放送局から直送便・ドラマ版

コラム

脚本家・大森寿美男を直撃取材!「なつぞら」で数々の心に染みるセリフを生み出しているのはどんな人?

 ヒロイン・奥原なつ(広瀬すず)が、北海道で育んだ開拓精神と想像力を 生かし、当時、「漫画映画」と称された草創期の日本アニメの世界でアニメーターを目指す姿を描く、連続テレビ小説「なつぞら」(NHK総合ほか)。記念すべき第100作目も、残すところあと3週! 9月2日からの放送では、なつの人生に大きな影響を与えた山田天陽(吉沢亮)がまさかの死去…。なつは、天陽の死をきっかけに新たな挑戦を決意し、「東洋動画」を辞めて「マコプロダクション」で坂場一久(中川大志)たちと新しい作品の制作をすることになりました。

 放送後、SNSでは“天陽くん”がトレンド入り。多くの視聴者の涙を誘いました。今作は、くすっと笑える場面あり、心にジーンと染みるセリフありで、放送開始から多くの感動を届けてきました。記者も何度泣かされたことか…。今回は、そんな温かい今作の脚本を手掛け、数々の名ゼリフを生み出した大森寿美男さんを直撃! 脚本を書き上げられた感想や、制作のエピソードなどをお伺いしました。

 大森さんが連続テレビ小説の脚本を手掛けるのは、2003年から放送された「てるてる家族」以来。まずは、今作の脚本を書き上げられた率直な感想を伺うと、「達成感を味わえるかと思ったけど、まだ不安です。最低限の責任は果たせたかなっていうぐらいですね。特に今作は自己満足では終わらせる作品ではないので、視聴者の皆さんを含め、関わっている皆さんにとって満足がいく作品になればと思っています。何よりも、広瀬さんが最後まで走りきれるように。それが終わらないと僕も責任を果たした気がしないので、開放感はないですね」と心境を語ってくださいました。

 また、「みんなに成功してもらいたいという気持ちが強かったので、『てるてる家族』の時とはプレッシャーが全然違いました。前回の時と比べると書くスピードは遅くなりましたね。今作はかなり余裕持って始めたので、放送開始前に書き終わるかなとか思っていたんですが無理でした。『てるてる家族』の時のスピードなら終わってたんですけどね(笑)。自分を疑いながら慎重に、けど結局はわが道をゆくしかありませんでしたけど」と作品を成功させたいという強い思いと、日本全国が注目する朝ドラの脚本家ならではの悩みを明かされました。

 前作放送時からSNSが発達し、より視聴者の感想を見る機会が増えましたが、ご自身で感想などを見ることはしないそうで、「あの頃は“2チャンネル”でしたね(笑)。最近は、 SNSを見られなくなってしまいました。 書き終わってからはちょっと勇気出してチラチラ見たりしたんですけど。執筆中は自分がフォローしてる人のものは読んでも、『なつぞら』のハッシュタグで検索とかはしなかったです。どんなツイートでも感情移入してしまいそうだったので。全員を満足させたいという欲は、自分の感覚を狂わす毒にもなりますから」と脚本家ならではの気持ちを教えてくれました。

 執筆にあたり特に筆が乗った部分を問われると、「今作は、なつが アニメーターとして成長していく成長期でもあるんですけど、“成功物語”ではないんです。全体としてはホームドラマだと思っています。なつの場合はそのホームが広いんです。北海道・柴田家もホームだし、東京・岸川亜矢美(山口智子)のおでん屋さんも、結婚して自分でつくる家族もホームです。大きく分けて、その三つをなつの流れにしようと思っていたので、その部分はすごく楽しく発想しやすかったです」と振り返り、さらに「なつが人間の中の喪失感を表現の中で満たしていくための技法がアニメという手段でしたが、僕は絵を描くことができないので、アニメーション制作の方と相談して、それを脚本に落とし込んでいました。アニメーション自体も無限に作れるなら、どんどん見せたいんですけど、ドラマに登場させられる限りがあるので、悩みました。数少ない中でどうやって効果的に見せていくか考えるのが一番苦しかったです」と、アニメーターを物語の主人公にするという初の試みで感じた難しさを語ってくれました。

 そして、大森さんといえば、小畑雪次郎役の山田裕貴さんが「あまりにも自分の経験と似ていて、僕のインタビューを読んで脚本を当て書きしてくれてるのかと思いました!」と、驚異のシンクロ率についてコメントされていたのが印象的。そこで、その理由を伺うと「インタビューを読んだりはしてないです。俳優さんのことを知らないままで勝手に想像する方が膨らみますし、楽しいので。雪次郎のセリフの中に出てくる役者のあるべき姿というのは、当時の新劇の名優さんたちの言葉なんです。その名優さんたちが思ってることと、山田くんの考えがたまたま同じっていうだけですね。山田くんにはまだ言ってないけど、それは彼自身が自信を持っていいんじゃないかな!(笑)」と真相を明かしてくれました。山田さん! そういうことらしいですよ!!

