「十六夜膳房」秋谷郁甫、パンクな閻魔王役。「最高にパンク」な見た目も芝居はナチュラルに2026/10/12 12:00

日本テレビ系で10月12日にスタートするドラマDEEP「十六夜膳房」(月曜深夜0:24)。亡くなった人が訪れる“黄泉の食堂”を舞台に、死者たちが“最後の一皿”と向き合いながら、後悔や未練を手放して来世へと旅立っていくヒューマン・グルメ・ファンタジーだ。
秋谷郁甫が演じるのは、パンクファッションに身を包んだ閻魔王(えんまおう)。インパクトのあるビジュアルとは対照的に、芝居では「作り込まない」ことを大切にしたいという。撮影を前に、閻魔王の役作りや衣装誕生の裏側、共演する白無常(声・渋谷凪咲)との掛け合い、さらには秋谷自身の素顔まで聞いた。
――まず、出演のオファーを受けた時の率直な感想と、原作を読んだ印象を教えてください。
「オファーをいただいた時はうれしかったです。狩山俊輔監督とは昨年『良いこと悪いこと』(日本テレビ系)でご一緒し、『また成長した自分でご一緒できたら』と思っていたので、それがこんなにも早く実現したこともありがたかったです。原作にはいろいろな方の人生が描かれていて、自分自身にも突き付けられるようなテーマがたくさんあると感じました。一方で、映像化されたら絶対に温かくて柔らかい、すてきな作品になるんだろうなという期待もありました。何より、黄泉の食堂や来世に渡る橋が、映像でどう表現されるのかがすごく楽しみで。早くセットの中で皆さんとお芝居ができる日を心待ちにしていました」
――閻魔王という役を、どのように捉えていますか。
「監督からは、『秋谷のままでやってくれ』と言っていただきました。ニュートラルにいてほしいという意図なのかなと受け取っています。地に足のついたキャラクターとして演じることで、この世界観を支えて、『本当に黄泉の食堂ってあるのかもしれない』と思っていただける存在になれたらいいなと。閻魔王にとって、人が亡くなり、心残りを軽くしてから転生していくことは当たり前の出来事。『こういうシステムだよね』という感覚で受け止めているはずなので、あまり肩肘張らずに演じられたらと考えています」
「最高にパンク」な閻魔王誕生秘話 衣装も髪形も足し算で構築

――一方、ビジュアルはかなりインパクトがあります。今の姿にたどり着くまで、どんな試行錯誤があったのでしょう。
「まずは“パンクな閻魔王”を作り上げるために、衣装も何度変更してもらったか分からないくらい、全アイテムが元の形から変わっています。もともとなかった缶バッジがどんどん付いていったり、バンダナが付いたり。閻魔王の“パンク”って、心の根っこがパンクというより、パンクファッションを楽しんでいる閻魔王なんだと思うんです。だから、かっこよく引き算するより、足し算していく方向で作っていくことになって。『缶バッジいいね』となったら全部付けちゃおうとか(笑)。アクセサリーもじゃらじゃら付けて、いろいろ試しました」
――髪型にも紆余(うよ)曲折があったとか?
「最初は本当にツンツンで、太陽みたいな感じだったんですよ。みんなで『これ、めちゃくちゃパンクだね』『めっちゃ面白くない?』と盛り上がっていたのですが、最後の方に監督が『俺、この髪型だとキャラクターのセリフが入ってこないかも』と(笑)」
――そこまでインパクトが強かった(笑)。
「髪型に目が行きすぎて(笑)。閻魔王は、あまり深く考えずに孟婆(中村蒼)と白たん(白無常/声・渋谷)に接しているように見えつつ、この世界の重要な部分を担っているキャラクターでもあります。孟婆にかける大事な言葉もあるので、それが髪型に全部持っていかれちゃうかもしれないので、『やめましょう、考え直しましょう』となって、今の髪型にたどり着きました。髪型を少し控えめにした分、眉毛の色を抜いたり、目元を黒くしたりして、パンク感を出しています。皆さんが試行錯誤して、ここにたどり着いたという感じですね」
――完成した姿を見た時はいかがでしたか。
「最高ですよね。最高にパンクです。採用されなかった最初の髪型もすごくお気に入りでした。人生で二度としないと思うので、いい経験になりました(笑)。今の髪型もスタイルも、“パンクな閻魔王”という『十六夜膳房』の閻魔王だからこそ成立するものなので、個人的にはすごくテンションが上がっています。衣装を着た瞬間に、もう閻魔王になれちゃうかもしれないですね」
――これだけ外見を作り込む一方で、お芝居では「作り込まない」ことを意識しているんですね。
「そうですね。とにかくナチュラルに、キャラクターを作り込もうとしないことは意識していきたいです。閻魔王だけを切り取れば、この見た目も“黄泉の世界”という設定も、すごくファンタジーに見えますが、閻魔王と黄泉の食堂が一つの世界としてなじんだ時に、『これ、ドキュメンタリーなんじゃないか』と思えるくらいにしたい。本当に黄泉の食堂が存在していて、パンクファッションが好きな閻魔王がいて、『へえ、こんな仕事があるんだ』と思ってもらえるくらい、ナチュラルに演じたいです」

