上川隆也インタビュー「リラの花咲くけものみち2」主演・山田杏奈に感嘆「感受性が高い」2026/09/05 22:45

NHK総合で現在放送中の土曜ドラマ「リラの花咲くけものみち2」(午後10:00)で、犬飼健太郎を演じる上川隆也のインタビューをおくる。
同ドラマは主演の山田杏奈をはじめ、當真あみ、萩原利久が昨年放送の前作から続投し、新たに上川も参加している。北海道の大自然を舞台に、動物と人間の共存を目指し、奮闘する若き獣医師たちの姿を描く。シーズン2は、原作を基にした前作とは異なり、原作者・藤岡陽子さん原案のオリジナルストーリーとなる。
前作で大動物の獣医師を志した岸本聡里(山田)は、共に獣医学を学んだ梶田綾華(當真)、久保残雪(萩原)ら仲間たちと共に国家試験を突破し、獣医師として歩み出す。しかし、「特定家畜伝染病」である「口蹄(てい)疫」の発生により、病気にかかった家畜を“殺処分”するという過酷な試練に直面。命を救うはずの獣医師が命を絶つことに苦悩しながらも、聡里は仲間との強い絆を力に変え、この困難に立ち向かう。
上川が演じる犬飼は原作には登場しないオリジナルキャラクター。家畜保健衛生所の職員であり、口蹄疫の発生時には、牧場主や獣医師の悲しみを理解しながらも司令塔として皆をけん引する役どころだ。
今回は、“口蹄疫”というテーマへの向き合い方、主演・山田との共演秘話、さらには愛犬への秘めたる思いなどを上川にたっぷり聞いた。

――シーズン2のオファーを受けた時の率直な感想を教えてください。
「以前にも本作の役柄と同じく大学の教壇に立ち、講義をする役柄をやらせていただいたことがありましたが、今回は“命”という大きなテーマを扱っています。わが家にも1匹『愛犬』がいるのですが、日々向き合っていく“命”について、僕なりに感じていたことがありました。そんな時に、家庭内だけではなく、畜産という社会と関わる“命”と向き合っている人たちの物語に参加できることには、大いに意義を感じました」
――演じる犬飼は、口蹄疫と向き合っていく難しい役柄だと思います。役作りの上で大切にしたことはありますか?
「犬飼は、彼のセリフにもあるように動物が好きで、動物と関わっていく仕事をしたいという志から獣医師の道を歩んできた人物です。ただ、本作で描かれる“口蹄疫”という伝染病に直面し、彼にとっては仇敵(きゅうてき)ともいえる存在と向き合うことになった。その経験が今の彼の人物像を作っていると理解して演じました」
――では、本作のメインテーマである“口蹄疫”についてどのように捉えられましたか?
「僕なりに勉強したところでは、口蹄疫は人に対してほとんど影響を及ぼさないんです。では、なぜ殺処分をしなければならないのか。これは、口蹄疫と向き合っている全ての方々が抱いている疑問ではないかと。このやりきれなさが視聴者の皆さまの心の片隅に少しでも引っかかっていただけたら、演じたかいがあると思います」
――実際に畜産農家の方々が撮影に協力してくださったと伺いました。農家の皆さんが動物の“命”と向き合う現場を見て、感じたことはありますか?
「言葉にするのが難しいのですが――。“命”と向き合う人々の意志の強さや覚悟を目の当たりにできたのは大きな収穫でした。撮影させていただいた畜産農家の方々は、本来であれば外部の人間が立ち入るべきではない場所まで、消毒や防護の徹底を前提に、快く撮影の許可を出してくださり、毎日のように僕たちを笑顔で迎えてくださいました」
――農家の皆さんの協力があってこそ、物語に厚みを増しているのですね。
「一方で、畜産に関わる方々は、1日も旅行にすら行けない時もあると伺いました。目の前にある動物の“命”を日々管理し、育んでいかなければならないからです。われわれを迎えてくれた笑顔の奥側にはとてつもないご苦労があるのだと思い知らされましたし、皆さんが口蹄疫を身近な存在として日々過ごしていることを感じながら、撮影に臨みました」
――第3回では聡里とともに口蹄疫が発生した折原牧場の牛たちに、犬飼が全頭殺処分を国が判断を下したことを伝えます。聡里は葛藤しながらも現実と向き合っていきますが、犬飼はどのように彼女を見ていたと思いますか?
「犬飼はつらい思いをしながらも、命と向き合う選択をした男です。彼も若い頃は、聡里が目の当たりにした殺処分の現場に葛藤を抱いたはずですが、命と向き合うことをやめなかったから今の彼があります。でも自分と同じ選択を聡里に強いることはできません。犬飼の思いは決まっていたと思います。どんな選択をしても楽ではないと分かっていて、その上で自分も過去に抱いた苦しみを彼女がどう受け止め、判断するのかに委ねるべきだと」
――この残酷なシーンに臨む上で、山田さんと演技について話をされたことはありましたか?
「いえ、演技プランなどを山田さんにはお伝えしていませんでした。にも関わらず、彼女が聡里として向き合って様々に表現してくれた、その非常に高い感受性には本当に感嘆しました」
――“命”を扱う難しい作品の中で、主演を務める山田さんをどのように見ていましたか?
「山田さんの本作への熱量は、まず1作目で築き上げた手応えや聡里に対する思い、共演者への信頼が礎になっていることは彼女を見ていれば分かりました。シビアなテーマに果敢に向かっていく姿は、役者として心地よいもので、僕自身も気持ちよく犬飼を演じさせていただける、そんな空気感を持っている方でした」
――現場での姿から感じられるものがあったのですね。同じく當真さんや萩原さんはいかがでしたか?
「山田さんを含め、當真さんや萩原さんたちは、それぞれ“聡里”や“綾華”、“残雪”として1作目から生きています。そこで積み重ねられた関係性などがあった上で交わされる、彼女たちの振る舞いや、その中から感じ取れる絆を、僕は少し離れたところからほほえましく眺めていました(笑)」

