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特集

【英国ドラマ通信】Vol.5 
ショーン・エヴァンスの魅力から読み解く「刑事モース~オックスフォード事件簿~」三つのキーワード

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 全国の「刑事モース~オックスフォード事件簿~」ファン、主演のショーン・エヴァンスファンの皆さま、こんにちは、川合亮平とモース者です。僕はこの作品、大好きなんですが、その理由の一つは間違いなくジョーン・エヴァンス氏の魅力だと信じて疑いません。英国の有名ラジオDJであるスティーヴン・ライト氏は、彼のことを褒め言葉として“Spiky(スパイキー)”と表現していました。意味としてはまあ、“とんがってる”“頑固な”、みたいな感じ。

 しかし、Spikyである一方で、実は彼、ポエムが大好きという面も持っています。米国に生まれ、後に英国に帰化したT・S・エリオット(代表作「荒地」)がお気に入りの詩人とのこと。Spikyなんだけど、実は心優しく繊細、そういう二面性が彼の最大の魅力ではないでしょうか。そのような彼のハードな外側とソフトな内側という性質は、考えてみると、キャラクターのモースの性質に非常に似通っているんですよね。そのリンクがとても面白い。だってモースは、気が短くて内向的、大酒飲みのクラシック音楽愛好家、ですからね(大酒飲みになるのは、もう少し彼が年を重ねてからだけど)。

 “はまり役”と言ってしまえば簡単なんですが、キャラクターを演じるうえで嘘のない感じが、このドラマが視聴者の心にグイグイくる理由の一つなんだと想像します。“嘘のない”って、まあ、もちろんドラマなんで全部嘘っちゃあ嘘なんですが、キャラクターやストーリーがしらじらしくない、というのかな。キャラクターに魂がこもっている感じというのはやっぱり見応えを覚える部分ですよね。

 ということで、今回はWOWOWプライムで「刑事モース~オックスフォード事件簿~」のCase18、Case19が放送されるのに合わせて、同作主役のモース役・エヴァンス氏の魅力に肉薄しながら、このドラマのキーワードを探っていきます。


【キーワード1:オリジナリティー】

「刑事モース~オックスフォード事件簿~」は、いわゆるPrequel(プリクエル:元の作品の過去を描く作品)というカテゴリーに属します。その元の作品というのが「主任警部モース」(英国で1987年から2000年まで、13年にわたって全33エピソードが放送)なんですが、この作品は、当時の英国では国民的番組だったらしいんですね。元作品でモースを演じた俳優のジョン・ソウ氏は、英国ではアイコニックな存在として広く知られていて、それ故、エヴァンス氏はソウ氏と、とかく比べられるようです。

 BBC Radio2に出演したエヴァンス氏はパーソナリティーから「こんなにイメージが強いキャラクターだけど、役作りはどうしたの?」と聞かれて、「実は、オリジナルのモースは見てないんだ。DVDは買ったんだけど、結局今も見てないよ。原作(コリン・デクスター著)は読んだんだけどね。ソウ氏のモースを見ない理由は、自分のバージョンを作るため。モノマネじゃなくて、自分のイメージから湧き上がるものを大切にしたいんだ。それに、その方が、前の作品を見ていない視聴者にとっても良いかなと思うし」と、語っています。

 なるほど、レジェンドとも呼べる確固たる元作品をしっかり踏襲してはいるんだけど、同時に全く新しいオリジナリティーの要素もあるっていうことですね。そりゃ、オモロイはずだわ。(そして、そういう彼の姿勢はやっぱりSpikyやわ)。

 ちなみに、上記回答の後、パーソナリティーから、「見てないの!? それじゃあ、同じくジョン・ソウの代表作である『ロンドン特捜隊スウィーニー』(75~78)は?」と尋ねられ、「それも見てないよ」と答え(←Spiky)、さらに「あの時代、一体どこにいたんだよ!」とつっこまれ、「ごめん、ごめん、ごめんなさい!」と(笑いながら)、しきりに謝る場面がありました(←時折見せる繊細さ)。


【キーワード2:ケミストリー】

 英国のテレビ局・ITVのトーク番組「Lorraine」に出演したエヴァンス氏は、モースで共演しているロジャー・アラム(フレッド・サーズデイ警部補、Case18で警部に)について尋ねられ、「彼ほどの相棒はいないよ。本当に優れた役者だね」と語っています。また、その他のレギュラー出演者との関係も極めて良好であるということも語っています。出演者といえば、前述のジョン・ソウ氏は残念ながら02年に亡くなったんですが、彼の娘、アヴィゲイル・ソウ氏も役者で、彼女も「刑事モース~オックスフォード事件簿~」に出演しているんですよ、新聞記者・ドロシーの役で。このトーク番組では「アヴィゲイルとの共演もすごく楽しい」と語っていたエヴァンス氏です。

