コラム

take194「海街diary」

死者が結びつけた姉妹の生活
それを見つめる古都、鎌倉

 是枝裕和監督がマンガ大賞2013などを受賞した吉田秋生の人気コミックを、綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずの共演で実写映画化。興行的にも成功を収め、是枝ブランドが確立される契機にもなった。

 舞台は、湘南・鎌倉。長女の幸(綾瀬)、次女の佳乃(長澤)、三女の千佳(夏帆)の香田家3姉妹の元に、15年前に家出した父親の訃報が届く。葬儀に出席するためはるばる山形まで出向いた3人は、そこで異母妹となる14歳の少女、すず(広瀬)と対面。身寄りがなくなったすずを見かねた幸が、鎌倉で一緒に暮らすことを提案し、4人姉妹の新たな生活がスタートする。

 すでにこの世にはいない家族の存在が、恐らく父のその願いが、出会うはずのなかった姉妹を出会わせ、おのおのが戸惑いながらも新しい家族を形成していく。歴史の大きな流れの中で繰り返されていく人々の営み、地域社会と密接に結びついた生活などなど、せわしない日常の中で日本人が忘れ去ろうとしている懐かしい情景が、確実にここにはある。それを包み込むのが、ロケ地でもある古都、鎌倉のまるで時間が止まったような風景だ。4姉妹が暮らす“関東の駅百選”にも選ばれた木造の極楽寺駅、そこを走るおなじみの緑の列車、江ノ島電鉄、父親の葬儀に参列した後、4人がそぞろ歩く七里ヶ浜、すずとクラスメートの風太(前田旺志郎)が自転車で訪れるデートスポット、御霊神社、2人が立ち寄る創業300年の老舗、力餅家、劇中に度々登場し、映画のヒット祈願イベントも行われた“花の寺”として親しまれる長谷寺。

 物語と背景の見事な連動で、ロケ地への注目度が改めてアップして「君の名は。」と同じ現象が巻き起こったヒット作。それが「海街diary」なのだ。(興行収入:16億8千万円)

<映画うわさの真の相>
’15年の新人賞を総なめ。今も続く“すずブーム”に火をつけたのが本作!?

 本作での演技が高く評価され、報知映画賞新人賞をはじめ、キネマ旬報ベストテン新人女優賞、日本アカデミー賞新人俳優賞ほか、2015年度の新人賞を文字通り総なめにした感がある広瀬すず。以来、同じ是枝作品の「三度目の殺人」(17)や、李相日監督の「怒り」(16)など話題作に次々と出演。今も続く“すずブーム”に火をつけたのが本作と言える。

【映画情報】
海街diary (15年フジテレビジョン、小学館、東宝、ギャガ)

3/26(月)
NHK BSプレミアム 午後9:00~午後11:10
 鎌倉を舞台に、古い一軒家に住む3姉妹と母親の違う妹が出会い、絆を育てていく姿を描いた感動作。吉田秋生のコミックを実写化。鎌倉の古い一軒家に住む幸(綾瀬)、佳乃(長沢)、千佳(夏帆)の3姉妹は、不倫相手と家出した父の訃報を聞いて山形を訪ねる。そこで幸は亡き父と不倫相手との間にできた中学生のすず(広瀬)の存在を知り、鎌倉の家で一緒に暮らさないかとすずに提案する。

監督:是枝裕和
出演:綾瀬はるか 長澤まさみ 夏帆 広瀬すず 加瀬亮 鈴木亮平 池田貴史 坂口健太郎 前田旺志郎 キムラ緑子 樹木希林 リリー・フランキー 風吹ジュン
Text=清藤秀人


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