スペシャルインタビュー

特集

内田有紀がエンターテインメント時代劇「荒神」に主演!等身大の心情を明らかに

 宮部みゆきが元禄の東北を舞台に紡いだ、人間と怪物が繰り広げる壮大なるストーリー「荒神」。その実写ドラマが満を持して完成、2月17日(土)午後9:00~10:50にNHK BSプレミアムで放送される。突如、人里に出現して村を襲う怪物に、運命を翻弄(ほんろう)されていく人々。その中の一人であり、怪物の誕生にまつわる謎に関わる主人公・朱音には、内田有紀がキャスティングされた。女性としてはもちろん、役者としても円熟味を増した彼女は、「チャレンジ」と称した作品を経て何を感じたのか? 撮影を振り返り、作品に宿されたテーマを掘り下げつつ、等身大の心情もつまびらかに語ってもらった。

──「荒神」、引いては主人公・朱音のお話が来た時、どういう心境だったのでしょうか?

「まず、宮部さんが書かれた原作がとても好きだったのと、年のトウを過ぎて、さまざまな運命に翻弄されつつも懸命に生きている朱音という女性を演じることに対してとても興味がありました。さらに、NHKのBSプレミアムで時代劇でありながら、CGで怪物をつくるというコラボレーションに対する期待もありました。ただ、とても難しい挑戦だとも思ったんです。CGと実写とのバランスやCGと向き合った芝居など不安はあったんですが、チャレンジだと思って快くお引き受けしました」

──宮部さんの原作は、どういったところが魅力的に感じたのでしょう?

「ドラマ化に当たっては、登場人物や設定を少しずつ変えてあるんですね。よく、1時間50分にまとめられたと思ったほど、宮部さんの原作が壮大なストーリーなんです。ただ、さまざまな人物に沿った物語を宮部さんが書いていらっしゃるので、それぞれの人物像はとても明確で、だからこそ興味深かったんですね。江戸の時代に起きた出来事だったり、人々が戦ってきたことであったり、時代に翻弄されている人たちの人物像がとても魅力的に思えたと言いますか…趣味に合っていました。何より、すてきなお話だなと思いましたし、人物を丁寧に描いているので入り込みやすかったです。いろいろな役の視点から読むことができたので、お芝居でも参考にさせていただきました」

──そういった点も踏まえて、ドラマ版「荒神」をご覧になって、どういったことを感じられましたか?

「まず台本の時点で一つのストーリーとして成立していたことに、驚きました。登場人物を全員出そうと思ったり、エピソードもすべて拾おうとして手を広げてしまうと、収拾がつかなくなってしまう。そこを脚本の山岡さんが上手にまとめてくださったことによって、登場人物の役割が増えてもいるんですね。役者さんそれぞれのポジションでなすべきことが多くなった分、乗り越えるのが大変になるだろうなと思ってはいましたが、出来上がった映像を見て率直に感じたのは、CGとお芝居をすることの難しさでした。想像力だけで演じていた部分がほとんどでしたが、怪物が想像以上の動きをしていたので、もっと自分からアプローチできたんじゃないかと思えてしまって…。時代が時代だけに情景が派手じゃないと言いますか…田畑が広がる地に暮らしている人たちの話なので、怪物が現れた時に隠れようがないんですね。つまり、芝居で勝負するしかないと。また、お芝居そのものも、その地に暮らす人間にどれだけ見えるか、そこに息づいているか感じさせることの難しさを痛感した、というのが正直なところです。そういった反省点を踏まえつつ、海外ではもはやポピュラーになりつつもあるようですし、今後増えていくかもしれないフルCGでの撮影において、街中に行かなくても街中にいるような芝居を求められたり、あたかも、そこに怪物がいて本当に見えるような芝居を、これからはますます役者にも求められる時代にきっとなっていくと思うので、対応できるイマジネーションや想像力をもっと鍛えていきたいなと感じました。そういう意味でも、先ほどからお話しているように“チャレンジ”だったので、監督(=松浦善之助ディレクター)にイメージを聞きながらではありましたけど、そこに怪物がいるように振る舞おうと心がけました」

──撮影している時点では、怪物がどのように動くかは監督の中にのみ、イメージがあったということですね。

「現場では、監督が怪獣を身振り手振りで説明していただいたのですが、後にVFXの編集の時、監督自身で怪物の動きをしているところをスマートフォンで撮影した映像を見せながらVFXのスタッフの方にイメージを伝えていたと知りました。監督のイメージする怪物を何度も何度も試行錯誤して、4ヶ月という月日をかけて具現化されたそうで…。それが本当に大変だったとうかがいましたが、私たち役者は生身の人間としてどれだけ芝居で戦えるのかということを実感したというのが、正直なところです。想像していた以上にCGが滑らかで、何もないところからあれほどに迫力のある怪物を生み出した技術の粋は、間違いなくこの作品の見どころの一つだなと思いました」

