RKB制作の福岡×台湾ドラマ「忘れてしまう前に想い出してほしい」。脚本を手掛けた辻仁成の取材会が開催

博多ニュース

 RKB毎日放送が12月に放送する、福岡と台湾を舞台にしたドラマ「忘れてしまう前に想い出してほしい」(全3話)。そのオリジナル脚本を担当した辻仁成と細谷一希プロデューサーが、10月21日に同局内で囲み取材に応じた。

 このドラマは「総務省放送コンテンツ海外展開助成事業」に選出された作品。地方創生や地域経済活性化を目的にコンテンツ制作や海外での放送などに対して総務省が助成する。すでにRKBの放送エリアのほか、台湾の民視FTVで2018年1月に地上波放送することも決定。また来年以降、インターネットでの有料課金配信も計画されている。

 物語は、福岡在住のYoutuber・今泉今日(いまいずみ・きょう)と、台湾からの留学生・フェイファンが、天神の改札口前にある1台のピアノの前で出会い、次第に引かれ合うことに。2人の恋は福岡の街で動き出しそうになるが、ある日突然フェイファンは台湾へ帰ってしまう。彼女の過去に何があったのか? フェイファンを追って今日は台湾へ向かう。

 主人公の今日は、ちょっとさえない男ながらヒューマンビートボックスが得意という設定。その役を演じる柾木玲弥の趣味がヒューマンビートボックスというから、彼の腕前にも注目だ。台湾からの留学生・フェイファン役は、今作が初の日本ドラマ出演となる台湾人女優・Teresaが演じる。今日の元カノ・ミカ役は柊子。ミカの今カレで、ヒューマンビートボックスの名手・ケビン役は、人気YoutuberのDaichi。ヒューマンビートボクサーであるDaichiは、柾木に技術指導も行った。ほか、要潤、長井秀和、橋本小雪、KABA.ちゃん、モロ師岡といったベテラン俳優陣が脇を固める。主題歌「君に似た誰か(SOMEONE LIKE YOU version 2017)」も辻仁成が担当した。

●辻 初めてコメディーというか、笑えるものを書いてみました。今まで恋愛モノが多かったんですけど。泣くドラマというのは昔テレビで「愛をください」という菅野美穂さんが主演したもので、悲しい話でした。今回は喧しい時代でもあるので、笑いがほしいなと。世の中的に暗いニュースが続いていて、戦争とかテロとか、そんなのばっかりじゃないですか。だからこう、ただ泣かせるというのじゃない方がいいやって。そろそろ自分も笑わせるものを書いてみなきゃいけないなと思っていたところに、この話をいただいて、「コメディーでもいいですか」といったのが始まりです。でもやっぱり泣きます。この番組のヘアメイクの方からは「コメディーですか? 結構感動しました」と言われて。自分じゃコメディーだと思っていたんですが、人が見ると、じわっとくる方が大きいのかなと。

 あと2年で還暦なんですが、30歳でデビューしたころは青春小説を書いていました。「昔の恋愛を思い出したよ」とも言われました。どの世代が見ても、青春期の話を「忘れてしまう前に想い出してほしい」というタイトルにひっかけまして「振り返ればすばらしいことがいっぱいあったよ」ということをドラマの中に託したいなと思います。

 福岡には縁があって、高宮の幼稚園や西高宮小学校。高宮中学に行く前に引っ越したんですが、実家は今も福岡にあって、弟も福岡にいます。母方は大川市で、父方が佐賀市。福岡を舞台にした作品も書いていて、老後は福岡かなと。静かに海を眺めながらなんて。そんな老後を視野に入れながらシナリオを書いてみたというところですかね。

 パリ在住ですが、福岡は住みやすい街、楽しい街。(スペインの)バルセロナなんかに近い、南の空気があって開放的で。そんなよさを地元の人は気づいていないんじゃないかと。屋台があったり、海が近かったり、アジアが近かったり、いろんな文化が入っていて。

 中洲を舞台にした小説を昨日、書き上げましてね。そのあとギックリ腰になっちゃんたんですけど。山笠なんかの歴史的おもしろさもあるし、神さまがいるなっと。しかも酒も食べ物もおいしいし、新しいものに飛びつき過ぎだろうって感じもあるし。飽き易さも面白いと思うし。沸いては消える泡のような感じで、後悔しないで生きていくにはサイコーの場所なんじゃないかと。(子どもの頃は)浄水通なんかで遊んでいて、あの辺りで迷子になるのが楽しくて、学校帰りに「同じ道で帰らない」というルールを決めたんですよ。そうすると迷子になるんですよね(笑)。最近は、帰るたびに一度行った店が次にはないというのも面白いです。

