気まぐれドキュメンタリー散歩

コラム

「人生フルーツ」テレビ初放送! 日本映画専門チャンネル「東海テレビドキュメンタリー傑作選」を3夜連続放送!!

 日本映画専門チャンネルでは、12月10日(日)から「3夜連続 東海テレビドキュメンタリー傑作選」と題し、東海テレビが劇場公開した全10作品と、「樹木希林の居酒屋ばぁば」「藤井聡太 14才」など東海地区で放送されたドキュメンタリー番組、全19作品を編成します。今回の最大の注目は、今も劇場公開中の「人生フルーツ」がテレビで初めて放送されること。観客動員数20万人を突破し、ドキュメンタリー映画としては驚異のロングラン上映が続いていることはこれまでお伝えしたとおりです。主人公の津端修一さん、英子さんという、素敵な老夫婦の生き方が魅力的に描かれ、観た人の心に深く響いています。監督を務めた東海テレビの伏原健之氏は、先日紹介した文化庁映画賞受賞記念上映会の舞台挨拶で作品について、次のように語っていました。

「『人生フルーツ』というタイトルの意味についてすごく良く聞かれます。最初は『人生とはフルーツのようにみずみずしいものです・・・』みたいなことをずっと答えていたのですが、最近は『僕もよく分からないです』と答えることにしています。1つ言えるのは、観た人が観た後に『ああ、こういう意味なんだな』と思ってもらえればと。映画そのものの雰囲気は表しているけど、1つの意味に決まらないようにしたという、そんなタイトルです」。

 観た人それぞれがいろいろな思いを感じ取れる作風が「人生フルーツ」の1つの特徴です。今年1月の劇場公開以降、約1年にわたり全国各地の劇場から小さな上映会まで、舞台挨拶などを通して観客と直接対話を重ねてきた伏原監督。その間に、会場で話すトークの内容も、自身の作品への思いも少し変わってきたようです。

「映画で描いていることについて『あれってこういう意味ですよね』『こういうふうに感じました』と言われます。実は本人が全く意識していないことを表現されたり、伝わっていたりして、自分が作ったサイズよりも映画自体がどんどん膨らんでいっている。(ナレーションを担当した)樹木希林さんが一緒に取材を受けたときに、『(伏原監督を)この人は才能がないのよ』といきなりおっしゃったんです。でも、希林さんが言いたかったのは、下手に才能をふりかざして本人の考えを押し付けるような作品にせずに、取材をした相手に寄り添うような形でその人たちの良さを引き出しているのは才能がないからだと、すごくよく解釈しています(笑)。こうやって自分が作ったものがちゃんと表現できてそのまま相手にちゃんと伝わっていればまあいい作品だと満足できるのですが、作ったものを観ていただいた人がどんどん膨らませてくれる、そういう経験は本当に今までありませんでした」。

 それは、テレビのドキュメンタリー番組作りでは感じ得なかった、映画作品ならでの感覚なのでしょう。希林さんが劇中、「むかし、ある建築家が言った。長く生きるほど、人生はより美しくなる」というナレーションを語っていますが、この映画も長く上映されることで作品自体がより美しくなっている、そんな気さえします。

 このように現在進行形で静かな盛り上がりを見せるなか、テレビで放送されるのは異例な気もします。そこで、配給協力の東風・渡辺祐一さんにその背景を尋ねました。
「昨年、映画の元になったテレビ版『人生フルーツ ある建築家と雑木林のものがたり』が、日本放送文化大賞グランプリを受賞し、映画の公開前後に全国各局で再放送されることになりました。テレビで放送されることで映画の集客に悪い影響が出るのではと懸念していました。しかし実際にはテレビを見て家族や友人らと一緒にもう一度劇場で観たいという方がたくさんいらして、テレビ放送されたことがむしろ劇場での盛り上がりを後押ししたんです。すべての作品がそうとは思いません。『人生フルーツ』のように作品に力があればこその現象だろうと思います。今回の放送が、また映画の広がりにつながったらうれしいです」。

 「『人生フルーツ』は映画として20万人の方に見ていただいていますが、ヒットの要因は完全に口コミの力です。娘さんが観てお母さんに薦めてくれたり、奥さんが観て旦那さんと一緒に行ったり、お隣さんを誘ったりと、自分にとって大切な人を連れて観てくれているのがいいなと思っています。自分の周りの人に是非お薦めしてください」伏原監督はこのように呼び掛け、上映会でのトークを結びました。今回のテレビ初放送で新たに「人生フルーツ」と出合った人が、自分の大切な人ともう一度劇場に観に足を運ぶ・・・。「人生フルーツ」の輪はこれからも“こつこつ、ゆくっり”広がっていきそうです。


3夜連続 東海テレビドキュメンタリー傑作選-映画化全10作品完全放送-
BS日本映画専門チャンネル
12月10日(日)~12日(火)
12月10日(日)
◇午後9:00
映画「人生フルーツ」
(C)東海テレビ
■2017年 ナレーション/樹木希林 監督/伏原健之
プロデューサー/阿武野勝彦
*名古屋近郊の高蔵寺ニュータウンの一隅で、雑木林に囲まれ自給自足に近い生活を営む建築家の津端修一氏と妻の英子さんの日常を見つめたドキュメンタリー。本編の後に阿武野プロデューサーと伏原監督のSPインタビューを。
※12/14(木)午後11:20、12/30(土)午後9:45にも放送。
◇午後11:00
「樹木希林の居酒屋ばぁば」
(C)東海テレビ