――前作で作り上げられた賜物だったのですね。若い出演者が多い中、折原勝喜役の温水洋一さんや旧知の間柄でもある能見正也役の甲本雅裕さんとの共演についてもお聞かせください。
「温水さんとは世代が近いので、撮影の合間もよもやま話に花を咲かせつつ、いい空気感の中で撮影することができました。甲本氏とは実に長い付き合いで、芝居のすり合わせなど全く必要のない役者です。彼が1作目から作り上げてきた能見先生との会話を楽しませてもらいました」
――信頼されているのがよく分かりました。前作ではあまり見られなかった、冬の北海道の景色が今作の魅力の一つです。撮影していかがでしたか?
「僕がお邪魔したのは3月から4月にかけての数週間でした。札幌では、除雪された雪が山のように積み上げられた風景を見て、北海道の人々がいかに冬と共存しながら生活しているのかを実感しました。また、訪れるたびに減っていく雪の量からは、春の訪れが感じられ、季節の移ろいを目の当たりにできました」

――春の息吹を感じられる北海道での撮影は、心休まる時間にもなったのではないでしょうか?
「札幌から1時間ほど移動しただけで広がる、雄大な酪農地帯。僕は倉本聰さんのドラマに魅せられたひとりなので、北海道の広大な自然の中で撮影に臨めたことは幸せな時間でした」
――共演者の皆さんとの北海道ならではのエピソードはありますか?
「撮影させてもらった農場で作っている牛乳を振る舞っていただいたんです。じつにおいしかったのですが、シェイクするとバターになるほど脂肪分を豊富に含んだ牛乳だったんです。誰が一番早くバターにできるか、撮影の合間に競争していました(笑)」
――皆さんの楽しんでいる姿が想像できました。また、たくさんの動物との触れ合いはいかがでしたか?
「牛たちが本当に人懐こく、好奇心旺盛で僕らが近づくと鼻をすり寄せてくるんです。その愛らしさが印象的でした。だからこそ、今回の“口蹄疫”というテーマの重さを改めて強く感じました」
――先ほどもありましたように、上川さんの自宅にも愛犬がいらっしゃるとのことでした。作品を通して愛犬への思いに変化はありましたか?
「僕は基本的に多くは望んでいないです。彼女が日々幸せに生活していてくれれば、それが何より。その上で、僕らとの時間が彼女にとって心地よいものであってくれるならと願うばかりです。今日も彼女は元気に過ごしております」
――上川家に笑顔を運んでいる存在なのですね。最後に、大学で獣医学を学ぶ聡里たちにちなみ、上川さんが新たに勉強したいことはありますか?
「子どもの頃から男子なら誰もがひかれるような車とか飛行機など機械が好きで。今も楽しんではいますが、掘り下げようとすると必ず数字にぶち当たるんです。例えば力学の問題をひもといこうにも、いかんせん僕は数字にめっぽう弱い。なので、学びたいことがあるとしても、まず数字に強い頭脳が必要です」
――博識な上川さんにさらに磨きがかかりそうですね。貴重なお話をありがとうございました。残りの物語も追いかけさせていただきます。
【プロフィール】
上川隆也(かみかわ たかや)
1965年5月7日生まれ。東京都出身。1989年に演劇集団キャラメルボックスに入団、95年、NHK70周年記念日中共同制作ドラマ「大地の子」で主演に抜てき。2006年のNHK大河ドラマ「功名が辻」では山内一豊役で主演を務めた。
【番組情報】

土曜ドラマ「リラの花咲くけものみち2」
8月22日スタート(全5回)
NHK総合
土曜 午後10:00~10:45
取材・文/S.Kirinuki
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