気まぐれドキュメンタリー散歩

コラム

貴重な名作とゲストによるトーク! ドキュメンタリー映像の祭典「座・高円寺 ドキュメンタリー フェスティバル」が開催

 ドキュメンタリーファン待望のイベント「座・高円寺 ドキュメンタリー フェスティバル」が、今年も2月8日(木)から12日(月)に東京・杉並区にある「座・高円寺2」で開催されます。テレビ、映画の枠を超えた作品が上映され、ドキュメンタリーに造詣が深いゲストが参加する、まさにドキュメンタリー映像の祭典。2010年スタート以来、今年で9回目を数え、この時期の恒例行事としてすっかり定着しています。「特集上映部門」、「ゲストセレクション部門」、「コンペティション部門」で大別され、ほか「特集・カメラマン」などで構成されています。すべての上映パートにゲストのアフタートークがあるのが、このフェスならでの楽しみ。作品を推薦した人やゆかりの人たちの生の声を直に聴けるのは何ともぜいたくです。今回は、岸惠子さん、奥田瑛二さん、今野勉氏ら俳優や制作者の方々から、ダンサーの首藤康之氏、作家の平野啓一郎氏まで幅広い顔ぶれの方々が連日登場します。今回の特集上映は「表現者たち」をテーマに、民俗芸能、役者、アート、写真、音楽、演劇、ダンスなど多数のジャンルの表現者を掘り下げた作品が集結。また、ドキュメンタリーに精通したメンバーがチョイスしたゲストセレクター部門は、映画監督の森達也氏、是枝裕和氏、松江哲明氏、俳優の井浦新さんら常連メンバーのほか、作家・平野啓一郎氏が加わっています。

「座・高円寺 ドキュメンタリー フェスティバル」は、一度見逃すとなかなか視聴機会がないテレビドキュメンタリーの名作に再びめぐりあえる貴重な場。初日8日は(木)は森達也セレクションで、自身が演出した「NONFIX『放送禁止歌~歌っているのは誰?規制しているのはなぜ?~』」(フジテレビ 1999年放送)を上映。映画「A」「A2」「FAKE」と、常に社会に対して問題提起を促す森監督がディレクターとしてテレビを主戦場としていた頃の代表的な番組で、タブーに挑む姿勢は今につながっています。この番組を選んだ背景も含め、どんなことを語るのか注目です。

 9日(金)は「特集・表現者たち」から“写真”をテーマに「ETV特集『写真で読む東京』」(NHK 1996年)を上映。映画「阿賀に生きる」などで知られる社会派のドキュメンタリー映画監督・故佐藤真さんがテレビディレクターを務めた希少でレアな番組です。東京をとらえた4人の写真家、桑原甲子雄と長野重一、内藤正敏と荒木経惟を2部構成で紹介。ゲストで登場する写真評論家の飯沢耕太郎氏がインタビュアーを務めています。佐藤監督は後に、写真家・牛腸(ごちょう)茂雄の写真集を題材にした映画「SELF AND OTHERS」を撮っていますが、その予兆を感じます。

 10日(土)の諏訪敦彦セレクションは、映画誕生100年特別企画で東日本放送の開局20周年特番「ハリウッドを駆けた怪優異端の人・上山草人」(東日本放送 1995年放送)。公開中の映画「ライオンは今夜死ぬ」など世界を舞台に活躍する諏訪監督がかつてテレビドキュメンタリーを作っていた頃の貴重な作品で、1920年代のハリウッド黄金期にひときわ異才を放った地元・宮城県の俳優・上山草人(かみやまそうじん)の生涯をドラマとドキュメンタリーで描いたものです。主演を務めた奥田瑛二さんが監督の手法をどのように感じていたのか、監督本人と直接相まみえるのも興味深いところ。

 11日(日)の是枝裕和セレクションは、「永六輔とテレビジョン」と題し、2016年に亡くなった永さんを彼の代名詞でもある長寿番組「遠くへ行きたい」を上映して追悼します。記念すべき第1回「岩手山―歌と乳と」と第16回「オランダ坂をのぼろう-長崎・天草」の2本立て。当時演出を務めていたテレビマンユニオンの今野勉氏と是枝監督による「テレビとは何か?」の師弟トークは仕事柄、絶対に聞き逃せないテーマです。

 12日(月)、上映のトリを飾るパートは井浦新セレクション。彼がレギュラー出演する「日曜美術館」の特別編「異形探訪井浦新“にっぽん”美の旅3」(NHK 2017年放送)は、福岡、青森、山形と、旅先で見つけた異形の神仏から意外な“にっぽん”を紹介しています。こちらは井浦さんと番組の長井倫子ディレクターによるクロストークも気になるところです。

 そしてもう1つはずせないのが「追悼 吉永春子」のコーナー(11日)です。2016年に亡くなられた元TBSの名ドキュメンリスト“お春さん”こと故吉永春子さんの代表的な2番組の上映。テレビ報道の草分け的存在として語り継がれる吉永さんは「ある傷痕~魔の731部隊」で、昨年「NHKスペシャル」で再びクローズアップされた、細菌兵器で人体実験を行っていた日本陸六軍第731部隊の実態を40年以上前に迫っていました。立場は違えど、共にその後継者である金平茂紀氏と橋本佳子氏とで、吉永さんについて論じ合います。