■2017年1月放送 出演/樹木希林 津端英子 ナレーション/本仮屋ユイカ
ディレクター/伏原健之 プロデューサー/阿武野勝彦
*映画「人生フルーツ」の主人公の1人である津端英子さんはどんな暮らしをしているのか、同映画のナレーションを務めた女優・樹木希林が英子さんを居酒屋に招待して2人で女子会を開いた・・・。
※12/14(木)深夜1:20、12/30(土)午後11:45にも放送。
◇深夜0:00
映画「ヤクザと憲法」
(C)東海テレビ

■2016年 監督/圡方宏史 プロデューサー/阿武野勝彦
*暴力団対策法から20年が経過した大阪を舞台に、大阪の指定暴力団に密着してヤクザの世界の実態に迫った話題作。そこから見えてくる人権問題の実情を問いかける。
◇深夜1:45
「光と影~光市母子殺害事件 弁護団の300日~」
(C)東海テレビ

■2008年6月放送 ナレーション/寺島しのぶ ディレクター/齊藤潤一
プロデューサー/阿武野勝彦
*1999年、山口県光市で発生した母子殺害事件。殺人鬼を守る鬼畜と呼ばれバッシングを浴びた弁護団の内部にカメラを入れ、社会の深層を照射した。
◇深夜2:40
映画「青空どろぼう」
(C)東海テレビ

■2011年 ナレーション/宮本信子 監督/阿武野勝彦・鈴木祐司
プロデューサー/阿武野勝彦
*高度経済成長期に石油コンビナートによる大気汚染で起きた“四日市ぜんそく”の裁判に携わった人々や、記録人・澤井余志郎の魂の物語に迫るドキュメンタリー。
◇深夜4:25
映画「長良川ド根性」
(C)東海テレビ

■2012年 ナレーション/宮本信子 監督/阿武野勝彦・片本武士
プロデューサー/阿武野勝彦
*’90年代に運用が開始された長良川河口堰(ぜき)をめぐって、長年にわたり振りまわされてきた漁師たちの苦悩する姿を捉えた記録映画。公益とは? 民意とは? 現代日本の構造的な難問を鮮烈に描く。
12月11日(月)
◇午後9:00
映画「平成ジレンマ」
(C)東海テレビ
■2011年 ナレーション/中村獅童 監督/齊藤潤一
プロデューサー/阿武野勝彦 
*1980年代に訓練生の死亡事故を起こして刑に服した戸塚ヨットスクール校長の戸塚宏のその後の30年間に迫るドキュメンタリー。東海テレビドキュメンタリー劇場の第1作目。
◇午後10:45
映画「ホームレス理事長 -退学球児再生計画-」
(C)東海テレビ

■2014年  監督・圡方宏史 プロデューサー・阿武野勝彦
*それぞれの事情で中退した高校球児たちに、再び野球と勉強の場を与えようとするNPO法人“ルーキーズ”の活動に迫る。切り盛りする理事長の強烈なキャラクターにドキュメンタリーの面白さが凝縮されている。
◇深夜0:45
映画「死刑弁護人」
(C)東海テレビ

■2012年 ナレーション/山本太郎 監督/齊藤潤一
プロデューサー/阿武野勝彦
*オウム真理教事件や光市母子殺害事件など重大事件の被告人を担当する弁護士の生き様、素顔に迫った異色作。先入観なしにまずは見てほしいと思わせるドキュメンタリー作品の1つ。
◇深夜2:30
「罪と罰 娘を奪われた母 弟を失った兄 息子を殺された父」
(C)東海テレビ

■2009年4月放送 ナレーション/藤原竜也 ディレクター/齊藤潤一
プロデューサー/阿武野勝彦
*犯罪被害者は、みな加害者の極刑を望んでいるのか。最愛の肉親を殺害された3人への取材で遺族の思いを死刑制度の現実を明らかにする。
◇深夜3:25
「裁判長のお弁当」
(C)東海テレビ

■2007年4月放送 ナレーション/宮本信子 ディレクター/齊藤潤一
プロデューサー/阿武野勝彦
*ある裁判長の注目すべき日常。食事も外ではせず、愛妻弁当を2つ持参する。日本で初めて現役の裁判長に長期密着し、その肉声と裁判所内の様子を映し出した。
◇深夜4:20
「検事のふろしき」
(C)東海テレビ

