飯島直子「こないだおばさんって言われたよ」――悲哀と共に生きる50代の幸せ探し!2026/02/27 12:00

FODオリジナルドラマ「こないだおばさんって言われたよ」(2月24日からFODで配信中)は、 50代を迎えた女性が直面する日常の揺らぎを、温かさとユーモアで描く作品だ。彼氏の裏切り、元カレとの再会、老眼鏡、親の介護、老後のお金の不安――次々に押し寄せる“50代あるある”に動揺しながら、それでも前を向こうとする姿が実にリアル。主演の飯島直子が演じるのは、ドーナツ店を営む独身女性・三河芽衣子。プロデューサー陣が「奇麗な方というイメージの裏にある、等身大で全女性の味方のような人柄を届けたい」と語る通り、芽衣子は、年齢を重ねることへの迷いや葛藤と向き合いながら、前へ進んでいく。
台本を読んだ瞬間の衝撃を、飯島は今も鮮明に覚えているという。「とにかく面白かったです。台本をいただいて読んで、爆笑したのは初めてでした。次は何が来るんだろうって、どんどんページをめくってしまって」。ただ、同時に「こんなに面白いものを自分が演じられるのかな?」という不安も抱えていた。役作りについては、周囲のキャラクターの濃さと対比させながら、芽衣子の自然体を意識したという。「ほかの役者さんたちのキャラクターがとにかく濃いんですよね。だから逆に、芽衣子はあまり作り込まずにいた方が面白くなるのかなと思って、監督とも話しながらそこを意識しました」。

芽衣子は飯島より少し若い54歳の設定で境遇も違うが、似ているところもある。「恋愛について学ばなかったり、ちょっと抜けていたりするところは似ているかも。台本で読むと『芽衣子、何言ってるんだろう』と思う場面もあるんですけど、演じてみると自分も言いそうだな、やりそうだなという瞬間があるんですよね」。逆に違うのは推し活だ。「芽衣子は結構しっかり推し活をしているんですけど、私はそこまでお金を使うタイプではないですね。でもちょっとうらやましいです」。
肩の力を抜いた姿勢で芽衣子を演じる一方で、飯島は本音も漏らす。「読んで面白いものを演じるのって、すごく難しいんです。コメディーは特に難しい。台本は最高に面白いのに、芝居にしたら『あれ?』となることもあるので、そこは心配でした」。しかし、監督からは「絶対に面白くするから大丈夫」と励まされ、「やりすぎず、頑張りすぎず、フラットに演じました」と振り返った。

演技について語る中で、話題は飯島自身の人生観へ。人生の支えになっているものは何か。その問いに対し、彼女は数年前に経験した喪失について語り始めた。「数年前までは両親もいて、大事なペットもいて、守るべき存在がありました。家族が喜ぶ顔を見たい、そのために頑張っていた。でも両親も亡くなり、愛犬も亡くなって、今は本当に1人なんです」。ただ、その言葉に悲壮感はない。「むしろ自分に向き合う時間が初めてできたという感じがあります。今はすごくフラットな状態で、何のために頑張るのかといえば、自分のためなんだと思います」。
仕事に対する向き合い方も変化してきた。20代、30代の頃は見栄も張り、肩肘も張って、“よろい”で身を固めていた。けれど40代後半から50代になって、そのよろいを1枚ずつ脱いでいけるようになったという。「『あ、こんなもの必要なかったな』と思えるようになって。今はすごく楽です」。
劇中で芽衣子は「おばさん」と呼ばれ、心が揺れる。年齢を重ねることとどう向き合うか。その問いは、飯島自身にも無縁ではない。「30代になるときは一瞬焦りますよね。『え、三十路だ』って。でも30になったら何も変わっていないし、むしろ20代より生きやすかったりする」。年齢は節目ごとに緊張を連れてくる。しかし、実際に越えてみると、景色はそれほど急には変わらない。

では、自身が「おばさん」と呼ばれることはあるのか。「言われますよ(笑)。この間もそれでバーテンダーと大げんかしました。親しい間柄だと、ちょっとからかうつもりで言うこともあるじゃないですか。でもやっぱり、“おばさん”ってあまりいい響きじゃないでしょう。だから私は本編に出てくる“レディー先輩”という呼び方が良いと思っていて。結局は受け止め方だと思うんです」。おばさん=よくない、という風潮は変えていきたい。そんな思いが言葉からは伝わってくる。
気力や体力が落ちてくる中での気持ちの保ち方について尋ねると、飯島は笑いながら答えた。「もうそれは、落ちるのが当たり前じゃないですか。だからあまり逆らわないことじゃないですかね、自分に」。そして少し真剣な表情で続ける。「とにかく『自分一番』で生きてほしいですね。子どものいる人たちも『誰かのため』に生きている。でも最期に後悔するのは、自分を後回しにしたことだったりすると思うんです。だから自分を一番にして生きることが、結果的に幸せなんじゃないかな」。

30代の頃の自分に言いたいことを聞いてみる、飯島は即座にこう返した。「“馬鹿だな”って」。そう言って笑うが、その表情はどこか柔らかい。「でも、当時の経験がなければ今そう思えなかった。痛い目も含めて、一つも無駄な経験はなかったですね」。
作品には「50代あるある」が随所にちりばめられている。飯島が特に共感したのが、「去年買った服が似合わなくなる」というくだりだ。「あれは本当にあるあるです。去年買ったばかりなのに、なんでだろうって」。もう一つ印象に残っているのが、芽衣子が元カレと再会して「もう1回だけ付き合っちゃう?」と言われたときのセリフだという。「芽衣子が『付き合わなくても、付き合っていけるじゃん』と返すんです。あれは本当にすてきだなと思いました」。

最後に、視聴者への思いを伝えてくれた。「50代半ばの女性が誰でもぶつかる感情を、みんなで共有して、『そうだよね』と笑ってもらえたらうれしいですね。共感して、共鳴して、『自分も頑張ろう』と思ってもらえたら。何度でも見返してもらえる、お守りのようなドラマになってほしいです」。
50代の揺らぎを、笑いで包む。その軽やかさこそが本作の魅力だ。深刻になりすぎず、けれど誤魔化さない。笑っているうちに、いつの間にか肩の力が抜けている。そんなさりげない肯定が、このドラマには息づいている。
【プロフィール】
飯島直子(いいじま なおこ)
1968年2月29日生まれ。神奈川県出身。近作は、「最後から二番目の恋」シリーズ(フジテレビ系)、昨年の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK)など。BSフジで「飯島直子の今夜一杯いっちゃう?」(木曜午後10:00)が放送中。舞台「NUKIDO」が福岡(3月7日)ほかで上演予定。
【コンテンツ情報】
「こないだおばさんって言われたよ」(全8話)
FOD
2月24日深夜0:45から第1話(無料)、第2話配信(以降、火曜午後8:00に最新話配信)
出演/飯島直子、堀内敬子、Mummy-D、中田クルミ、のせりん、六角慎司、上野勇希/高田純次、梅沢昌代 ほか
※配信・放送日時は予告なく変更になる場合あり。

取材・文/斉藤和美 撮影/蓮尾美智子
衣装協力/ストラ、ワンエーアールウノアエレ(ウノアエレ ジャパン)、ウノアエレシルバーコレクション(ウノアエレ ジャパン)、ウノアエレ(ウノアエレ ジャパン)
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