――閻魔王は、渋谷さんが声を務める白猫の白無常との掛け合いも多い役です。撮影ではどのようにお芝居をすることになりそうですか。
「渋谷さんがいない状態でお芝居する日もあるでしょうが、先に声をいただいて、それを聞きながらお芝居できます。もし現場で少し脱線して、台本にないことをやったら、追加で声をいただくこともあるかもしれないですけど(笑)。本読みで実際に掛け合えたこともあって、そこはあまり心配していないですね」
――渋谷さんが演じる白無常には、どんな印象を持っていますか。
「白たんは、少し冷たかったり、関西弁でスパッと言ったりするところもあるのですが、渋谷さんはすごく柔らかい空気を持っている方で。取材でもずっと笑顔で受け答えされていて、『本当に優しい方なんだな』と思いました。渋谷さんが演じることで、その中に孟婆や閻魔王に対する優しい思いや、猫らしい気まぐれさもあふれ出てくるんじゃないかなと勝手に予想しているので、そこもすごく楽しみです」
失敗してから考えるタイプ 秋谷が語る素顔と人生観

――秋谷さんご自身は、新しいことに挑戦する時、どんなタイプですか。
「僕は普段あまり人に相談しないですし、悩み事もそんなにないというか(笑)。『まあ、なんとかなるか』という感じです。新しいことに挑戦する時も、とりあえずやってみて、失敗してから『じゃあ次はどうしようかな』と考えるので、なかなか人に相談したりはしないですね」
――まず飛び込んでみるんですね。タイトルの「十六夜」は、満月の翌日、わずかに欠け始めた月を指します。ご自身にも「欠けているけれど、それも悪くない」と思えるところは?
「例えば会食した時に、常連さんばかりの狭い居酒屋とかに行くと、僕、楽しくなって、結構誰にでも話しかけちゃうんです。もしかしたら『今日は一人でゆっくり飲みたい』という方にも話しかけてしまって、『面倒くさいやつだな』と思われていたこともあるかもしれない(笑)。でも、みんなと一体になって話していると、それで友達が増えていったりするんです。もちろん『この人は人見知りなのかな』と考えることもありますが、それでも話しかけちゃう。そういうのが苦手な方には申し訳ないなと思いつつ、話しかけたことで仲良くなれたこともたくさんあるので、いろいろな人と会話できるのはいいところかなと思います」
――現場でも同じように、周囲と積極的にコミュニケーションを取る方ですか。
「カメラが回っていない時、そんなに黙っていられないんです(笑)。それに、じっとしていられなくて。じっと椅子に座っているのが得意じゃない。『ここで待っていて』と言われても、多分5分も座っていられないです(笑)。セットを見に行ったり、誰かに話しかけに行ったりしちゃうので」
――一方、うまくいかない日には、どんなふうに気持ちを切り替えていますか。
「僕は結構、うまくいかなかった日があっても、『今日は二度寝しなかったからな、俺』とか、『今日は一応ベッドメーキングしてから家を出られたし、まあまあいいか、俺』とか(笑)。本当に小さいことで、どんどん自分を褒めていくスタイル。最初から全部うまくいくことなんて、なかなかないと思うんです。それは当たり前だから、あまりネガティブに捉えなくてもいいのかなって。うまくいかなくても、諦めずに挑戦していけば、きっと自分のものになっていく。できないことを否定せず、そこから何を得るかを意識しています」

――本作では“人生で忘れられない一皿”も大切なモチーフです。秋谷さんにとって、忘れられない一皿は?
「母親が作るショウガ焼きです。ショウガ焼きが好きで、外食でもメニューにあったらよく頼むんです。でも、絶対に母親が作るものが一番うまいと感じるんですよね。作り方とかは一切把握していませんが(笑)。だから、それが忘れられない一皿です」
――子どもの頃から、今も変わらず好きな味もありますか。
「『旅がらす』という群馬の丸いお菓子です。祖父母の家に遊びに行くと毎回置いてあって、小さい頃からずっと食べていました。今でもオンラインでたまに買うくらい好きですね。ソウルフードと言ったら大げさかもしれないですけど、僕にとってはそんな存在です」
――最後に、作品を楽しみにしている方へ。一日の終わりに「十六夜膳房」を見る視聴者に、どんな気持ちで眠りについてほしいですか。
「『十六夜膳房』は、見ている方のモチベーションを劇的に上げたり、強く背中を押したりする作品ではなく、そっと皆さんの背中を押してあげられるような作品だと思っています。いつも通りの日常を過ごせることを『ちょっと幸せだな』と感じたり、当たり前だったことをあらためて大切に思えたり。そんなことに少し思いをはせながら、温かい気持ちで眠って、気持ちのいい朝を迎えていただけたらうれしいです」
【プロフィール】
秋谷郁甫(あきや いくほ)
2004年1月12日生まれ。神奈川県出身。俳優としてドラマや映画、舞台で活躍。連続ドラマ「良いこと悪いこと」(25年/日本テレビ系)、「人間標本」(25年/amazon prime)などに出演。現在、「仮面ライダーマイス」(テレビ朝日系)で主演を務めている。
【番組情報】
ドラマDEEP「十六夜膳房(いざよいぜんぼう)」
日本テレビ系
10月12日スタート
月曜 深夜0:24~0:54
取材・文/斉藤和美
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