コラム

この春、MCを務める番組が急増! 又吉直樹のMCは視聴者目線+αでできている!

台本を見せない方がうまくいく?
シニアP・吉村氏が明かす、MC・又吉直樹の唯一無二の魅力

テレビを見ていてよく耳にするけど、実際はきちんと知らない(かもしれない…)時事ネタや話題を追いかけ、解説する連載「TVガイド新書」。
又吉直樹がMCを務める番組がこの春、続々レギュラー化。作家としても活躍する彼が今、MCとして重宝される理由とは? その魅力を探る。

<又吉の知的好奇心をより刺激する番組作り>

 この春から、「おやすみ日本 眠いいね!」(NHK総合)や「タイプライターズ~物書きの世界~」(フジテレビほか、BSフジ)など、又吉直樹がMCを務める不定期番組が相次いでレギュラー化。MCとして又吉が起用される番組が増えつつある。その中でも、実生活の中に潜む不思議をひもといていく教養バラエティー番組「又吉直樹のヘウレーカ!」(NHK Eテレ)は、又吉が率直な疑問をぶつけていくというシンプルながらも奥深い内容が話題に。’12年4月から6年間放送されていた「オイコノミア」の後番組としてスタートした同番組だが、経済学の原理を分かりやすく紹介するという「オイコノミア」の内容を一新し、幅広いジャンルを扱うようになったのはなぜだろうか。同番組の吉村恵美シニアプロデューサーに、番組だからこそ実現できた内容やさまざまな番組で必要とされる又吉のMCとしての魅力を語ってもらった。

「『オイコノミア』が始まった当初の又吉さんは経済学の“け”の字も知らない状態だったのですが、さすがに6年間も続けていくと大学1年生で学ぶレベルの内容はほぼ理解できるようになってしまったんです。又吉さんは正直で、知らない素振りのできない素直な方。番組で取り扱うテーマに対して、新鮮な反応をしてもらうために経済縛りをなくそうと。そこで、知的好奇心のとどまらない又吉さんを生かす番組作りをするための発展的解消として、経済を含めたより幅広いジャンルを扱う内容にしたんです」

 番組を作るにあたって、又吉の新鮮なリアクションを得るために、さまざまな工夫が施されているという。

「これまで5回放送しましたが、実は又吉さんの苦手そうな分野、いわゆる理数系を攻めています。なぜなら見ている人もやや苦手な方が多く、食わず嫌いのジャンルだから。また、又吉さんに“うわぁ、そうなのか”という視聴者の方々に近いリアクションをしてもらうことが大事なポイントなので『~ヘウレーカ!』ではリハーサルもしませんし、台本も見せないようにしています。制作サイドとしてはもちろん大きな決めの質問をいくつか想定してはいますが、基本は又吉さんの自発的な質問です。実際の収録では又吉さんに気付いてもらえるようなセットや内容を用意しつつ、好きに反応してもらうようにしました。編集は格段に大変になるのですが、『オイコノミア』で培ってきた信頼関係もありますし、又吉さんの個性や面白みを最大限に生かせるやり方にしようということで、決断しました」

<MCとしての又吉に感じる、独創的な視点と発想>

 作家として文化的活動が増える又吉だが、空気を読んで自虐的なことを話したり、常に面白さを求めて鋭い角度から笑いを生み出したりしていく様は、さすが芸人。本番組ではMCという立場だが、そこにも芸人らしい視点が見え隠れする。

「又吉さんは奥ゆかしい方で、人への接し方が実に丁寧。初回の『なぜ植物はスキマに生えるのか』では中学生の男の子が来てくれたんですが、彼の未来を受け止めるように優しく真摯に接する姿が印象的でした。また、又吉さんにMCとしての魅力を感じるのはその独創的な発想ですね。いわゆる進行という役割はほとんど課していない番組ですが、専門家の方へされる質問に、いつも“どこからそんな発想が? そんな疑問が湧くんですか?”と驚かされてばかりです」

 そんな又吉の良さを引き出すために、テーマはもちろん、ゲストとして登場する専門家のセレクトにも余念はない。

「又吉さんと真剣に話し合ってくれる方、又吉さんの、どこから振ってくるか分からない質問にしっかりと答えてくれる方を見つけてくるのも、番組として大切な要素です。初回に登場いただいた塚谷裕一教授は、まさに植物がなぜ隙間に生えるのかということを題材に本を出している方なんですが、エッセイをお書きになるほど文学がお好きな方で、俳句の心得もあった。植物学者として先端を行く方なのですが、文学への飽くなき興味を持たれてもいたので又吉さんと響き合うものがあるだろうと思いオファーしたところ、ぴたりとはまりました」

 その独特の視点だけではなく、又吉という存在が番組にもたらす効果も絶大だ。

「あのスローなしゃべりのテンポが、Eテレの夜10時に放送される番組の雰囲気にぴったりなんです。言ってしまえば、『〜ヘウレーカ!』では少し難しさを感じるジャンルを取り扱っていますが、あまりに早すぎるとついていけない方が出てきてしまうし、今より遅いと子ども向けの教育番組のようになってしまう。じっくりと理解を深めながら進める又吉さんのテンポ感が、視聴者もそのテーマを一緒に理解してちょっと賢くなった気分を味わえる。そういう意味で、聞き役として得難い方ですね」

 番組が進むにつれて、さまざまなジャンルに造詣を深めた又吉が企画したテーマを題材とすることはあるのだろうか。

「もちろん、十分あり得ます。又吉さんらしい特異な視点をテーマでも生かしつつ、みなさんの刺激ポイントをさらに増やしていけたらいいですね」


まだある! 又吉直樹MC番組
おやすみ日本 眠いいね!
5/19(土)
NHK総合 深夜0:05~深夜2:00(終了時間変更の場合あり)
宮藤官九郎と又吉が日本中の“眠れない声”に耳を傾け、視聴者が眠れるまでとことん付き合う深夜の生放送。
タイプライターズ~物書きの世界~
5/25(金)
BSフジ 毎月最終金曜 午後11:00~午後11:55
ミステリー作家・知念実希人をゲストに迎えた後編。推薦する本が必ず売れるカリスマ書店員の真相にも迫る。
又吉直樹のヘウレーカ!
5/30(水)
NHK Eテレ 午後10:00~午後10:45
夜間、道路標識にライトが当たると光るのはなぜ? その原理を数学者・吉永正彦さんとひもとく。数学と夜の標識の関係とは? さらに鏡との深くて意外な関連性にも迫る。

今回、取材したのは…

吉村恵美さん[NHKエデュケーショナル生活部(生活実用)シニアプロデューサー]
’94年、NHK入局。’98年から東京局でさまざまな番組に携わる。「先人たちの底力 知恵泉」には立ち上げから参加し、「探検ロマン世界遺産」「爆笑問題のニッポンの教養」「オイコノミア」などに関わる。「又吉直樹のヘウレーカ!」ではシニアプロデューサーを担当。

Interview=高本亜紀

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