたいです!」

矢野奨吾◆「いろんなお仕事が“声優”のお仕事につながっていくと感じています」

【作品情報】

矢野奨吾◆「いろんなお仕事が“声優”のお仕事につながっていくと感じています」

「ギヴン」
フジテレビほか
木曜 深夜1:05~1:35
※地域により放送日時が異なる

フジテレビの“ノイタミナ”枠初となるBLコミックのアニメ化。ギターを始めた頃の情熱を忘れてしまっていた頃に佐藤真冬(矢野)と出会った上ノ山立夏(内田雄馬)は、彼の歌声に強くひかれ自分が所属するバンドに勧誘する。いつしか立夏は真冬に特別な感情を抱くようになるが…。

【プロフィール】 

矢野奨吾 Shogo Yano 
1989年3月19日、徳島県生まれ。うお座。B型。2014年にアニメ「遊☆戯☆王ARC-V」で声優デビュー。その後、アニメ「ツルネ―風舞高校弓道部―」(18~19年)などで活躍。矢野が劇中でボーカルを務めるアーティストであるギヴンが、「ギヴン」のエンディング・テーマ「まるつけ」で9月18日にデビュー。

取材・文/高瀬純 撮影/為広麻里



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