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「嵩(北村匠海)という鏡に自分を映した」妻夫木聡が明かす「あんぱん」八木信之介の心情2025/08/19 08:15

「嵩(北村匠海)という鏡に自分を映した」妻夫木聡が明かす「あんぱん」八木信之介の心情

 NHK総合ほかで放送中の連続テレビ小説「あんぱん」(月~土曜午前8:00ほか)で、八木信之介を演じているのが妻夫木聡。演じる八木は、戦時中は柳井嵩(北村匠海)が所属する小倉連隊の上等兵として彼を気にかけ、戦後は闇市で孤児たちを支えながら再会を果たし、その後「九州コットンセンター」を設立する人物だ。嵩の人生に大きな影響を与える役どころを、妻夫木がどう捉え、演じてきたのかを語ってくれた。

 今田美桜が主演を務める「連続テレビ小説」第112作の「あんぱん」は、中園ミホさんが「アンパンマン」を生み出した漫画家・やなせたかしさんと妻・暢さんをモデルとした嵩(北村)と、その妻・のぶ(今田)の激動の人生を描く。何者でもなかった2人が数々の困難を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した「アンパンマン」にたどり着くまでを紡ぐ、生きる勇気と希望を与える物語だ。

――連続テレビ小説初出演となりますね。今回、「あんぱん」の出演が決まった時の経緯とお気持ちを教えてください。

「昔、ラジオドラマでご一緒したチーフ・プロデューサーの倉崎憲さんとロサンゼルスで久々に再会し、『あんぱん』に出てほしいというオファーをいただきました。朝ドラに出ることは俳優としての目標だったので、すごくうれしかったですね。いざ台本があがって、八木のキャラクターと対峙(たいじ)した時に、一見厳しく見えるけれど、すごく冷静に嵩の才能や人間性を見つめていて。嵩を陰で支える八木の姿勢に、僕も共感できましたし、これならば最後まで皆さんと共に戦い抜けるという確信が持てました。物語としても、人々に希望を与えるお話だと思いますし、そんな作品に携わることができて、本当に幸せです」

「嵩(北村匠海)という鏡に自分を映した」妻夫木聡が明かす「あんぱん」八木信之介の心情

――八木という人物を、どのように捉えていますか?

「静かに本質を見極められる人ですね。生きていると雑念だらけですが、その中で無駄を省いて、あるべきものだけと向き合おうとしている。そのストイックさと繊細さが、僕はすごく好きです。彼が向き合っている世界は孤独だけれども、どこか憧れる部分があります。きっと、彼は彼なりに『生きるって何だろう』というのを、ずっと自問自答していて。嵩とはまた違ったやり方で、彼なりの答えを見つけようとしているのではないでしょうか。その答えを探す中で、“だれかが喜んでくれることが自分の喜び”という思いに至ったんじゃないかな、と想像しています」

――「第10週」に八木は戦時中、小倉連隊の上等兵として嵩と出会いました。戦争シーンを通じて感じたことは?

「『弱い者が戦場で生き残るには、卑怯者になることだ』という八木のセリフもありましたが、やっぱり生きていることが全てなんじゃないかと思うんです。どんなにぶざまでもいい。生きていれば報われると。嵩から似顔絵をもらったシーンでは、戦争に翻弄(ほんろう)されて自分の中で失いそうになっていた清らかな部分を、その瞬間、嵩に引き戻してもらった感覚がありました。八木にとって嵩は、昔の自分を映す鏡のような存在だったんじゃないかな。だから、彼を放っておけなかった。嵩に向けて言っていた言葉は全て、自分に向けて言っていたような気がします」

――その後、「第16週」には、戦後の闇市で嵩と再会しました。八木にとって嵩はどんな存在でしょうか? 

「八木はあまのじゃくなので、素直に感情を表現できない人間ですが(笑)、再会できてやっぱりうれしかったと思います。何よりもうれしかったのは、嵩が変わっていなかったこと。おっちょこちょいなところも含めて、彼のずっと持っているピュアさというのは魅力的ですし、八木にはないものを持っていることが、少しうらやましくもありますね。僕は、嵩って意外と周りの人をどんどん輝かせていく人物だと感じていて。こういうピュアな人間が、世の中を明るくしていくんじゃないかなと思います」

「嵩(北村匠海)という鏡に自分を映した」妻夫木聡が明かす「あんぱん」八木信之介の心情

――では、その嵩を演じる北村匠海さんについては、どんな印象を持たれていますか?

「匠海は、いつもフラットで、力が抜けていて、僕は彼のたたずまいが大好きですね。役をどう演じるかということではなく、もう嵩としてそこに存在しようとしている。そんな匠海のお芝居が素晴らしいなと思いますし、自然に引き込まれて感動する場面がたくさんあります。昔、『ブタがいた教室』(2008年)という映画で共演した時は、僕が教師役で、匠海は生徒役。当時、匠海は小学校4年生でした。僕は次に彼とお芝居をする時には、彼の演じる役を支えるような役がいいなと思っていたので、今回その願いが形になって、本当に感慨深いです。静かだけれども、心には熱いものを持っている。そんな彼の魅力が、今回の役に反映されていて、僕もすごくうれしいですね」

――「第21週」では、八木が家族を失った過去も明かされます。

「もともと演出の方から、そういった背景は聞いていました。八木は、大事な家族を失ったからこそ、目の前にある命の尊さを感じていて。少しでも支えになれるのであれば、自分はいくらでも犠牲になろう。そんな思いで、ガード下の戦災孤児たちを助けていたのだと思います。さまざまな経験を経て、新たに会社も設立しましたし、今後八木がどういったものを人々に届けていくのか。僕も楽しみにしています」

【番組情報】
連続テレビ小説「あんぱん」

NHK総合
月~土曜 午前8:00~8:15 ※土曜は1週間の振り返り
NHK BS・NHK BSプレミアム4K
月~金曜 午前7:30~7:45

文/TVガイドWeb編集部



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