コラム

今、最も旬な俳優・長谷川博己主演で描く
2016年版の“金田一耕助像”とは?

ミステリーの金字塔
「獄門島」を壮大なスケールでドラマ化

テレビを見ていてよく耳にするけど、実際はきちんと知らない(かもしれない…)時事ネタや話題を追いかけ、解説する連載「TVガイド新書」。
今回は、長谷川博己が“日本一有名な探偵”金田一耕助を演じるドラマ「獄門島」の制作統括を直撃。そこで描かれる新たな金田一像に迫りました!

トラウマを抱える新しい金田一耕助が誕生

 ぼさぼさ頭をかきむしりながら、事件の謎に挑む探偵・金田一耕助。作家・横溝正史が生み出し、石坂浩二や古谷一行などさまざまな俳優が演じてきた金田一耕助に、長谷川博己が新たな息吹を吹き込む。シリーズでも絶大な人気を誇る傑作ミステリー「獄門島」のドラマ化だが、一体どんな金田一耕助像となっているのか。制作統括の西村崇氏に話を聞いた。

「旧来の金田一像を踏襲する気はなかったので、やる以上は“新しい金田一”を作らなければならないと思っていました。今回の金田一は、実は原作にかなり忠実なんですよ。これまでの作品の中で一番金田一耕助そのものを掘り下げていると思います。金田一は戦争から帰ってきたばかりなので、トラウマを抱えていて、どこか闇のある人物にしたかった。現代って能天気な時代ではないので、誰もが何かを抱えて生きていますよね。だから、そういった金田一に共感してもらえるのではないかと思いました」

 ヒーロー然とした従来の金田一像とは一線を画す新たな金田一を体現するのは、主演映画「シン・ゴジラ」の大ヒットなど、今、最もノっている俳優であり、“高等遊民”(ドラマ「デート~」)から夏目漱石(ドラマ「夏目漱石の妻」)まで、幅広い役を印象的に演じてきた長谷川博己。

「今回の金田一のイメージにピッタリどころか、もうそのものなんですよね。長谷川さんの作品はたくさん見ていますが、中でも大河ドラマ『八重の桜』(’13 年)の後半、どんどんダメになっていく時のすさみっぷりが印象に残っています。清潔感のあるいい男なんだけど、どこかかげりも感じさせる。そういう俳優さんって他にあまりいないですよね」

 徹底的な役作りでも知られる長谷川は、衣装にも細部までこだわりがあり、衣装合わせは2度も行なったそう。

「長谷川さんの強い要望で、履物はゲタではなくブーツになりました。色のくすみやヨレヨレ具合にもこだわっていらっしゃいましたね」

 緻密に作り上げた長谷川版金田一は、クライマックスに台本17ページにも及ぶ犯人との対峙シーンが展開される。

「作品の山場ですし、ほぼ長谷川さんのセリフということもあり、クライマックスシーンに向けての役の持って行き方は、非常にナーバスではありました。もともと長谷川さんは役に深く入る方だと聞いていたのですが、今回の撮影でもすごく集中されているのが伝わってきましたね。そうやって初日からずっと準備されてきて、最高の緊張感の中で迎えた本番は、ほぼNGなしでした。長谷川さんもご自身も、達成感を感じていらっしゃったようでしたよ」

佐渡ロケは〝獄門島日和〟不気味な島の空気を演出

 戦争直後の瀬戸内の孤島を舞台に、俳句に見立てた殺人の謎を追う「獄門島」は、数々のミステリーランキングで1位に輝き、これまでに2度の映画化、4度のテレビドラマ化もされた人気作。

「金田一をやるなら、まずは『獄門島』だと思っていたんです。古今東西問わず多くのファンがいる作品ですし、ドロドロした雰囲気や、トリックと人間の運命が重なり合ったストーリーは、時代にとらわれない。孤島に金田一という“よそ者”が来る物語の中で、封建的な島に外から入ってきた価値観を排除しようとする動きが描かれている。当時は日本とアメリカという図式の中で考えられていたのでしょうが、現代はアメリカを中心とするルールがある中で、イスラムのような新しい価値観が入ってきた時にぶつかりあいが起こったりしている。そういう意味では、今の視聴者の方にも通じるテーマだと思いました」

 今作では、雄大な自然と歴史的建造物が多く残る佐渡でロケを行い、映画機材などを使用したクオリティーの高い映像で、島を覆う不気味な空気感を再現。横溝正史の描く世界観を堪能できる。

「佐渡での3週間のロケで、太陽が出たのは1、2日だけ。ずっと曇天や雨天の “獄門島日和”な天候にも恵まれて、おどろおどろしい雰囲気が出せました(笑)。撮影に使わせていただいたお寺も、年代を感じさせる風格とすごみのある寺で、長谷川さんもこういうお寺で撮影できるのは役者冥利につきる、とおっしゃっていましたね。トリックにかかわる地形も原作にかなり忠実に再現できましたし、最高のロケーションでした」

 さらに、金田一ファンにはうれしいオマケも。重要なシーンで登場する釣鐘は、偶然にも’77 年の石坂浩二版「獄門島」の撮影で使われたのと同じモノだったと、後から判明したのだそうだ。

「釣鐘も含め全て見どころですが、何よりも“新しい金田一”を楽しんでいただきたいですね」


金田一耕助を演じてきた主な俳優
 片岡千恵蔵に始まり、さまざまな俳優が金田一耕助を演じてきた。馴染み深いのは、「犬神家の一族」(’76年)を始めとした市川崑監督の映画シリーズの主演・石坂浩二と、’77~’78年と’83年~’05年のドラマシリーズに主演した古谷一行だろう。さらに、片岡鶴太郎が’90~’98年、稲垣吾郎が’04~’09年のドラマシリーズで主演を務めているほか、映画やドラマで高倉健、渥美清、西田敏行、三船敏郎、鹿賀丈史、豊川悦司、愛川欽也、小野寺昭、中井貴一、役所広司、上川隆也、長瀬智也、山下智久などが耕助を演じている。
スーパープレミアム「獄門島」
11/19(土)
NHK BSプレミアム 午後8:00~10:00
 戦友・鬼頭千万太が死ぬ間際に残した「妹たちが殺される」という言葉を胸に、瀬戸内海に浮かぶ獄門島を訪れた金田一耕助(長谷川博己)。そこで、千万太の妹たちを巻き込んだ連続殺人事件が発生し…。

今回、取材したのは…

西村 崇さん(株式会社NHKエンタープライズ 制作本部 番組開発 エグゼクティブ・プロデューサー)
NHKにて、中国・重慶からの川下りを生中継した「中国揚子江 悠久の長江、三峡」(’96年)、関口知宏出演の旅番組「列島縦断 鉄道12000キロの旅」(’04年)、ドラマ「洞窟おじさん」(’15年)などの番組を手がける。

Interview=国川恭子

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