気まぐれドキュメンタリー散歩

コラム

堤幸彦が記録する被災地・気仙沼の声…第7弾は
堤監督が企画・総合演出した子どもミュージカルの歌声

 昨年暮れ、早稲田大学内で行われた「Kesennuma,Voices.6 東日本大震災復興特別企画~2016 堤幸彦の記録~」上映会×堤幸彦監督トークイベント(主催/早稲田大学気仙沼チームほか)に足を運びました。

 堤幸彦監督といえば、「金田一少年の事件簿」をはじめ「SPEC」「トリック」「20世紀少年」など、人気作品の枚挙にいとまがありません。ドラマ、映画、舞台と、常に新たな表現方法を創り出すエンターテインメントの旗手、日本を代表するクリエイターの一人ですが、東日本大震災を機に被災地・宮城県気仙沼の記録を撮り続けていることをご存知でしょうか。2012年から毎年、震災のあった3月にCSのTBSチャンネルで放送されてきました。妹夫妻を津波で亡くした気仙沼出身のアナウンサー・生島ヒロシさんの長男・勇輝さんと次男・翔さんの同地でのボランティア活動から始まったこの番組は、毎年定点観測的に被災者の声を記録しています。上記イベントは、そのシリーズ第6弾(昨年3月放送)の上映と、堤監督本人と地元気仙沼の関係者をゲストに招いてのトークがセットで行われました。

 上映が終わって登壇した堤監督は「ご覧いただいたようなドキュメンタリー作品と無縁な人生ではありましたが、震災後にボランティア活動を通じていろんな方の声を聞いている中で、僕にできることは何かと思った時に、その声を記録することではないかとこの『Voices.』を考えました。震災の記憶が風化しているなか、希少な作品になってきたわけですが、やり続けることに意義を感じています」とケイゾクすることへのこだわりを表明しました。ゲストの一人、気仙沼プラザホテル支配人・堺丈明さんは「2011年、震災直後にボランティアで来た際にお泊りいただいて以来のお付き合いです。その年何度もいらして、年末になって突然、『気仙沼の記録を撮る』とおっしゃってびっくりしました。いつしか自分でも勝手に堤組の気仙沼支部を名乗っています(笑)」。昨年も「Voices.6」放送の翌月に同ホテルで特別上映会も開催し、監督との交流を深めています。その番組にも登場したもう一人のゲスト、気仙沼復興協会の千葉貴弘さんは「まだボランティアの受け入れ態勢が整っていないなか、堤組が強硬なスケジュールで来てくださった・・・」と、同協会の立ち上げ前から支援に駆けつけた監督にあらためて謝辞を述べました。

 堤監督は、かつて映画「自虐の詩」(2007年)の撮影で訪れ、その時お世話になった気仙沼の人々と風土が強く印象づけられました。「内湾があってそれを取り囲むように丘陵の町があるめずらしい地形。その美しさは何事にも代え難い、僕が好きなポイントです。いまだに、行けば夜明けに起きて写真を撮ります(公式ブログに掲載されています)」。また、独特の郷土や文化について「気仙沼しかない確固たる生き方、生活のシステム。それを私が継続的に力強く人々に伝えていくことが必要だと思う。それが5年経ち、10年経ちもう一度街作りに。そして気仙沼の持っている強さと温かさみたいなものがつながっていけばと思っています」と、「Voices.」に取り組む思いを語りました。

 トークの後半では、震災から丸7年の3月11日に同チャンネルで放送される「Kesennuma,Voices.7 東日本大震災復興特別企画~2017 堤 幸彦の記録~」の構想も明かされました。
「自分の得意分野で、子どものミュージカルをつくろうと思っています。3月3日のひなまつりの日に上演します。気仙沼や広く東北の皆さんに声をかけて集まったお子様が主役です。また、番組の中で司会を務めている生島兄弟ですが、お兄さんは何を隠そう役者です。弟さんは何を隠そうダンサーです(笑)。役者とダンサーがいれば、これはミュージカルだろう、と。しかもお父さんは生島ヒロシさん。その生島さんが小学生だった昭和37年、38年頃の気仙沼は、一番力がありました。世界中に船が行き、映画館などは4つぐらいあって、日々変化に富んでいた。まさに日本が成長していく途中にあった。象徴的なのは、サンマが食べきれないくらい獲れたんです。サンマを満載したトラックが生島家の前の急カーブを、スピードを落とさずに走っていくのでサンマがドバドバドバと落ちて、生島さんはじめ近所の小学生たちがそれを拾って夕ご飯のおかずにする・・・という、なんとも「三丁目の夕日」の時代のような素敵なエピソードがあります。そんな時代、すなわち気仙沼が一番強くて、楽しかった頃のことを、生島さんご本人にも登壇していただいてミュージカル仕立てに伝えていく、そんな明るい企画です。そういう活動をすることで、また放送パッケージにしてお見せすることで、どっこい元気に生きているぞ、というメッセージにもなり得る。もしかしたら気仙沼発のエンターテインメントと言えるかもしれない。いよいよ積極的に攻めていこうかなと思っています」

 こうして企画された生島さん原案の気仙沼キッズミュージカル「デンマークとさんま十勇士」。チケットやポスターは子どもたちが手書きし、舞台で使う美術品もすべて手作りでした。そして、ミュージカルの要となる歌ですが、気仙沼の今の思いが込められた歌詞も注目です。堤幸彦監督が総合演出するシンプルでストレートなエンターテインメント。「Kesennuma,Voices.」シリーズ第7弾は、これまでとは一味違う歌“声”を届けます。


「Kesennuma,Voices.7 東日本大震災復興特別企画~2017 堤 幸彦の記録~」
TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画
3月11日 日曜 午前11:00~午後0:20
3月31日 土曜 午前7:00~8:20

■出演/生島勇輝 生島翔 生島ヒロシ 気仙沼のみなさん ほか
企画・構成・監督/堤幸彦 ディレクター/髙橋洋人 プロデューサー/山田昌伸 杉原奈実

*映画監督・堤幸彦が被災地・気仙沼で生きる人々の“声”を伝えるオリジナル番組の第7弾。妹夫婦を津波で亡くした生島ヒロシの長男・勇輝と次男・翔の気仙沼でのボランティア活動を通して、苦しくともゆっくりと立ち上がっていく気仙沼の人々の姿をとらえた第1弾から7年目、大きく変わりつつある町の様子や、新たな生活を始める人、新しい出発を始めた人たちの“声”を記録する。さらに、勇輝が演出、翔が振付を担当して、子どもたちとミュージカルを開催。新たな復興支援に取り組んだ。

番組HP
http://www.tbs.co.jp/tbs-ch/item/d2935/

これまでの「Kessennuma,Voices.」シリーズは TBSオンデマンドで配信中。 https://tod.tbs.co.jp/

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株式会社東京ニュース通信社 コンテンツ事業局担当
1988年入社。30代から放送局担当記者に転身、後にTVガイド編集部。同副編集長、デジタルTVガイド編集長ほか番組表・解説記事製作の部門長、西日本メディアセンター編集部長などを歴任。全国各地で放送されている質の高いドキュメンタリー番組と、精魂こめて地道に番組作りに勤しむ制作者の姿に注目してきた。人生の糧となるドキュメンタリーの名作・力作の存在を、より多くの視聴者に知らせるべく、日々ネタ探しの歩みを続ける。

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