 今作では、ヒロインのなつ以外にも大きなスポットが当たり、それぞれの物語が動いていくのも一つ魅力です。雪次郎が北海道に帰る決意をした時には、SNSで「今週は雪次郎がヒロインだ!」という声が多く上がるほどでした(笑)。どのような意図でそれぞれの物語を書かれていたのかを伺うと、「基本はホームドラマだと思って書いていたので、北海道編に入った時から、周りとどう関わって、どういう物語が生まれるかっていうことを考えていました。上京してからもホームである亜矢美や奥原咲太郎(岡田将生)の周りの人たちを巻き込んだ話になっていくことを常に考えていました。そして東京の家族のもとへ、北海道の家族が訪れて交わることもあった方がいいと考えていました。夕見子(福地桃子)の話も、雪次郎の話も、僕のプラン通りハマったなと思っています」と語ってくれました。

 しかし、プラン通りの中でも一つだけ問題があったようで…。「雪次郎の回は、見る人にとってはもう帰っちゃうのかって思われてしまったかなと。雪次郎は、新しい波に“乗れなかった”ことを、“乗らなかった”ことにするために、蘭子(鈴木杏樹)に告白までしたんです。でも、それを蘭子さん見抜かれたことによって雪次郎も自分の中途半端さに気づいてしまった。それで帰ることにしたんです。でも、山田くんが芝居うまいからね(笑)。だから、“芝居続けろよ!”って思う人が多かったのが問題です。もうちょっと山田さんが芝居下手だったらな~っていうのが誤算でしたね(笑)」と冗談交じりに教えてくれました。 「出演者の方が読むこと考えると誰が一番好きなキャラクターかなんて言えないです(笑)。俳優さんはみんな大好きです!」と語ってくれた大森さん。インタビューの時間だけでは語り切れないエピソードがまだまだありそうでした…!

 そして、ヒロイン・なつについて大森さんは、「なつって根本的に孤独な人だと思うんです。人に依存できない性格で、人との関わりはすごく大事にするんだけど、踏み込んで『自分のためにあなたはこうしてほしい』みたいなことを言えるタイプじゃなくて。それで、人と一定の距離をとっているところは、広瀬さんと共通しているような気がしています。僕の中では、なつの自分の力だけで乗り切ろうとするところや、資質や性格が、広瀬さんと分けがたいものになっています。だから、広瀬さんが表現することがなつの正解だと思っています」と語ってくれました。さらに、「なつが最初に北海道に行った時は、その場にいることを大事にし、今の自分が与えられた“家族”というものを大事にすることで、自分のアイデンティティーを守っていました。だから、押さえ込んでた気持ちとか、本音が言えないもどかしさがあったのですが、家族の許しを得て、東京に出てからはちょっとずつ本来の自分が見えるようになっていきます。結婚をして家族作ると、またちょっと変わりますし、なつの年齢や環境の変化とともに、全然違う広瀬さんの顔が見られる作品だと思います」と作品を通しての見どころを教えてくれました。たしかに高校生時代のなつ、上京直後のなつ、そして母になったなつを見比べると、全く印象が違うんです! メークやスタイリングでの変化はもちろんあると思いますが、時代ごとに違う顔つきを見せる広瀬さんの表現力にあらためて驚いてしまいました!

 最後に、北海道でまた訪れたい場所を聞かれた大森さんは「一昨年の秋ぐらいに舞台を北海道にすると決めてから現地に足を運び、酪農家の方やお菓子業界の方などに会って取材を始めました。その時に出会った方々のお話から大きな影響を受けたので、お礼を伝えるためにまた十勝へ行きたいですね」と制作に携わった方へ感謝の気持ちを語ってくれました。「『帯広農業高校をモチーフに書くなら、こうやってFFJを歌わなきゃだめだ!』って一生懸命腕を振って歌ってくれた人がいるんですけど、その方はきっと今誇らしげにしていると思います(笑)」と自ら腕を振りながら北海道での思い出を振り返ってくれた大森さん。常に周りへの感謝を忘れない心を持っているからこそ、たくさんの温かいセリフが生み出されているんだと実感し、大森さんの言葉から不思議と「なつぞら」の空気を感じるインタビューでした。

 さて、「東洋動画」を辞め、新たな道を歩み始めたなつ。感慨にふける間もなく、大沢麻子(貫地谷しほり)が立ち上げたアニメ会社に出社早々、なつは作画監督を任されることに。下山克己(川島明)や神地航也(染谷将太)といった懐かしい仲間に囲まれ、「大草原の少女ソラ」の企画が動きだします。なつたちは舞台となる十勝の大地へとロケハンに赴き、美しい風景をスケッチして回り、柴田泰樹(草刈正雄)が語る開拓時代の話には大きく心を動かされます。そして、1974年の秋、大自然の中に生きる家族を感動的に描いたアニメは話題を呼び、初めこそ視聴率は上がらなかったものの、少しずつ子どもやその親たちからの反響が出始め――。


【番組情報】 

連続テレビ小説「なつぞら」
NHK総合 月~土曜 午前8:00~8:15ほか
NHK BSプレミアム 月~土曜 午前7:30~7:45ほか

NHK担当 A・M





 
キーワード

関連記事

TVガイド最新号

TVガイド
2019年11月29日号
発売日:2019年11月20日(水)
※一部地域は発売日が異なります
特別定価:400円
表紙:生田斗真

新着連載

PAGE TOP