コラム

傑作時代劇のFinal!
田村正和が今、眠狂四郎を演じる理由とは?

田村自らが制作を希望!名優の原点がここにある!

テレビを見ていてよく耳にするけど、実際はきちんと知らない(かもしれない…)時事ネタや話題を追いかけ、解説する連載「TVガイド新書」。
今回のテーマは「眠狂四郎」。“The Final”と銘打たれた最新作の見どころとともに、田村正和と眠狂四郎の関係を深掘ります。

<田村正和自らが提案。眠狂四郎の世界を創る>

 虚無の中に生きる孤高のヒーロー、眠狂四郎。田村正和にとっての生涯の当たり役がついにFinalを迎える。転びバテレンのオランダ人宣教師と大目付の娘との間に生まれたという出生の秘密を抱えた眠狂四郎は、その腕と美貌を利用しようとする悪と対峙し、時として必殺の剣「円月殺法」で醜い世の矛盾と欲望を斬って捨てる。柴田錬三郎の剣豪小説から生まれたヒーローを’50年代から映画やドラマで多くの名優たちが演じてきたが、中でも長年にわたって多くのファンを魅了してきたのが田村正和である。

 田村と眠狂四郎の出会いは1972年、フジテレビ系の連続シリーズであった。原作者・柴田錬三郎に主役指名された田村は、それまでの明るい若様のイメージとは違い、黒い着流しに異国の血を思わせる赤みの入った髪で、憂いを帯びたニヒルな剣士を演じ、俳優としての新たな魅力と可能性をつかんだのであった。

 そんな当たり役の“Final”は、田村自身の提案によるものだったと語るのは、今作の企画を手がけたフジテレビの保原賢一郎さん。最新作が生まれた経緯について聞いた。

「フジテレビではずっと田村さんの作品を、と願っていたのですが、そんな中で、田村さんから『もう一回、眠狂四郎にチャレンジしたい』というご希望があり実現しました。久しぶりということもあり、脚本づくりでは眠狂四郎をご存知ない世代の方にどんな人物なのかを分かってもらうこと、荒唐無稽でケレン味のある独特の面白さとリアルな時代劇の設定とのバランスなどに注意しながら作りました。実際は田村さんの中で眠狂四郎の世界が確立されているので、『これは狂四郎はやらない』、『こういうことは話さない』といったアドバイスもいただき、若いスタッフも勉強になったと思います」

 田村は生前の柴田錬三郎から「40代、50代になった君の狂四郎はもっとよくなるよ」と言われていたという。今回の撮影にあたり、柴田の墓参りをし、柴田の令嬢からも勧められ、自信を深めて京都での撮影に臨んだという。

「狂四郎は二枚目で女性から言い寄られることの多い役ですが、だからこそ品格と清潔感がないとできない役。田村さんは衣装をつけて現場に入られると、完全に狂四郎になっていて、オーラがものすごかったです。京都の現場には結髪さんや衣装さんなど、’70年代からのスタッフもいるので、時間があっという間に当時に戻ってしまったようでした。まさに京都太秦の歴史そのもの。スターを育て続けた撮影現場なのだと思いました」

 特に撮影を行った京都太秦の東映撮影所の前身は、田村の父・阪東妻三郎が開設した阪東プロ太秦撮影所。田村の故郷ともいえる現場での仕事も、田村がこの作品を選んだ理由だったかもしれない。

<初時代劇の吉岡里帆、敵役には椎名桔平>

 今回の物語はシリーズ総決算にふさわしく、眠狂四郎の母の事情、生い立ちにも深くかかわる展開。久々に江戸に戻った狂四郎を迎えたのは、彼を慕い何かと世話を焼く常磐津の師匠・文字若(名取裕子)と町の噂に詳しい金八(八嶋智人)。さらに狂四郎を父と呼ぶ武家娘・操(吉岡里帆)、妖術を操り狂四郎と同じく円月殺法を遣う加賀美耀蔵(椎名桔平)が現れる。

「吉岡さんは時代劇初出演ですが、京都のご出身でご家族が時代劇や歴史が大好きという環境からエキストラの経験もあったそうです。いつか時代劇でセリフのある役をと望んでいたそうで意欲的に撮影に取り組んでくださいました。着物もよくお似合いで、“レジェンド”田村さんを『父上』と呼び物語のカギを握る重要な役をしっかりと演じてくださいました」

 再び狂四郎に暗い出来事が続き、不穏な影が忍び寄る。その狂四郎と世の中をつなぐ役割が、文字若と金八だ。

「名取さんは眠狂四郎にご出演経験があり、この世界をよく理解されていて、江戸前の艶を出してくださいました。金八は、事情や背景を視聴者に伝える語り手でもあり、眠狂四郎をこれまで見たことがない世代の方にも分かりやすく、親しみを持っていただくためにも大事な存在。それには八嶋さんはぴったりだとスタッフみんなの意見でしたね」

 そしてクライマックスの見せ場は「円月殺法」対決の殺陣。刀の切っ先を下におろし、そこから光る刀の軌跡が円を描ききるまで、生きていた敵はいないという。田村の狂四郎はほんの少し斜めに足を踏み出した独自のスタイルがとても美しい。“マサカズ狂四郎”の神髄が輝く瞬間だ。

「円月殺法のシーンは撮影に3日かけ、田村さんも最新の素晴らしい映像とスケールでお届けできることを喜んでいました。初共演で対決する椎名さんの緊張は大変なものだったと思いますが、先輩からしっかりと学ぶという姿勢で立ち向かっていました。僕らも時代劇史に残る作品に立ち会えたと実感できました。放送前からこれで終わらせないでほしいというご意見をいただくほど、大きな作品だとスタッフ一同ありがたく思っています」

 虚無の世界にいた狂四郎にわずかな光がさすオリジナルのラストにも注目が集まる。いよいよ近づく“マサカズ狂四郎”のFinalの剣。キラリと胸に刺さる経験を逃してはいけない。


「ドラマスペシャル『眠狂四郎The Final』」
2/17 (土)
フジテレビ系 午後9:00~11:10

柴田錬三郎の剣豪小説(「眠狂四郎無頼控」新潮社刊)を原作にした人気時代劇の最新作。
 伝説の剣を操る剣士・眠狂四郎(田村正和)が久々に江戸に戻ってきた。彼を出迎えたのは、縁の深い松平主水正(津川雅彦)、文字若(名取裕子)、金八(八嶋智人)ら。狂四郎は自分を「父上」と呼ぶ操(吉岡里帆)と出会い、困惑するが遠ざけることはしなかった。さらに謎の妖術と円月殺法を遣う加賀美耀蔵(椎名桔平)の存在を知った狂四郎は自らの過去と向き合うことに。

田村との芝居は、「役者として一生忘れることのない時間」と吉岡

今回、取材したのは…

保原賢一郎さん(フジテレビ)
今作の企画を担当。これまで「剣客商売シリーズ」(’99~’05年)、「大奥シリーズ」(’03~’05年)、「鬼平犯科帳スペシャル」(’05、’06年)などの時代劇のほか、「薔薇のない花屋」(’08年)、「婚カツ!」(’09年)「BOSS 2nd SEASON」(’11年)などを手掛ける。

Interview=ペリー荻野

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