■2009年6月放送 ナレーション/宮本信子 ディレクター/齊藤潤一
プロデューサー/阿武野勝彦
*検事の象徴、濃紺の大きな風呂敷の中身とは? 裁判員裁判の導入を前に、撮影絶対禁止の検察庁内部を長期密着取材し、検事たちの知られざる姿を映像化。
12月12日(火)
◇午後9:00
「藤井聡太 14才」
(C)東海テレビ
■2017年6月放送 ナレーション/萩本欽一 ディレクター/横井良安
プロデューサー/伏原健之
*史上最年少でプロ棋士のなった藤井聡太四段を小学6年生から3年にわたって密着取材。連勝記録歴代トップタイ記録を達成、日本中の注目を浴び14歳の天才の軌跡を描く。
※12/14(木)深夜2:20、12/30(土)深夜0:45にも放送。
◇午後9:55
映画「神宮希林 わたしの神様」
(C)東海テレビ

■2014年 旅人/樹木希林 監督/伏原健之 プロデューサー/阿武野勝彦 
*2013年に70歳を迎えた樹木希林さんが、伊勢神宮とそのゆかりの地を旅する姿をとらえるドキュメンタリー。希林さんの目を通して式年遷宮を映し出す。
◇午後11:40
「重い扉~名張毒ぶどう酒事件の45年~」
(C)東海テレビ


■2006年3月放送 ナレーター/渡辺いっけい ディレクター/齊藤潤一
プロデューサー/中根康邦
*昭和36年、三重県名張市で起きた「名張毒ぶどう酒事件」。事件直後から東海テレビが追い続けた貴重な映像をもとに、死刑囚と家族の苦しみや日本の司法について考える。
◇午後0:35
「黒と白~自白・名張毒ぶどう酒事件の闇~」
(C)東海テレビ


■2008年2月放送 ナレーター/原田美枝子 ディレクター/齊藤潤一
プロデューサー/阿武野勝彦
*「名張毒ぶどう酒事件」を長年にわたって追い続ける東海テレビの「重い扉~名張毒ぶどう酒事件の45年~」(2006年)に続く関連ドキュメンタリー。「自白」が抱える問題に鋭く迫る。
◇深夜1:30
「毒とひまわり~名張毒ぶどう酒事件の半世紀~」
(C)東海テレビ

■2010年6月放送 ナレーター/仲代達矢 ディレクター/齊藤潤一
プロデューサー/阿武野勝彦
*司法は獄中死を望んでいる・・・。84歳の奥西死刑囚の「名張毒ぶどう酒事件」のほか帝銀事件の周辺も辿りながら、一度下した判決に固執する司法の姿を浮き彫りにする。
◇深夜2:30
映画「約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯」
(C)東海テレビ


■2013年 出演/仲代達矢 樹木希林ほか ナレーター/寺島しのぶ
監督/齊藤潤一
プロデューサー/阿武野勝彦
*毒入りぶどう酒で女性5人を殺害した事件の犯人として逮捕され、獄中で亡くなるまで無実を主張し続けた奥西勝の苦闘を仲代達矢が演じる。日本の司法の根底に異議を突きつける。
◇深夜4:40
映画「ふたりの死刑囚」
(C)東海テレビ

■2016年 ナレーション/仲代達矢 監督/鎌田麗香 プロデューサー/齊藤潤一
*獄中死亡した奥西勝と、いまだ死刑囚の身でありながら釈放された袴田巌。冤罪(えんざい)を訴えで続けたふたりの死刑囚とその家族の人生を見つめ、日本の司法制度の問題点を問いつめる。
映画「人生フルーツ」
ポレポレ東中野ほかで公開中。
詳細は公式HP
http://life-is-fruity.com/
関連リンク
「人生フルーツ ある建築家と雑木林のものがたり」など、「ザ・ベストテレビ2017」でドキュメンタリーの秀作を一挙公開!」
https://www.tvguide.or.jp/column/kimagure/20170929_01.html
「東海テレビドキュメンタリー劇場」地元名古屋シネマテークで凱旋上映! テレビ⇔映画の理想のループが早くも実現へ
https://www.tvguide.or.jp/column/kimagure/20170825_01.html
東海テレビ ドキュメンタリー傑作選再び! GW3夜連続16作品を一挙放送!!
https://www.tvguide.or.jp/column/kimagure/20170426_01.html
東海テレビドキュメンタリー劇場版最新作「人生フルーツ」
https://www.tvguide.or.jp/column/kimagure/20161229_01.html
東海テレビドキュメンタリー傑作選 日本映画専門チャンネルで集中放送!
https://www.tvguide.or.jp/column/kimagure/20161227_01.html
刺激満載! 若手制作者の登竜門。新たに開催された「愛知・岐阜・三重制作者フォーラムin なごや」をレポート
https://www.tvguide.or.jp/column/kimagure/20171201_01.html
キーワード
Y・I
株式会社東京ニュース通信社 コンテンツ事業局担当
1988年入社。30代から放送局担当記者に転身、後にTVガイド編集部。同副編集長、デジタルTVガイド編集長ほか番組表・解説記事製作の部門長、西日本メディアセンター編集部長などを歴任。全国各地で放送されている質の高いドキュメンタリー番組と、精魂こめて地道に番組作りに勤しむ制作者の姿に注目してきた。人生の糧となるドキュメンタリーの名作・力作の存在を、より多くの視聴者に知らせるべく、日々ネタ探しの歩みを続ける。
PAGE TOP