 題材にYoutuberやヒューマンビートボックスを取り上げたのは、息子と2人で暮らしていて、彼がYouTubeの編集の仕事をしたいくらい大好きなんですよ。一時、落第しかけましてね。その時に「YouTubeかコンピュータゲームのどちらかを止めないと」と。その時にもYouTubeを取りました。そして「パパはフランス語が下手すぎるから、暇な時は一緒にYouTubeを見てくれないか」と言われて、フランス語のYouTubeを毎日、夕飯時に見ているんです。向こうのYouTubeって、教育ものが多いんですね。その中でケビンという中国系のフランス人がいるんです。今回のドラマのDaichiくんが演じるケビンって、そこから取っているんです。それで、彼がフランスの東大みたいなところに入学しちゃったんです。そしたら息子も自分も行ってみたいということで勉強し出したんです。とっても素直な子です(笑)。そしたら、地理とか物理とかのYouTubeを見て、テストで100点を取ったことも。親子の夕飯の話のネタになり、落第からも救ってくれて。優秀なクラスにも移ったんです。自慢です(笑)。

 YouTubeの何が彼らをこんなにも魅了するのか、と思ってドラマの題材にしたんです。その時にDaichiくんというのが福岡出身で、ビートボクサーなですけど、うちの子もビートボックスをやっていて。三軒茶屋でDaichiくんに会ったことを息子に話したら、後から影響を受けたみたいで、YouTubeもビートボックスもきっかけはDaichiくんのおかげなんですよ。

 自分たちが博多のめんたいロックに影響受けたのと同じで、彼らにとって音楽というのはビートボックスだったりするのかもしれないなと。それを息子とDaichiくんたちから学んで、初老の脚本家がですね、本にしてみたんですよ。監督(中島良監督/「夏休みの巨匠」「RISE UP」「サムライ・ロック」ほか)は若い人がやっていますから、現代的な感じになっていますけど。僕にとっては挑戦したみた作品です。

──脚本を書くにあたって局側からリクエストされたことは?

●辻 RKBさんがドラマの脚本家を探していると聞いて、時間的にすぐなんです、と。それが6月ぐらいで9月には撮影しなきゃならないと。「ほかに脚本家いないからお前」みたいな感じで。それは大げさですけど、3話分なら何でもいいということでした。ただ、台湾と日本の合作にしてほしいと。

●細谷 これ、総務省の事業に設定されていて、台湾でも放送することで、福岡へのインバウンドを目指すということもありまして。

●辻 総務省に(企画書を)提出するのに僕の名前を使ったんです。「すぐに通っちゃいました」と言われたから(笑)。

──キャスティングには関わっているんですか?

●辻 相談されて「いいですね、この人」っていうぐらいです。最初、何人かリクエストした人はいるんですけど、あまりに急な話でスケジュールがみんな合わず。玲弥くんは、たまたまそこだけ空いていて。僕は彼のCMを見て、芝居がうまいなと思いました。そしたら監督もうまいって。最終的には僕の頭には彼と彼女(Teresa)しか浮かばないですね。

●細谷 私もそう思います。柾木くんはですね、趣味でビートボックスをやっていたんですけど、今回、Daichiくんから個人的なレッスンを受けたら、ものすごく上達してですね、彼らがビートボックスのバトルをやるシーンがあるんですけど、役者というより本物のビートボクサーのような感じでしたね。

●辻 Teresaもオーディションの様子を見て…。この人じゃない、この人じゃない、みたいなことも言ってましたね。で、あっこのTeresaっていいんじゃないって。あれ、結局、キャスティングに関わっていないようで、関わっているな(笑)。

●細谷 Teresaさんは台湾で2年間トレーニングして、7月からホリプロに所属したばかりの新人女優です。台湾って日本の芸能界への関心が高く、向こうのマスコミではテレサさんのことを大々的に扱われていましたね。

~中略~

●細谷 柾木くんは「カメレオン俳優」と呼ばれていて、今回は彼の成長記ですね。最初「ダメ男」というところからスタートして、最後は彼女への告白に至って「ダメ男」から一皮むけるまでが描かれるという(感じ)。

●辻 簡単にいうとYoutuberの彼が「今日(キョウ)TV」という番組をやっていて、「こんにちは。ダメ男のキョウです」という出だし始まり、だめだったことを告白していくんです。愛されキャラなんで、周りが面倒を見るんですけど。それから、駅構内にピアノを置いているのですけど、これはユーロスターのロンドンの改札口に置いてあるものがヒント。現地では、通勤客が交替しながら弾いていくんですけど、それがとてもハートウォーミングだったので。スポンサーの西鉄さんに無理を言いました。そこで(主役の2人が)出会うんですけど、何かいわくがあって、お互いそれを言わない。ドジな2人がドタバタしながら人間の本質みたいなを見詰めていって、何が必要で大切なのかを知りながら、彼らならではのハッピーを探すという話です。

──「今泉今日」という名前は辻さんの発案ですか?

●辻 そうです。

●細谷 福岡っぽい名前ですよね?

