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いきものがかり・水野良樹が昭和のヒットメーカー・阿久悠の軌跡をたどる。未発表詞に水野が作曲した「愛せよ」を山本彩が歌う一幕も!

 1970年代にヒットチャートや賞レースを席巻した作詞家・阿久悠。彼の名前は知らなくても、彼が作詞した「津軽海峡・冬景色」や「UFO」などの昭和歌謡は聴いたことがあるはず。そんな阿久さんが亡くなって今年で10年。その節目に、より多くの人々とつながれる歌とは何かを考えるべく、その軌跡をたどる旅に出た、いきものがかり・水野良樹さんからお話を伺いました。

──どのような経緯でオファーを受けられたのですか?

「以前、『SWITCHインタビュー 達人達』に出演した際にお世話になった制作スタッフから、『阿久悠さんへの思いなどをメールで送ってくれませんか』というご連絡をいただき、阿久さんについて思っていることをお送りしたんです。まさか番組につながると思っていなかったので、結構長文になってしまったんですけど、それを面白がっていただいてこういう形になりました」

──阿久さん作詞の曲の魅力とはどんなところでしょう?

「僕自身の分析というよりも、みんな一致していると思うんですけれど、すごく映像的な歌詞で、ご自身もおっしゃっていますが、一編の詞が映画のように感じるくらい視点がさまざまに設定されていて、登場人物を引いてみる場面があるかと思いきや、突然登場人物のアップになるような場面があったり。歌を聴くだけで聴き手がいろんな世界に行けたり、いろんな感情を味わえたりと目まぐるしく動くっていうのが阿久さんの詞の醍醐味(だいごみ)なのかなと思っています」

──思い入れのある曲はありますか?

「『あの鐘を鳴らすのはあなた』です。“あなた”っていう3文字の言葉が’70年代の人たちだけを指しているかと思いきや、数十年たった今でも、自分たちのことを言われているかのような。時や文化、価値観などを超えていく大きな器を持ったああいう歌をいつか自分も1曲でも書けたらいいなあって憧れています」

──さまざまな方と阿久さんについて語り合われたとのことですが、今回の取材で印象的だったエピソードを教えてください。

「明治大学に行って保管されている直筆の日記を拝見したんです。07年頃になると闘病のことが書かれていて、自分の死期を悟りながらも前に向かおうとされている阿久さんの言葉がはっきりと書かれていまして、目にしてしまうとすごく胸にくるものがありました。撮影が終わって帰る時に、息子の深田太郎さんが僕を呼び止めて『闘病シーンも大事なんだけど、父は闘病だけじゃない。作詞について常に戦ってきた人だから』と一言おっしゃったんです。実の息子さんにでさえ、弱みをあまり見せなかった。阿久悠で居続けたっていうところが偉大な方だし、そういうことを理解しつつ、今も阿久さんの作品を残すことに尽力されている息子さんの姿っていうのはまた胸にくるものがありました」

──阿久さんの未発表詞「愛せよ」に曲を付けられていかがでしたか?

「最初お話を聞いた時には、迷いもありました。もしかしたらご自身が出したくないから残したのかなっていうこともあると思いますし。しかし、実際に原稿を見せていただいて曲をつける決心がつきました。阿久さんは直筆の歌詞にこだわられた方で、自分が作った熱量みたいなものを感じさせたい気持ちがすごく強い方だったはずなので、手書きの文字から単純に文字だけじゃない情報量を感じる部分がありました。曲作りをする時にその原稿を自分の机の上に置いて曲を作ったんですけど、さすがにある種のプレッシャーがありましたね。この原稿を置いてここでコーヒーとか飲めないみたいな(笑)。なんかこう背筋が伸びるというか。そういう気持ちが意外と曲に影響すると思うので。直筆原稿って、ある種伝わる情報があるんだなってまた改めて感じました」

──亀田誠治さんや山本彩さんとのレコーディングはどんな感じだったのでしょうか?

「亀田さんはいきものがかりでも何度もお世話になっていて、すごく敬愛している音楽プロデューサーなんですけど。亀田さんにも手紙を送りました。番組で僕の感じたことやこの詞を選んだ理由を長文で書いて。ほぼ説明文ですね。それをくみ取ってくださった人であったなと思います。山本彩さんはアイドルである一方、シンガー・ソングライターとして自分で曲を作って歌ったりされている。アイドルって、今の時代の空気を受け止める存在で、プラス自分でも発信するという。まさに今の時代の真ん中を生きる人だなと思っていて。だからこそ阿久さんの歌を歌っていただくには、ふさわしいんじゃないかなと。素晴らしく真っすぐ歌っていただいて本当に良かったなって思っています」

──最後に、視聴者の方へのメッセージをお願いします。

「阿久さんが偉大であるっていうことは間違いないと思うんですけど、偉大さにわざわざ金屏風つけて照明を当ててキラキラさせる必要があるかというと、そうではない気がしていて。すごくフラットに阿久悠という作詞家がどういうものであったかっていうのを見た番組になっているような気がします。亡くなった方や偉大な作詞家を扱うとなると美辞麗句が並んでしまうというか。実際にすごいから。だけど、いわゆるヒットっていうものから80年代に少し遠のいていった時に、阿久さんはどのように考えていらっしゃったんだろうかということに向き合ってみた番組ではあるので、そこらへんは今まであまりご覧になっていない阿久さんが皆さんに伝えられるのではないかなと思います」

【番組情報】
ETV特集「いきものがかり水野良樹の阿久悠をめぐる対話」 
NHK Eテレ 
9月23日 午後11:00~11:59

NHK担当 K・H

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