コラム

take132「犬神家の一族」

メディアミックスの原点にはタイトルから監督の美学が!

 1976年、角川書店は“横溝正史フェア”を開催しつつ原作の映画化に着手する。結果、書籍と映画が相乗効果を生み大ヒットを記録。今や映画界の常識となったメディアミックス展開のはしりである。その第1作が本作「犬神家の一族」だ。

 角川書店は当時の映画界がライバル視していたテレビも有効活用し、広告費を投入して映画のCMを高頻度で放送。数秒間の映像に凝縮された血なまぐさい連続殺人の残虐さと、不気味なマスクをかぶった男が醸し出すおどろおどろしさとが相まって、公開前から映画への興味は一気に加熱していく。

 そして、本編は期待にたがわぬ出来栄えだった。ボサボサの髪をかきむしってふけが落ちても気にしない主人公の名探偵・金田一耕助(石坂浩二)が、信州の旧家で起きた遺産が絡んだ連続殺人の真相を探っていく推理劇としての興味、当時の大スターや実力派を総動員した配役の華麗さ、そして、監督の市川崑が挟み込む箸休め的なユーモアの絶妙な配分などなど。中でも、死体の両脚が逆さになって湖面から突き出るという、恐怖と笑いが混在する死体演出は、以後度々パロディーになるほど。犯人が満身の力で振り下ろすナタが被害者の頭蓋骨を叩き割り、周囲に血しぶきが飛び散る場面も含めて、これは怖くて笑えるサスペンスホラーの代表作。Jホラー以降の日本映画が忘れてしまった独特のテイストである。

 タイトルロールにも市川美学が。スタッフ、キャストの名前を明朝体で表示し、画面の縦と横のラインに沿ってレイアウトする繊細さは、タイトルからすでに作品の一部と見なす匠の仕事。今は亡き名匠の構図へのこだわりを、最初から見落とすことのないようにお願いしたい。(配給収入/当時は興行収入ではなく配収:15億5千9百万円)

<映画うわさの真の相>
「よし、わかった」とすぐに早とちりする警察署長も今は亡き人

 監督のみならず、多くの出演者が今はこの世にいない。長女役の高峰三枝子、次女役の三條美紀、次女の息子・佐武役の地井武男、神官役の大滝秀治、旅館の主人役の三木のり平、冒頭で息を引き取る一族のドン・犬神佐兵衛役の三國連太郎、そして、簡単に犯人を特定してしまう早とちりの警察署長役の加藤武。そんな華麗なる俳優陣の面影を今一度。

【映画情報】
「犬神家の一族」(76年角川書店)

11/19(土)
NHK BSプレミアム 午後1:30~4:00
 信州の製薬王の膨大な遺産をめぐる連続殺人事件に、名探偵の金田一耕助が挑む横溝正史原作の怪奇ミステリー。角川映画の第1作。犬神財閥の創始者・佐兵衛(三國)が死に、一族の遺産争いを予期した顧問弁護士が金田一探偵(石坂)を呼び寄せる。佐兵衛は恩人の孫娘・珠世(島田)に全財産を譲ると遺言していた。相続の条件は、珠世が佐兵衛の3人の孫のうちの1人と結婚することだった。

監督:市川崑
出演:石坂浩二 高峰三枝子 島田陽子 三條美紀 草笛光子 あおい輝彦 小沢栄太郎 三國連太郎 川口晶 川口恒 地井武男 加藤武 金田竜之介 小林昭二

Text=清藤秀人



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