●辻 そうですか? 昔、音楽やっていたころに「今泉さん」というディレクターがいて、彼が福岡だったんですよ。それから「今日」というのは「忘れてしまう前に想い出してほしい」というタイトルにつながっているんですけど、過去・現在・未来があって、だめなオヤジがいるんですけど、彼が息子に託すメッセージなんですよ。「昨日のことをくよくよするな、未来のことを心配するな。今、必要なのは今日だよ」っていう。それから(ヒロインの)フェイファンは僕の小説によく出てくる名前です。中国系の女性の名前はほとんどフェイファンです。響きがよくないですか? 日本人にない感じだし。
 台湾って、とってもいい街でね。古いのに新しくて。ビルなんか東京に負けないぐらいすごいし。だけど、ちょっと路地に入ると雑然としていて。映像的にもかっこよくて、思わず「この場所を使ってください」と指定しました。台湾が人気出るの、分かるな。古き良き日本(の部分)も存在するんですよ。それから台北と福岡の相性がすごいいいなと思って。予算がないって知ってましたし(笑)、総務省から出たお金でやろうとしていることもわかっていたんで、僕の台湾ロケハンも1泊2日だったんですよ。それで全部決めなきゃいけなかったんで、観光地を入れなきゃいけないんですね。そのときに僕が見つけたのは、キュウフンと日月潭(ニチゲッタン)があって、キュウフンは日本人がよく行くんですよね。じゃあ行かない所へ行こうと。総務省だし。だけど、台中にあるから1泊2日では遠いんですよ。それで新幹線で行ったんですよ。よかったですよ。台湾は日本の新幹線が走っていまして、まったく同じ車両で、車内のお弁当屋さんはロイヤルホストがやっているんですよ。日本の影響がこんなにある国で、アジアの国では日本のこととなると、戦争のことで揉めたりするんですけど、でもまあ、いろんな歴史を乗り越えて世界の中で日本ってあるんだなあと思う中では、台湾の人って本当に日本が好きで、もちろん暗い歴史(感)を持っている方もいるんですけど、特にインタビューで集まってくれた若い人たちは、みんな日本語をしゃべるんですよ。どこに行っても簡単な日本語で返してくれるんです。我々が台湾のこと、知っていますか? こんなに日本のことを思っている場所が世界にはあるんだなあと。僕の大きなモチベーションになりました。2(続編)も作りたくなりましたね。

~中略~

●細谷 今回は天神の福岡駅からスタートし、警固公園、大濠公園とかが頻繁に出てきます。

●辻 僕は空港フェチの駅フェチなんですよ。だから、福岡駅の改札のところはすごく雰囲気がよくて、絶対入れたいと思いました。そしたら、西鉄さんがスポンサーと聞いて、そこにピアノを置かせてほしいとリクエストしました。監督的な目線ですよね。メインの改札じゃないんですよ。中央のところですね。
 僕が作った「ZOO」って曲があるんですが、あれば下北沢の改札に立って、出てくる人たちを見ながら動物たちに例えて書いた詞なんです。ものを考えるとき、駅の改札や空港の搭乗ゲートに行くんですよ。世界中の人を見れるんですよ。タダですよ(笑)。その人の人生を勝手に空想するんです。作家だから、そういうの楽しいし。ただ、全部の駅でできるわけではないんです。改札口って、人生の出入り口ではないかと。入ったり出たり。それが、この物語の全編を通して書かれているんです。

~中略~

●辻 僕ね、ドラマの脚本を書くときにスポンサーさんと会うことはないんですよ。脚本家って監督と違って、そういうことに関わらなくていい立場というか、そういうことを考えないで本質を作っていかなくてはいけなくて。RKBさんの場合は最初のミーティングに、スポンサーさんもいらっしゃいましたよね。あれって、プレゼンだったんですか?

●細谷 まあ、いろいろ大人の事情が…(笑)。

●辻 だから最初、ちょっとやり辛かった。「こういうスポンサーがいますから、何か考えてください」って言われて。ただ、それが嫌じゃなかったのは、福岡の町おこしでもあったので。東京だったらやらなかったかも。僕としては、とっても大人になったと(笑)。

●細谷 福岡の企業が実名で出てきます。

●辻 レベルファイブとか。

●細谷 ロケでも使わせていただきましたし、名前もそのまでいいですと。

●辻 脚本家の力だな(笑)。

●細谷 キャラクターも含めて、まんま使わせていただいてます。本物です。

●辻 使いたい名前を勝手にメモで書いていたらそのままOKに。実は息子がファンで。「パパ、福岡ってすごいね。レベルファイブがあるんだよ」って。いや、書かないと実現しないですよね。思いって書けば、紙って不思議な力がありますから。

●細谷 レベルファイブさんの受付やキャラクターも出ます。いろんな権利とか絡んでいるかと思いますが、レベルファイブさんが「いいよ」って言っていただけたので。

●辻 今、地方が元気なんですよ。RKBなんかもそう。YouTubeのドラマなんて中央じゃできないですよ。もう両者は共存する時代だし、意識し合うよさってあると思うんです。地方でできることが中央を変えていければいいなと。大きくなった福岡を紹介できることもうれしいし。

●細谷 今、辻さんがおっしゃったように福岡愛が詰まった作品です。レベルファイブさんも福岡のドラマだから、という部分が大きかったと思います。

●辻 僕が脚本を書いたからじゃなかったのか(笑)。

キーワード
関連記事

TVガイド最新号

新着連載

PAGE TOP