 このほか、12日(月)は朝からコンペティション部門入賞作品5本の上映が行われ、夜8時過ぎには表彰式で大賞が発表されます。新たな才能を公募した中から、昨年紹介した映像ディレクターの笠井千晶監督による「Life 生きてゆく」が選ばれています。昨年7月には日本テレビ系「NNNドキュメント」枠でそのテレビ版が放送されましたがそのオリジナルを東京で再び観ることができるのも朗報です。


[主なテレビドキュメンタリー作品]
セレクション◇森達也
「NONFIX『放送禁止歌~歌っているのは誰?規制しているのは誰?~』」
■フジテレビ
1999年11月放送  演出/森達也
*放送禁止歌に集約された時代のタブー。あえて電波に乗せて聞かせることでさまざまな角度から検証。
※8日(木)上映  ゲスト/森達也
特集◆表現者たち
「ETV特集『写真で読む東京』」
■NHK
1966年  ディレクター/佐藤真

*映画監督・佐藤真が、桑原甲子雄、荒木経惟ら4人の写真家を2部構成で取り上げ写真と向き合った。
※9日(金)上映  ゲスト/代島治彦 飯沢耕太郎
セレクション◇諏訪敦彦
「ハリウッドを駆けた怪優 異端の人・上山草人」
■東日本放送
1995年11月放送  演出/諏訪敦彦

*1920年代のハリウッドで活躍した地元宮城県出身の俳優の生涯をドラマとドキュメンタリーで描いた。
※10日(土)上映  ゲスト/諏訪敦彦 奥田瑛二
◆追悼・吉永春子
「ある傷痕~魔の731部隊」
■TBS
1976年  ディレクター/吉永春子
*日中戦争時、細菌兵器研究で人体実験を行った日本陸軍731部隊の実態に迫った。

「街に出よう~福祉への反逆・青い芝の会」
■TBS
1977年  ディレクター/吉永春子


*行動する脳性マヒの会「青い芝の会」の行動を取材し、身障者と社会の関わりを問う。
※ともに11日(日)上映  ゲスト/金平茂紀 橋本佳子
セレクション◇是枝裕和
「遠くへ行きたい」
第1回 岩手山―歌と乳と
第16回 オランダ坂をのぼろう-長崎・天草
(C)テレビマンユニオン
■読売テレビ(日本テレビ系)
1970年10月放送・1971年1月放送  演出/今野勉
*故永六輔さんが出演し、テーマソングも作詞した傑作長寿番組の第1回を含む2本を追悼上映。
※ともに11日(日)上映  ゲスト/是枝裕和 今野勉
セレクション◇井浦新
「日曜美術館・特別編『異形探訪 井浦新“にっぽん”美の旅3』」
■NHK
2017年3月放送  出演/井浦新 ディレクター/長井倫子
*天狗(てんぐ)や鬼、謎めく新仏像・・・。異形の美はなぜ生まれたのかを井浦新が解き明かす。
※12日(月)上映  ゲスト/井浦新 長井倫子
第9回 座・高円寺 ドキュメンタリー フェスティバル
日時:2月8日(木)~12日(月)
会場:「座・高円寺2」(杉並区立杉並芸術会館)
杉並区高円寺北2-1-2 地下2階

ゲスト(順不動):松江哲明(映画監督) 森達也(映画監督、作家) 平野啓一郎(作家) 諏訪敦彦(映画監督)是枝裕和(映画監督) 井浦新(俳優) 一之瀬正史(カメラマン) 北村皆雄(映画監督) 松本貴子(映画監督) 代島治彦(映画プロデューサー) 飯沢耕太郎(写真評論家) 浦谷年良(映画監督) 龍村仁(ディレクター) 岸惠子(女優) 串田和美(演出家) 奥田瑛二(俳優) 柄本佑(俳優) 田原(詩人) 首藤康之(ダンサー) 金平茂紀(ジャーナリスト) 今野勉(演出家) 長井倫子(ディレクター)

□コンペティション部門入賞作品上映
2月12日(月)
午前10:00 入賞作品上映
      映画「山河の子」(2018年) 監督/胡旭彤(コ・キョクトウ)
      「未来世紀ジパング『巨大中国と戦う“民主の女神”
      〜香港オタク少女の青春日記〜」
      (BSジャパン 2017年10月放送) 監督/中村航
午後0:30 「ETV特集『その名は、ギリヤーク尼ヶ崎 職業 大道芸人』」       (NHK 2017年2月放送) ディレクター/松原翔
      映画「選挙に出たい」(2016年) 監督/邢菲(ケイヒ)
  3:15 映画「Life 生きてゆく」(2017年) 監督/笠井千晶
  8:10 表彰式(大賞作品発表)
  8:30 終了予定

チケット:前売り券1300円  当日券 1500円(全席自由)
入場は先着順。満席の場合は、入場できないこともあります。
無料参考上映作品は無料で見られますが、上映後のトークは有料

上映スケジュールほか、詳細は下記HPでご確認ください。
HP:http://zkdf.net/
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株式会社東京ニュース通信社 コンテンツ事業局担当
1988年入社。30代から放送局担当記者に転身、後にTVガイド編集部。同副編集長、デジタルTVガイド編集長ほか番組表・解説記事製作の部門長、西日本メディアセンター編集部長などを歴任。全国各地で放送されている質の高いドキュメンタリー番組と、精魂こめて地道に番組作りに勤しむ制作者の姿に注目してきた。人生の糧となるドキュメンタリーの名作・力作の存在を、より多くの視聴者に知らせるべく、日々ネタ探しの歩みを続ける。
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