──今回は4Kの5.1chサラウンドで見たので、相当に滑らかでしたし、鮮明でした。

「監督も話していたんですが、現況ではテレビの機能によって作品を見る環境が違ってしまうので、そこは技術が進化していくのを待つほかないんですが、音に関しても映像に関しても、この作品でチャレンジしたことが──例えば、時代劇においてもCGを多用するといったことが、もっとポピュラーになっていっても面白いんじゃないかな、と個人的には思ったりもしました。ただ、その前にまず人間が全身全霊でお芝居をしているので、登場人物たちの行動や心情を追っていきながら、そこに現れた怪物といかにして対峙(たいじ)するかを見ていただけたら、役者の一人としてはうれしいです。ある種、怪物は人間の負の遺産とも言える存在なので、現代にも通じる普遍的な物語としても受け止めることができるのではないかな、と思いながら演じてもいました」

──そうですね、怪物という存在は何かのメタファーなのかなと、深読みをしながら見ていました。

「人の業であったり、情念といったものの集合体や化身かもしれない、と解釈することもできそうですよね。だから…欲を言えば、怪物が生まれるまでの過程も時間をかけて描けたら、もっと見やすかったのかもしれませんね。単発のドラマで尺が限られている中では、監督をはじめとするスタッフの方々による描写は、最大限に表現されているとは思いますけれども…」

──あくまで個人的な主観ですが、そういったバックグラウンドは映像が想像させてくれるつくりになっていたと思います。

「そう言っていただけると、嬉しいです。見てくださる方々がそれぞれ想像できる余白が残されていると捉えればいいんですよね(笑)」

──そのあたりは怪獣モノや特撮シリーズを見て育った世代は、違和感なく入れるのではないかと感じました。そもそも、撮り方もグリーンバックではなくて、由緒正しい怪獣映画と同じ原理の合成なんですよね?

「そうです。なので、山形でのロケでも、助監督さんが『ここに怪物が出現しま〜す』と指示してくださって、それを受けながらお芝居していくという感じでした。確かに、そういった意味では由緒正しき怪獣映画の系譜を継いでいるのかもしれませんね(笑)。そうそう、宮部さんもおっしゃっていたんですけど、子どもの頃『ウルトラQ』をはじめとする特撮モノがすごく好きだったんですって。女子ながらに怪獣が大好きで、それこそ『大魔神』シリーズも見ていて、大魔神が涙を流すというシーンのような描写ができたらいいな、と考えていらっしゃったそうなんです」

──そうですね、大魔神は涙を流してから怒りの形相に変わるんですよね。

「どのシーンで、とは言わないですが、『荒神』でも怪物が涙を流すじゃないですか。あれは『大魔神』へのオマージュなのかもしれないなと思いました。でも、平(岳大)さんは『怪獣が涙を流すなんて、斬新ですよね』と、おっしゃって。でも、『昔の怪獣映画ではわりと泣いているんですよ』という宮部さんのお話を聞かされて、すごく驚いていらっしゃって。私もおぼろげながら、そういえば涙を流すシーンがあったなぁと思い出したりもしたんですが、同時に、人間が木を伐採して自然界のサイクルを崩してしまったり、核兵器で世界を汚染してしまったりといった悲しいテーマが、昔の怪獣映画には宿されていたこともお話されていて。そういう映画がルーツにある宮部さんが描かれた『荒神』という作品だけに、憎しみや悲しみ、人の業の深さがつくり出した生きものは、人間自身で鎮めないといけない。それは悲しいけれど終わることのない…今の時代にも続くとお話したのは、そういった意味も含んでいるんです。なので、時代劇でもあるんですけど、人間が背負った業であったり、罪深いことをしながらも生きていかねばならないという宿命など、実はとても壮大なテーマを描いていて。それを重々しく描くのではなく、時代をはるかさかのぼり、怪物という存在に落とし込むところが、宮部さんならではの世界観だなと思いましたし、生身の役者としては、そこに負けないように朱音という役を全うしたと思います」

──朱音がまた宿命を背負った女性でしたが、彼女のキャラクターをどのように捉ええていたのでしょうか?

「自分の中に持っている悲しみだったりつらさといった、生きていく上で背負うものを朱音に投影して演じようと心がけていました。また、現代劇で描かれる悲しみとはニュアンスが違うので、もっと情念が深いというか、激しくも静かな表現を求められるのかな、と自分では捉えています。現代の人たちが見てダイレクトに伝わる感情表現ではなくて、もうちょっと深く掘り下げた芝居ができたらなと、常に意識して演じたつもりですし、自分がその時点でできることは精いっぱいやったつもりではいます。ですので…あとは、皆さまに届くことを願うばかりですね(笑)」

【番組情報】
スペシャルドラマ「荒神」 
NHK BSプレミアム 
2月17日 午後9:00~10:50
【プロフィール】 
内田有紀(うちだ ゆき) 
1975年11月16日生まれ。東京都出身。1992年、女優デビュー。「最後から二番目の恋」シリーズ(フジテレビ系)、「ドクターX ~外科医・大門未知子~」シリーズ(テレビ朝日系)、「軍師官兵衛」「はぶらし」(NHK)、映画「クワエットルームにようこそ」「ばかもの」などに出演し、多方面で活躍している。

取材・文/平田真人

キーワード
関連記事
PAGE TOP