「隠し味にはロマンス」カン・ハヌル【今月のSPOTLIGHT】2025/06/24 12:00

先頃、好評のうちに幕を閉じた「隠し味にはロマンス」で、まさに作品の“味”になっていたのがカン・ハヌル。代表作の一つに挙げられる「椿の花咲く頃」から、昨年日本公開された主演映画「ラブリセット 30日後、離婚します」まで、出演作ごとに高い演技力を見せてきた彼の魅力が、このドラマでも思う存分に放たれている。
自分を見つめ直し、変化し始める高慢な男を絶妙なさじ加減で演じる
物語の舞台は食の世界で、演じているのは大手食品企業の御曹司であるハン・ボム。後継者の座を実の兄と争っており、有能ぶりをアピールしなくてはならないボムは、目を付けたシェフのレシピを強引なやり口で手に入れては、自らが運営するレストランのアップグレードに精を出している。ところが、そんな彼が、兄の陰謀により窮地に陥る事態に。レストランを取り上げられ、後継者の座からも後退してしまう。
ここまでの展開で察しがつくように、ハン・ボムは一言で言うと高慢でいけすかない男だ。確かな舌を持ってはいるものの横柄で、自分に不可能なことなどないとすら思っている。だが、そこまでふてぶてしかった男が栄光からの転落を味わい、自分を見つめ直し始めるのが、「隠し味にはロマンス」におけるハン・ボム視点のストーリー。変化し始める中で自分の非を認めることもあれば、昔の狡猾(こうかつ)さが顔を出すこともある彼の揺らぎを、カン・ハヌルは絶妙なさじ加減で演じている。
そんな中、「隠し味にはロマンス」の邦題が物語る通り、ボムにはロマンスを繰り広げることになるお相手が。それが、小さなレストランを営むシェフのモ・ヨンジュ(コ・ミンシ)だ。天才的な料理の腕前を持ち、食材にも徹底的なこだわりを見せるヨンジュはボムにとって、転落からの脱出の鍵を握る存在。初めはヨンジュのレシピを狙っていただけのボムが、ひょんなことから彼女の店の仲間となり、恋心も芽生えさせていく展開にラブコメらしさが詰まっている。だが、ボムは基本的に胡散(うさん)臭いし、ヨンジュは曲がったことが大嫌い。顔を合わせては口喧嘩ばかりの2人の仲がどう発展していくのか、ああ言えばこう言う会話の応酬を楽しみながらワクワクすることができる。
ちなみに、この作品のカン・ハヌルは人間味とときめきにあふれていたが、6月27日から配信になる「イカゲーム」シーズン3では、シーズン2に続いて死の恐怖にさらされることに。もちろん、こちらでは甘いロマンスやかわいらしい口げんかは望めなさそうで……。ハン・ボムとはまた一味も二味も違う姿が見られるのは確実。タイプの全く異なる2作を併せて楽しんでみるのもよさそうだ。

【コンテンツ情報】
Netflixシリーズ「隠し味にはロマンス」(全10話)
Netflix
独占配信中
【プロフィール】
カン・ハヌル(Kang Ha-Neul)
1990年2月21日生まれ。韓国出身。「ミセン -未生-」(2014年)で注目を集めた後、「麗 〜花萌ゆる8人の皇子たち〜」(16年)、映画「ミッドナイト・ランナー」(17年)などに出演。「椿の花咲く頃」(19年)で百想芸術大賞男性最優秀演技賞を受賞している。主演作が続々と待機中で、Netflix映画「84m²」が7月18日から配信予定。韓国で大ヒットを記録した「殺人配信」が9月26日公開予定。
文/渡邉ひかる
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