コラム

大人気BL漫画「花は咲くか」の映画化も話題
恋愛できない、したくない人々も熱狂! BLブームのウラ側

BL漫画の実写映画を数多く手掛ける脚本家・高橋ナツコ氏を直撃!

テレビを見ていてよく耳にするけど、実際はきちんと知らない(かもしれない…)時事ネタや話題を追いかけ、解説する連載「TVガイド新書」。
映画「花は咲くか」が全国公開されるなど、大衆化が進むBL作品。同作の脚本家が語る、実写におけるこだわりやBLブームの現状と未来とは?

<BL愛好者が求める特別な恋愛の描き方>

 かつて女性たちの間で密かに愛好されていたBL(ボーイズラブ、通称ビーエル)文化がメジャー化しつつある。BLと呼ばれる“男性同士の恋愛”は、主に少女漫画の中で描かれ何度かプチブームを起こしてきた。だが、ここ数年におけるBL漫画のアニメ化や映画化は、その質・量共に目を見張るものがある。今春も、名作BL漫画と誉れ高い日高ショーコ原作の「花は咲くか」が実写映画化。同作及び、ここ数年のブームを象徴するBL映画の脚本家・高橋ナツコ氏が、ブームの渦中にいる作り手としての思いを語る。

「大学生の頃、晴海で行われていたコミケ(コミックマーケット)にも、既に同性愛を描くサークルさんはありましたが、今のような時代が来るとは夢にも思いませんでした。まだBLという言葉もなかったですし…。私の場合、古くは『風と木の詩』(’76~’84年)など、少女漫画における少年たちの初々しくピュアな恋が好き、という愛好心がここまで育った感じですね。当時は大作家さん以外の作品は商業誌には載らず、同人誌の域から出ませんでした」

 ’90年代に入り、BLという言葉が使われ始め、BL雑誌も続々と創刊されるが、あくまで“男性同士の恋愛を愛好する女性オタク”が読者とされていた。いわゆる’00年代に広まった“腐女子”である。それが今では“腐男子”(実際の恋愛対象が男女どちらかは問わずBLを愛好する男性や、腐女子を理解する男性)という言葉が生まれるまで読者層が広がった。

「この4、5年、腐男子の存在や反響も感じるようになりましたが、腐女子とも違う“夢女子”も存在します。乙女ゲーム(女性が主人公の女性向け恋愛ゲーム)を原作としたアニメ作品のように、恋愛対象は女性である男性同士のスキンシップのない爽やかな友情が好き、というのが夢女子。でも、いろいろな意味でBLの門戸を開いたのは、ゲーム発売後、’06年にアニメ化された『学園ヘヴン〜』だと思います。当時はBL作品のアニメ化自体が革新的でしたが、今は『花は咲くか』が各地で公開されるのですから、時代が本当に変わりましたよね。BL愛好者が増えたのか、夢女子が一般化する中でカミングアウトする人が増えたのかはっきりとは分かりません。ただ、男性と恋愛したくても上手くできない、あるいは男性とのリアルな恋愛はしたくない、興味もない、というおひとりさま女性がキュンとできる、というのもBLブームが加速している理由の1つかもしれません」

 今や腐女子、腐男子、恋愛したくてもできない、したくないといった人々から熱視線が注がれるBL作品の脚本を書く際に、高橋氏は昔から変わらず心掛けている点があるそうだ。

「BL漫画には性描写が丹念に書き込まれていることが多いのですが、実写化する際はあまり描かないようにしています。『花は咲くか』にもキスシーンはありますが、とてもロマンチックで、ピュアな恋愛という風に描いてます。その後の2人の関係を、いかに直接的に見せず観客に想起していただけるかが重要だと感じていて。それから、登場人物は、上手くいかない男女間の恋愛にあふれている現実世界とは違う、特別な世界の住人。そんな世界で生きる彼らの特別な恋愛だからこそ、どう惹かれ、どう付き合うようになるかのプロセスがとても大事で、最も丹念に描きたいと考えています」

<今後も日本のBL界は成長し続けていくか!?>

 放送中のドラマ「隣の家族は青く見える」(フジテレビ系)では男性同士のキスシーンが描かれ、3/4日スタートのドラマ「弟の夫」(NHK BSプレミアム)は主人公の弟が同性婚をした設定だが、いずれもBL作品とは異なり、BLを主軸とした映像作品はアニメや実写映画が中心となっている。この先の日本で、テレビドラマも含め真正面からBLの映像化が進み、評価される時代は来るのか?

「映画『モーリス』(’87年)などの英国耽美系から現在まで、同性愛の作品が芸術として高く評価されてきた欧米と違い、日本のBLはあくまで商業として捉えられていると思います。ジャパニメーションやジャパンコミックのように、BL文化は日本特有だとも感じますし。ただ、体感として、BLアニメや映画を望むお客様がいらっしゃいますし、原作は豊富にあるので作り続けられていくはず。ドラマも、テレビ局のコンプライアンスによりますが、仕事の枠を超えて“BLが好きだから作りたい!”という意識の製作陣が増えれば、ますます良い作品が生まれていくと思います」

 今年の米アカデミー賞で4部門にノミネートされている映画「君の名前で僕を呼んで」も青年同士の恋愛をメインに描いている。日本のBL文化が世界を席巻する未来が訪れるか、今後も見守りたい。


過去に高橋氏が脚本を担当したBL漫画原作の映画
「どうしても触れたくない」(’14年)
嶋(米原幸佑)は新しい職場でデリカシーのない上司・外川(谷口賢志)と出会い、苦手なタイプだと最初は敬遠する。だが、時折優しさを見せる外川のことが気になり始めて…。

「セブンデイズ MONDAY→THURSDAY」
「セブンデイズ FRIDAY→SUNDAY」
(’15年)
月曜日に告白してきた相手と1週間だけ交際する男子高校生・芹生(廣瀬智紀)は、ひょんなことから弓道部の先輩・弓弦(山田ジェームス武)と1週間限定で付き合うことになる。

「ひだまりが聴こえる」(’17年)
難聴を患い人と距離を置く大学生・航平(多和田秀弥)は、明るい性格の同級生・太一(小野寺晃良)と出会い、心から救われる。だが、近づいていく太一との距離に不安を募らせ…。
「花は咲くか」
2/24 (土)公開
池袋HUMAXシネマズ ほか
広告代理店に勤める37歳の桜井(天野浩成)は、古い日本家屋で従兄弟らと暮らす19歳の美大生・蓉一(渡邉剣)と出会う。年齢差や同性同士というハードルがある中で惹かれ合う2人だったが、桜井に大阪転勤の辞令が下り…。

「谷本(佳織)監督もお気に入りのオリジナルのラストシーンに向け、2人の気持ちや恋愛の行方が季節の移り変わりの中で描かれるように、ストーリーを積み上げていきました」と高橋氏

今回、取材したのは…

高橋ナツコさん(脚本家)
ドラマ「花より男子」(’05年)、映画「大奥」(’10年)などの脚本を執筆。放送中の「覇穹 封神演義」(TOKYO MXほか)、4月~放送の「こみっくがーるず」(TOKYO MXほか)と「Cutie Honey Universe」のアニメシリーズ構成、’18年公開の映画「ういらぶ。」の脚本も担当。

Interview=折田千鶴子

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