気まぐれドキュメンタリー散歩

コラム

「福島中央テレビの現場から」など企画満載! フクシマの今を伝える「福島映像祭2018」開催

 福島第一原発事故後の福島を伝える映像を集めた「福島映像祭2018」が、9月22日(土)から1週間、東京・中野区のポレポレ東中野で開催されます。2013年に始まって以来、今年で6回目の映像祭。映画やテレビ番組、さらに一般市民によって記録された多様な映像を通して、福島の人々や地域のさまざまな表情、姿を映し出してきました。劇場でのドキュメンタリー作品の上映とカフェスペースでの上映&トークがメーンですが、今回は関連企画の写真展も併催。現地への理解をさらに深めようとしています。

 特別上映&トーク「福島中央テレビの現場から」は本映像祭の恒例企画です。福島中央テレビの佐藤崇氏(常務取締役 報道担当)をゲストに迎えて、その名の通り県外では目にすることができない同局のローカルニュースを上映し、震災・原発事故から7年が経過した現在、地元のメディアがこれにどう取り組んでいるのか、地元テレビの裏側をひも解きます。夕方の看板番組「ゴジてれChu!」のニュース企画『ふくしまの未来』から二つの素材のほか、今回は「NNNドキュメント『3.11大震災シリーズ』」として放送された「見えない壁~福島・被災者と避難者」も上映されます。

 同番組は、福島県いわき市が舞台。原発事故で避難した住民と津波被災者とが隣り合わせで暮らす場所の実態を描いています。賠償金で暮らす原発避難者とわずかな見舞金程度しか受けていない津波被災者。住まいも県営住宅と市営住宅・・・。道路一本を隔て、そこには「見えない壁」がありました。その壁を乗り越え互いの距離を縮めようと1人の原発者が呼びかけたことで交流が始まりました。やがてそれは初めて合同で行う秋祭りの開催につながっていきます・・・。

 番組概要にするとわずか数行ですが、番組制作に費やされた3年間の取材は極めてハードであったようです。昨年の映像祭でこの番組の元となったニュース企画が披露され、その取材にあたった小野紗由利ディレクター(同局アナウンサーで撮影、ナレーションも担当)が原発避難者と津波被災者のはざまで大変な苦労を重ねたことが佐藤さんから明かされました。しかも、途中で取材を続けることさえ困難なほど疲弊してしまった、と。そんなエピソードを聞き、この取材の続きはどうなるのだろうと案じました。そんな過酷な取材現場にありながら、「見えない壁」は今年2月、「NNNドキュメント’18」として全国放送されました。番組の中で双方の住民たちの距離が縮まっていくのと同様、若い小野ディレクターが悩みながら続けた実直な取材が、住民たちの本音を引き出し、前を向いていく後押しになったのではと想像します。

 今回上映されるのは、その番組の完全版ともいうべき55分版(同局 5月27日放送分)でなおさら貴重な機会となります。佐藤さんの聞き手役を務めるのは、こちらもおなじみ元NHKディレクター・七沢潔氏(NHK放送文化研究所 上級研究員)。毎年恒例となった2人によるトークは、福島を語るエキスパートとして必聴の価値があります。

 そして、劇場で上映される四つの作品の中では、特に映画「ふたつの故郷を生きる」(2018年)が気になります。ドキュメンタリー制作に高い実績を誇る製作会社テムジンによる作品で、撮影・編集を手掛けた中川まゆみ監督と平野まゆプロデューサーは、2017年2月放送のWOWOW「ノンフィクションW『写真家レスリー・キーと1万人のカミング・アウト』」など、これまで数々の優れたドキュメンタリー番組を手掛けてきました。避難ママとたまたま知り合った中川監督が、子どもたちのために母子避難した人たちの苦悩に直面し、これを撮らずにはいられないとカメラを回したという作品です。

 また、これと同時上映される「かえりみち」(2017年)は、大浦美蘭監督の大学卒業制作の作品という異色作ですが、昨年開催された山形国際ドキュメンタリー映画祭でも上映された秀作です。福島県浪江町出身の大浦監督ら家族は、原発事故で避難しました。数年後、上京した大浦監督は、自分が「被災者」であることに違和感を抱き、家族にカメラを向けました。変わりゆく環境と現実の中で揺らぐ家族の「かえりみち」を描写しています。

 このほか、枯葉剤に関するドキュメンタリーなどで輝かしい経歴を持つ坂田雅子監督による最新作「モルゲン、明日」(2018年)や、震災当時に高校生で自らも自主避難した阿部周一監督作品「たゆたいながら」(2017年)が上映されます。上映後には監督が舞台挨拶をする回もあるので、要チェックです。それぞれの作品が描かれた現実を直に聞き、この映像祭のコピーでもある「あらゆる福島の内側へ―」思いを寄せていただけたらと思います。


