コラム

ヒット連発!
“池井戸小説”原作がドラマ化され続ける理由とは?

「ようこそ、わが家へ」スタート!「花咲舞が黙ってない」続編決定!
池井戸潤×映像で生まれる“相乗効果”に迫る!

 テレビを見ていてよく耳にするけど、実際はきちんと知らない(かもしれない…)時事ネタや話題を追いかけ、解説する連載「TVガイド新書」。
今回のテーマは「池井戸潤原作ドラマ」。春の月9「ようこそ、わが家」に続き、「花咲舞~」の続編も決定! ヒット作連発のワケって?

フジテレビの月9に登場
日テレでは7月に花咲舞

 今年も池井戸潤の小説をドラマ化した作品が注目を集めている。フジテレビの月9枠では相葉雅紀主演の「ようこそ、わが家へ」がスタート。7月には昨年放送された杏主演「花咲舞が黙ってない」(日本テレビ系)の続編が始まる。池井戸作品は、’09 年日本民間放送連盟賞番組部門テレビドラマ番組最優秀作「空飛ぶタイヤ」(WOWOW)、’10 年「鉄の骨」(NHK総合)、’11 年「下町ロケット」(WOWOW)、’13 年「半沢直樹」(TBS系)、「七つの会議」(NHK総合)、’14 年「ルーズヴェルト・ゲーム」(TBS系)とドラマ化が続く。作品の魅力はどこにあるのか。

 ポイントの第一は「共感」である。 「空飛ぶタイヤ」は、トレーラーのタイヤがはずれて母子を直撃した事故が整備ミスだと糾弾された小さな運送会社の社長(仲村トオル)が主人公。倒産の危機の中で必死に調査を続けた社長たちは、巨大自動車メーカーの隠ぺい工作を知る。圧力、誘惑、不正…弱い立場の人間に忍び寄る黒い罠。支え合う家族や仲間との信頼関係が胸を打つ。しかし、もしも自分が隠ぺい側の人間なら、仕事や人間関係すべてを投げ打って内部告発できるのか? 誰もがふとしたことで巻き込まれかねない設定が、視聴者の共感を呼ぶ。

様式美と劇的な展開でエンターテイメント性を

 ポイントの第二は「徹底したエンターテイメント性」だ。最高視聴率42.2%を記録しした「半沢直樹」は、大手銀行マンの半沢(堺雅人)が、計画倒産で逃げた経営者、負債責任を部下に押し付ける上司、不正融資を図る幹部など強敵に戦いを仕掛ける。この作品は、彼の父を死に追いやり、憎々し気に半沢をののしる幹部(香川照之)など悪役がまるで悪代官のように際立っていた。さらに半沢は不正に対して「倍返しだ!」と決めセリフを言い放ち、ギリギリまで追い詰められた形勢を大逆転させるメール画面を「水戸黄門」の印籠のようにぐいっと指し示す。金融業界の内幕をわかりやすく見せつつ、時代劇のごとくエンターテイメントとしての様式美や劇的な展開をしっかりと盛り込んでいた。

 こうした逆転劇の面白さは、特許をめぐる町工場と大企業の戦いを描いた「下町ロケット」、廃部目前の社会人野球チームを描いた「ルーズヴェルト・ゲーム」でも大いに盛り上がった。

作家・池井戸潤の歩みが作品を面白くした

 ドラマチックで感動的な池井戸小説は、作家の人生と深い関係がある。

 小説家・池井戸潤は大学を卒業後、大手銀行に就職。三十代で顧客データベースを作る会社を起こし、後に得意の文章力と金融に関する知識を活かして中小企業向けのビジネス指南書を執筆する。その後、「果つる底なき」(’00 年にドラマ化)で江戸川乱歩賞を受賞。’11 年「下町ロケット」で直木賞を受賞する。

 一見、華々しいサクセスストーリーのようだが、起業した会社はうまくいかず、ミステリーである乱歩賞作品から「半沢」の原作となった「オレたちバブル入行組」などの企業小説執筆への道のりも苦しいものだったという。売れる作品にするためにはどうしたらよいか。作家の葛藤の経験が、作品のエンターテイメント性を高めるきっかけになったのである。

 ご本人は直木賞受賞式で「企業小説もやはり文学なんだと知ってもらえてうれしい」「泣いて笑って感動できる小説があることを知ってほしい」「小説は人を書くもの」と語っていた。この言葉に作品のすべてが集約されているといってもいいのではないだろうか。

 フジテレビ初の池井戸作品連続ドラマ「ようこそ、わが家へ」は、ストーカー被害に巻き込まれる真面目なサラリーマンの物語。ストーカーもいつ誰が巻き込まれるかわからない共感性のあるテーマである。月9枠にサスペンスタッチのホームドラマが取り上げられる例はいままでなかった。見えない相手が迫る恐怖と企業の謀略に家族で立ち向かうという展開も池井戸作品の新たな魅力として注目だ。

 そして「花咲舞~」は、今度も仁王立ちになった杏がきっぱりと不正に立ち向かう。権力も彼氏もないけど、正義感は人一倍。そんな女子が活躍する痛快なストーリーは、池井戸作品の真骨頂。第二シーズンもスカッと楽しみたい。



池井戸潤原作のドラマ

「果つる底なき」(’00年、フジテレビ系)
融資打ち切りで自殺した社長の事情を探る銀行マン(渡辺謙)の周囲に魔の手が。

連続ドラマW「空飛ぶタイヤ」(’09年、WOWOW)
運送会社の社長が、はずれたタイヤのため死者を出した事故の真相を追う。

「鉄の骨」(’10年、NHK総合)
建設業界の談合に立ち向かう若きゼネコンマン(小池徹平)の苦悩と正義を描く。

連続ドラマW「下町ロケット」(’11年、WOWOW)
純国産ロケット打ち上げに欠かせない特許を持つ町工場と大企業の戦いを描く。

「半沢直樹」(’13年、TBS系)
バブル期に入行したバンカー半沢直樹が社内外の敵と戦う。金融の裏側も描く。

「七つの会議」(’13年、NHK総合)
中堅電機メーカーのさえない営業マン(東山紀之)が会社の深層に迫ることになる。

「ルーズヴェルト・ゲーム」(’14年、TBS系)
業績不振の製作所は伝統ある野球部を守れるか。新社長(唐沢寿明)が苦渋の決断。

「株価暴落」(’14年、WOWOW)
メガバンク審査部の坂東(織田裕二)が融資に反対したスーパーがテロに狙われる。

<春以降の注目作>

「ようこそ、わが家へ」
(’15年4/13(月)スタート、フジテレビ系)
駅で人を注意してからストーカー行為を受けるようになった倉田(相葉雅紀)は企業の不正に巻き込まれる。

「花咲舞が黙ってない」
(’14年・’15年7月スタート、日本テレビ系)
銀行を舞台に、あきらめないヒロイン・舞(杏)と相馬(上川隆也)のコンビが、横領などの問題を追う。

Photo=加藤浩(「花咲舞~」)
Text=ペリー荻野

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