コラム

ドラマの中で輝く「真っすぐな性格」のあの子みたいになれない人へ。森川葵×中尾暢樹「カカフカカ」が描く「特別感」

「週刊TVガイド」「月刊TVガイド」など弊社から刊行されるいわゆる“テレビ誌”では、「夏ドラマ特集!」というように新ドラマを名鑑的に紹介する企画を毎クール行っています。各テレビ局が次のクールに打ち出す新ドラマのほぼ全てを扱い、登場人物の簡単なプロフィールや人物相関図を掲載するのですが、その原稿やゲラをチェックしている時に思うのが、ほぼ毎クール「真っすぐな性格」という文とともに紹介される主人公が登場するドラマがあること。

 ひたむきな性格。正義感が強い。ピュア。明るい。一生懸命。夢や目標がある。失敗しても努力して挽回する。そんなキャラクターは見ていて応援したくなるし、輝いている姿に励まされたりします。あんなふうに振る舞えたらな、と思うこともあります。でも、ドラマに出てくる特別な“あの子”みたいにはなれなくて、3カ月後にはまた別の「真っすぐな性格」の誰かを見つめている。

 放送中のドラマ「カカフカカ-こじらせ大人のシェアハウス-」(MBSほか)では、性格や考え方といった「精神的に」ではなく、「肉体的に」特別な主人公が登場します。学生の頃は目立つ存在で自分に“無敵感”を抱いていたけれど、就職活動や彼氏の浮気などで挫折を経験したことで、今は自分に自信がなく、夢も目標もやりたいこともない主人公・寺田亜希(森川葵)。そんな亜希が中学の頃の初体験の相手・本行智也(中尾暢樹)と24歳になって再会。2年ほど“たたない”状態に悩んでいた本行ですが、亜希に触れると“たつ”ように。「絶対ヘンなことはしない」という約束のもと、夜、一緒のベッドで寝ることを頼まれる亜希。

 本行が求めているのは「体だけ」と割り切って一度は添い寝に応じたものの、やっぱりこんな関係はおかしい、と添い寝を拒否。本行の気持ちを確かめることもないまま一方的にドキドキして、自分の肌に触れている手に動いてほしいと思ってしまった亜希はそんな自分に嫌悪感を抱き、「何かを期待してしまっていた自分がすごく気持ち悪い」と心の中で悔やみます。

 原作者の石田拓実さんは「少女漫画において、『特別感』は絶対に外せない要素ですよね。でも亜希って、物語の冒頭でいきなり特別感だけが与えられるんですよ。『従来の少女漫画で尊ばれている精神的なものを排除して、肉体的なものだけで『特別である』という、めちゃくちゃ極端な状況を作ってみよう』というところから出発したんです」と過去のインタビューで語っています。このドラマで描かれているのは、誰から見ても魅力的でキラキラした主人公ではないけれど、本行にとっては「寺田さんだけが今んとこ唯一の希望なんだと思う」と口にするほど「肉体的な」「特別感」を持った主人公。(出典:ダ・ヴィンチニュース「カラダの特別感からはじまる恋ってアリ? ナシ?『カカフカカ』【石田拓実インタビュー】」<https://ddnavi.com/interview/397732/a/>(2019年5月10日閲覧))

 卑屈で、消極的で、曖昧で、過去の自分は思い出すだけで恥ずかしくて…自己否定の強い亜希は、誰からも好かれる「真っすぐな性格」のキャラクターじゃない。でも、たった一人にとっては特別で、求められている。でも求められているのは心ではなく、体――。そうと分かっていても「寺田さんだけが唯一の希望」という言葉にときめきを隠せず、再び添い寝に応じる夜を送る亜希を見ていると、次第に感情をコントロールすることができなくなり「肉体的な特別感」を「精神的な特別感」と頭が勝手に捉えてしまった結果、行き場のない感情に押しつぶされてしまうのではないかと考えてしまいます。

「真っすぐな性格」の主人公に元気をもらって、3カ月前とは少し変わった自分になれた人へ。そんなドラマに出合えたこと、すてきだなと思います。「真っすぐな性格」の主人公みたいになれない自分に、なんとなくもやもやしている人へ。「カカフカカ」の亜希に、何か自分と重なる部分があるかもしれません。


【番組情報】 
ドラマ特区「カカフカカ-こじらせ大人のシェアハウス-」
MBS 木曜 深夜0:59~1:29
tvk 木曜 午後11:00~11:30
チバテレ 金曜 深夜0:00~0:30
テレ玉 水曜 午後11:30~深夜0:00 
※ほか、TUFなど全国各局で放送中
https://www.mbs.jp/kakafukaka/#onair

文/宮下毬菜(TBS/MBS担当)




 
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