レジェンド・落合正幸やIMP.の起用で“覚悟と本気度”を見せる「世にも奇妙な物語 FODの特別編」2026/08/22 07:00

1990年に1時間番組としてスタート、レギュラー放送が終了してからも「特別編」として毎年放送され続けてきた日本を代表する、フジテレビの長寿ドラマシリーズ「世にも奇妙な物語」。現在、FOD限定の完全オリジナル版として新作の配信が始まった。題して「FODの特別編」。今年の6月から1年間、毎月最終土曜に「世にも」の新作を見ることができるというファンにとっては夢のような企画である。
「世にも奇妙な物語」といえば、レギュラー放送時は1時間に3本、改編期などに「特別編」として放送されるようになってからは、1回4、5本の短編で構成されるオムニバス形式のドラマ。こうした形式のドラマシリーズがこれだけの長期にわたって放送され続けているというのは、日本ではほとんど例がない。非常に貴重なドラマシリーズと言っていいだろう。
20~30分程度の短編ドラマが描くのはすべて「奇妙な世界」に迷い込んだ人々の物語。ミステリーやSFをはじめ、ホラー、サスペンス、ブラックユーモア、スリラーなど、幅広いジャンルの要素を扱いつつ、さらにクスッと笑えるテイストやハートウォーミングで泣けるエピソードなども織り込んで、それらすべてを「奇妙」という言葉に落とし込むことで統一感を醸し出す。35年以上にわたりいわゆる「世にも」らしさをキープするブランド力は驚嘆に値する。
今回の「FODの特別編」は、シリーズ初の配信オリジナルコンテンツであることが大きな特徴だが、同時にオムニバス形式でなく1作品ずつ公開されていくという形も新鮮だし(現在FODで公開されている過去作品もすべて放送時のオムニバスフォーマットを踏襲していて1作品ごとの視聴はできない)、シリーズの今後を見据えて、新たな領域に挑むスタッフの覚悟が感じられる。
ということで、8月中旬現在視聴することができる二つの新作エピソードについて簡単に紹介しよう。
第1編「明日から来た男」(6月27日から配信中)
■レジェンド監督が14年ぶりに復帰! エンディングは「世にも」ワールドの真骨頂
脚本・演出を手掛けるのは、90年のスタート時から番組を支えてきたレジェンドの1人、落合正幸氏。落合氏がメガホンをとるのは、12年10月に放送された「秋の特別編」の1話であった「ヘイトウイルス」(草彅剛主演)以来のことで、なんと14年ぶりの「世にも」復帰ということになる。主演は美村里江で、「世にも」シリーズでは初出演となる。共演は細田善彦、佐野史郎ほか。

心理療法士・朝見智華(美村)は、記憶があいまいな謎の男・橘奎(細田)のカウンセリングを依頼される。全身傷だらけの橘は初対面の朝見に対し、自分が明日言うことに素直に耳を傾けてほしい、と訴える。自分の人生は過去へ向かって進んでおり、明日は自分の昨日なのだ、と――。朝見は、こうした言動を彼の妄想と考えるが……。
静謐(せいひつ)で無機質な描写が、見ているこちらの平衡感覚をも次第に奪っていく。見知らぬ日常を揺さぶる不穏な空気感はさすがで落合演出がさえわたる。エンディングの突き放されたような感覚は、まさに「世にも」ワールドの真骨頂だ。

第2編「下請け」(7月25日から配信中)
■IMP.のメンバーが総出演! 個性豊かなキャラクターとテンポのいい展開が見もの
奇妙な世界に迷い込む主人公たちを演じる豪華キャストの顔ぶれも「世にも」シリーズの見どころの一つだが、今作に主演するのはアイドルグループ・IMP.のメンバーたち。7人全員でのドラマ出演は初となる。脚本は、第32回フジテレビヤングシナリオ大賞で佳作を受賞した湯田美帆氏。演出は小林義則氏。

組長からある人物の暗殺を命じられた元島組の若頭・一ノ瀬(影山拓也)。もともと他の組の抗争の尻拭いの殺しで、気が進まない。とはいえ命令に逆らうわけにもいかない一ノ瀬がとった行動とは? 裏社会を舞台に、立場の強いものから弱いものへと仕事が丸投げされていくさまを、企業の元請けと下請けの関係になぞらえたコメディータッチの作品。ストーリーがテンポよく展開していく中、あれよあれよという間に事態が思わぬ方向に進んでいくあたりはまさに「世にも」の面目躍如だ。

そして、グループ名義で主演の座を射止めたIMP.メンバーの演技にも注目だ。共通して、ヤクザや半グレなど裏社会の住人たちを演じていながら、それぞれのキャラクターは千差万別でその役づくりは決して簡単なものではなかったと思われる。暴力団の若頭をクールに演じる影山はじめ、各メンバーがクセのある役どころを個性豊かに演じている。IMP.ファンは必見だ。

このあとも毎月末に新作が配信され、来年5月末には全12作がそろう。往年のレジェンドである落合監督を14年ぶりに召喚したり、人気上昇中のIMP.を主演に起用したりと、地上波の「特別編」と同様、あるいはそれ以上のスタッフの本気度が感じられるこの新シリーズ。今後の「FODの特別編」を楽しみに待ちたい。
なお、FODではこの「FODの特別編」のほかに、今まで地上波で放送されてきた「世にも奇妙な物語」の作品の一部も見ることができる。この機会にぜひとも往年の名作を振り返って味わってほしい。
【コンテンツ情報】
「世にも奇妙な物語 FODの特別編」(全12編)
FOD
第1・2編配信中(以降、毎月最終土曜午後9:00に最新話を配信)

文/武内朗
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