ボートレースアンバサダー・植木通彦が明かす、ボートレース=社会貢献スポーツとしての真価2026/07/13 12:00

2018年にボートレースアンバサダーに就任した植木通彦氏。22年には、ボートレース=社会貢献という役割を世間の人々に知ってもらうために、自ら全国を巡る公式YouTube番組「植木さんぽ」をスタートさせた。また、日本全国のボートレース場と周辺施設を巡り、現地の人々との触れ合いを通して、ボートレースが地域社会にどのような貢献をしているかを発信している。
そんな植木氏が自身のキャリアを振り返りながら、ボートレースと社会貢献の結びつきや、今後の活動において“社会貢献スポーツ BOATRACE”をどのように広めていきたいのかを語った。
心に焼きついている小倉駅での光景
――今では、ボートレースアンバサダーとして、競技の魅力普及、社会貢献活動への理解などを伝える立場ですが、ボートレースの世界へ入るきっかけは何だったのでしょうか?
「地元が福岡県北九州市ですので、子どもの頃から父親に連れられてボートレース若松によく行っていました。ただ、その頃はボートレースへの興味はなく、『ついていけば、おいしいものが食べられる』くらいの娯楽の一つでした。当然、ボートレーサーになるなんて全く考えていませんでした。高校在学中に、父親が経営していた会社が傾いてしまい、苦労している両親の姿を目の当たりにしました。そんな時、会社で仕事をしてくれていた職人さんたちから、『こういう仕事(ボートレーサー)があるよ』と教えられたんです。両親に少しでも楽をさせたいという気持ちもあり、みんなに猛反対される中で『1度だけでいいから』と養成所の試験を受けました。私自身も受かるとは思っていませんでしたが、運よく合格してしまったんです」
一刻を争う大けが。病室で気付かされた「人の温かさ」
――親元を離れて養成所へ。当時の思い出話があれば教えてください。
「養成所時代は、とにかく『1日の課題をクリアしていくこと』に集中していました。外出日になってもボートのことで頭がいっぱいで、同期生とは話が合わないこともありましたね。同期からすれば『面白くないヤツ』という印象だったかもしれません(笑)。でも僕の中には、送り出してくれた母親の笑顔が見たい、小倉駅で見送ってくれた同級生たちに恩返しがしたいという気持ちしかありませんでした。だから、厳しい生活も苦だとは思いませんでした」

――現役時代は、大けがを乗り越え“不死鳥”と呼ばれ、1996年には公営競技史上初の年間獲得賞金2億円などの功績を残されました。現役時代の思い出もお聞かせください。
「デビューから数年後、レース中の事故で顔面に大けがを負ったのですが、復帰までの時間が今の自分をつくり上げたと言えるかもしれません。手術の時は血が吹き出ている状態で、一刻を争うように全身麻酔ではなく局所麻酔で縫合していくという過酷なものでした。すごく怖くて、近くにいた柔らかい手の方に『すみません、怖いので手を握らせてください』とお願いしたんです。その方が当時の看護師長さんで、忙しい中ずっと手を握っていてくれました。後に退職されたその方が、私が走る姿を見に来てくれていたと聞いて……。自分の存在が誰かに影響を与えているんだと実感し、そこからSG優勝などにもつながっていったのだと思います」
全国を巡るYouTube番組「植木さんぽ」で実感した、社会貢献のリアル
――その後、39歳で現役を引退。ボートレーサー養成所の校長を務めた後、2018年にはボートレースアンバサダーに就任されました。当時はどのような気持ちで引き受けられたのでしょうか?
「就任の打診があった時は、『今までの経験を伝える時期が来たんだ』と自然と受け入れることができました。競技としての魅力や、ボートレースの収益が社会貢献に使われていることを世間に伝えることで、今まで自分がお世話になったボートレースに恩返しができるのではないかと思ったんです」

――22年からは、ボートレースの社会貢献活動の現場を伝える「植木さんぽ~ボートレースのチカラ!!~」がスタート。各地を回られて、印象に残っているエピソードを聞かせてください。
「例えば地元・北九州の若松では、ボートレースの収益金によって若戸大橋と若戸トンネルが無料化され、人口増や商店街の活気につながっていると聞きました。福岡県の芦屋町でも、収益が活用されたコミュニティーバスが住民の欠かせない足になっています。また、住之江(大阪)編では『箕面市消防本部』を訪れ、ボートレースの収益金が消防車や巨大なはしご車などに活用されていることを知りました。自分が関わってきたボートレースが、地域のインフラや市民の命を守る防災拠点になっていることに、平静を装っていましたが、内心は相当驚きましたね。児島(岡山)の『倉敷ふれあいの丘公園』でも、収益金で整備された巨大な遊具で子どもたちと一緒に滑り台で遊びました。子どもたちの心からの笑顔を見た時、社会貢献がしっかりと地域に根づいていることを肌で感じました」

競技の魅力の先にある「社会貢献スポーツ BOATRACE」
――「社会貢献スポーツ BOATRACE」をどのように世の中に知ってもらいたいですか?
「お客さまに、スポーツとしてのボートレースの魅力やエンターテインメント性を楽しんでいただき、その延長線上に『実は社会の役に立っている』という理解があるのが理想です」

――これからの活動において、植木さんが大切にしていきたいことを教えてください。
「ボートレースという競技が持つ『社会貢献の仕組み』は、世界的にもまれで素晴らしいものです。この誇るべき事実を正確に伝え、共感してくれる仲間を1人でも多く増やしていくことが、これからの私の使命だと思っています」
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