 人間関係のことを英語ではケミストリーっていうんですが、共演者同士のケミストリーの良し悪しというのは、その作品自体が魅力的なものになるかどうかに、如実に関わってくると思います。それにそもそも、ケミストリーが良くなかったら、ここまでシリーズが続いてないですよね、いくら人気があってもねぇ。出演者同士の良好なケミストリーも、この作品のドライヴになってるわけですね。


【キーワード3:オックスフォードとアクセント】

“オックスフォード事件簿”っていうくらいなんで、物語はすべて英国の街・オックスフォードが舞台になっています。オックスフォードの絵になる街並みも間違いなく、このドラマの見どころの一つです。

 ところで、モースの出身地はどこの設定かご存知ですか? 正解は、英国北部のヨークシャー州です。彼はヨークシャーのワーキングクラス(労働者階級)出身なのです。一方、エヴァンス氏の出身地はリヴァプールなんで、素の彼はScouse(スカウス=リバプール独特のアクセントのこと)を話すんですが、モースは(もちろん)スカウスは話しません。

 BBC Radio2のインタビューで「モースのアクセントは何か参考にしているの?」という問いに対して、「マイケル・ペイリン(モンティ・パイソンのメンバー)っているでしょ? 彼はヨークシャー州出身で、オックスフォード大学に行ったんだよね。だから、モースと同じなんだ。“英国北部に住んでいた人が学生時代にオックスフォードに移住したらどんなアクセントになるか”という問いに対して、彼のアクセントを参考にしているよ」と答えています。

 ちなみに、劇中モースの父親はタクシー運転手の設定ですが、実際のエヴァンス氏のお父さんもタクシードライバーだそうですよ。リンク度数がかなり高めですよね。


 さぁて、いかがでしたでしょうか? まあ、とにかく傑作ドラマシリーズなんで、魅力を語り出すと尽きません。だから今日はこのへんで。

 では、前述の「Lorraine」でのエヴァンス氏のやりとりを紹介して、この記事をモースぐ終わりにします。

「(出演した)ドラマがテレビで放送されてる時は、自分で見るの?」。

「見るんだけど、だいたい途中でやめちゃうよ。CMが入るのが鬱陶しいんだよね」。

 す・す・Spikyやなー!

 川合亮平でした。


文/川合亮平

【番組情報】
WOWOWプレミア「刑事モース~オックスフォード事件簿~」

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WOWOWプライム
6月30日 午後2:00~5:30(二カ国語) ※全2話連続放送

イギリスの作家、コリン・デクスターの人気推理小説「モース警部」を基に、モースの若手刑事時代を描く人気ドラマシリーズ。本国・イギリスで2018年2月に放送された第18、19話(第5シーズンの第1、2話)を日本初放送。舞台となるのは1960年代のオックスフォード。このシーズンから新米刑事巡査のジョージ・ファンシーがモースの部下に。また、モースたちが所属するオックスフォード市警がほかの4警察と統合され、テムズ・バレー警察となるのも見どころだ。Case18「堕ちたミューズ」ではギャング殺害と宝飾品“ナスチャの卵”の窃盗未遂が同時に発生。Case19「死者のフィルム」では映画撮影のために俳優がオックスフォードの映画館を訪れて盛り上がるなか、元刑事の遺体が自宅で発見される。

製作総指揮/レベッカ・イートンほか
出演/ショーン・エヴァンス ロジャー・アラム アントン・レッサー ショーン・リグビー ジェームズ・ブラッドショー ダコタ・ブルース・リチャーズ ほか

【プロフィール】
川合亮平(かわい りょうへい)
イギリス英語を話す大阪人。通訳/翻訳者。“英語”と“英国”をキーワードに講演や執筆・取材活動を行うほか、「SHERLOCK/シャーロック」のベネディクト・カンバーバッチとマーティン・フリーマンをはじめ、「アウトランダー」のサム・ヒューアン、「ダウントン・アビー」の主要キャストなど著名人へのインタビューも多い。著書は「なんでやねんを英語で言えますか?」をはじめ現在9冊。 2018年6月下旬には自身初の翻訳本である「世界名作“ひとこと”劇場」を刊行。

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