「見えない壁~福島・被災者と避難者」
福島中央テレビ 2018年5月27日放送
■ナレーション・ディレクター/小野紗由利  プロデューサー/丸淳也
*福島県いわき市。原発事故で避難した住民と津波被災者が暮らす公営住宅が隣り合う場所がある。「補償の格差」で生まれた両者の「壁」。その壁を乗り越え、互いの距離を縮めたいと1人の原発避難者が呼びかけ、少しずつ交流が始まった。
福島映像祭2018
日時/9月22日(土)~28日(金)
会場/ポレポレ東中野、Space&Cafeポレポレ坐
東京都中野区東中野4-4-1 ポレポレ坐ビル


★上映作品(会場:ポレポレ東中野)
「たゆたいながら」(2017年 監督/阿部周一)
「モルゲン、明日」(2018年 監督/坂田雅子)
「ふたつの故郷を生きる」(2018年 監督/中川あゆみ)
「かえりみち」(2017年 監督/大浦美蘭)


※上映後、監督による舞台挨拶がある回もあり。
 詳細はタイムテーブルを確認ください。


★イベント(会場:Space&Cafe ポレポレ坐)
□市民部門上映&トーク「わたしが伝える福島
9月22日(土)午後6:00~8:00 (5:30開場)
ゲスト:市民部門 上映作品 制作者
    米田博 金沢朱莉 佐々木加奈子(浪江の記録を守る会)
進行:平野隆章(OurPlanet-TV)
コメンテーター:下村健一(白鴎大学客員教授/元TBS報道キャスター)
*市民部門から寄せられた3プログラムを上映。

□特別上映&トーク「福島中央テレビの現場から」
9月23日(日)午後6:00~8:00 (5:30開場)
ゲスト:佐藤崇(福島中央テレビ 常務取締役報道担当)
聞き手:七沢潔(NHK放送文化研究所・上級研究員)
*福島中央テレビによるローカルニュースの上映し、その報道現場を牽引する佐藤氏にテレビの裏側を聞く。
※無料上映ですが、トーク料・資料代として参加料がかかります。

□上映&トークセッション「避難解除地域のリアル」
9月24日(月)午後6:00~8:00 (5:30開場)
ゲスト:吉田千亜(フリーライター)
聞き手:白石草(OurPlanet-TV)
*ルポ「その後の福島:原発事故後を生きる人々」の著者を招くほか、OurPlanet-TVが撮影した映像も紹介。

◆料金
映画   当日 大人1,500円 シニア1,200円 大・専・障害者1,000円 高校生以下700円
イベント 予約・当日 1,500円
     予約 TEL 03-3227-1405 メール event@polepoletimes.jp(ポレポレタイムス社)
問い合わせ/NPO法人Our Planet-TV(アワープラネットティービー)
      福島映像祭事務局 TEL:03-3296-2720

詳細は公式サイト
http://fukushimavoice.net/fes/fes2018



★関連企画 堀 誠 写真展『維新の影・福島編』
日時/9月19日(水)~28日(金)
   午前11:30~午後9:00
   22(土)、23(日)、24(月)、28(金)は午後5:00まで
会場/Space&Cafeポレポレ坐
東京都中野区東中野4-4-1 ポレポレ坐ビル
入場無料
関連リンク
多様な映像を通してフクシマの今を伝える「福島映像祭2017」
https://www.tvguide.or.jp/column/kimagure/20170915_01.html
元NHKドキュメンタリスト 七沢潔、大森淳郎制作番組の上映&トークイベントを開催
https://www.tvguide.or.jp/column/kimagure/20180119_01.html
映像ディレクター・笠井千晶氏「Life 生きてゆく」で山本美香記念国際ジャーナリスト賞を受賞
https://www.tvguide.or.jp/column/kimagure/20180525_01.html
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株式会社東京ニュース通信社 コンテンツ事業局担当
1988年入社。30代から放送局担当記者に転身、後にTVガイド編集部。同副編集長、デジタルTVガイド編集長ほか番組表・解説記事制作の部門長、西日本メディアセンター編集部長などを歴任。全国各地で放送されている質の高いドキュメンタリー番組と、精魂こめて地道に番組作りに勤しむ制作者の姿に注目してきた。人生の糧となるドキュメンタリーの名作・力作の存在を、より多くの視聴者に知らせるべく、日々ネタ探しの歩みを続ける。

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