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飯島直子主演「こないだおばさんって言われたよ」第1話から「分かる!」と頷く30分2026/02/25 07:00

飯島直子主演「こないだおばさんって言われたよ」第1話から「分かる!」と頷く30分

 2月24日からFODで独占配信がスタートした、飯島直子主演のFODオリジナルドラマ「こないだおばさんって言われたよ」。本作では、彼氏の裏切り、推しの結婚、元カレとの再会、親の介護、老後のお金の不安……人生の折り返し地点で直面する現実と揺れる心をユーモラスに描く。思わず「分かる」と頷いてしまう瞬間もあれば、世代を超えて胸に刺さる孤独や希望もある。そして、50代ならではの“あるある”に加え、誰もがどこかで向き合う不安や葛藤をリアルに切り取る。見終えた後、不思議と前を向きたくなるコメディードラマだ。

 脚本を手がけるのは、演劇ユニット「艶∞ポリス」主宰の岸本鮎佳氏。ドラマ「ディアマイベイビー~私があなたを支配するまで~」(2025年/テレ東系)、「替え玉ブラヴォー!」(26年/NHK)などでも知られ、女性の日常をすくい上げる会話劇に定評がある。岸本氏が「“おばさん”が脇役で描かれがちな中、50代の主人公がうそくさくなく輝けるドラマを」と語る通り、スタッフたちの実体験がたっぷり。人間ドック、リアルなお金の話、今飲んでいるサプリまで、“笑えるのに妙に刺さる”ネタが、テンポのいい会話の中に自然と織り込まれている。

飯島直子主演「こないだおばさんって言われたよ」第1話から「分かる!」と頷く30分

 飯島が演じる主人公・三河芽衣子は、脱サラして小さなドーナツ店を営む54歳独身。仕事はできるのに、恋愛だけは30年以上学べないまま、どうしてもダメ男に引っかかってしまう不器用さを抱えている。それでも、落ち込んだ夜に焼き鳥片手に夜道を歩けば立ち直れるタフさがあり、推しのアクリルスタンドを大事に持ち歩く“かわいげ”もあるヒロインだ。

 脇を固めるキャストも粒ぞろい。芽衣子の高校時代の同級生・神田頼子役に堀内敬子、元カレの元祖パリピ・八海憲伸役にRHYMESTERのMummy-D、自由な価値観を持つ友人・立花カヲル役に中田クルミ、ドーナツ店のアルバイト・玉杉謙人役にのせりん。さらに、芽衣子の母・三河時絵役を梅沢昌代、天の声(じいじ)を高田純次が務めるなど、随所に遊び心のある布陣が効いている。

飯島直子主演「こないだおばさんって言われたよ」第1話から「分かる!」と頷く30分

 第1話は、スポーツジムでの修羅場から始まる。20歳年下の女性と「ビジネスホテルで休憩しただけ」と言い張る彼氏・村山に、芽衣子が放つのは容赦のない正論、「だったら病院連れてけよって話!」。周囲にチラチラ見られながらの別れ話はどこか笑える。講師と笑顔で会話しつつ、「若い女のケツ追いかけてるジジイなんて哀れですよね」とサラッと村山を刺す切り替えぶりが痛快だ。

 彼氏を失った芽衣子の心の拠りどころは、筋肉系アイドル「ザ・プロテインズ」のタスク(上野勇希)だ。「一緒に幸せになりマッチョ!」のツーショットを宝物みたいに見せる姿は、推し活をしている人なら共感必至。ところが、SNSに突如現れた推しからの「ご報告」。まさかの授かり婚に「なんじゃこりゃ!」と崩れ落ちる芽衣子の姿は、笑えるけれどもせつなくもある。

飯島直子主演「こないだおばさんって言われたよ」第1話から「分かる!」と頷く30分

 やけ酒片手に、焼き鳥と語り合いながら夜道を歩くシーンも思わずクスッと笑ってしまう名場面。「お前は裏切らないね」と話しかける芽衣子に、焼き鳥が「俺がお前の推しだったらもっとお前の気持ち考えるけどな」と返す妄想の会話が絶妙で、通りすがりのカップルに「やばいヤツいる」とおびえられても気付かない芽衣子の姿に、哀愁と愛嬌が同居する。

 そしてクライマックス。拾った財布を届けた芽衣子に、持ち主の若い男性がまぶしい笑顔で放つ一言。「ありがとう!!! おばさん!!!」。その瞬間、画面からキラキラの光が消え、芽衣子の頭上にだけ雨が降るというコミカルな演出が、「おばさん」の破壊力をくっきりと浮かび上がらせる。初めて面と向かって“そう言われた”瞬間、芽衣子の中で何かが崩れ落ちるのが伝わってくる。

 後に芽衣子がカヲルへ漏らす本音も、刺さり方が鋭い。「おばさんになりたくないわけじゃない。そんな言葉に感情がかき乱される感じが嫌なの」。老いが怖いのではなく、“言葉一つで現実を突きつけられる”あの感覚が苦しい。ここに、年齢を重ねることの複雑さが詰まっている。

飯島直子主演「こないだおばさんって言われたよ」第1話から「分かる!」と頷く30分

 ちょっとしんどくて、ちょっと滑稽で、それでもどうしようもなくチャーミング。飯島のナチュラルな演技とただずまいが、芽衣子という人をまるごといとおしく見せてくれる。飯島自身が「肩の力を抜いて心が軽くなってクスッと笑える、年齢を重ねることは素晴らしいことなんだという“お守り”のようなドラマ」と語る本作。80歳の母から老いの現実を突きつけられ、20歳の自分の写真に過去からダメ出しされ、親友・頼子の“不穏な秘密”も匂わせる第1話は、笑いながらもどこか胸に引っかかる、「分かる……」と頷いてしまう30分だ。

 この先に待ち受けるのも、きっと甘くはない現実だ。お気に入りの服が似合わなくなる戸惑い、認めたくなかった老眼とのご対面、そして元カレ再登場という波乱も控えている。それでも芽衣子は、転びながらも自分なりのペースで前に進んでいく。しんどさを抱えたまま、それでも笑う。その姿に、気付けばこちらもそっと背中を押されているはずだ。

【コンテンツ情報】
こないだおばさんって言われたよ(全8話)
FOD
2月24日深夜0:45から第1話(無料)、第2話配信(以降、火曜午後8:00に最新話配信)
出演/飯島直子、堀内敬子、Mummy-D、中田クルミ、のせりん、六角慎司、上野勇希/高田純次、梅沢昌代 ほか
※配信・放送日時は予告なく変更になる場合あり。

飯島直子主演「こないだおばさんって言われたよ」第1話から「分かる!」と頷く30分

文/斉藤和美

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