コラム

不朽の名作「メリー・ポピンズ」も54年ぶり続編決定! ミュージカル映画成功の鍵は“楽しむ体感”!

「ラ・ラ・ランド」、「美女と野獣」…etc. ミュージカル映画ヒット連発の理由とは!?

テレビを見ていてよく耳にするけど、実際はきちんと知らない(かもしれない…)時事ネタや話題を追いかけ、解説する連載「TVガイド新書」。今回は、「ラ・ラ・ランド」、「美女と野獣」などヒットの続くミュージカル映画成功の理由を映画ライター折田千鶴子さんが分析!


<続々大ヒットを背景に、遂にあの不朽の名作の続編も公開決定!>

 ミュージカル映画は当たらない、日本の観客は敬遠しがち、なんて話は今や昔。昨年は、賞レースを席巻した「ラ・ラ・ランド」や、エマ・ワトソン主演で大きな話題となった「美女と野獣」が、全米のみならず日本でも空前の大ヒットを飛ばした。そして’18年上半期も「グレイテスト・ショーマン」が、洋画興行収入第二位を獲得。現在、前作の大ヒットを受け、続編「マンマ・ミーア!ヒア・ウィー・ゴー」も公開中だ。そんななか、今度はディズニー実写ミュージカルの不朽の名作「メリー・ポピンズ」(’64年)の続編が54年の時を経て製作され、「メリー・ポピンズ リターンズ」として今年のクリスマスに全米、来年2月には日本公開が決定し、注目が集まっている。

 今や、数字も取れる人気ジャンルとして定着した感のあるミュージカル映画だが、ほんの十数年前までは“唐突に歌い出すあの感じがイヤ”と敬遠され、長く低迷していた。その分厚い壁を打ち破ったのは、アカデミー賞作品賞を受賞し、大ヒットした「シカゴ」(’02年)。ジャジーで怪しげな夜の世界を抜群の映像センスで照射し、セクシーなダンスナンバーとド迫力の歌声で鳥肌を立て、異世界へ連れ去ってくれる高揚感は、ミュージカルに違和感を覚えてきた日本の観客をも、瞬く間に虜にした。この作品を境に続々とミュージカル映画が製作され、約40年にわたる低迷期を脱したのだった。「メリー・ポピンズ リターンズ」の監督が、人気復活の立役者、「シカゴ」のロブ・マーシャルというのもなにやら感慨深い。

<ダンスが大きな見せ場の往年のミュージカル映画>

 さて、ミュージカル映画の絶頂期と言えば、「トップ・ハット」(’35年)や「有頂天時代」(’36年)など、流れるようなタップダンスで観客を魅了したフレッド・アステア&ジンジャー・ロジャースが世界を席巻した’30年代に遡る。10作に上る2人のコンビ作品のほか、「オズの魔法使」(’39年)なども生まれ、人気はそのまま「踊る大紐育」(’49年)や「雨に唄えば」(’52年)など力強いダンスが魅力のジーン・ケリーらによって、’50年代まで引き継がれていく。そうして’60年代には、ハリウッド黄金期とも重なる、往年のミュージカル映画の全盛期を迎えた。「ウエスト・サイド物語」(’61年)、「シェルブールの雨傘」(’64年)、「メリー・ポピンズ」(’64年)、「サウンド・オブ・ミュージック」(’65年)など枚挙にいとまない。それまでは歌声と同等、いやそれ以上に、極めて高度なダンスが見せ場だったが、この頃になると次第に歌唱が軸となる形式に移行。また、ビートルズらの登場で新風が吹き込まれるが、世相の変化と共に、夢の世界へ連れ去ってくれるミュージカル映画は、少しずつ観客の気分とズレはじめ、その数を減らし、衰退してゆく。

<勝負は歌曲と歌唱力! 観客参加型アトラクションへ>

 現代に話を戻すと、「シカゴ」のあと、「オペラ座の怪人」(’04年)が知名度の高さも手伝って日本でも大ヒット。その成功で気を良くしたのか、ブロードウェイミュージカルの傑作を安易に映画化した「RENT/レント」(’05年)、「プロデューサーズ」(’05年)などで危うくブームの火を消しかける。だが「ドリームガールズ」(’06年)や「ヘアスプレー」(’07年)など、映画版ならではの豪華なキャスティングや、アレンジを効かせた演出で、どうにか人気を繋いでいく。

 映画自体は微妙だが、大スター総出演、かつアマンダ・セイフライドの歌声で驚嘆させて大ヒットした「マンマ・ミーア!」(’08年)を挟み、いよいよ真打ち「レ・ミゼラブル」(’12年)が登場! 近年問われるのは、ズバリ歌唱力。往年のオペラ声法とは違う、地声を生かした腹に響く力強い歌唱に観客は聞き惚れ、熱狂する。

「レミゼ」に至っては、演技派&類まれな歌唱力を併せ持つスターが揃いも揃い、撮影中に歌も“同録”するという思い切った技法に挑戦。演技と溶け合った歌唱に、観客の涙腺は決壊した。その快感に酔いしれ、日本でもリピーターが続出。続く「アナと雪の女王」(’13年)は、なんと興行収入約255億円という、社会現象となって大ヒット! あまりにも好き過ぎて、“聴き惚れる”から“一緒に歌いたい!”と“シング・アロング”上映も行われ、参加型ミュージカルへ、一気に観客をノセてしまった。観るだけじゃなく、自ら楽しみたい欲求にうまく応えたのが「グレイテスト・ショーマン」だろう。全米でも評論家筋の評価は芳しくなかったが、開けてみたらビックリの大ヒット。舞台が“見世物小屋”というアトラクション的なお楽しみも満載で、日本でも一気に口コミが広まり、さらに「レミゼ」俳優ヒュー・ジャックマンの力強い歌唱と、メッセージ性の強い歌曲が観客をノセにノセ、日本でも大ヒットとなった。果たして「メリー・ポピンズ・リターン」は、“楽しむ体感”を欲する今の観客に、どうアピールできるか。ヒットの鍵は、その辺りが握っているかもしれない。


注目のミュージカル映画が公開中!
「マンマ・ミーア!ヒア・ウィー・ゴー」
母・ドナ(メリル・ストリープ)の若き日々と、娘・ソフィ(アマンダ・セルフライド)が母になるまでを描く。若きドナをリリー・ジェームズが演じている。

<邦画にもブームの兆し!>
「SUNNY 強い気持ち・強い愛」
安室奈美恵、小沢健二、など’90年代のJ-POPでつづる青春音楽映画。名曲と主人公たちのダンスに思わず体が動き出す…!? ©2018「SUNNY」製作委員会
「メリー・ポピンズ リターンズ」
’19年2/1(金) 全国公開
’64年に公開され、アカデミー賞13部門にノミネート、5部門を受賞した名作「メリー・ポピンズ」の続編。前作から20年後の大恐慌時代のロンドンを舞台に、エミリー・ブラント演じるメリー・ポピンズが、ある一家の幸せを取り戻すため奮闘する。

Text=折田千鶴子

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